2013年04月15日
133. 天野篤 アントニオ猪木・3浪・神の手 「SWITCHインタビュー 達人達」
「神の手」天野先生と猪木さんとの組み合わせはなんとも意外な感じですが、実は天野先生は熱狂的な猪木ファンなのです。
「かっこいいじゃないですか」と天野先生。「言葉もかっこいいです…。『いつ何時だれの挑戦でも受ける』『出る前に負けると考える馬鹿がいるかよ』」
これは「どんな難しい手術でもあきらめない」天野先生と同じですね。
天野先生の(病院の)部屋には猪木さんの詩が額に入れて飾ってあります。
私(よしろう)もかつてアントニオ猪木の大ファンでした。1970年代に青春を送った者にとって、アントニオ猪木は神の1人でした。天野先生の気持ちは分かります。
憧れの猪木さんが青い手術服を着用して、手術室に入ります。ここで2人の対談を行うのです。
手術数6000!
天野先生が得意とするのは「冠動脈バイパス手術」です。
血管の太さは直径1mm〜2mm。天野先生はそんな血管を、9割以上の手術で心臓を動かしたまま縫い合わせていくのです。心臓の動きを止めないのは患者の体の負担を減らすためとか。
日本でほとんど行われていなかったこの手術を、天野先生はほぼ独学で身に付けました。
手術数約6000。驚異的な数です。「3000を超えたときから大局観ができました」深い話です。
「ここまで行ったら手に負えないから引き返そう、という場所が(手術の中で)あるんですが、3000回を超えたときから攻め込むことができるようになって…」
天野先生は朝8時に病院に来て、9時に手術がスタートします。金曜の夜は病院のソファで寝るそうです。
昼食は…バナナと缶コーヒーと野菜ジュース。
「それだけでもつんですか?」「もちます!」
これで、多い日は1日4件の手術を行います。手術の時間は短くて3時間、ときに10時間を超えます。年間の手術数400件…。看護師さんいわく「手術をするのが好きなんです」「手術の鬼です」
「命を削って命をつなぐんです」と笑顔。神の領域です。
猪木さんはリングに上がる5分前に「何かが降りてくる」。何も考えず、勝負に集中できるのです。
「わたしもそうです」と天野先生。
手術前に手を洗っていると「気が入る」とか。
2012年2月の天皇陛下の手術では、天野先生の先輩の医師いわく「ハイクオリティ中のハイクオリティ」「真骨頂」だったそうです。攻めの姿勢を失わなかった天野先生です。
3浪後医学部へ
天野先生は医師としてけっしてエリートではありませんでした。
3浪の末、私立大学の医学部に入学。卒業後は民間の病院を渡り歩きます。
天野先生のお父さんは心臓弁膜症でした。
天野先生が助手として立ち会った手術で死なせてしまいます。
「今なら助けられる手術だった…いろんな無念さがあって…」
お父さんはいろいろな合併症を併発しました。
「父のような姿はもう作らない、その一念でここまで来た」「父の死ですべてが変わった。これからたくさんの患者さんの命を救ってやる」天野先生は固く決意しました。
真っ赤なマフラー
対談の後半は猪木さんの戦場、リングの上で行われました。
「医療の世界でも心臓外科は(手術がうまくいけば)全員がハッピーになる世界なんです」と天野先生。
対談が終わり、猪木さんに握手を求める天野先生。猪木さんの手には…猪木さんが身に付けているのと同じ、真っ赤なマフラー。
猪木さんから首にかけられて、天野先生は満面の笑み。
「ご唱和願います」猪木さんの掛け声とともに「1、2、3、ダーッ!」手を大きく振り上げました。
2人のヒーローが溶け合った瞬間です。
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