2018年10月07日
スペイン巡礼記 L 10日目:これぞカミーノ!幸せな道
Pilgrimage in Spain L Day:10 This is Camino! Happy road 【4.2011】
4月10日(巡礼10日目) Ciruena シルーニャ 〜 Viloria de Rioja ヴィロリア・デ・リオハ (20km)
「サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへの浄化の道
The road of purification to Sant Domingo de la Carsada」
シルーニャからサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへの5.5キロは素晴らしい道のりだった。
シルーニャの村を抜けるとすぐに道は緑の丘の間を縫うように進み始めた。霧が出て辺りを覆い、幻想的な異空間を作り出していた。前後を歩く人の姿も見えず、時おり視界に入る遥か向こうの山並みは神々しく、どこまでも果てしなく続くかのような緑の谷間。
出発した時から今にも雨粒が落ちてきそうな雲が低く垂れこめた灰色の空だったのだが、やはり途中から霧雨になり、サント・ドミンゴ・デラ・カルサーダの町に入る頃には、ついに傘をささなければならないほどの降り方になってしまった。
雨が激しく降っている間、ちょうど通りかかったサント・ドミンゴ・デラ・カルサーダのアルベルゲで雨宿りさせてもらい、1時間半後に再び歩き出す。
なのでやっと辿り着いたアルベルゲの入口でリュックを放り出すなり倒れそうになっていると、オーナーの男性が走ってやってきて片手で私の荷物を持ち、片手で私を支えながらベッドへ連れていってくれた。
「グラシアス」とだけ言うのが精一杯の私に「とにかく休みなさい」と言ってオーナーは戻っていった。そして私はほとんど荷物も解かないままリュックから引っ張り出した寝袋にくるまり、やっと体を横たえることができたのだった。
暖かいもてなしのアルベルゲ An albergue of warm hospitality
ヴォロリア・デ・リオハのそのアルベルゲは、巡礼中知り合い結婚したブラジル人とイタリア人のご夫婦が営んでいた。必死に歩き続け、やっと辿り着いたこの家庭的なアルベルゲのダイニング兼リビング・ルームでは明々と暖炉に火が燃えていて暖かく、止まりそうになっていた私の心臓を再び動かしてくれた。
そして夕食は宿泊者全員で一つのテーブルを囲むスタイル。オーナー夫妻から始まって全員が簡単な自己紹介をして、温かいクリームスープや豆とライスの煮込み、サラダなどで心も体も温まる家庭的な時を過ごした。
通常アルベルゲでは料金が決まっているのだが、ここではドネイション(寄付)ということになっていたので、心置きなく全員が温かい食事にありつけるのだった。
コーヒーやココア、ティーなどが常に用意されているフリー・ドリンクもこの宿のホスピタリティの一つだ。公営と違って私営のアルベルゲは、ここのご夫婦のようにカミーノを歩くことで人生が変わった人々が個人の意思で運営していることが多いので、ホスピタリティ溢れる家庭的な宿が多いのだ。
というのも、ドイツから来ている大学生の女の子が英語もスペイン語も堪能で、通訳代わりになって私も会話に加われるよう配慮してくれたからだ。メキシコから来たガハハ、としわがれ声でよく笑う豪快なお姉さんは私の年齢に興味津々で、歳を聞いて目を丸くしていた。そして肩が痛いという私に「よく効くわよ〜!」と薬を塗ってくれた。彼女とはこの先何度か再会することになる。
翌朝、奥さんが私のリュックを調整してくれた。何の知識もなく自己流で背負ってきたので、だいぶ肩に負担がかかっていたらしい。
お腹に合わせてリュックをできるだけ上部にくるよう背負い、お腹と腰骨で支え肩にかかる負担を減らすその調整が功を奏したのか、翌日は休みなしで16キロも歩いてしまった。もう無理、と思ってもバルでお腹を満たし、少し休むときちんと回復して歩き出せる自分がいることに驚かされる。
この宿で、私は初めて犬連れの男性と出会った。しっかりと小さなリュックを背中に巻き付けたブルドックと共に歩いていたのは、南米のコロンビアから来たというガブリエル。
翌日、リュックを調整してもらった私は軽快に歩いていたので、ランチのバルで追いついてきたガブリエルに、「君、意外と歩くの早いんだね。すぐに追いつけると思ったのに」と驚かれた。
★スペイン巡礼記Mへ続く…
(表題上部の>>をクリックしてください)
4月10日(巡礼10日目) Ciruena シルーニャ 〜 Viloria de Rioja ヴィロリア・デ・リオハ (20km)
「サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへの浄化の道
The road of purification to Sant Domingo de la Carsada」
シルーニャからサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへの5.5キロは素晴らしい道のりだった。
シルーニャの村を抜けるとすぐに道は緑の丘の間を縫うように進み始めた。霧が出て辺りを覆い、幻想的な異空間を作り出していた。前後を歩く人の姿も見えず、時おり視界に入る遥か向こうの山並みは神々しく、どこまでも果てしなく続くかのような緑の谷間。
それは、体の中の黒く絡まった糸が一本ずつスルッと抜け出ていくような、浄化を感じる道だった。 うっすらとした霧に包まれ、しっとりと湿った空気の中を、私はひとり恍惚として歩いていった。 黄色い矢印がほとんどなかったにもかかわらず、「まっすぐこの道を行けばいい」と分岐路に立つたびに誰かが心に囁いてくれた気がする。 |
出発した時から今にも雨粒が落ちてきそうな雲が低く垂れこめた灰色の空だったのだが、やはり途中から霧雨になり、サント・ドミンゴ・デラ・カルサーダの町に入る頃には、ついに傘をささなければならないほどの降り方になってしまった。
雨が激しく降っている間、ちょうど通りかかったサント・ドミンゴ・デラ・カルサーダのアルベルゲで雨宿りさせてもらい、1時間半後に再び歩き出す。
雨が降ったり止んだり、時には晴れ間ものぞいたりと、殺人的な暑さとは無縁の日だったが、20キロの道のりはやはりつらかった。肩の痛みが足よりもひどく、長時間パソコンに向かった日の凝り固まった肩の感じだ。 ラスト2キロ(自分の感覚では3キロ位に感じた)は泣きたい気持ちを抑えるために、工藤静香などを歌いながら上り下りの激しい田舎道を歩いていたのだが、だんだん頭に酸素がいかなくなり、最後はほとんど呼吸困難状態で歩いていた。 |
なのでやっと辿り着いたアルベルゲの入口でリュックを放り出すなり倒れそうになっていると、オーナーの男性が走ってやってきて片手で私の荷物を持ち、片手で私を支えながらベッドへ連れていってくれた。
「グラシアス」とだけ言うのが精一杯の私に「とにかく休みなさい」と言ってオーナーは戻っていった。そして私はほとんど荷物も解かないままリュックから引っ張り出した寝袋にくるまり、やっと体を横たえることができたのだった。
暖かいもてなしのアルベルゲ An albergue of warm hospitality
ヴォロリア・デ・リオハのそのアルベルゲは、巡礼中知り合い結婚したブラジル人とイタリア人のご夫婦が営んでいた。必死に歩き続け、やっと辿り着いたこの家庭的なアルベルゲのダイニング兼リビング・ルームでは明々と暖炉に火が燃えていて暖かく、止まりそうになっていた私の心臓を再び動かしてくれた。
そして夕食は宿泊者全員で一つのテーブルを囲むスタイル。オーナー夫妻から始まって全員が簡単な自己紹介をして、温かいクリームスープや豆とライスの煮込み、サラダなどで心も体も温まる家庭的な時を過ごした。
通常アルベルゲでは料金が決まっているのだが、ここではドネイション(寄付)ということになっていたので、心置きなく全員が温かい食事にありつけるのだった。
コーヒーやココア、ティーなどが常に用意されているフリー・ドリンクもこの宿のホスピタリティの一つだ。公営と違って私営のアルベルゲは、ここのご夫婦のようにカミーノを歩くことで人生が変わった人々が個人の意思で運営していることが多いので、ホスピタリティ溢れる家庭的な宿が多いのだ。
そんな宿なので、自然に宿泊者同士も気さくに親しめる雰囲気になる。奥さんが夕食の準備をしている間、暖炉を囲んで思い思いに時間を過ごしながら、メキシコ人やブラジル人といったスペイン語圏の人々の話に耳を傾ける。 |
というのも、ドイツから来ている大学生の女の子が英語もスペイン語も堪能で、通訳代わりになって私も会話に加われるよう配慮してくれたからだ。メキシコから来たガハハ、としわがれ声でよく笑う豪快なお姉さんは私の年齢に興味津々で、歳を聞いて目を丸くしていた。そして肩が痛いという私に「よく効くわよ〜!」と薬を塗ってくれた。彼女とはこの先何度か再会することになる。
翌朝、奥さんが私のリュックを調整してくれた。何の知識もなく自己流で背負ってきたので、だいぶ肩に負担がかかっていたらしい。
お腹に合わせてリュックをできるだけ上部にくるよう背負い、お腹と腰骨で支え肩にかかる負担を減らすその調整が功を奏したのか、翌日は休みなしで16キロも歩いてしまった。もう無理、と思ってもバルでお腹を満たし、少し休むときちんと回復して歩き出せる自分がいることに驚かされる。
この宿で、私は初めて犬連れの男性と出会った。しっかりと小さなリュックを背中に巻き付けたブルドックと共に歩いていたのは、南米のコロンビアから来たというガブリエル。
翌日、リュックを調整してもらった私は軽快に歩いていたので、ランチのバルで追いついてきたガブリエルに、「君、意外と歩くの早いんだね。すぐに追いつけると思ったのに」と驚かれた。
★スペイン巡礼記Mへ続く…
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