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2020年04月02日

何故 コロナに感染しないのか 自衛隊員に学ぶ予防術と心得



 何故 コロナに感染しないのか 自衛隊員に学ぶ予防術と心得


            〜NEWS ポストセブン 4/1(水) 11:00配信〜


       4211.jpg

             何で感染しない?(写真 共同通信社)

 「何でアノ人達は感染しないの?」今ネット上等で話題に為って居るのが自衛隊の存在だ。新型コロナ感染拡大を受けて、数々の現場に赴く彼等は、濃厚接触と戦い続けながら何れの任務でも感染者を出して居ない。彼等には独自の「予防マニュアル」があるのだと云う。

 ◆脱ぐ時は2人一組
 
 全国の駐屯地から医療・介護施設へのマスク配布作業を始め、集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』の船内対応・チャーター便帰国者の一時宿泊施設への物資搬送等、新型コロナの感染拡大を受けて様々な任務に従事する自衛隊。
 時には保菌者との濃厚接触が避けられ無い現場もあるが、隊員の感染事例は海外からの帰国者1人のみ。未だ任務中の接触を原因とする感染者は出て居ない。取り分け医師や政府職員・検疫官の感染が相次いだクルーズ船の任務では、2,700人の隊員が対応に 当たったにも関わらず、感染者ゼロで任務を完了した事は特筆すべきだ。

 制服組トップの山崎幸二・統合幕僚長は、後日の会見で「確りした防護基準を定め、現場で指揮官が徹底し隊員が実行した。訓練の成果だと思う」と振り返った。例えば、クルーズ船では、厚生労働省が設けた基準とは別に自衛隊独自の防護策を講じて居たと云う。
 「船内の消毒業務等は防護服を着た上で手袋を二重にし、防護服との隙間が生じ無い様に繋ぎ目を粘着テープで塞ぎました。更に靴カバー目にはゴーグルを着用しました」(防衛省・統合幕僚監部報道官室)

      4212.jpg  佐藤正久・自民党参院議員 現役時      
 
 元陸自一佐で、イラク先遣隊長・福知山駐屯地司令等を歴任した佐藤正久・自民党参院議員が解説する。

 「今回の新型コロナの様にヒトに感染するウイルスに対応する場合、自衛隊は必ず防護服を着用します。手袋をして顔も覆い靴カバーを付けるフル装備です。任務が長時間に渉る場合は、更にオムツを着用する事もある。防護服を脱ぐ時は外側に触れ無い様、2人一組で行ないます。
 一般的には、頭の部分から順番にお互いの防護服を外して行き、最後にお互いの手袋を取ると云った手順です。そこ迄徹底しないと感染を防ぐ事は出来ません」


 ◆爪の根元を洗う

 自衛隊の新型コロナ対応は、防護服の様な特殊な対策がメインでは無い。寧ろ多くの場面で、一般の人も遣って居る基本対策の徹底を心がけた。但し、その「やり方」が違うのだと云う。

 「船内でのウイルス感染を避ける為『手指で何かに触れたら直ぐに消毒する』飛沫によるウイルスの侵入を防ぐ為『マスク着用時は鼻に当たる部分を押さえて隙間を無くㇲ』等を徹底しました」(統合幕僚監部報道官室)
 
 マスクは鼻迄付ける、ここ迄は今や常識だが、ソコで鼻回りの隙間を無くㇲすひと手間が「自衛隊式」だ。そうした配慮は洗濯にも見られる。

 「洗濯は各自が行ないましたが、感染リスクが高い医官・看護官等は個室の風呂場や部屋に持ち込んだバケツ型の洗濯機を利用し、それ以外の隊員はフェリー内の洗濯機を共有して使いました」(同前)

 その他の対策としては「食事の際は対面を避ける」「対面の時は2メートル以上空ける」等が有ると云う。新型コロナに限らず、自衛隊の感染症対策は基本を突き詰める事を重視する。その代表が「手洗い・うがいの励行」だ。自衛隊OBが語る。

 「集団行動が基本の自衛隊では1人が感染症に罹患すれば、部隊の任務自体が行なえ無く為ってしまう。その為、入隊後に教育隊から教えられる基本動作の中に手洗い・うがいの励行があります。その結果、手洗い・うがいをキッチリ遣る習慣が身に着くのです」

 手洗いの励行は、部隊生活の日常にも及ぶ。「トイレや洗面所に『手洗いの仕方』を解説する貼り紙を出して居る処もあります。それも、小便器の前だけで無く、個室に座った時の正面にも張られて居たりする。用を足す時に必ず目に入る様指示の徹底化を図ります」(前出・自衛隊OB)

 手洗いにも自衛隊ならではのポイントがある。「石鹸を着け両手の平をゴシゴシ前後に擦る人が多いですが、そうすると親指と爪の洗浄が疎かに為り勝ちです。その為『親指だけを洗う』『爪の先は別に洗う』『その後、爪の根元を洗う』等、手順を具体的に指示して居ます」(佐藤氏)


 そうした指示は足元にも及ぶ。感染症対応の現場で、隊員自身がウイルスを運ぶ様な事態を避ける為、例えば、鳥インフルエンザや豚コレラ等家畜に感染症が発生した場合は、現地での活動後、ブーツに付いた土を必ず現場で落とし、靴底の消毒を徹底して居る。佐藤氏が続ける。

 「海外任務では事前に予防注射を何本も打ちますが、それでも感染症の恐れは消え無い。その事を隊員にキッチリ伝え、手洗いの励行を指示しました。イラクでは駐屯地の食堂入り口に手洗い場を設け、食事前に手洗いをする動線を作りました」

 手洗いに水が使え無い屋外での食事の場合は「ウェットティッシュを用いて手指の消毒を行なう」と云う。

 ◆『衛生ニュース』の発行

 これらの「自衛隊式」予防法は誰もが日常生活で実践出来る対策ばかりだが、それを集団単位で確実に実施出来る事が自衛隊の強みだ。佐藤氏はこう言う。

 「自衛隊は以前から感染症に緊張感を持って対処して居ます。『自衛隊における感染症対策に関する訓令』や『感染症対策に関する達』により、自衛隊内の各組織での対応や感染症の種類毎に発生時の報告を義務付けて居ます。隊員には部隊毎に発行する『衛生ニュース』で、流行中の感染症とその予防法を伝えています」
 
 そうした取り組みが効果を発揮出来るのは、自衛隊と云う組織ならではの特性による。「『上意下達』が徹底して居る為、組織全体に情報が浸透し易い。他の役所や民間と大きく違う処です」(同前)

 具体的には、部隊での朝礼・終礼での予防励行の伝達、営舎での10人弱の班単位での指示等、多くの段階で感染症予防の徹底が伝えられる。近年、自衛隊ならではの危機管理テクニックを取り上げた『自衛隊防災BOOK』がヒットした。ソコでは日頃の防災や減災に役立つ知識や技術が数多く披露されて居る。或る現役隊員が語る。

 「我々の強みは『健康管理も仕事の一部』と全員が認識して居る事です」

 意識の徹底コソがコロナ予防に繋がって居る。


            ※週刊ポスト2020年4月10日号   以上







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