2019年11月16日
ローマ in『天使と悪魔』
『天使と悪魔 Angels & Demons』 (2009/米 ロン・ハワード 監督) 『ダ・ヴィンチ・コード』に続くダン・ブラウン原作のラングドン教授シリーズ映画化第二弾。秘密結社イルミナティの陰謀を阻止すべく、新教皇を選出するコンクラーベの最中に、ラングドンが謎を解き明かしながら、今度はローマとヴァチカン市国を奔走する。 |
ヴァチカン転覆を目論む秘密結社イルミナティが、強大な破壊力を持つ反物質を仕掛けた。爆発のタイムリミットが迫る一方で、新教皇の選出を控えたヴァチカンから枢機卿4人が拉致され、殺害予告がもたらされる。ラングドン教授は科学者ヴィットリアの協力を得て、殺害予告に書かれた謎を解きながら枢機卿たちを救うためにローマの街を東西南北走り回る。
ダン・ブラウンの最高傑作といわれる『天使と悪魔』はローマが舞台。現地で催行されている、原作をベースにした「天使と悪魔公式ツアー」に参加したら、謎解き要素満載で面白いだろう。
ロケ地巡りが楽しい映画
十字架=4代元素=東西南北と謎を解き明かしながらまず最初に向かったのが4代元素の「土」を表す「サンタ・マリア・デル・ポポロ教会」内にある、ラファエロが設計した「キージ礼拝堂」。目の前のポポロ広場にはオベリスクが立ち、広場の入口であるポポロ門の最上部にある彫刻は、フリーメイソンのシンボルとの共通性が語られる。
次の「風(空気)」に当たるのがカトリック教会の総本山、サン・ピエトロ大聖堂の前に広がる、楕円形の広場、「サン・ピエトロ広場」。
広場は、左右に2列、計284本の柱が支える回廊に囲まれている。大聖堂はミケランジェロの設計だが、広場はベルニーニの設計。広場内のある一点に立つと、微妙にずれて配置された周囲の2列の柱が1列に重なって見える。 |
大聖堂に向かって右に隣接するのがシスティーナ礼拝堂で、教皇の選挙「コンクラーベ」の際には、礼拝堂の煙突から上がる煙の色で、結果が知らされる。この広場には、『天使と悪魔』でも重要な役割を果たす、教皇警護のスイス衛兵隊が私服で任務にあたっている。
「火」に当たる「サンタ・マリア・デッラ・ビットリア教会」でもわずかの差で枢機卿を救うことができず、最後に向かったのが「ナヴォーナ広場」にあるベルニーニの代表作である「四大河の噴水」。 |
ローマでも最も人気の高い観光スポットである「パンテオン」も、しっかり映画に登場する。7つの壁龕と8つの小祭壇があり、イタリア国王やラファエロの棺が収められている。 |
そのラファエロのラストネーム「サンティ」は『天使と悪魔』の重要なキーワードとなる。パンテオンは世界最大の石造り建築で、現存するローマ建築のなかで、原型を完全にとどめている遺構のひとつ。ローマ最古のカトリック教会堂と言われる。球形の天井にある直径9mの天窓から太陽光が降り注ぐ様は神々しい。
最後の舞台は「サンタンジェロ城」。テヴェレ川に掛かるサンタンジェロ橋には、天使の像が並び、そのうち2体はベルニーニがデザインしたもの。サンタンジェロ城は橋の正面に位置するので、橋の上から城の真上に立つ天使像を見ると、やはり何か得体のしれないゾクゾク感に体が震える、特別な城、というより要塞だった。2世紀にローマ皇帝の霊廟として建てられ、その後は要塞、教皇の避難場所、教会に背いた者の牢獄と、多くの役割を担ってきた。
ローマの人口の半分がペストで亡くなった590年、ここに大天使ミカエルが現れ、剣を鞘に収めて疫病の終息を告げたと言われる。城壁の上にはヴァティカンと直結する避難通路があり、度重なる修繕によって、城内には無数の隠し部屋や秘密の入口が存在するとの噂もある。敷地が五芒星の形をしているのも特徴的だ。
映画を見てから本を読むことをお勧めします
ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂内や警護隊の仕事、コンクラーベの様子など、貴重な内情が見られるのもこの映画の魅力。ラファエロ、ミケランジェロ、ベルニーニと、歴史的な芸術家たちの作品群がこれでもかと登場するこの映画、歴史好きにもミステリー好きにもたまらないはずだ。
『ダ・ヴィンチ・コード』の記事でも書いたが、本を読んでしまうとどうしてもトム・ハンクスがピンと来ない…。それでも前作よりも身体を絞って、ハンサム感を出そうといういう努力はさすがトム・ハンクス。
相棒となるヴィットリア役のイタリア人女優アイェレット・ゾラーは、スラリとした才色兼備で説得力あり。
今回重要な役回りのカメルレンゴ役ユアン・マクレガーも原作のイメージではないけれど、終始神父のような黒服で意外な一面を覗かせていて、ファンなら楽しめるはずだ。警備隊長役のステラン・スカルスガルドは私にとって、遠藤憲一のような悪役も憎めないコミカル・キャラもできる稀有な俳優。『マンマミーア』でのファンキーなオッサンからは程遠い悪役面で演じてましたねー。細かい所では刑事役のピエルフランチェスコ・ファビーノが、濃いけど意外に渋い。(実はタイプ最近こういうセクシーなオヤジ系に惹かれる傾向が強くなっている…)
映画は約2時間に全てを詰め込まなければならないので、どうしてもこういった謎解きモノの場合、細部を端折らなければならず、小さなエピソードが削られたりする。そのため原作を先に読んでしまうと「あれ、あのシーンがない」とか「あ、そういうことにしちゃうんだ?」みたいな箇所がたくさん出てきて、気になって仕方がないので、先に映画を見てから原作を読むことをお勧めします。
フィクションとはいえ、イルミナティが実在することは世に広く知られていることであり、彼らがどんな思想を持って何をしようとしているのか、興味のある人には、爆発や殺人までのタイム・リミットとの闘いの中での緊迫感あふれる展開とともにスリリングで、楽しめる映画だと思う。
何はともあれ、ローマへ行く前にまず一度見て、旅行から戻ったらもう一度見直したくなるような、ローマとヴァチカンが主役の映画だといえる。
★ローマを旅した記事『そしてローマで途方に暮れる…』はこちら。
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