2021年08月21日
シントラ in『ポルトガル、夏の終り』
★シントラの幻想的風景が主役の映画
『ポルトガル、夏の終り Frankie』
【見どころ】
ズバリ、シントラの風景が主役と言ってもいいだろう。
おとぎ話の中に迷い込んだようなメルヘンチックな家々が並ぶ旧市街、そして緑滴る森の中、海を見下ろすペニーニャ山頂と、「ポルトガルで最もロマンティックな町」と呼ばれ、詩人バイロンが「エデンの園」と称した世界遺産、シントラの町が余すところ無く映し出される。
その美しい風景の中で、自分が世界の中心だと信じているようなフランキーの「家族を幸せにしたい」という思惑に翻弄される家族たち。誰もが愛を求め、裏切られ、また愛にすがるという空回りが、リアルな人生を思わせる。圧倒的に美しい風景の中では、大切なことを伝えるのに、時に言葉は必要ないと感じさせるラストが秀逸。
そして、ヒロインの女優であるフランキーを演じたフランスを代表する女優イザベル・ユペールが、シックで鮮やかなファッションに身を包み、死にゆく女優の人生を体現してみせる。
家族って、いろいろあるよね
ガンが再発して死期を悟った女優のフランキーが、家族をポルトガルのシントラに集めてバカンスを過ごすのだが、夫と義理の娘夫婦、その若い娘、フランキーの息子、元夫、そしてアメリカ人の親友と、それぞれがフランキーの思いに反して衝突する様が、どこの家族もそれぞれ複雑だよね、という「あるある」に溢れている。
義理の娘は密かに離婚を進めているし、その若い娘はトラムで海までひとり出かけていって、ちゃっかり1日の恋を楽しんじゃうし、息子とマッチングさせようと思ってアメリカから呼んだ親友のアイリーン(マリサ・トメイ)は恋人と一緒に来てるし、終盤は思いも寄らない二人が近づいていきそうだし、人生そう思惑どおりにはいかないよねと、フランキーではないが、ため息をつきたくなってくる。
死ぬまで現役
しかし、印象的なのはやはり、西洋人というのは死ぬまで恋愛に関して現役だということだ。
若い娘からフランキーら祖父母世代まで、全員が色恋沙汰で右往左往している。「愛」は普遍のテーマとはいえ、恋愛と人生を分けて考えがちな日本人から見ると、「恋愛=人生」の西洋人はとてもバイタリティがあるように感じる。
「探す前に発見せよ Find it before you look for it.」
これは誰か有名な作家の言葉らしいが、「一生パートナーを探し続けそう」だとボヤく親友アイリーンに、フランキーが言うセリフだ。深い…。そしてアイリーンのボヤきにも納得。
イザベル・ユペールという大女優
霧が緑を包みこむシントラ独特のしっとりした雰囲気がよく出ていて、圧倒的な緑がなんとも言えず美しく、その瑞々しさが伝わってくるような画面だった。
だからこそなのか、イザベル・ユペールの衣装は鮮やかでセンスが良く印象的だが、なんと彼女のアップが一度もない!
イザベル・ユペールだよ?
あの、「フランスの大竹しのぶ」とでも呼べそうなカメレオン女優、どんな役もあの鉄仮面で説得力を持って演じられる、フランスのアカデミー主演女優賞であるセザール賞のノミネート最多を誇る『ピアニスト』のイザベル・ユペールだよ?!
景色が主役と言わんばかりに、ラストも山頂に家族を集まらせておいて何も話すことなくすぐ降りてくる遠景ショットのみ。
夕日が照らす海は、ポルトガルの緑野のように、果てしなく茫洋と続いていた…。
『ポルトガル、夏の終り Frankie』
2019 / 仏=葡 監督:アイラ・サックス 【Story】♪迎えた最後の夏。 ポルトガルの世界遺産シントラの町を舞台に、女優フランキーが仕組んだ〈家族劇〉とは−。♪ 癌による死期が迫った女優のフランキーは、バケーションと称して家族と親友をポルトガルのシントラに呼び寄せる。彼女の死後、愛する人たちが幸せに暮らしていけるようなプランを胸に秘めていた彼女だったが、現実はそううまくはいかず…。幻想的なシントラの風景の中で、それぞれの人生が交錯する。 |
【見どころ】
ズバリ、シントラの風景が主役と言ってもいいだろう。
おとぎ話の中に迷い込んだようなメルヘンチックな家々が並ぶ旧市街、そして緑滴る森の中、海を見下ろすペニーニャ山頂と、「ポルトガルで最もロマンティックな町」と呼ばれ、詩人バイロンが「エデンの園」と称した世界遺産、シントラの町が余すところ無く映し出される。
その美しい風景の中で、自分が世界の中心だと信じているようなフランキーの「家族を幸せにしたい」という思惑に翻弄される家族たち。誰もが愛を求め、裏切られ、また愛にすがるという空回りが、リアルな人生を思わせる。圧倒的に美しい風景の中では、大切なことを伝えるのに、時に言葉は必要ないと感じさせるラストが秀逸。
そして、ヒロインの女優であるフランキーを演じたフランスを代表する女優イザベル・ユペールが、シックで鮮やかなファッションに身を包み、死にゆく女優の人生を体現してみせる。
家族って、いろいろあるよね
ガンが再発して死期を悟った女優のフランキーが、家族をポルトガルのシントラに集めてバカンスを過ごすのだが、夫と義理の娘夫婦、その若い娘、フランキーの息子、元夫、そしてアメリカ人の親友と、それぞれがフランキーの思いに反して衝突する様が、どこの家族もそれぞれ複雑だよね、という「あるある」に溢れている。
義理の娘は密かに離婚を進めているし、その若い娘はトラムで海までひとり出かけていって、ちゃっかり1日の恋を楽しんじゃうし、息子とマッチングさせようと思ってアメリカから呼んだ親友のアイリーン(マリサ・トメイ)は恋人と一緒に来てるし、終盤は思いも寄らない二人が近づいていきそうだし、人生そう思惑どおりにはいかないよねと、フランキーではないが、ため息をつきたくなってくる。
死ぬまで現役
しかし、印象的なのはやはり、西洋人というのは死ぬまで恋愛に関して現役だということだ。
若い娘からフランキーら祖父母世代まで、全員が色恋沙汰で右往左往している。「愛」は普遍のテーマとはいえ、恋愛と人生を分けて考えがちな日本人から見ると、「恋愛=人生」の西洋人はとてもバイタリティがあるように感じる。
「探す前に発見せよ Find it before you look for it.」
これは誰か有名な作家の言葉らしいが、「一生パートナーを探し続けそう」だとボヤく親友アイリーンに、フランキーが言うセリフだ。深い…。そしてアイリーンのボヤきにも納得。
イザベル・ユペールという大女優
霧が緑を包みこむシントラ独特のしっとりした雰囲気がよく出ていて、圧倒的な緑がなんとも言えず美しく、その瑞々しさが伝わってくるような画面だった。
だからこそなのか、イザベル・ユペールの衣装は鮮やかでセンスが良く印象的だが、なんと彼女のアップが一度もない!
イザベル・ユペールだよ?
あの、「フランスの大竹しのぶ」とでも呼べそうなカメレオン女優、どんな役もあの鉄仮面で説得力を持って演じられる、フランスのアカデミー主演女優賞であるセザール賞のノミネート最多を誇る『ピアニスト』のイザベル・ユペールだよ?!
景色が主役と言わんばかりに、ラストも山頂に家族を集まらせておいて何も話すことなくすぐ降りてくる遠景ショットのみ。
夕日が照らす海は、ポルトガルの緑野のように、果てしなく茫洋と続いていた…。
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