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2019年09月21日

世界1周の旅:ヨーロッパ後編D【ブルガリア】ブルガリア国鉄と最悪の一日

A voyage round the world : Europa Edition 2nd part D Burgalian rail and the worst day【6.2011】


【6月6日:ヴェリコ・タルノヴォからブカレストへ移動】

再び列車で、今度はルーマニアの首都ブカレストへ向けて長い旅に出発。国際列車は6人掛けの古いコンパートメント車輛。ガラガラですが…一応指定席。一体何人乗っているんでしょうか?
車窓には緑豊かなブルガリアの大地が広がる。時折り険しい岩山も姿を見せ、意外にも自然の多い雄大なブルガリアという国を感じた。

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ブルガリア国鉄 National rail of Bulgaria

ブルガリアからルーマニアへ移動した日は、稀にみる最悪の一日だった。

朝は8時半から国際列車の切符を買いに出かけたが、なかなかRILA(各種切符等を発売する売店)がみつからず、ⓘに聞こうとしたら9時オープンだからと入れてもらえず、通りがかりの人に聞いてようやくたどり着いたRILAはカフェだと思って通り過ぎていた所で、ドアのはるか上部の端っこに小さくRILAと書いてあった…。なんてわかりにくい!! (私に注意力が足りないだけか?)

何とか無事に切符を購入し、余裕を持って隣り町にある鉄道駅へ行ったのはいいが、掲示板によると乗車予定の13時22分発ブカレスト行き国際列車にいきなり70分の遅れが発生しており、何もないホームで待つこと1時間。

canvas (2).png

一向に列車が来ない、と苛立っていると、同じホームに14時40分発の国境の町ルセ行き普通列車が入線。駅員ほか3,4人であーだこーだと何やら説明してくれるのだが、なにぶん英語が通じないのでよくわからない。
女車掌はこの列車に乗ってルセで乗り換えろと言っているようだし、男性駅員は13時22分の便は運休で後続の15時22分に振替になったからそれを待て、ということらしくて、席の指定も取ってあることだし待合室で待つことにしてホールへ戻ると、遅れが70分から120分になっていた…。

英語の案内などあるはずもなく、情報は皆無に近い。2時間後の3時半頃、予定の列車がやっと入線し乗り込んだはいいが、30分も走らずに小さな駅で停車し更に1時間以上が経ったがその間、英語どころかブルガリア語での説明さえもない。

またしても遅れを増したブカレスト行きの列車は、再び国境手前の駅ルセに着く前に止まってしまい、何もない場所で更に散々待たされた挙句、隣りのレールに滑り込んできた列車へ移れと追い立てられた。どうやら全ての遅れは車輛故障のせいらしい。
P1040424.JPG

そこでキレた乗客の一人が駅員と激しい口論を展開。若い女性だったが、堂々と駅員に向かってブルガリア語らしき言語で食ってかかる。その雄姿を見て「エラい、頑張れ〜!」と心の中で拍手喝采を送ったのは私だけではあるまい。


稀にみるアンラッキー・デイ Very rare unlucky day

結局ルセに着いたのは19時半。
予定より3時間の遅れで、今日中にブカレストへたどり着けるのか気を揉んでいると、隣りのホームに止まっている列車がブカレスト行きなので乗り換えろとまたしても追い立てられ、インターナショナル車輛に乗っていた乗客は、それぞれの荷物を苦労してその列車から降ろし、再び別の車両に乗り込んだ。

といっても驚くべきことに私の他には、途中駅で駅員と一戦交えた勇ましいルーマニア人のお姉さんと、若いカップル一組、中国人の若い男女一組と、小汚いオヤジ一人、の7人しかその車両には乗っていなかったのだが。

そして列車は一向に動く気配はなく、もちろん案内放送も一切ない。不安になって駅の窓口に確認に行くと、なんとその列車の出発予定時刻は夜中の3時!代替車輛ではなく、単に次の列車だったらしい。ひどい話だ…。謝罪や説明が一切なく、料金の払い戻しもなく一方的に国際列車が打ち切りなんて!

ブルガリア国鉄には二度と乗るもんかと思って、日本語で駅員相手に罵詈雑言を吐くが、ブルガリアの地においては負け犬の遠吠えでしかない

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幸い7人とも英語が話せたので、皆で協力して情報を交換したところ、バスに乗り換えようにも本数が少なく、その日の最終便はすでに出てしまっていること、やはりブカレスト行きの列車は夜中の3時まで出ないことがわかった。

ブカレストのホテルを予約してあるのにどうしよう、と途方に暮れていると、ルーマニア人のタフなお姉さんがタクシーに分乗してブカレストへ向かうことを提案。
ルーマニア、ブルガリア国境からブカレストまでは車で約2時間。お金もかかるが、今日中にブカレストに着きたい人がほとんどで、これまたお姉さんが捕まえてきたタクシー・ドライバーと交渉し、2台に分乗してブカレストへ向かうことになった。

中国人だと思っていた後頭部の寂しくなったオヤジは実は日本人で、呂律の回らない自称列車オタクの彼は、4か月かけてイスタンブールからオリエント急行の走った鉄路をたどる旅をしていて、どうしても鉄道でロンドンまで行きたいからと、夜中の3時発車予定の列車に留まった。

親切に私のスーツケースを持って駅構内の階段を昇り降りしてくれた香港から来た男の子(錦戸亮似のイケメン)とちょっとフシギちゃん系の女の子のバックパッカー・カップルは、直接ブカレストの空港に向かうとのことで別のタクシーへ、私はルーマニア人3人と共にもう一台のタクシーに乗り込んだ。

ブカレストで働く勇ましいお姉さんカサンドラ。ブカレストから列車を乗り継いでルーマニアの地方へ帰るというベン・アフレック似のお兄さんと、焦げ茶色のフワフワ髪をした可愛い声の天使みたいな彼女。そして日本からの童顔の旅人、私の4人である。

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途中眠ってしまったカップルをよそに、助手席に座りながらも好奇心旺盛に後部座席の私を振り返って話を聞きたがるカサンドラと楽しい会話をしながらの車中旅となった。

左:タクシーで越えたブルガリアとルーマニアの国境に流れるドナウ川に架かる大きな橋。目の前にルーマニア国境の看板が迫る。


そして21時頃、ようやくタクシーはブカレスト市内へ入り、ブカレスト滞在中に何かあったら連絡して、と携帯電話番号を教えてくれたカサンドラは、街の中心部で下車していった。

鉄道駅のすぐ裏側に位置するビジネス・ホテルに辿り着いたのは夜の9時半。30レフ(約1,800円)という余計な出費と信じがたい忍耐を強いられた長い一日もようやく終わった、と思った私は甘かった…。不運は重なって襲ってくるものである。

チェックインを終えて部屋に入った途端、いきなり電気が消え辺りは暗闇に。なんと停電が起こったのである。アンビリーバブル!

しかも暗くて室内の様子がわからず、カーテンを踏んで壊してしまった。(翌朝見ると、安ホテルだからか紙でできたヤワなカーテンだった。)踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと。お腹も空いていたし、シャワーで汗を流したりしたかったが、停電ではそれも叶わず、もう寝るしかないと疲れた体をベッドに投げ出した、散々な夜。
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久々に何もかもツイていなくて、イライラしてムカついた一日だった。せめてもの救いは、英語の達者なルーマニア人や中国人たちが親切に声をかけてくれ、不運を乗り切る仲間に恵まれたことだ。カサンドラは自立した若い女性で、本当に頼りになる気風のいいお姉さんだった。

あの日は真っ暗闇の中、横たわったベッドの上で相当落ち込んだが、帰国して数年経った今思うと、これも懐かしく微笑ましい思い出である。

『ヨーロッパ後編Eチャウシェスクの夢と野望の跡ブカレスト』へつづく…
タグ:鉄道
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