2019年09月10日
両替逃亡劇〜前編〜。
深夜の居酒屋ホール時代、
僕は繁華街の雑居ビルで逃亡劇を繰り広げ、
刑事に追われる犯人のような経験をした。
まるで刑事ドラマのような追跡と逃走、
内容が濃過ぎて1記事にまとめられないので
今日は前編をお送りする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
平日、深夜3時前、雪はまだ降らないが
夜はすっかり冷える10月半ば。
キッチンは店長一人、ホールは僕一人で、
ちょうどノーゲストになったタイミング。
店長の独り言から推測するに、
釣銭、特に100円玉が不足したようだ。
営業時間内に釣銭が不足した時、
まだ営業している近隣の系列店に誰かが行って
両替可能か交渉することになっている。
向こうの店でも不足している可能性はあり、
その場合は「ダメでした」と帰るだけ。
朝5時の閉店までに、今日の客入りなら
充分足りるだろう。
しかし、店長はここで開店前の両替を
横着する計画を立てていたようだ。
夕方の開店までに店長は銀行へ行って
所定の小銭を用意する必要がある。
その手間を少しでも減らすか、
明日はやらなくていいようにしたかったのか。
閉店までの締め作業に取り掛かっていた僕に
声をかけた。
「理琉、ちょっと近くのゲーセン行って
100円玉40枚作ってきてくれない?
で、両替する時はなるべく客のフリして
ゲームしに来た体でさりげなくやってね」
一般の客以外の業務両替は
ゲーセン側で厳しく取り締まっている。
それは人が少なくなる深夜も同じで、
店員は常に目を光らせてるし、
見つかれば当然、店が割れる。
さすがに禁止されてることはできないと
僕は店長に言葉を返した。
「店長、さすがにバレたらマズイですよ」
「大丈夫、理琉ならやれるって!」
一体何が「やれる」のかわからないまま
勢いに押し切られ、僕は寒空の中、
目の前の幹線道路を渡ったすぐ側にある
ゲーセンへ足を運ぶことになった。
禁止されてる業務両替のため、
黒いダウンジャケットのポケットに
4000円を忍ばせて。
見つかれば企業単位で問題になりかねない、
思い返してもとんでもない横着作戦を
アルバイトにやらせる店長は若かった。
さて、足取りも重く、ゲーセンのドアをくぐる。
繰り返すが時刻は深夜3時、しかも平日とくれば、
いくら歓楽街とはいえゲーム目当ての一般客は少ない。
こんな中で4000円分も両替なんかしたら
明らかに怪しいだろうと思いつつも、
必死でゲーム台を物色する演技をしながら、
数か所に分けて1000円ずつ両替を済ませていく。
どれくらいゲーセンに滞在しただろう、
もはや時間の感覚が緊張によって削除されている。
ともあれ、よし、
怪し過ぎる黒いダウンジャケットの180センチの男は
ノルマの100円玉40枚入手に成功した。
あとはこのままゲーセン客を装いながら
さりげなく出口の扉を開くだけ。
そうやって扉を開けた次の瞬間、
当然というかやはりというか、背中越しに
「おい、ちょっと待ちなさい」
というドスの効いた声がした。
ゆっくり振り返ると、
そのゲーセン店員の制服である
ピンクのポロシャツを着た男性が
僕を睨みつけるように立っていた。
業務両替がバレた。
バレること必至だったにも関わらず、
鬼の形相でこちらを見る店員を前に
僕の頭は真っ白になった。
店員の質問と、言葉はどんどん荒くなっていく。
「さっき業務両替しただろう、見せなさい」
「おい、なぜ黙っている、何か言え!」
恐怖にすくみ上がる
黒いダウンジャケットの180センチの男。
泳いでいるだけのような視線は
まるで何かを探し続けているようにも見えるが、
怒り狂う店員にそんなことは関係ない。
業を煮やした男性店員はついに僕の肩を掴み、
「話は店内で聞かせてもらう、来なさい!」と怒鳴る。
絶体絶命のピンチ、
もはや観念して店の名前を吐くしかないのか、
連行されるがままになるしかないのか。
呼び止められてからずっと、
何かを探し続けるその視線の先に
一体何を見つけたというのか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後編に続く。
僕は繁華街の雑居ビルで逃亡劇を繰り広げ、
刑事に追われる犯人のような経験をした。
まるで刑事ドラマのような追跡と逃走、
内容が濃過ぎて1記事にまとめられないので
今日は前編をお送りする。
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平日、深夜3時前、雪はまだ降らないが
夜はすっかり冷える10月半ば。
キッチンは店長一人、ホールは僕一人で、
ちょうどノーゲストになったタイミング。
店長の独り言から推測するに、
釣銭、特に100円玉が不足したようだ。
営業時間内に釣銭が不足した時、
まだ営業している近隣の系列店に誰かが行って
両替可能か交渉することになっている。
向こうの店でも不足している可能性はあり、
その場合は「ダメでした」と帰るだけ。
朝5時の閉店までに、今日の客入りなら
充分足りるだろう。
しかし、店長はここで開店前の両替を
横着する計画を立てていたようだ。
夕方の開店までに店長は銀行へ行って
所定の小銭を用意する必要がある。
その手間を少しでも減らすか、
明日はやらなくていいようにしたかったのか。
閉店までの締め作業に取り掛かっていた僕に
声をかけた。
「理琉、ちょっと近くのゲーセン行って
100円玉40枚作ってきてくれない?
で、両替する時はなるべく客のフリして
ゲームしに来た体でさりげなくやってね」
一般の客以外の業務両替は
ゲーセン側で厳しく取り締まっている。
それは人が少なくなる深夜も同じで、
店員は常に目を光らせてるし、
見つかれば当然、店が割れる。
さすがに禁止されてることはできないと
僕は店長に言葉を返した。
「店長、さすがにバレたらマズイですよ」
「大丈夫、理琉ならやれるって!」
一体何が「やれる」のかわからないまま
勢いに押し切られ、僕は寒空の中、
目の前の幹線道路を渡ったすぐ側にある
ゲーセンへ足を運ぶことになった。
禁止されてる業務両替のため、
黒いダウンジャケットのポケットに
4000円を忍ばせて。
見つかれば企業単位で問題になりかねない、
思い返してもとんでもない横着作戦を
アルバイトにやらせる店長は若かった。
さて、足取りも重く、ゲーセンのドアをくぐる。
繰り返すが時刻は深夜3時、しかも平日とくれば、
いくら歓楽街とはいえゲーム目当ての一般客は少ない。
こんな中で4000円分も両替なんかしたら
明らかに怪しいだろうと思いつつも、
必死でゲーム台を物色する演技をしながら、
数か所に分けて1000円ずつ両替を済ませていく。
どれくらいゲーセンに滞在しただろう、
もはや時間の感覚が緊張によって削除されている。
ともあれ、よし、
怪し過ぎる黒いダウンジャケットの180センチの男は
ノルマの100円玉40枚入手に成功した。
あとはこのままゲーセン客を装いながら
さりげなく出口の扉を開くだけ。
そうやって扉を開けた次の瞬間、
当然というかやはりというか、背中越しに
「おい、ちょっと待ちなさい」
というドスの効いた声がした。
ゆっくり振り返ると、
そのゲーセン店員の制服である
ピンクのポロシャツを着た男性が
僕を睨みつけるように立っていた。
業務両替がバレた。
バレること必至だったにも関わらず、
鬼の形相でこちらを見る店員を前に
僕の頭は真っ白になった。
店員の質問と、言葉はどんどん荒くなっていく。
「さっき業務両替しただろう、見せなさい」
「おい、なぜ黙っている、何か言え!」
恐怖にすくみ上がる
黒いダウンジャケットの180センチの男。
泳いでいるだけのような視線は
まるで何かを探し続けているようにも見えるが、
怒り狂う店員にそんなことは関係ない。
業を煮やした男性店員はついに僕の肩を掴み、
「話は店内で聞かせてもらう、来なさい!」と怒鳴る。
絶体絶命のピンチ、
もはや観念して店の名前を吐くしかないのか、
連行されるがままになるしかないのか。
呼び止められてからずっと、
何かを探し続けるその視線の先に
一体何を見つけたというのか。
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後編に続く。
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