2020年06月11日
NR-あお葉のこと葉 ファイル-1
おっぺす・ぼっこす
捨てる神あれば拾う神あり。神奈川県全域を網羅する地域情報紙「タウンニュース」の青葉区版に現在、不定期だが連載記事の寄稿をさせてもらっている。
題して「あお葉のこと葉ファイル」
わが地元・青葉区の歴史、地名、伝説にまつわる言葉や、方言など…この地方独特な言葉を拾い集め、その背景や歴史を掘り下げる…という内容。
すでに四回掲載され、好評を博している(そうだ)。
こちらでは、紙面に書ききれなかった内容を加え、新たに書きおろし(Newly written)でご紹介。
地域メディアの編集者として、またさて、どんな言葉が飛び出すか?
新旧住民のあわいで
青葉区はご存じのように東京急行電鉄による多摩田園都市開発によって大きく変貌を遂げた街である。私が越してきた昭和50年代には、代々この地で暮らしてきた旧住民の方と、開発が始まると同時に移住してきた新住民の方の間には目に見えない壁があった。
新住民といっても、私のような「はぐれ鳥」はごく少数で、駅周辺の社宅や社員寮に住む20〜30代が大半。あとは高級住宅地に新居を構えた50〜60代くらいの資産家で構成されていた。
たまプラーザや青葉台あたりの夜の街に出没するのは、もっぱら社員寮に住む20代30代の若者たち。
そこに、私たち「はぐれ鳥」がちゃっかり紛れ込み、大いに飲み、語り、時にハメを外して暴れまわっていた…というのが三十数年前の青葉区。
そんな夜の街の「スナック」「パブ」と呼ばれた夜のお店の上得意といえば、リッチな旧住民の皆さんであった。
ゆったりとボックス席に座り、はしゃぎ騒ぐ我々新住民の若者を気にするでもなく静かにグラスを傾けながら店のママと歓談し、カラオケの十八番を気持ちよく歌ったらスッと帰る。粋である!
ほとんどの若者は、そういった常連さんとは一線を画していたように思う。
誘うリズム
ところが、人間好きで好奇心旺盛な性格が幸いしたのか、お調子者な性格が気に入られたのか、新住民なりたてにも関わらず旧住民=地主の皆さんにはいろいろと可愛がってもらうようになっていた。
採れたての野菜をいただいたり、祭りに連れて行ってもらったり…。
なにより楽しかったのは昔の暮らしについて話を聞くことだった。
多摩弁、武州弁と呼ばれる独特の方言が、旅へ誘(いざな)う線路のリズムのように心地よく耳にひびき、いつの間にか開発される以前の時代へタイムスリップしていた。
そのリズムの一つが促音便訛り。
「落ちる」を「落っこちる」。「歩いていく」を「歩ってく」。「散らかす」は「おっちらげ」で「広げる」は「おっぴろげ」など、小さな「つ」が入ることでよりリアルなイメージできる。
さすがに「おっぺす」「ぼっこす」と聞いたときには、「外国語か?」と思って聞き返していたが…。
こうした促音便に「べえ」「だんべえ」という関東地方で広く使われている「べーべー言葉」が入ったりしたらもう完璧。
心揺さぶられずにはいられない。
「青葉区の 歴史あれかしお祭りの 人ごみの中に そを聴きにゆく」
歴史探偵の活力の源泉はそこにあったのだ。
人生は山あり谷あり。順風満帆な楽しい時期だけではない。
理不尽な仕打ちや、裏切りなどで心がぼっこされることもある。
それでも前を向いて頑張っていれば必ず誰かが背中をおっぺして応援してくれる。
さ、地域のために頑張んべえ! 前に向かって歩ってくべえ!
つづく
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