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2018年05月14日
無知な著名人の無責任な主張
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正直に言いますが、私はこのブログをあまり取材せずに書いています。
ただし、たまに昔の取材先や後輩に電話したり一緒にご飯を食べたりしますから最新情報に全く触れていないわけではありません。また、過去の経験の蓄積はあります。新聞に出ている国際ニュースの背景を知りたい方にとっては、意味がある内容を発信していると思っています。
どうしてこんなことを書くかというと、一応「新聞」と呼ばれる媒体に「著名人」が無責任なことを書いているからです。
5月12日にネット上に配信された夕刊フジの「有本香の以毒制毒」というコラムに、2000年10月、森喜朗首相がアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席するため韓国ソウルを訪問した際、英国のブレア首相との会談で「日本人拉致被害者を第三国で『行方不明者』が発見されたことにして決着させる案がある」と話したことを書いています。
これに関し、有本氏は「全国紙2紙」だけがこのことを報じたことを指摘し、「(メディアが)『首相の資質に欠ける』とたたいたのだ」「新聞報道を受け、テレビなども『森首相は無能だ』などと騒いだ。これは今日展開されている、メディアによる『安倍倒閣運動』と、同じ構図ではないのか」と主張しています。
問題は有本氏が「日英トップの会話の中身が、容易にメディアにリークされたことの方が大問題ではなかったか」「もしこれが、拉致問題解決策を模索していた首相を陥れんがための、何者かとメディアによる連係プレーだったとしたらどうか」と疑問を呈していることです。
有本さんが言いたいのは「森氏は拉致問題を解決しようとして重要な情報を英国の首相とやり取りしたが、はめられた」ということです。
しかし、これは大きな事実誤認に基づく憶測です。
当時ソウルで行われたブリーフが、名前や官職を出したものかどうか定かではないので実名は伏せますが、あの日英首脳会談の内容を話したのは当時の日本政府高官です。ブリーフの対象は全ての首相同行メディアです。ブリーフ者は森氏に近い人物で、意図的に陥れる意図があったわけではありません。単に拉致問題に関する事情をよく分かっていなかったのです。
当日の夕刊で最初に報じたのが読売、日本経済の2紙だけだったのは、他の記者が事の重大さに気付かなかったからです。
つまり、情報をしゃべった人物も受け取った側もうっかりしていたのです。
「何者かとメディアによる連係プレー」が存在していたわけではありません。
私がどうしてこのことを詳細に覚えているのか。
当時、読売と日経を見て、ソウルにいる後輩に電話をかけ激しく罵倒したからです。
テレビやネット、新聞、雑誌では、様々な「著名人」「評論家」が自分の専門分野ではないことを訳知り顔で論じています。
今は特にネットのおかげで過去に見られなかったほど玉石混交の情報が氾濫しています。
今回の有本氏の書いているものは救いがあるのは、「連係プレーだったとしたらどうか」と自分の主張が憶測だと分かる表現を使っていること。
この表現を使ってくれれば、全く事情を知らない人出も一応ブレーキがかかります。
もし有本氏に良心がなければ、「あれは何者かとメディアによる連係プレーだった」と断言していたことでしょう。
しばしば政治家や官僚が「仮定の質問には答えない」と言って答弁を拒否することがあるのですが、「だったとしたらどうか」に対しては一読者としても警戒した方が良いですね。
引き続き質問をお待ちしています。
下のコメント欄にお書きください。
日中、気になったニュースをリツイートしたり、つぶやいたりしています。
https://twitter.com/sagamimuneo
2号サイトを開設しました。https://blogs.yahoo.co.jp/sagamimuneo です。
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どうしてこんなことを書くかというと、一応「新聞」と呼ばれる媒体に「著名人」が無責任なことを書いているからです。
5月12日にネット上に配信された夕刊フジの「有本香の以毒制毒」というコラムに、2000年10月、森喜朗首相がアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席するため韓国ソウルを訪問した際、英国のブレア首相との会談で「日本人拉致被害者を第三国で『行方不明者』が発見されたことにして決着させる案がある」と話したことを書いています。
これに関し、有本氏は「全国紙2紙」だけがこのことを報じたことを指摘し、「(メディアが)『首相の資質に欠ける』とたたいたのだ」「新聞報道を受け、テレビなども『森首相は無能だ』などと騒いだ。これは今日展開されている、メディアによる『安倍倒閣運動』と、同じ構図ではないのか」と主張しています。
問題は有本氏が「日英トップの会話の中身が、容易にメディアにリークされたことの方が大問題ではなかったか」「もしこれが、拉致問題解決策を模索していた首相を陥れんがための、何者かとメディアによる連係プレーだったとしたらどうか」と疑問を呈していることです。
有本さんが言いたいのは「森氏は拉致問題を解決しようとして重要な情報を英国の首相とやり取りしたが、はめられた」ということです。
しかし、これは大きな事実誤認に基づく憶測です。
当時ソウルで行われたブリーフが、名前や官職を出したものかどうか定かではないので実名は伏せますが、あの日英首脳会談の内容を話したのは当時の日本政府高官です。ブリーフの対象は全ての首相同行メディアです。ブリーフ者は森氏に近い人物で、意図的に陥れる意図があったわけではありません。単に拉致問題に関する事情をよく分かっていなかったのです。
当日の夕刊で最初に報じたのが読売、日本経済の2紙だけだったのは、他の記者が事の重大さに気付かなかったからです。
つまり、情報をしゃべった人物も受け取った側もうっかりしていたのです。
「何者かとメディアによる連係プレー」が存在していたわけではありません。
私がどうしてこのことを詳細に覚えているのか。
当時、読売と日経を見て、ソウルにいる後輩に電話をかけ激しく罵倒したからです。
テレビやネット、新聞、雑誌では、様々な「著名人」「評論家」が自分の専門分野ではないことを訳知り顔で論じています。
今は特にネットのおかげで過去に見られなかったほど玉石混交の情報が氾濫しています。
今回の有本氏の書いているものは救いがあるのは、「連係プレーだったとしたらどうか」と自分の主張が憶測だと分かる表現を使っていること。
この表現を使ってくれれば、全く事情を知らない人出も一応ブレーキがかかります。
もし有本氏に良心がなければ、「あれは何者かとメディアによる連係プレーだった」と断言していたことでしょう。
しばしば政治家や官僚が「仮定の質問には答えない」と言って答弁を拒否することがあるのですが、「だったとしたらどうか」に対しては一読者としても警戒した方が良いですね。
引き続き質問をお待ちしています。
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なぜ複数の新聞を読まないといけないのか=日経独自と他紙の追随報道の違い
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「複数の新聞を読みましょう」。
良く言われることですし、私も推奨しています。
これは「一紙だけだと見方が偏る」というからだけでなく、「一紙だけだと事実誤認が起きる」のです。
「見方が偏る」のは、自分の読んでいる新聞の思想に染まってしまうということですが、「事実誤認」は間違えたことを事実だと思い込んでしまうことです。見方が偏っていても事実を正確に認識していれば、それほど問題はありません(あくまで個人の嗜好の問題)が、事実誤認は深刻です。
どうしてこんな前置きをしたのかというと、昨日の日本経済新聞は「米朝会談直後 トランプ氏来日へ調整」という見出しの記事を掲載しました。「調整に入った」と書きながらも、「4月に日本の首相と会ったばかりの米大統領がこれほどの短期間で会談を重ねるのは異例」「トランプ氏は一連の首相との電話などですでに米朝首脳会談直後の来日に意欲をみせている」と記し、トランプ氏が訪日することで日米が共通認識を持っているような書きぶりです。「日本は米韓との連携を強めながらこの外交戦に臨む」というくだりは、悲壮感も漂います。情報源は安倍晋三首相周辺でしょうか。米朝首脳会談後の日米首脳会談に相当な思い入れを感じさせます。
ところがそれを追い掛けた読売、朝日、毎日の各紙の見出しはそれぞれ「政府、トランプ氏の来日要請」「日本政府、トランプ大統領の来日要請」「『米朝』後の連携模索 トランプ氏来日案」。3紙に共通するのは「日本は米大統領に米朝首脳会談後の訪日を要請しているが、まだ決まっていない」というニュアンスです。
日経報道が出た後、各社が真っ先に裏取りの取材をするのは外務省でしょう。当初から実現を危ぶんでいた外務省関係者は「米大統領に来日してほしいと希望は伝えた。でも、まだできるかどうか分からない」という説明をしたのかもしれません。あるいは前のめりになっていた首相周辺も報道が出たことによって、「日経報道を見た米側が硬化してしまって、実現できるかどうか分からない」と危ぶんでいるのかもしれません。
日経報道もあくまで「調整」なので、「誤報」になることはないのですが、日経だけを読んでいると「米朝首脳会談直後に米大統領が日本に来ることになったということは、安倍首相とトランプ大統領の関係がいまだに良好だということだな」という印象を受けたままになります。
しかし、新聞各紙に目を通していると、「少なくとも現時点では日本側が熱心に呼び掛けているが未定」ということが分かります。
今回の件に限って言えば、事実認識として日経だけを読んでいる人と他紙も読んでいる人の間で大きな違いが生じます。
特ダネは関係者が口を閉ざす状態で潜行取材するので、細部で間違った要素を含む記事になりがちです。後追いはすでに報じられた内容の確認ですし、特ダネが報じられたことによって情勢が変化することもありえます。取材先も「もう書かれてしまったんだから、正しいことを世の中に伝えてもらおう」ということで後追いの方が正確で分かりやすい内容になることが往々にしてあります。
特定の新聞に特ダネが出ていたら、その後他紙はどう書いているのか必ず確認するようにしてください。
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どうしてこんな前置きをしたのかというと、昨日の日本経済新聞は「米朝会談直後 トランプ氏来日へ調整」という見出しの記事を掲載しました。「調整に入った」と書きながらも、「4月に日本の首相と会ったばかりの米大統領がこれほどの短期間で会談を重ねるのは異例」「トランプ氏は一連の首相との電話などですでに米朝首脳会談直後の来日に意欲をみせている」と記し、トランプ氏が訪日することで日米が共通認識を持っているような書きぶりです。「日本は米韓との連携を強めながらこの外交戦に臨む」というくだりは、悲壮感も漂います。情報源は安倍晋三首相周辺でしょうか。米朝首脳会談後の日米首脳会談に相当な思い入れを感じさせます。
ところがそれを追い掛けた読売、朝日、毎日の各紙の見出しはそれぞれ「政府、トランプ氏の来日要請」「日本政府、トランプ大統領の来日要請」「『米朝』後の連携模索 トランプ氏来日案」。3紙に共通するのは「日本は米大統領に米朝首脳会談後の訪日を要請しているが、まだ決まっていない」というニュアンスです。
日経報道が出た後、各社が真っ先に裏取りの取材をするのは外務省でしょう。当初から実現を危ぶんでいた外務省関係者は「米大統領に来日してほしいと希望は伝えた。でも、まだできるかどうか分からない」という説明をしたのかもしれません。あるいは前のめりになっていた首相周辺も報道が出たことによって、「日経報道を見た米側が硬化してしまって、実現できるかどうか分からない」と危ぶんでいるのかもしれません。
日経報道もあくまで「調整」なので、「誤報」になることはないのですが、日経だけを読んでいると「米朝首脳会談直後に米大統領が日本に来ることになったということは、安倍首相とトランプ大統領の関係がいまだに良好だということだな」という印象を受けたままになります。
しかし、新聞各紙に目を通していると、「少なくとも現時点では日本側が熱心に呼び掛けているが未定」ということが分かります。
今回の件に限って言えば、事実認識として日経だけを読んでいる人と他紙も読んでいる人の間で大きな違いが生じます。
特ダネは関係者が口を閉ざす状態で潜行取材するので、細部で間違った要素を含む記事になりがちです。後追いはすでに報じられた内容の確認ですし、特ダネが報じられたことによって情勢が変化することもありえます。取材先も「もう書かれてしまったんだから、正しいことを世の中に伝えてもらおう」ということで後追いの方が正確で分かりやすい内容になることが往々にしてあります。
特定の新聞に特ダネが出ていたら、その後他紙はどう書いているのか必ず確認するようにしてください。
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