2023年06月30日
【短編小説】『元気でね、孤独遺伝子さん。』2 -最終話-
⇒【第1話:なぜ”1人好き”は生き残れたの?】からの続き
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第2話:なぜ”1人好き”でも非モテは苦しいの?】
<とあるバス停・待合室>
A君
『あー、モテたいなー…。』
B君
「いきなり何?」
A君
『心の叫びが漏れた(笑)』
B君
「なにそれ。」
A君
『けど、僕はなかなかモテなくてさー。』
『この前もフラれて、立ち直るのに1ヶ月かかったよ。』
B君
「それは…お気の毒さま…。」
A君
『失恋って辛いよな…。』
「けど、立ち直ったらまた挑戦しちゃうんだよ、なんでだろ?』
B君
「何というか、たくましいね。」
A君
『そう?きみだって、モテるならモテたいだろ?』
B君
「…別に…。」
A君
『(ニヤニヤ)強がるなって!』
B君
「つ、強がってないから!(汗)」
A君
『1人が好きでも、”モテたい”とは思うんだ(笑)』
B君
「そりゃ…まぁ…(照)」
A君
『隠さなくていいって!健全、健全!』
B君
「わ、わかってるよ!(汗)」
A君
『けど、不思議じゃない?』
B君
「何が?」
A君
『きみは1人が苦じゃないんだろ?』
B君
「うん。」
A君
『だったら、”異性にモテたいと思わないはず”じゃない?』
『くっついたら1人じゃなくなるんだから。』
B君
「確かに…。」
「どうして僕は1人が好きなのに…。」
「モ、モ、モテたいと思うんだろ…?(照)」
A君
『おー、やっと認めたか(笑)』
B君
「そこまで強情じゃないから!(汗)」
A君
『モテないって苦しいよなー。』
『受け入れられなかったって事実も苦しいけど、それ以上に悪夢がなー。』
B君
「悪夢?」
A君
『失恋すると決まって見る悪夢があるんだよ。』
『みんなと一緒に乗るバスに乗れない夢。』
B君
「置いてけぼりってこと?」
A君
『そう。』
B君
「じゃあ1人旅して、別の場所でグループ作れば?」
A君
『1人は寂しいからイヤなんだってー!(泣)』
B君
「それは…僕には理解できない…。」
A君
『ちょっとくらいは思わない?』
『モテなくて苦しいまで行かなくても、”何となく寂しい”くらいは。』
B君
「…何となく、心に空虚感があるかな。」
A君
『だろ?それが”非モテの苦しみ”だよ!』
『よかったー!1人好きでも共感できる部分があって!』
B君
「無意識に抑圧してきたのかな…?」
「1人が好きだけど、”モテたい”は消せない。」
「非モテでいいはずなのに、非モテは苦しい。矛盾してるな…。」
A君
『そう、それ!』
B君
「何が?」
A君
『さっき、全滅したグループから生き残った”1人好き”の話したじゃん?』
B君
「うん。」
A君
『その”1人好き”も、もしかしたら非モテの苦しみに耐えられなかったんじゃない?』
B君
「だからモテる努力をして、子孫を残した”1人好き”もいたと?」
A君
『そうかもな。失恋した後に見る悪夢は苦しいから!』
『1回見てみ?バスに乗れない夢。あんなもん、二度と見たくない!』
B君
「見てって言われても(汗)」
A君の失恋話に付き合わされたB君は
気づきました。
1人好きなのに、モテたい。
孤独は苦じゃないのに、非モテは苦しい。
なぜだろう?
矛盾に戸惑うB君に、新たな疑問が生まれます。
ーー
B君
「あれ?」
A君
『どうした?』
B君
「じゃあ、僕らはどうして毎回、乗れなかったら苦しいバスを待つんだろ?』
「そもそもバスを待たなければ、そんな悪夢を見なくてもよくない?』
A君
『確かに、いつも次のバス停を目指しちゃうよな。』
『特に理由はないけど、なぜか止められないんだよ。』
B君
「バスに乗る気がないヤツに聞いてみたらわかるんじゃない?」
A君
『そんなヤツいるかなー?』
『そいつはバスに乗らなかったんだから、もう生き残ってないでしょ。』
B君
「あ、そうか。」
A君
『そうだよな、なんで次のバスに乗りたがるんだろうな。』
『何かに突き動かされてるというか、逆らえない指令を受けてる感覚だよな。』
B君
「うん。神様とも違う、絶対的な何かに動かされてる気がする。」
A君
『そうそう。頭の中で響くんだよ。』
『”生き残って、次のバスに乗れ”ってさ。』
『毎回、あんな悪夢を見せられるこっちの身にもなれって!。』
B君
「もしかして、その何かが見せてるんじゃない?」
「バスに乗れない悪夢。」
A君
『かもなー。』
『非モテが苦しくないヤツは、悪夢を見ないが次のバスに乗れない。』
『非モテが苦しいならモテろ。次のバスに乗れ。ってことか。』
B君
「きっと、個々の苦しみは考慮されてないんだね。」
A君
『だな。生き残ってるのは”非モテ=苦しい”と感じる連中だけ、か…。』
『神様か何か知らないが、残酷なことをなさる…。』
非モテ談議が落ち着いた矢先、
バスのライトが彼らを照らしました。
A君
『おっと、バスが来た。』
『じゃ、僕らはこれに乗るわ。きみは?』
B君
「僕は別のバスに乗るよ。」
A君
『1人で?』
B君
「うん、1人で。」
A君
『そっか。今日はありがとう。』
『おかげで、1人でいるヤツをハブるようなマネをしなくて済みそうだ。』
B君
「お役に立てて何より。」
A君
『きみは新しいグループを作らないのか?』
B君
「どうかな…当分は1人で気楽にやるよ。」
(もう…全滅なんて見たくないから…。)
A君
『(ニヤニヤ)非モテは苦しいぞー?!』
B君
「わ、わかってるよ!(照)」
「非モテの苦しみとは、うまく付き合っていくよ。」
A君
『まぁ、頑張れよ!(笑)』
『それじゃ、元気でな!”孤独遺伝子”さん?』
ーーーーー
いかがでしたか?
「遺伝子:A君」と「孤独遺伝子:B君」の会話。
人間は、ときに「遺伝子の乗り物」と呼ばれます。
遺伝子は、人間というバスを次々に乗り換え、
生き残ろうとします。
そのバスに乗れないことは、
自身が滅びる恐怖です。
遺伝子はそれを防ぐため、
「孤独=寂しい」「非モテ=苦しい」
と感じさせているのでしょうか。
それは”1人好き”な孤独遺伝子も同じです。
孤独は多少寂しいし、非モテはまぁまぁ苦しいです。
なのに、孤独遺伝子が現代まで生き残っているのは、
「疫病や災害で全滅しないための”粋な計らい”」
…なのかもしれませんね。
ーーーーーENDーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『天に抗うカサンドラ』全3話
【短編小説】『家畜たちはお世話好き』全2話
⇒参考記事
「非モテが苦しいのは、生殖に成功した者だけが子孫を残してきたから」
⇒参考書籍
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【第2話:なぜ”1人好き”でも非モテは苦しいの?】
<とあるバス停・待合室>
A君
『あー、モテたいなー…。』
B君
「いきなり何?」
A君
『心の叫びが漏れた(笑)』
B君
「なにそれ。」
A君
『けど、僕はなかなかモテなくてさー。』
『この前もフラれて、立ち直るのに1ヶ月かかったよ。』
B君
「それは…お気の毒さま…。」
A君
『失恋って辛いよな…。』
「けど、立ち直ったらまた挑戦しちゃうんだよ、なんでだろ?』
B君
「何というか、たくましいね。」
A君
『そう?きみだって、モテるならモテたいだろ?』
B君
「…別に…。」
A君
『(ニヤニヤ)強がるなって!』
B君
「つ、強がってないから!(汗)」
A君
『1人が好きでも、”モテたい”とは思うんだ(笑)』
B君
「そりゃ…まぁ…(照)」
A君
『隠さなくていいって!健全、健全!』
B君
「わ、わかってるよ!(汗)」
A君
『けど、不思議じゃない?』
B君
「何が?」
A君
『きみは1人が苦じゃないんだろ?』
B君
「うん。」
A君
『だったら、”異性にモテたいと思わないはず”じゃない?』
『くっついたら1人じゃなくなるんだから。』
B君
「確かに…。」
「どうして僕は1人が好きなのに…。」
「モ、モ、モテたいと思うんだろ…?(照)」
A君
『おー、やっと認めたか(笑)』
B君
「そこまで強情じゃないから!(汗)」
A君
『モテないって苦しいよなー。』
『受け入れられなかったって事実も苦しいけど、それ以上に悪夢がなー。』
B君
「悪夢?」
A君
『失恋すると決まって見る悪夢があるんだよ。』
『みんなと一緒に乗るバスに乗れない夢。』
B君
「置いてけぼりってこと?」
A君
『そう。』
B君
「じゃあ1人旅して、別の場所でグループ作れば?」
A君
『1人は寂しいからイヤなんだってー!(泣)』
B君
「それは…僕には理解できない…。」
A君
『ちょっとくらいは思わない?』
『モテなくて苦しいまで行かなくても、”何となく寂しい”くらいは。』
B君
「…何となく、心に空虚感があるかな。」
A君
『だろ?それが”非モテの苦しみ”だよ!』
『よかったー!1人好きでも共感できる部分があって!』
B君
「無意識に抑圧してきたのかな…?」
「1人が好きだけど、”モテたい”は消せない。」
「非モテでいいはずなのに、非モテは苦しい。矛盾してるな…。」
A君
『そう、それ!』
B君
「何が?」
A君
『さっき、全滅したグループから生き残った”1人好き”の話したじゃん?』
B君
「うん。」
A君
『その”1人好き”も、もしかしたら非モテの苦しみに耐えられなかったんじゃない?』
B君
「だからモテる努力をして、子孫を残した”1人好き”もいたと?」
A君
『そうかもな。失恋した後に見る悪夢は苦しいから!』
『1回見てみ?バスに乗れない夢。あんなもん、二度と見たくない!』
B君
「見てって言われても(汗)」
A君の失恋話に付き合わされたB君は
気づきました。
1人好きなのに、モテたい。
孤独は苦じゃないのに、非モテは苦しい。
なぜだろう?
矛盾に戸惑うB君に、新たな疑問が生まれます。
ーー
B君
「あれ?」
A君
『どうした?』
B君
「じゃあ、僕らはどうして毎回、乗れなかったら苦しいバスを待つんだろ?』
「そもそもバスを待たなければ、そんな悪夢を見なくてもよくない?』
A君
『確かに、いつも次のバス停を目指しちゃうよな。』
『特に理由はないけど、なぜか止められないんだよ。』
B君
「バスに乗る気がないヤツに聞いてみたらわかるんじゃない?」
A君
『そんなヤツいるかなー?』
『そいつはバスに乗らなかったんだから、もう生き残ってないでしょ。』
B君
「あ、そうか。」
A君
『そうだよな、なんで次のバスに乗りたがるんだろうな。』
『何かに突き動かされてるというか、逆らえない指令を受けてる感覚だよな。』
B君
「うん。神様とも違う、絶対的な何かに動かされてる気がする。」
A君
『そうそう。頭の中で響くんだよ。』
『”生き残って、次のバスに乗れ”ってさ。』
『毎回、あんな悪夢を見せられるこっちの身にもなれって!。』
B君
「もしかして、その何かが見せてるんじゃない?」
「バスに乗れない悪夢。」
A君
『かもなー。』
『非モテが苦しくないヤツは、悪夢を見ないが次のバスに乗れない。』
『非モテが苦しいならモテろ。次のバスに乗れ。ってことか。』
B君
「きっと、個々の苦しみは考慮されてないんだね。」
A君
『だな。生き残ってるのは”非モテ=苦しい”と感じる連中だけ、か…。』
『神様か何か知らないが、残酷なことをなさる…。』
非モテ談議が落ち着いた矢先、
バスのライトが彼らを照らしました。
A君
『おっと、バスが来た。』
『じゃ、僕らはこれに乗るわ。きみは?』
B君
「僕は別のバスに乗るよ。」
A君
『1人で?』
B君
「うん、1人で。」
A君
『そっか。今日はありがとう。』
『おかげで、1人でいるヤツをハブるようなマネをしなくて済みそうだ。』
B君
「お役に立てて何より。」
A君
『きみは新しいグループを作らないのか?』
B君
「どうかな…当分は1人で気楽にやるよ。」
(もう…全滅なんて見たくないから…。)
A君
『(ニヤニヤ)非モテは苦しいぞー?!』
B君
「わ、わかってるよ!(照)」
「非モテの苦しみとは、うまく付き合っていくよ。」
A君
『まぁ、頑張れよ!(笑)』
『それじゃ、元気でな!”孤独遺伝子”さん?』
ーーーーー
いかがでしたか?
「遺伝子:A君」と「孤独遺伝子:B君」の会話。
人間は、ときに「遺伝子の乗り物」と呼ばれます。
遺伝子は、人間というバスを次々に乗り換え、
生き残ろうとします。
そのバスに乗れないことは、
自身が滅びる恐怖です。
遺伝子はそれを防ぐため、
「孤独=寂しい」「非モテ=苦しい」
と感じさせているのでしょうか。
それは”1人好き”な孤独遺伝子も同じです。
孤独は多少寂しいし、非モテはまぁまぁ苦しいです。
なのに、孤独遺伝子が現代まで生き残っているのは、
「疫病や災害で全滅しないための”粋な計らい”」
…なのかもしれませんね。
ーーーーーENDーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『天に抗うカサンドラ』全3話
【短編小説】『家畜たちはお世話好き』全2話
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「非モテが苦しいのは、生殖に成功した者だけが子孫を残してきたから」
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