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2024年01月22日

【短編小説】『まぼろしの舞踏会』4 -最終話-

【MMD】Novel Phantom Dance SamuneSmall2.png
【MMD】Novel Phantom Dance CharacterSmall1.png

【第3話:解けた鎖】からの続き
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
エレノア
 後世「灰かぶり姫」と呼ばれる少女
 継母や義姉にこき使われながらも、
 優しさと誠実さで街の人々からの信望が厚い

セラフィス
 エレノアが住む国の王子
 穏やかで親しみやすく、市民とも気さくに会話できる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話:幸せを見つけるココロ】



エレノアとセラフィス王子が結婚して
数年が経ちました。

エレノアは王太子妃として、
王子の公務を手伝う日々を送っていました。

愛する夫はもちろん、
お城の人たちも、とてもあたたかい人ばかりでした。
多忙ながら、エレノアにとって幸せな日々が続きました。

しかし、どうしても拭えない違和感が1つありました。
それは、かつて灰をかぶっていた頃とは
まったく違う「裕福な暮らし」でした。



当時、エレノアは街へお使いに行くたびに、
街の人々の暮らしをいやというほど見てきました。

エレノア自身と同じように、
食事は粗末なマメの煮物だけ。
わずかな野菜が浮かんだスープだけ。
そんな家庭はいくらでもありました。


貧しさのあまり、
盗みを働く者が捕まる現場を見たこともありました。

王子の献身的な働きもあり、
街の人々の暮らしはどんどん良くなっていました。

それでもエレノアは、
自分だけが”運良く”貧しさと無縁になったことに
居心地の悪さを感じていました。

エレノア
「王宮で余った食材は、お城や街の皆さんへお配りしましょう。」
「服も靴も、日用品も。」


エレノアは積極的に寄付や慈善活動をしましたが、
街の人々と同じ目線にいない自分がいやになりました。

エレノア
「私、今すごく幸せだけど…。」
「何だろう…?この幸せは作り物のような気がする…。」


彼女は幸せとは何かを悩み、
窓から外を眺めて過ごす日々が続きました。


ーー


そんなある日、

白い小鳥
『お久しぶりです。悩んでいるようですね。』


エレノア
「小鳥さん?!また来てくれた!」


数年前の、舞踏会の日以来の再会でした。

白い小鳥
『時々、見ていましたよ。幸せそうで何よりです。』


エレノア
「ええ。小鳥さん、あの時は本当にありがとう。」
「あなたと魔女さまのおかげで、私は今幸せよ。」


白い小鳥
『どういたしまして。』
『ところで、あなたは今”幸せ”とおっしゃいましたね。』
『それは心からの言葉ですか?』


エレノア
「うっ…それは…。」


白い小鳥
『責めたりしませんよ。』
『こうなると予想していましたから。』


エレノア
「幸せなのはウソじゃないの…。」
「ただ街のみんなを見ていると、自分への違和感が拭えなくて…。」




エレノアの返答に、
白い小鳥は彼女の心の成長を確信しました。
そして、満足げな表情で言いました。

白い小鳥
『うん、今のあなたなら自力で幸せに気づけるでしょう。』
『もう魔法は必要ありませんね。』


エレノア
「魔法?魔法は舞踏会の日だけって…。」

白い小鳥
『金の靴を覚えていますか?』
『王子さまがあなたを見つける手がかりになった靴。』


エレノア
「ええ、金の靴はここに。」


白い小鳥
『”衣装の魔法は24時まで”でしたよね?』


エレノア
「あ…金の靴だけが消えていない…。」


白い小鳥
『あなたにかけた2つ目の魔法、覚えていますか?』


エレノア
「確か”本当の幸せに気づくまで”って。」
「あの時はそのうちわかるって言っていたけど、この靴が?」


白い小鳥
『そう、2つ目の魔法が込められているのが金の靴です。』
『そしてあなたは王宮での暮らしを通じて気づきました。』
『あなたにとっての”本当の幸せ”に。』


エレノア
「私にとっての…本当の幸せ…?」


白い小鳥
『そろそろ魔法が解けるようですね。』
『驚くでしょうが、あなたなら大丈夫。』


白い小鳥がそう言うと、
金の靴からまばゆい光があふれ出し、
あたり一面を覆いつくしました。

エレノア
「…!何も見えない…!」



ーー


ようやく光がおさまった頃、
エレノアは周囲の景色の変わりように驚きました。

なんと、彼女はさっきまで王宮の一室にいたはずが、
街の民家にいたのです!

手元にあった金の靴は消え、
代わりに夫のために編んでいる最中だった冬服がありました。


エレノア
「…どういうこと…?」


エレノアは民家の外へ出てみると、
いつもの活気ある街の姿がありました。

丘の上にあったはずの王宮は消えていました。

エレノア
「あぁ…よかった…。」
「やっぱり、この街には初めから王宮なんてなかったのね。」


舞踏会の招待状が届いた日の、記憶が抜けたような感覚。
エレノアだけが、魔法で作られた幻影に気づいていたのです。




白い小鳥
『…がっかりしましたか?』
『王族としての裕福な暮らしは魔法だったとわかって。』


エレノア
「とんでもない。ほっとしたの。」
「私、もうとっくに幸せだってわかったから。」


白い小鳥
『…そうですか。』
『…あなたならそう言うと思いましたよ。』


エレノア
「小鳥さんは、どうしてこんなに私を気にかけてくれるの?」


白い小鳥
『…私があなたのお母さまのお墓へ行くたびに…。』
『自分の食事を削って、マメをくれましたよね。』


エレノア
「小鳥さんも寒そうだったもの。」


白い小鳥
『…本当に、無邪気に言えるんですね。』
『…まったく、あなたは底抜けのお人好しだ…。』
『まさか、1度王子さまの求婚を断るとは予想できませんでしたがね。』


エレノア
「私、幸せになる勇気がなかったの…。」
「けど今なら自信を持って言える気がする。」
「私にとっての幸せは、あの家から出られたこと。」
「優しい夫や、街のみんなに囲まれて暮らせることだって!」


白い小鳥
『(ニコリ)…これで、私の務めは終わりです。』


エレノア
「小鳥さん行っちゃうの?また来てくれる…?」


白い小鳥
『また来ますよ、おいしいマメをもらいに。』
『どこかの誰かに、次の幸せを届け終えてからね。』


エレノア
「小鳥さん…ありがとう!待ってるね!」


白い小鳥は青空へ飛び去っていきました。


ーー


セラフィス
『エレノア、ただいま。』


街の役所に勤める夫・セラフィスが帰ってきました。

エレノア
「セラフィス!おかえりなさい!」


エレノアはセラフィスへ駆け寄り、
思いっきり抱きつきました。

セラフィス
『わわ!今日はどうしたの?!』
『すごく嬉しそうだね、何か良いことがあったの?』


エレノア
「…ううん……何もないよ!」
「私、幸せだなぁって思っただけ!」


セラフィス
『そっか…エレノアが幸せで、よかった…。』


エレノア
「いけない!お夕食の支度の途中だった!」


セラフィス
「あはは、手伝うよ。」
「今日、街の商店街で野菜をもらったから入れよう。」


エレノア
「あなたって本当に街のみんなに好かれているよね。」


エレノアの言葉に、セラフィスは苦笑いしながら言いました。

セラフィス
『はは、それならありたがいけど。』
『好かれているのは僕なのかなぁ。』


エレノア
「苦笑いして、どうしたの?」


セラフィス
『街のみんなが野菜をくれる時も、靴を直してくれる時も…。』



『”エレノアちゃんのために”って言うんだよ。』




ーーーーー
ーーーーー



いかがでしたか?
時をさかのぼり、彼女の気持ちに触れてみて。

エレノアは継母の家から出られた時点で、
すでに十分幸せだったんですね。

それにしても、魔女の魔法はすごいですね。
王宮をまるごと出したり、街の人々の記憶を操ったり。

後世に残る「シンデレラ」は、
もしかしたら誰かが時をさかのぼって見てきたもの、
かもしれませんね。

え?魔女は誰かって?

うふふ、

物語には少しくらい謎があった方が
おもしろいでしょう?




ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
『白だしうどんは涙色』全2話

『タイムシーフ・タイムバンク』全6話

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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