2019年01月17日
スペイン巡礼㉙ 32日目:陽気なワイルド・ガール、ジュリアとのさよなら
Pilgrimage in Spain ㉙ Day32: When the time to say good-bye to sunny wild girl Julia【5.2011】
5月2日(巡礼32日目) O Cebreiro オ・セブレイロ 〜 Triacastela トリアカステラ (21km)
「雲上の世界で迎える朝 The morning in the world above clouds 」
晴天の翌朝、セブレイロは雲海の上にあった。
見渡す限りの白く輝く雲海の間から、山々の峰がわずかに顔をのぞかせている。こんな天に近い場所まで、昨日わずか4時間たらずで登ってきたんだなぁ、と思うと感慨深い。
ジュリアと言葉少なにライクン(神苔)に覆われた美しい森の木々をゆっくりと眺めながら、セブレイロの頂上尾根を堪能して歩く。朝露に光る森は、そこここから太陽に照らされて霞のような水蒸気を立ち昇らせ、この森は生きているだと実感させた。
昨日泊まったセブレイロのアルベルゲは巨大だったが、ほぼ満員だった。
サンティアゴに近付くにつれて人が増えている気がする。昨日ジュリアは、フランスから歩き始めた頃に一緒だった人々の何人かと嬉しい再会に盛り上がっていたが、残念ながら私は懐かしい顔には全く会えなかった。
ヤンはもうずっと先へ行ってしまったのだろうか。
やはりレオンに2泊したのは失敗だったかな、と今更ながら後悔の念に襲われる。
けれど、レオンで新しい靴下と雨合羽をゲットできたからこそ、無事に雨のセブレイロを越えられたのだと思うことにして自分を納得させた。
事実、雨の多いガリシアでは、バックパックもすっぽり覆ってくれ、踝まで完全に隠してくれる巨大な青い雨合羽は快適で、非常に役に立った。
「楽しい連れとも別れていくのがカミーノ
Camino which have to say good-bye to funny friend」
懐かしい顔には会えなくても、私にはジュリアという楽しい道連れがいた。
それだけでとてもラッキーなことだ。一人で頼むには勇気のいるプラトス・コンビナードス(巨大なビーフステーキとLサイズポテトのランチセット)をジュリアと二人ならオーダーでき「あの子一人であんなの食べてる〜」と思われているのかな、と自虐的な妄想に駆られなくても済むのはありがたかった。
一方でジュリアは、ロシア人ながらテントで寝泊まりしているような自然児というか、いわば野生児なので、とてもゴーイング・マイウェイな性格。ずっと一緒に歩いていたら多分、彼女に合わせるために疲れてしまうだろうな、とも容易に想像できた。
その頃、手をつないで歩いているドイツ人の若いカップルに出会う機会が何回かあった。
会うたびに「また会ったね」とはにかみながら微笑んでくれる感じの良いその二人は婚約中なのだそうだ。二人でカミーノを共に歩き通せたら、間違いなく結婚すべきだと思った。
汗だくで埃まみれになって歩きながら、楽しいことばかりではなく、時には土砂降りに当たったり道を間違えたりして、不機嫌になったりつらいこともたくさん起こるカミーノでは、繕わないその人の本当の姿が出る。それでもこの先の人生を共に歩んでいきたいと思えるのなら、その愛は本物だ。結婚前に二人で一緒にカミーノを歩くことは、一種のトライアルにもなるのではなないだろうか。
私は、といえば本来一人で気ままに行動したい人間なので、無事にセブレイロを下山し、再びテント生活に戻るジュリアとその夜トリアカステラのアルベルゲに着いた時点でさよならをするのは、丸二日間楽しい時を過ごした後だけに寂しかったが、同時にどこかでほっとしてもいた。やはり他人に合わせることに慣れていないのだ。しかし、よく喋りよく歌う子だったなぁ。
神様、厳しいセブレイロ峠越えに合わせてジュリアと出会わせてくれて、本当にありがとう。お父さん、お母さん、楽しい連れを送ってくれて、本当にありがとう。ジュリア、私と歩いてくれて、本当にありがとう。
夕方から再び激しい雨が降り始め、ジュリアのテントが流されたりしていませんように、と祈りながら窓の外を眺めていた。
左:雨で、牛舎の周囲はぬかるんで歩くのが大変…牛さん達の邪魔をしないようにそろそろと歩く。
右:サラダとフライドポテト、ガッツリ肉がセットになったプラトス・コンビナードス。目玉焼きが付いていることも。
3時頃にプラトス・コンビナードスという多すぎる食事を摂ってしまったので、夕飯はスーパーで買ったバナナだけだな、と思っていたら、オーストラリアから歩きに来たというご夫婦に、ツナパスタが余ったから食べないかとキッチンでご馳走にあずかり、お腹一杯。
とても美味しかったのだが、ああ、これでは一向に痩せられない。歩き始めて一週間経った頃はお腹がまっ平だったのに、いつの間にか巡礼を始める以前よりもお腹が出ている気がする…。歩いてお腹がすくからついつい食べてしまうのだが…うーん、悩ましい
5月3日(巡礼33日目) Triacastela トリアカステラ 〜 Samos サモス (9km)
「ちょっと、休憩 Let's have a break...」
昨日ついにきた生理痛が激しく、トリアカステラから9キロのサモスでストップしオスタルに泊まる。
セブレイロを越えるのを見計らったように遅れてきてくれてありがとう!私の身体ってすごい!
この日の道は、ひたすら小川のそばの緑のトンネルのような道が続き、蚊の攻撃から肌を守るのに必死で余計疲れた。だから、修道院の威容を見下ろす丘に出た時には「ああ、もう今日はダメだ〜」と思ってしまったんだなぁ…。
サモスの修道院は巡礼を描いたフランス映画「サン・ジャックへの道」に登場したので内部を見たかったのだが、シエスタの最中で閉まっていた。アルベルゲにもなっているので、生理じゃなければここに泊まったんだけどな、残念。
でもオスタルに併設のレストランでは、久々にスパゲティを食べた後に光の差し込む暖かい部屋でお昼寝もして、何となく贅沢な日になったから良しとしよう。時にはこんな日も必要だよね、うん。
5月2日(巡礼32日目) O Cebreiro オ・セブレイロ 〜 Triacastela トリアカステラ (21km)
「雲上の世界で迎える朝 The morning in the world above clouds 」
晴天の翌朝、セブレイロは雲海の上にあった。
見渡す限りの白く輝く雲海の間から、山々の峰がわずかに顔をのぞかせている。こんな天に近い場所まで、昨日わずか4時間たらずで登ってきたんだなぁ、と思うと感慨深い。
ジュリアと言葉少なにライクン(神苔)に覆われた美しい森の木々をゆっくりと眺めながら、セブレイロの頂上尾根を堪能して歩く。朝露に光る森は、そこここから太陽に照らされて霞のような水蒸気を立ち昇らせ、この森は生きているだと実感させた。
昨日泊まったセブレイロのアルベルゲは巨大だったが、ほぼ満員だった。
サンティアゴに近付くにつれて人が増えている気がする。昨日ジュリアは、フランスから歩き始めた頃に一緒だった人々の何人かと嬉しい再会に盛り上がっていたが、残念ながら私は懐かしい顔には全く会えなかった。
ヤンはもうずっと先へ行ってしまったのだろうか。
やはりレオンに2泊したのは失敗だったかな、と今更ながら後悔の念に襲われる。
けれど、レオンで新しい靴下と雨合羽をゲットできたからこそ、無事に雨のセブレイロを越えられたのだと思うことにして自分を納得させた。
事実、雨の多いガリシアでは、バックパックもすっぽり覆ってくれ、踝まで完全に隠してくれる巨大な青い雨合羽は快適で、非常に役に立った。
「楽しい連れとも別れていくのがカミーノ
Camino which have to say good-bye to funny friend」
懐かしい顔には会えなくても、私にはジュリアという楽しい道連れがいた。
それだけでとてもラッキーなことだ。一人で頼むには勇気のいるプラトス・コンビナードス(巨大なビーフステーキとLサイズポテトのランチセット)をジュリアと二人ならオーダーでき「あの子一人であんなの食べてる〜」と思われているのかな、と自虐的な妄想に駆られなくても済むのはありがたかった。
この日もジュリアはテンプル騎士団にいかにロマンを感じるかについて熱く語ったり、自作の詩を読んでくれたりしながら歩いていた。話していないときは、たいてい歌っていて、長らく一人で歩いてきた私に、誰かと歩く楽しさを思い出させてくれた。 |
一方でジュリアは、ロシア人ながらテントで寝泊まりしているような自然児というか、いわば野生児なので、とてもゴーイング・マイウェイな性格。ずっと一緒に歩いていたら多分、彼女に合わせるために疲れてしまうだろうな、とも容易に想像できた。
その頃、手をつないで歩いているドイツ人の若いカップルに出会う機会が何回かあった。
会うたびに「また会ったね」とはにかみながら微笑んでくれる感じの良いその二人は婚約中なのだそうだ。二人でカミーノを共に歩き通せたら、間違いなく結婚すべきだと思った。
汗だくで埃まみれになって歩きながら、楽しいことばかりではなく、時には土砂降りに当たったり道を間違えたりして、不機嫌になったりつらいこともたくさん起こるカミーノでは、繕わないその人の本当の姿が出る。それでもこの先の人生を共に歩んでいきたいと思えるのなら、その愛は本物だ。結婚前に二人で一緒にカミーノを歩くことは、一種のトライアルにもなるのではなないだろうか。
私は、といえば本来一人で気ままに行動したい人間なので、無事にセブレイロを下山し、再びテント生活に戻るジュリアとその夜トリアカステラのアルベルゲに着いた時点でさよならをするのは、丸二日間楽しい時を過ごした後だけに寂しかったが、同時にどこかでほっとしてもいた。やはり他人に合わせることに慣れていないのだ。しかし、よく喋りよく歌う子だったなぁ。
神様、厳しいセブレイロ峠越えに合わせてジュリアと出会わせてくれて、本当にありがとう。お父さん、お母さん、楽しい連れを送ってくれて、本当にありがとう。ジュリア、私と歩いてくれて、本当にありがとう。
夕方から再び激しい雨が降り始め、ジュリアのテントが流されたりしていませんように、と祈りながら窓の外を眺めていた。
左:雨で、牛舎の周囲はぬかるんで歩くのが大変…牛さん達の邪魔をしないようにそろそろと歩く。
右:サラダとフライドポテト、ガッツリ肉がセットになったプラトス・コンビナードス。目玉焼きが付いていることも。
3時頃にプラトス・コンビナードスという多すぎる食事を摂ってしまったので、夕飯はスーパーで買ったバナナだけだな、と思っていたら、オーストラリアから歩きに来たというご夫婦に、ツナパスタが余ったから食べないかとキッチンでご馳走にあずかり、お腹一杯。
とても美味しかったのだが、ああ、これでは一向に痩せられない。歩き始めて一週間経った頃はお腹がまっ平だったのに、いつの間にか巡礼を始める以前よりもお腹が出ている気がする…。歩いてお腹がすくからついつい食べてしまうのだが…うーん、悩ましい
5月3日(巡礼33日目) Triacastela トリアカステラ 〜 Samos サモス (9km)
「ちょっと、休憩 Let's have a break...」
昨日ついにきた生理痛が激しく、トリアカステラから9キロのサモスでストップしオスタルに泊まる。
セブレイロを越えるのを見計らったように遅れてきてくれてありがとう!私の身体ってすごい!
この日の道は、ひたすら小川のそばの緑のトンネルのような道が続き、蚊の攻撃から肌を守るのに必死で余計疲れた。だから、修道院の威容を見下ろす丘に出た時には「ああ、もう今日はダメだ〜」と思ってしまったんだなぁ…。
サモスの修道院は巡礼を描いたフランス映画「サン・ジャックへの道」に登場したので内部を見たかったのだが、シエスタの最中で閉まっていた。アルベルゲにもなっているので、生理じゃなければここに泊まったんだけどな、残念。
でもオスタルに併設のレストランでは、久々にスパゲティを食べた後に光の差し込む暖かい部屋でお昼寝もして、何となく贅沢な日になったから良しとしよう。時にはこんな日も必要だよね、うん。
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