2020年04月11日
政府の遅いコロナ対応に「IT化」が不可欠な理由
政府の遅いコロナ対応に 「IT化」が不可欠な理由
〜東洋経済オンライン 4/11(土) 5:45配信〜
4月7日、7都府県を対象に緊急事態宣言が政府から発令され、緊急経済対策も閣議決定された。これで感染防止と経済対策が一気に進むかと思いきや、現状は混乱の極みである。国は東京都が計画していた休業要請をする施設に待ったを掛けた。緊急経済対策に至っては、補正予算が国会で成立するのは4月24日の見込みであると云う。この国の政府関係者の辞書の中に「スピード」と云う言葉は無いのだろうか。
文 植田 統 弁護士 名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授
理美容店等への休業要請で揉めた揚げ句・・・
特別措置法によれば、緊急事態宣言後は各都道府県の知事が区域内での対策を推進出来る筈だった。しかし、政府は、基本的対処方針の中に「施設の使用制限の要請、指示は国と協議」との文言を追加し、東京都の休業要請をする業種の範囲に付いて介入出来る道を開いた。
そして、6日に東京都が公表した案に対して、政府が休業要請の解除を求めたのが、理美容店・ホームセンター・ゴルフ練習場・質屋等で有ると云う。更に、居酒屋の営業時間の短縮を巡っても、政府の意見と東京都の意見は対立した。
筆者が疑問を感じるのは、都内の感染状況に付いて最も詳しい情報を持って居る東京都の方針に、何故政府が待ったを掛けたのかと云う処である。各都道府県に依って置かれた状況が違うのだから、休業要請をする対象業種の選定は都道府県に任せるのが筋であろう。それでコソ、スピード対応が可能と為る。
8日、政府は対象地域への休業要請を2週間程度見送る様に打診して居たが、東京都は小池百合子都知事が10日午後の定例会見に置いて、休業の要請を行い独自の休業補償金(協力金)を支払う事を話した。その対象施設は公表され、11日から実施される。補正予算の国会成立は4月24日の見込みだが、これではいかにも遅い。
例えば、アメリカ・・・どの程度のスピード感で予算措置を実現させたかと云えば、トランプ大統領が非常事態宣言を出したのが3月13日。その2週間後の3月27日に2兆2000億ドル・240兆円の予算案が議会を通り、大統領署名に至って居る。
一方、我が国の政府はどうか・・・政府が新型コロナ対策の補正予算案の検討を始めたのは3月11日の自公会談以降である。それ迄新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に集中して居た為、この日が初動と為った様であるが、それからホボ1カ月が経過して要約緊急経済対策の閣議決定・国会成立が4月24日では遅過ぎると云う批判は免れまい・・・これでは平時の対応である。
中小企業への一刻も早い支援を
雇用の場を守る為には、中小企業の資金繰りを支援する事が最重要で有ると筆者は考えて居る。政府の中小企業への資金繰り支援策は、日本政策金融公庫の無利子融資と信用保証協会の100%保証等だ。しかし、3月以降に申請が殺到し、申し込まれた21万件の内、融資を承諾したのは12万件に留まって居ると云う(4月10日付の日本経済新聞より)
申込書の記入・確定申告書の提出・登記簿謄本の提出・面談等の数々の手続きが必要と為る為、窓口が混雑し融資を受けられるのは連休明けに為る事も見込まれて居る。
海外の支援策はどうか・・・スイスでは、簡単な書類に必要事項を記入しメールで銀行に送れば原則数時間以内に振り込みが行われると云う。アメリカでは、中小企業向けに3500億ドル・38兆円の枠で従業員等の給与を肩代わりする仕組みが作られ3日に受け付けを始めて居る。
各国が簡易でスピーディーな緊急対応を取って居るにも関わらず、我が国政府の対応は、日本政策金融公庫や信用保証協会を経由した平時の融資実行と変わら無い印象を受ける。このママでは、コロナショックの影響を受けた中小企業が資金繰り破たんする恐れがある。
緊急事態宣言で指定された対象地域の複数の知事から、休業要請をする際に付いて休業補償を行うべきだと云う意見が出て居る。対して、政府は、売り上げの補償は出来無いとの回答をした。これに付いては筆者も全くその通りだと思う。
売り上げの補償と為れば、コスト部分迄政府がお金を払う事に為り、中小企業・自営業者に取っては、濡れ手で粟と為る。新型コロナ拡大の緊急時に必要とされて居るのは、雇用の保証で有るのだから、補償の範囲は、中小企業・自営業者に勤める従業員の雇用を守る為の給与相当額の補償が妥当ではないか。それでは、中小企業・自営業のオーナーの所得が補償され無いと反論する人も居るものと思うが、彼等は自らリスクを取って事業に乗り出して居るのであり、そこ迄政府が面倒を看るのは行き過ぎである。
こうした従業員の雇用を守る為の制度として、我が国には雇用調整助成金と云う制度が在る。企業が従業員を企業都合で休職させる場合、その一部を国が助成すると云う制度で、現在は特例により中小企業で10分の9・大企業で4分の3迄助成する様に為って居る。
しかし、此処でもスピードの問題が立ちはだかる。政府は、ハローワークに提出する申請書への記載項目を半減させる事で、これ迄2カ月掛かって居た支給迄の期間を1カ月にしようとして居る。だが、もう少し抜本的にスピードを上げる方法が求められる。
コロナ危機でIT化を加速させる必要がある
金融機関の窓口・ハローワークの窓口で申請をする時に時間が懸かるのは、申請書類を紙で提出し、添付書類も全て紙で取得して添付し無ければ為ら無いからである。申請書類の提出を全て電子メールで可としてしまえば、申請者は窓口へ行く必要が無く為る。
会社毎に法人番号を与え、税務署のデータも法務局のデータも紐付く様にして仕舞えば、金融機関もハローワークも申請書に書き込まれた法人番号からデータを取得して直ぐに審査が出来る。面談が必要なら、それもテレビ会議等で可として仕舞えば、アッと云う間に終わるだろう。そして、電子審査で済ませれば、スピーディーな融資や助成金の支払いの実行が可能と為る筈である。
コレは、所得急減世帯に給付すると云う30万円に付いても同じである。全ての国民がマイナンバーを持ち、それに住民票のデータ・前年度の所得のデータが紐付いて居れば、一定の所得以下の世帯を抽出する事が瞬時に可能と為る。詰り、緊急時のスピード対応を可能とする為には、政府のIT化が必須と云う事である。
プライバシーの問題・IT弱者の問題等から反対する人も多いが、ソコは国民への説明・例外措置の整備を設ける事で、対応出来るのではないか。コロナ危機を契機に政府がIT化に大胆に踏み切る必要がある。
植田 統 弁護士 名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授 以上
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