2019年09月11日
両替逃亡劇〜後編〜。
深夜の居酒屋ホール時代、
店長の横着作戦の片棒を担ぐ形で
ゲーセンでの業務両替に行かされた僕は、
ノルマである100円玉40枚入手に成功した直後、
ゲーセンの出口で店員に呼び止められ、
業務両替がバレてしまった。
→「両替逃亡劇〜前編〜。」
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/295/0
絶体絶命の中、僕が取った行動は
後に誰に話しても笑いを取る逃亡劇となる。
ーーーーーーーーーー
僕の肩を掴み、
「話は店内で聞かせてもらう、来なさい!」
と怒鳴る男性店員。
頭が真っ白になり、時間の感覚も削除され、
もはや連行されるしかないかと思われた。
しかし、頭が真っ白で
何も考えられていないのは事実にしろ、
僕の中で目だけは”あること”を考えていた。
そう、「ここからどうやって逃げよう」だ。
直感だけと言っても大げさではない。
僕を店内に引き入れるため、
ドアを閉めようと一瞬、男性店員は
僕の肩から手を離した。
その瞬間を僕は見逃さなかった。
開きかけたドアと、店員の手をくぐり、
ゲーセンの外へ一気にダッシュ。
自分の店のある幹線道路側の交差点へ
一気に駆け出した。
「おい!待て!」
怒号を発しながら
男性店員が走って追いかけてくる。
店へ続く交差点の信号は赤のまま。
ここで僕はもう一つ、とっさのひらめきを見せる。
このまま店に帰れても、後を付けられたら
足がついてしまう。
よし、捲こう。
直後、信号が青になっている歓楽街の中心方面へ
一気に横断歩道を渡り、疾風の如く駆けた。
その男性店員は割と細身で、
年齢はおそらく40歳前後。
人を見た目で判断するべきではないが、
スポーツをやっていたり足が速そうには見えなかった。
だから呼び止められた時から
「この人からなら逃げきれる」という
根拠の無い自信を目にたぎらせていた。
まがりなりにも現役でバスケを続けている
この身体が、土壇場でモノを言った。
深夜3時半を過ぎた歓楽街の中心部を
400メートルトラック1周分ほど駆け抜けた後、
見知らぬ雑居ビルの裏口にある
少し錆びた階段をカンカンと駆け上がった。
4階くらいの、
「深夜3時閉店」と書かれた店先の陰に隠れる。
どうやら追手は捲いたようだ。
夢中で駆け抜けてきて
乱れた息を静かに整えながら、
持っていたガラケーで店と通信を取った。
今思えば、この電波を盗聴されていたら
発信源の場所が特定されてしまうとヒヤリとしたが、
業務両替にゲーセンがそこまでするかは疑問なので
これ以上は敢えて触れないことにする。
妄想の内は危機感が美しいままとなる。
「店長、理琉です。
両替には成功しましたが、バレて追われています。
追手はどうやら捲いたようです。
今は雑居ビルの陰に隠れています。
住所はおよそ●●の…」
電話口から爆笑の声が聞こえる。
こちらはようやく整った呼吸を筆頭に
逃げ切った安堵感と、
まだ追われるかも知れない恐怖感で
爆笑どころではない。
店長から指示が出た。
繰り返すが時刻は深夜3時半を過ぎている。
「OK、よくやった。
とりあえず今はノーゲストだから、
大回りしてゆっくり帰ってきていいよ、お疲れ。」
店長…、業務両替させといて
「お疲れ」て。
逃げ込んだ雑居ビルから息を殺して出てみる。
追手の気配はない、どうやら本当に捲いたようだ。
バスケをやっていてよかったと思えた瞬間だった。
この潜伏先から店までは
2区画しか離れていない位置取りだったが、
もしかすると追手の仲間が
うろついているかも知れないので、
わざと4区画分くらい遠回りし、店に帰り着いた。
行きは5分、帰りは40分以上かかった。
店から見える場所へ往復するのに
これだけ時間がかかったのは初めてだ。
「お帰りー、お疲れー」
爆笑とともに、
ささやかな労いの言葉で出迎えられた。
戦利品の100円玉40枚を渡して任務完了。
渡す時に思ったが、けっこう重い。
こんなに重いものを持ちながら、
よくあれだけのダッシュができたと自分でも驚きだ。
火事場で発揮される
人間の真の力の恐ろしさを目の当たりにした。
事件から1年くらい経ったある日、
この刑事ドラマのような逃亡劇を
退勤した後よく飲みに来ていた
系列店の料理長に話したところ、やはり爆笑された。
「お前そんな面白いネタ…くくく…!!
よく今まで隠してたな…!!!w」
だそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
禁止されている業務両替、
もしあの時捕まっていたら
冗談抜きで本当に
マズイことになっていたかも知れない。
それこそ企業対企業の問題、
そして僕個人としても処分はあっただろう。
何より、プライベートでもそのゲーセンには
気まずくて数年間入れなかった(苦笑)
ゲーセンを利用する習慣はないけど、
付近を通りがかって突如トイレを催した時に
使えなくなってしまったのは痛かった。
この話は逃げ切れたからこうやって書けるけど、
自分を守るためにも”片棒を担ぐ”ことは
きっぱり断るべきと、身をもって学んだ。
店長の横着作戦の片棒を担ぐ形で
ゲーセンでの業務両替に行かされた僕は、
ノルマである100円玉40枚入手に成功した直後、
ゲーセンの出口で店員に呼び止められ、
業務両替がバレてしまった。
→「両替逃亡劇〜前編〜。」
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/295/0
絶体絶命の中、僕が取った行動は
後に誰に話しても笑いを取る逃亡劇となる。
ーーーーーーーーーー
僕の肩を掴み、
「話は店内で聞かせてもらう、来なさい!」
と怒鳴る男性店員。
頭が真っ白になり、時間の感覚も削除され、
もはや連行されるしかないかと思われた。
しかし、頭が真っ白で
何も考えられていないのは事実にしろ、
僕の中で目だけは”あること”を考えていた。
そう、「ここからどうやって逃げよう」だ。
直感だけと言っても大げさではない。
僕を店内に引き入れるため、
ドアを閉めようと一瞬、男性店員は
僕の肩から手を離した。
その瞬間を僕は見逃さなかった。
開きかけたドアと、店員の手をくぐり、
ゲーセンの外へ一気にダッシュ。
自分の店のある幹線道路側の交差点へ
一気に駆け出した。
「おい!待て!」
怒号を発しながら
男性店員が走って追いかけてくる。
店へ続く交差点の信号は赤のまま。
ここで僕はもう一つ、とっさのひらめきを見せる。
このまま店に帰れても、後を付けられたら
足がついてしまう。
よし、捲こう。
直後、信号が青になっている歓楽街の中心方面へ
一気に横断歩道を渡り、疾風の如く駆けた。
その男性店員は割と細身で、
年齢はおそらく40歳前後。
人を見た目で判断するべきではないが、
スポーツをやっていたり足が速そうには見えなかった。
だから呼び止められた時から
「この人からなら逃げきれる」という
根拠の無い自信を目にたぎらせていた。
まがりなりにも現役でバスケを続けている
この身体が、土壇場でモノを言った。
深夜3時半を過ぎた歓楽街の中心部を
400メートルトラック1周分ほど駆け抜けた後、
見知らぬ雑居ビルの裏口にある
少し錆びた階段をカンカンと駆け上がった。
4階くらいの、
「深夜3時閉店」と書かれた店先の陰に隠れる。
どうやら追手は捲いたようだ。
夢中で駆け抜けてきて
乱れた息を静かに整えながら、
持っていたガラケーで店と通信を取った。
今思えば、この電波を盗聴されていたら
発信源の場所が特定されてしまうとヒヤリとしたが、
業務両替にゲーセンがそこまでするかは疑問なので
これ以上は敢えて触れないことにする。
妄想の内は危機感が美しいままとなる。
「店長、理琉です。
両替には成功しましたが、バレて追われています。
追手はどうやら捲いたようです。
今は雑居ビルの陰に隠れています。
住所はおよそ●●の…」
電話口から爆笑の声が聞こえる。
こちらはようやく整った呼吸を筆頭に
逃げ切った安堵感と、
まだ追われるかも知れない恐怖感で
爆笑どころではない。
店長から指示が出た。
繰り返すが時刻は深夜3時半を過ぎている。
「OK、よくやった。
とりあえず今はノーゲストだから、
大回りしてゆっくり帰ってきていいよ、お疲れ。」
店長…、業務両替させといて
「お疲れ」て。
逃げ込んだ雑居ビルから息を殺して出てみる。
追手の気配はない、どうやら本当に捲いたようだ。
バスケをやっていてよかったと思えた瞬間だった。
この潜伏先から店までは
2区画しか離れていない位置取りだったが、
もしかすると追手の仲間が
うろついているかも知れないので、
わざと4区画分くらい遠回りし、店に帰り着いた。
行きは5分、帰りは40分以上かかった。
店から見える場所へ往復するのに
これだけ時間がかかったのは初めてだ。
「お帰りー、お疲れー」
爆笑とともに、
ささやかな労いの言葉で出迎えられた。
戦利品の100円玉40枚を渡して任務完了。
渡す時に思ったが、けっこう重い。
こんなに重いものを持ちながら、
よくあれだけのダッシュができたと自分でも驚きだ。
火事場で発揮される
人間の真の力の恐ろしさを目の当たりにした。
事件から1年くらい経ったある日、
この刑事ドラマのような逃亡劇を
退勤した後よく飲みに来ていた
系列店の料理長に話したところ、やはり爆笑された。
「お前そんな面白いネタ…くくく…!!
よく今まで隠してたな…!!!w」
だそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
禁止されている業務両替、
もしあの時捕まっていたら
冗談抜きで本当に
マズイことになっていたかも知れない。
それこそ企業対企業の問題、
そして僕個人としても処分はあっただろう。
何より、プライベートでもそのゲーセンには
気まずくて数年間入れなかった(苦笑)
ゲーセンを利用する習慣はないけど、
付近を通りがかって突如トイレを催した時に
使えなくなってしまったのは痛かった。
この話は逃げ切れたからこうやって書けるけど、
自分を守るためにも”片棒を担ぐ”ことは
きっぱり断るべきと、身をもって学んだ。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9166060
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック