2020年06月14日
リスクとリターンから見る投資対象の選び方
5月3日の記事『投資で大事な4つの「分散」』でご紹介した中の「資産の分散」「地域の分散」を考える上で考えなければいけない事の一つに「リスク・リターンのバランス」があります。
今回は、投資信託におけるリスク・リターンについての説明と、タイプ別のおすすめポートフォリオ例についてご紹介しようと思います
投資信託における「リスク・リターン」の定義
皆さんはリスク・リターンと聞くと「リスク=損する危険性」「リターン=得られる利益額」のように感じられる方が多いのではないでしょうか?
投資信託におけるリスク、リターンは
リスク⇒分析対象期間における値動きの激しさ
(対象期間中の基準価額のブレを標準偏差で示します。標準偏差とは、あるデータ集団において、「平均値±標準偏差」の幅に約68%の確率でデータが収まることを示すように算出された数値のことです。)
リターン⇒分析対象期間における利益平均値
(対象期間開始時の基準価額を基に対象期間開始と対象期間終了時点の差額を年利換算して示します)
で定義されます。
リターンの方は、皆さんの想像に近しいかと思いますが、リスクの方はちょっとイメージに合わないかもしれません。
具体的に「リスク=5%」「リターン=3%」であるような投資信託があった場合、1年後の損益は約68%の確率で-2%〜+8%の幅に入ると想定されます。
(約68%の確率での値幅を推測する場合、上限値は「リターン+リスク」、下限値は「リターン-リスク」が値幅の目安となります。)
また、「平均値±2×標準偏差」の幅には約95%の確率でデータが収まりますので、95%の確率で見積もった場合の1年後の損益は-7%〜+13%の幅に入ると想定されます。
値動きの大きさであるリスクは、できるだけ低い方が想定外の損失を出す可能性が低く、安心なのですが、一般的にリターンが高い投資信託はリスクも高いと言われています
そこで、リスクとリターンのバランスを見積もるために編み出されたのがシャープレシオという指標です。
シャープレシオは、リターンをリスクで割った指標になり、この数値が大きければ大きいほど、取るリスクに対して得られるリターンが大きく、効率が良いことを示しています
従って、投資信託を選ぶ際の指標の一つとしてシャープレシオの高さを基準にしてみるのも良いかもしれません
(ただし、冒頭にも申し上げましたようにリスクすなわち損する確率というわけではありませんので、若い人など長期で保有することが出来、ある程度の値動きに耐えられるような人はリターン優先で選択しても良いと思います。)
資産・地域ごとのリスク・リターン
資産には、株式、債券、不動産の3種、地域には、日本国内、海外先進国、海外新興国の3種が大きくセクターとして存在します。
そして投資信託のセクターとしては各資産(3種)×各地域(3種)の合計9種が大まかに存在します。
9種のセクターの大まかなリスク・リターンについてemaxisシリーズという三菱UFJ系の投資信託の場合で計算してみた結果が以下の表のとおりです。
三菱UFJ国際投信のemaxisシリーズにおける各地域・各資産に相当する投資信託のリスク・リターン
(リスクは2020/5/8〜3年前まで遡ったデータから、リターンは2013/12/30〜2016/12/30と2016/12/30〜2019/12/30のデータから年利を計算し、それぞれの単純平均をとって計算しています。)
資産・地域毎のリスク・リターンの大きさについては一般的に以下のようなことが言われています。
株式>不動産>債券
新興国>先進国>日本国内
今回実際に計算したデータをみても上記傾向は概ね合っているかと思うのですが、ちょっと違うのは以下の2点でしょうか?
@不動産の方が株式よりハイリスクハイリターン
A新興国資産は全体的にローリターン
@については、日本国内不動産がオリンピックの関係で今回調査した期間の価格が上昇したことが影響しているのではないかと思います。
Aについては、私が常日頃セオリーに対して疑問を抱いていることなのですが、過去のデータをチェックしてみると新興国資産のハイリスクはセオリー通りながら、リターンがセオリー通りとならずローリターンとなっているのは何故でしょうか・・?
(新興国はこれからの成長が期待されるので、まだ花開いていないだけでリターンはこれから出てくるということなのでしょうか??)
前述の資産、地域ごとのリスク・リターンの関係を基に、自分の考え(リスクは極力避けたい、リターンを積極的に取りに行きたい、など)や置かれている状況(余裕資金がたくさんありリスクを取りに行ける、年齢が高く投資期間が短いためあまりリスクを取りに行けない、など)を加味して、投資信託を選定する基準にしていただければと思います
(また、不動産は挙動が安定しないことがあること、新興国は過去のデータだけ見るとまだハイリスク・ローリターンの結果となっていることも頭に入れておいてください。これらのことがあるせいか、複数の資産・地域を混ぜたバランスファンドにおいて不動産資産を除いたり、新興国資産を除いたりしたものを数多く見受けます。)
タイプ別おすすめポートフォリオ
それでは、今まで説明した内容を踏まえて、タイプ別のおすすめポートフォリオをご紹介したいと思います。
(各ポートフォリオにおける想定リスク・リターンの計算には『長期投資予想/アセットアロケーション分析』というサイトのシミュレーション機能を使わせていただきました。)
<タイプ1>
リスクをとにかく抑えたい人
(高齢で長期間の投資が難しい方、性格的にリスクが受け入れにくい方、5年以内に一部取り崩す可能性がある方、など)
国内株5%、国内債券85%、先進国株5%、先進国債券5%で組んでみました。
このポートフォリオのリターンは2.04%、リスクは2.01%です(いずれも年率)
リターンがリスクを上回っていますので、元本割れが非常に発生しにくいです
(元本割れの確率は1年後:15.5%、3年後:3.9%、5年後:1.2%です。)
<タイプ2>
ある程度のリスクを覚悟してでもリターンを重視したい人
(20〜30代くらいでこの先の投資時間が長く持てる人、10年以上取り崩す予定のない人、など)
国内株10%、国内債券5%、先進国株80%、先進国債券5%で組んでみました。
このポートフォリオのリターンは7.86%、リスクは14.73%です(いずれも年率)
日本国内株投資信託単体と同等リスクながら、日本国内株投資信託単体よりリターンを高めることが出来ています
<タイプ3>
中リスク、中リターン程度でリスク・リターンの最適化を図りたい方
国内株20%、国内債券40%、先進国株35%、先進国債券5%で組んでみました。
このポートフォリオのリターンは5.04%、リスクは8.20%です(いずれも年率)
タイプ1、タイプ2のポートフォリオのリスク・リターンのちょうど中間であるリターン4.95%、リスク8.37%と比較して、リターンを上げて、リスクを下げることが出来ています
このように複数の投資信託を組み合わせた際のポートフォリオ全体としてのリスク・リターンは、組み合わせ方によっては、単体の投資信託よりもリスク・リターンのバランスを改善することが出来ます。
何故そのようなことが出来るのかというと、異なるセクターの投資信託は、価格形成においてお互いに何かしらの影響を与え合い、完全に独立した値動きとはならず『相関係数』という指標が関係してくるのですが、詳細については、次回の投資信託コラムの中でご説明させていただきます。
(ちなみに、今回のポートフォリオを検討するにあたってリスク・リターンの算出を行う際には三菱UFJ国際投信が公開しているeMAXISシリーズの相関係数を利用させていただきました。)
まとめ
今回は、「投資信託のリスクとリターンの定義」「資産(株式、債券、不動産)、地域(日本国内、先進国、新興国)の区分ごとのリスク・リターンの傾向」「ポートフォリオを組むことによるリスク・リターンの改善」についてご説明しました。
次回の投資信託コラムでご紹介させていただく内容と合わせて、自分に適したポートフォリオ設計の参考にしていただければ幸いです
なお、初めての方など自分で最適ポートフォリオを組むのが難しいと思われる方は、松井証券の投信工房という無料のシステムを使えば、質問に答えていくだけで、自分に最適なポートフォリオを提案してもらえますので、是非一度お試しください。
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