2014年04月07日
447. 安藤忠雄 建築は独学・元ボクサー・中国でも大人気 「情熱大陸」
中国で進んでいる安藤さんのプロジェクトは10件以上。忙しく現場を駆け回る安藤さん。
「ワシ、50年やっとるけど、現場で怪我したことないねん」「現場を走れないようになったら辞めなアカン」
72歳とは思えない体力。
中国・上海は空前の建設ラッシュだそうです。爆発的な勢いで力を増す中国…。
「ものすごい勢いで発展している中で、スケール感、スピード…」「その中でいわゆるレベルの高い、品質の高い空間を造りたいと…。人々の心の中に残るようなものを造りたいなと…」「中国、意外とイケるな…」と呟く安藤さん。
すさまじい人気
上海の名門大学から熱烈なオファーがあって、講演会を行った安藤さん。建築を志す若者たちで大盛況。立ち見が150人。
「建築はもちろんですが、彼の人生そのものに魅力を感じます」「建築をやっている人で安藤先生を知らない人はいないと思います」と学生たち。
ただ、中国での仕事に難しい点があるのも事実のようで。
ホテルの建設真っ最中に、オーナーが隣の土地を買収。「そこもホテルにしたい」、いわゆる増築。
「トータルバランスが崩れるんやね…」
また、ホテルの地下をスパにする予定だったのが「ミュージアムに変更したい」。
「『変えましょう』言うのは良いけど、なかなか大変やで…」と安藤さん。「腹の中、煮えくり返って…。顔はしっかり相手の面倒見ていかなアカン…」「闘い…毎日、闘い」
気分転換はボクシング
大阪市・北区の地上5階までの吹き抜けのある安藤さんの事務所。ここで安藤さんは約30人のスタッフと50を超えるプロジェクトに取り組んでいます。8割が海外の案件。
全部安藤さんがチェック。多いときは1日10件を超える打ち合わせ。安藤さんの仕事ぶりは「即断即決」。どんどん指示を出していきます。
あるジムに入ると、そこにいたオーナーは往年の名ボクサー、ファイティング原田さん。伝説のチャンピオンです。
実は安藤さんは元プロボクサー。13勝3敗7引き分けという戦績で、リングネームは「グレート安藤」。ボクシングを辞めたのは原田さんの試合を見たから。
「見にいって、『こういう方がおるんやったらアカン』と辞めてん…」と安藤さん。「全然違うもん。(自分は)10分の1くらいのパワーだと思いました」「見極めも大事…人生は…」「その見極めはけっこうボクシングで…。『これはアカン』と思ったんかな…」
ボクシングに見切りをつけた安藤さん。独学で建築を勉強し、28歳で大阪に事務所を開きました。
脚光を浴びたのは、1976年の「住吉の長屋」。
当時珍しかったコンクリートの打ちっぱなしをメインに、光と風を採りこんだ独創的な空間。
1989年「光の教会」、2002年「フォートワース 現代美術館」(アメリカ・テキサス)、2009年「プンタ デラ ドガーナ」(イタリア・ベニス)と活躍の場は海外にも広がって…。
世界でも高い評価を受け、建築界のノーベル賞「プリツカー賞」も受賞。
建築哲学
安藤さんの建築哲学は「無駄を造る」。
「無駄があるというのが一番重要なところやね。日本は合理的になっとるから無駄は全部省いて…。よく考えたら一番重要なところも省いて…。非常に清潔で合理的で機能的なものが出来てるわけね…」
「無駄が大事」という哲学から生まれたのが、広い廊下が魅力の「野間自由幼稚園」、施設内にスロープが広がる「表参道ヒルズ」…。
人が驚き、考え、成長できる建築に挑み続ける安藤さんです。
私(よしろう)は京都・三条の通りで安藤さんとすれちがったことがあります。きょろきょろあたりを見回しながら早足で歩いておられました。短い時間でしたがそのキレのいい立居振る舞いに、私はしばし見惚れてしまいました。