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2018年04月18日

女性記者がセクハラを自社で報道できない理由

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 女性記者が自社媒体で福田淳一事務次官の行為について報じていないことについて疑問や批判が出ています。
 これについて、明日の週刊新潮の記事でも説明されています。
 マスコミ各社の事情を知っていれば、女性記者が自社で報じることができない理由は分かります。

 情報を取り伝えることが記者の仕事です。
 新聞社やテレビ局としては、プロセスに違法性がない限り(世間的に問題にならない限り)、特ダネを取ってくる記者が「優秀な社員」です。

 セクハラは深刻な問題ですが、残念ながら「おやじ」の取材先が女性記者に対して卑猥な発言をするのは日常茶飯事です。
 いちいち異を唱えていると仕事になりません。
 新聞社やテレビが報道するとなると、誰がいつ何をしたのか、どういう状況だったのかについてあいまいしたままですますことはできません。
 社全体として、今回の場合で言えば財務省と組織体組織の戦いを挑むことになります。
 直接の上司であるキャップ→部長→編集局幹部→役員→社長と上へ行くにつれて、「そんな大した問題ではないだろう。福田次官にはこれまでも世話になっているんだし……」という声が広がることが予想できます。
 週刊新潮はメディアが特オチを恐れているということも指摘してます。これも報道を渋る理由でしょう。

 また、女性記者の中には色気を利用して情報を取っている例があることも否めません。
 女性記者が「セクハラを受けた」と告発すると、「ネタが欲しくて近寄ったくせに」という声が出ることも避けられません。
 場合によっては女性自身が悪者になってしまいます。
 様々なことを考慮すると、いわゆる大手メディアではなかなか報道できません。
 正しいことではありませんが、残念ながらそれが現実です。

 これは私の想像ではありません。
 サンデー毎日4月8日号で東京新聞の望月衣塑子記者がセクハラについて「私も駆け出しの頃にやられました」と語っています。望月記者は警察幹部に車内で取材しているときに「突然抱きつかれた」そうです。即座に抗議できず、社にも取り上司に相談すると、「告発すれば警察幹部は処分されるだろうが、ネタ欲しさに近づいたくせにと誹謗中傷にさらされる。新人の私(望月記者)には計り知れないプレッシャーになるのでは」と言われたそうです。
 望月記者は「ふざけんじゃねえ」と直接抗議し、相手が丁重に謝罪したので矛を収めたそうです。望月記者は「男性社会では(セクハラは)常套ですよ。女性記者をホステスや芸者のように扱う取材対象はいまなおいる。またこれまで女性記者のほうでもそういった振る舞いで応じざるを得なかった面もある」と指摘しています。

 記者と取材先によるセクハラというのは非常に難しい問題で、私自身も振り返れば、女性の取材対象から便宜を図ってもらったことがありましたが、それは私が「男だったから」という面がありました。

 今後、女性から男性、同性同士のセクハラという問題も起こるでしょう。
 基本は「相手の嫌がることはしない」ということでしょうが、試行錯誤の中で新たなルールや考え方をつくっていくしかないと思います。

 引き続き質問をお待ちしています。
 下のコメント欄にお書きください。



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2018年01月22日

特派員の「立ちんぼ」

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 本日は、産経新聞国際面のコラムを取り上げます。
 「西海岸から」と題した囲み(枠で囲われた記事のことをこう呼びます)の執筆者は住井亨介さん。ロサンゼルス(実際の発音は全く違いますが、新聞の表記は一般的にこうなっています。土曜日に外国人の人名について書きましたが、もちろん地名も現地では全く通じないものが多いですね)の特派員によるコラムです。新聞各紙では特派員によるコラムが掲載されていて、新聞記事にはならない柔らかい話題や現地の雰囲気を伝えることが主旨です。ただし、今回紹介する記事の中身は、米国についてではなく、ペルーのフジモリ元大統領の取材のために訪れたペルーの話です。

 冒頭で、住井さんは「十数年ぶりに『夜討ち朝駆け』『立ちんぼ』と記者の基本に立ち戻る機会があった」と記しています。30歳頃に地方の警察回りを終えたとすれば、年齢は40歳代前半でしょうか。確かにこの年齢の記者であれば、体力勝負の仕事はしないものです。特に、特派員となると記者会見やきちんと時間を設定したインタビュー、食事を取りながらゆっくり取材対象の話を聞くことが中心で、後は支局にこもっていることが多くなります。
 産経新聞らしいなあと思うのは、ペルーの機動隊員の外見について書いていること。住井さんが見た機動隊員は「いずれも美男美女」だったそうです。住井さんが現地の人に確認したところ、「聞いたことはない」と一蹴されたそうです。彫りの深い顔立ちがそう見えたのかもしれませんし、元大統領という話題性のある人の警護なので当局が意図してマスコミ対策の一環で見映えのする人材を集めたということかもしれません。また、住井さんは確認が取れなかったけれど、実際に容貌を基準に選考しているのかもしれません。いずれにせよ、最近は「人を外見で判断してはいけない」という建前が厳しくなってきているので、新聞社によってはこのコラムに出ている表現のままでは掲載されないかもしれません。
 コラムの内容を読み進めます。最初は統制が取れて緊張感があっても、「1時間もすると隊列が乱れ出す」と指摘しています。この辺りの描写は微笑ましく、国情が違うのだなと感じさせ、特派員コラムらしい記事だと思います。そして、「美人隊員」とスマートフォンの翻訳アプリで交流しながら6時間以上を過ごし、「自己最長記録に並んだ」そうです。どうやら、早朝から昼過ぎまで「立ちんぼ」だったようです。40歳前後の記者にとっては体力的に厳しい取材だったでしょうが、この記事を読む限りは楽しさの方が勝っているように感じられますね。
 ただし、あえてそういう風に書いているだけでしょう。経験や慣れがないと、気楽に取材することはできないと思います。住井さんは本来は米西海岸が取材拠点です。しかし、一人で担当する範囲は、おそらくハワイなどを含む米国の西側、中南米なのでしょう。外国の取材拠点の多い共同通信ですら、すべての国に支局があるわけではありませんから、支局がない国や地域で大事件が起きれば、周辺の支局あるいは本社から記者が派遣されることになります。住井さんも「覚えたてのスペイン語」と書いていますから、英語は得意で米国内は自由に取材できても、ペルーについてはよく知らないのでしょう。
 不慣れな土地、特に外国の取材というのは難しいものです。たいていは、契約している現地の取材要員に協力してもらいます。いなければ、探すことになります。通訳、ガイドの役回りをしてもらうわけですが、日常的に意思疎通しているわけではないので、うまく取材できるかどうかは個人の相性や運不運に左右されるそうです。
 また、このコラムでは書かれていませんが、住井さんが若い頃に経験した「6時間以上の立ちんぼ」はもっと過酷だったのでしょう。もちろんずっと緊張したままというわけではないでしょうが、外で待機し続けないといけないというのはつらいものです。今のように真冬であれば体が芯から冷えてきて指先は凍り付くようになりペンも取れなくなりますし、真夏でも水分補給に気を遣わないといけないし体力の消耗も激しいです。体を動かすのであれば問題ないのですが、取材対象の動向を監視するわけですから持ち場を離れることは許されません。結局、記者同士で馬鹿話をして気を紛らわせ、周辺の住民のひんしゅくを買うことになったりもするわけですね。
 最近はコンビニが各地にあるので大分状況は改善されたかも分かりませんが、外で待っているときはトイレの問題が切実です。特に女性にとっては難しいですね。記者を志望する方は、この点はしっかりと覚悟しておいてください。こういうことはこれまでも書きましたので、「記者の生態」に分類された記事をご参照ください。
 それでは今日はここまでにします。

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2018年01月19日

望月衣塑子記者はなぜ嫌われるのか

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 本日は、社会、政治、経済各部の記者の違いについて書きます。
 最近有名になった記者で、東京新聞の望月衣塑子さんという人がいます。
 菅義偉官房長官に対して粘り強く質問を繰り出すことで知られています。評価する人もいますが、下のURLの記事のように質問の仕方に難点があるともいわれています。講演をしたり本を出したりもしている「スター記者」ですし、有名になれば批判を受けるのも当然でしょう。http://www.sankei.com/politics/news/180116/plt1801160032-n1.html

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 私は望月さんと面識があるわけでもないし、世代が違うので記者会見で居合わせたはずもないのですが、彼女に関する記事を読んでいると首相官邸の記者会見の雰囲気を想像できます。
 望月さんのような「典型的な社会部記者」が、政治部主導の記者会見に出ると、多かれ少なかれあつれきが出てきます。多くの政治部記者と比べて、質問の内容、言葉遣い、態度などが異なるので、社会部の記者は浮き上がってしまうのです。動物の群れの中に違う種が一匹だけいるようなものです。

 では、「典型的な社会部記者」とはどういうタイプでしょうか。
 社会部の記者が求めるのは、ある出来事に関する情報を得ることです。他の部の記者も最終的には事実を追及するのですが、その目的を達成するために政治部や経済部の記者は人間関係を優先する場合があります。
 社会部の記者は、極端に言えば、取材対象との人間関係が破綻しても事実を入手することを選ぶ傾向が強いと思います(「極端」なので、もちろん人間関係を重視する記者もいます)。例えば、凶悪犯罪が起きると、その背景を知るために容疑者の家族に取材することが必要となります。しかし、記者が殺到すれば、その家族は精神的に参ってしまい、自殺してしまうかもしれません。どんなに優秀な記者でも葛藤がありますが、それでもへこたれずに取材しないと、犯罪が起きた原因を突き止めることができないかもしれません。極論すれば、相手の感情を気遣っていると取材にならない場面が多いのです。
 また、事件を捜査する警察官や検察官は口が堅いので、同じことを何度も言葉遣いを変えて聞いたりしてしつこく質問しないと何一つ事実関係を話してくれないということもあります。だから、法律や制度についてしっかり勉強して、どこに犯罪性があるのか、事前に詳しく調べておかないといけません。相手に「そこまで知っているのか」と思わせないと、しゃべってくれないわけです。
 さらに、社会部記者はメディアとの対応に慣れていない一般の人に取材する機会も多いのですが、これは全く逆の意味で何度も同じような質問をしないといけません。普通、人は記憶違いをしたり、自分にとって都合の良い解釈を話すものです。だから、取材慣れしていない人に対しては、何度も念を押して確認しないと記事にできないのです。また、捜査対象として浮かび上がっているような人物に接触できた場合でも、相手は最初から最後まで嘘ばかり話すこともあります。
 望月さんのように取材対象に嫌われても、事実を追い求めて質問の表現を変えて同じことを何度も聞き、時には相手を怒らせて本音を引き出そうとする手法は珍しくありません。

 これに対し、政治部記者が求めるのは、政治家がどのような政治的決断をするかです。衆院解散と首相の辞任、消費税率引き上げ、政府高官人事などです。どんなに質問がうまくても、初めて会った記者に「※日に解散するよ」とか「明日、首相は辞めるよ」と教える政治家はいません。まして、「いつ解散するんですか」「どうして言えないんですか」などと詰め寄られると、相手はかたくなになり「お前にだけは話さない」というふうになってしまいます。つまり、永田町(国会や首相官邸が所在する地名。「日本の政界」を指します)という狭い社会の不文律を熟知して行動していないと、「一人前の政治部記者」とは認められません。だから、政治部記者は、昔の政治家に関する本をよく読んでいますし、政界の人間関係を熟知するようになります。
 政治部の取材ではオフレコ前提の懇談や酒席も多くあります。そういった場で、細かい質問をして怒らせても相手に嫌われるだけです。政治家に嫌われると、その記者はオフレコの懇談に呼ばれなくなります。政治部の特ダネというのは、政治家と一対一で話しているときに入手した情報が基になります。各社が呼ばれるオフレコ懇談に呼ばれなくなると、情報のルートが遮断されることになります。
 要は政治部の記者は、政治家の心の中の動きを読み取り、相手の反応を探りながら本音を聞き出すことが習性になります。昨年は「忖度」という言葉が流行してしまいましたが、永田町で忖度するのは、記者にとって当然の作法です。記者会見であれば、それなりに厳しい質問もしますが、社会部記者の視点から見れば、政治部記者は政治観の心情をおもんぱかり、時にはこびへつらっているようにさえ見えるかもしれません。
 でも、そうしないと政治家から情報が取れないわけです。権力者に近付くためにこびるような態度を取りつつ、書くべき時には書かないといけません。このバランス感覚が政治部記者にとって最も難しいところです。

 望月記者は社会部出身で、官房長官の記者会見には政治部の記者がたくさんいます。官房長官番の記者は、菅義偉さんの朝の出勤時、午前と午後の記者会見、懇談などで一日に何度も顔を合わせています。「官房長官にこんな細かいことを聞くのはやめておこう」「これは役所の課長に聞くべきことだ」「後でオフレコの席で本音を探っておけば良い」という判断が働きます。
 これに対して、社会部出身の望月さんは菅長官が重要な事柄を隠してごまかしているのではないかという前提に立ち、細部を詰めていくわけです。望月さんにとってはオフレコで取材する機会はないのだから当然でしょう。また、市民団体や野党の支持勢力をよく取材している社会部の記者であれば、政府に批判的な立場から分析した情報が頭に入っているので、政府高官に対して詰問調の言い方になってしまう傾向も否めません。周りの政治部記者は「それは失礼だろう」「そろそろ終わりにしようよ」「そんなこと、官房長官に聞く事柄ではないだろう」となるわけです。

 一方、経済部の記者が求めているのは政策判断です。政治部の記者と似ているのですが、少し違います。
 経済部の記者が担当する官庁の代表は財務省、日銀です。いずれも東大出身者が多く、秀才ぞろいの官僚が集まる役所です。そういう人々に取材するわけですから、話題についていけるように日々勉強しないといけません。政治部や社会部の記者も勉強しないといけませんが、次元が違いますね。
 経済部でも、役所内の人間関係に気を遣わないといけないのですが、やはり専門用語の微妙な使い方、あいまいな言い回しの文章表現の中から、その役所の本音を探ることが求められます。
 こういうわけで、経済部の記者が政治家の記者会見に来ると、社会部の記者とは違った意味で浮き上がってしまいます。政治部記者が知らない用語などの詳細な事実関係にこだわるからです。「政治部の記者は不勉強だ」と言って経済通を自認する政治家は、経済部の記者を歓迎することもあります。
 逆に、政治部の記者が経済部主導の記者会見に行くと、何も質問できなかったり、政策に無関係な質問になってしまいます。ところが、面白いことに、官僚は政治部の記者と会うことを嫌いません。まず何よりも政治部の記者は政治家の身の回りの情報を持っています。どんなに素晴らしい政策を考えていても、内閣が倒れれば法案審議が後回しにされ、その官僚が担当している仕事が日の目を見ることがないかもしれません。今後、影響力を持ちそうな政治家に取り入って、自分の出世に役立てたいと考える官僚もいるでしょう。しかも、政治部の記者は細かい政策の中身について聞いてこないし、理解できない(=自分がしゃべった内容を新聞に書かれる心配がない)から、経済官庁の官僚にとっては酒を飲むには気楽な相手です。
 逆に言うと、優秀な経済部の記者というのは、政治部記者が備えている要素を持っているということになります。日々深く勉強しながら、永田町の人間関係にも通じるというのはなかなか難しいですね。

 こう考えると、各部の記者の特性がそれぞれあって、どの部の記者が優れているとは一概に言えそうにありません。それぞれの持ち場に応じて、行動や思考のパターンが違うということでしょう。もちろん優秀な記者の中には、どんな相手にもひるまず質問をして、オフレコの席では人間的な魅力で場を盛り上げ、空いた時間に政策の勉強をしている人もいるかもしれません。
 しかし、そんなことをできる人はほぼ皆無です。サッカーもラグビーもバスケットボールも一流だというスポーツ選手はどのぐらいいるでしょうか。社会部系のフリーライターから「大手メディアの政治部記者は本当にだらしなくて、不勉強だ」という批判を聞くことがありますが、目指しているものが違うのだから仕方がないと思います。サッカーの試合をしているはずなのに、「どうしてボールを持って走らないんだ」と言っているのと同じような気がします。望月さんに対する評価が分かれているのもそういうことだと思います。

 さて、今日はこのぐらいにします。

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2018年01月10日

新聞と雑誌の違い

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 昨日、実在した坂本龍馬のことをよく知らずに「竜馬」のファンになっている人が多いと書きました。このことに関連する内容が、本日付の朝日新聞の投書欄(オピニオン面)で詳しく取り上げられています。https://digital.asahi.com/articles/DA3S13305832.html
 一坂太郎・萩博物館特別学芸員によると、大政奉還が坂本龍馬の功績だったというのは司馬遼太郎さんの小説の中の世界であって、残されている史料から確認することはできないそうです。一坂さんは、明治政府で阻害されていた土佐藩出身者が自分たちの過去の実績をアピールするために坂本龍馬の存在を誇張したことが影響していると指摘しています。インターネットの紙面連動企画で一坂さんの一問一答が出ているので、興味のある方はぜひお読みください。https://digital.asahi.com/articles/ASL174FXXL17UWPJ003.html

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 新聞記者を志す人、事実を知りたい人にとって、この記事はすばらしい教材だと思います。
 記者は事実に基づいて記事を書かないといけません。事実の裏付けとなる根拠を書かないといけません。根拠がない場合は関係者の分析に基づく合理的な推測を書きます。しかし、きちんと明記しないといけません
 これが新聞記者のルールです。
 つまり、情報の発信源については「〜によると」と明示し、推測の部分については「〜とみられる」「〜との見方が強い」などと書きます。
 しかし、このルールは面倒です。
 「〜によると」は取材の成果なので、これを示すことに大きな意味があるのですが、記事の中で頻発すると読みづらいことがあります。また、情報源を正直に示すことで、かえって「大した根拠ではない」と思われることもあります(これにつては別の機会に書きます)。それに、「〜とみられる」と書くのは取材が不十分であることを認めることになります。
 北朝鮮や中国のような外国メディアにとって取材が難しい国に関する記事では、「〜とみられる」のような表現が頻繁に使われています。直接、当事者に取材できないので、こう書くしかないからです。
 私がこのブログで書いている文章も、自分自身が確認した内容以外は断定を避けていることにお気づきでしょうか。長年の習性ですね。

 ところが、新聞以外のメディア、特に雑誌の記事は「〜とみられる」が新聞ほど多くはなく、自信満々の文体が目立ちます。読んでいて非常に分かりやすく面白く、「新聞には書いていないけれど、真相はこうだったのか」という思いにさせてくれます。
 でも、その内容の真偽は歴史小説並みであることが往々にしてあります。

 雑誌の全てを否定するつもりはありません。かつて「噂の真相」という月刊誌が書いた内容を朝日新聞が一面に掲載したこともありました。また、朝日新聞も極めて悪質な誤報をして、長い時間を経てから謝罪しました。産経新聞にも問題のある記事が多いことも、私はこれまでに指摘しています。ほかの新聞についても、同様のことは言えます。
 でも、週刊誌は広告の見出しで購買意欲をそそらないと売り上げが伸びませんから、どうしても刺激的で断定調の記事が好まれます。裏は取れなくても、「新聞に書いていない」ことであれば、「新聞が書けない事実」として報じたくなるのも自然な発想でしょう。安直に流される雑誌編集者がいてもおかしくはありません。

 新聞記者はこのように見ています。
 新聞社に入社しようとする皆さんはこの価値観を前提に考え、行動してください。
 つまり、皆さんが面接で向かい合う人物は、「事実を重視する人々」だということを忘れないでください。
 就活生が「尊敬する人」として坂本龍馬を挙げることに危険性があることが分かっていただけたでしょうか。
 坂本龍馬を本当に尊敬するなら、小説家が書いていない史実を踏まえ、自分の取材に基づいて熱く語ってください。


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2017年12月29日

新聞記者の休日




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 年末も押し迫り、故郷に帰ってこのブログを読んでいただいているかもしれません。
 本日は新聞記者の休日について書きます。

 記者は自分が担当する取材対象者に合わせて働きます。
 年末年始に取材対象者が働くなら、記者も働きます。
 だから、世間を騒がせる事件が起きれば、その地域の警察を担当する記者は取材します。安倍晋三首相が海外に出張すれば同行します。新製品の発表記者会見が年始のカウントダウンにあるなら、現場にいないといけません。
 今も二階俊博自民党幹事長や井上義久公明党幹事長が北京に行っています。すでに日本は休日モードになっていますが、幹事長番と呼ばれる記者は二階幹事長らに同行して記事を書いています。

 一年を通して記者の生活パターンはこのような感じです。
 取材すべき動きがあったり、他社に抜かれたりすれば、土日に関係なく働きます。
 今この文章を読んで、「嫌だ」と思ったら、迷わず別の業種を選んでください。
 一生後悔します。
 そういう方は下のバナーをクリックしてください。記者の休日について知りたい方は、さらに続けて下を読んでください。




 ただ、一年中働いているわけではなく、もちろん休みもあります。
 取材対象者も休みますし、例えば安倍首相が一日中自宅にこもっているようなときは通信社の記者以外は待機です。
 それから、会社の規模によって違いますが、社会部、政治部、経済部にはそれぞれ数十人の記者がいます。記者クラブにも複数の記者がいるわけですから、交代で休暇を取ります。休んでいる記者の仕事は、普段は担当ではない記者がカバーします。
 夏休みの場合は、できるだけ自分の担当する範囲内で大きなニュースが出ないタイミングを選びます。例えば、休んで海外旅行をしている最中に、自分の担当している政治家が辞意表明したりすると、「あいつは取材力がない」と判断されます。
 本人の能力に関係なく、事件は起きたり起きなかったりするのですが、「できる記者」は運の良さもあるように思います。

 特に厳しいのが規模の小さい会社に入ると、「県警の担当が一人」であったり、「◎◎省の担当が一人」ということもあります。
 もちろんデスク(次長)やほかの記者が最低限の警戒はしてくれるでしょうが、休むタイミングには一層神経質にならざるを得ません。

 こういう状況ですから、夏休みを取る時期は他の記者と相談したり、早い者勝ちだったりするので、自分や家族の希望だけで決めることはできません。
 つまり、休みの日程が直前まで分からないことが少なくありません。
 この生活は間違いなく家族の理解がないとやっていられません。
 長期休暇の計画を前もって立てたいという人は記者には向いていません。
 結婚前に婚約者にきちんと説明して了解を得ないと、夫婦げんかも絶えないということになります。

 それと、今は携帯電話とインターネットのおかげで、どこにいてもかなり取材と原稿執筆ができるようになったため、外国のリゾート地の砂浜でも日本の片田舎で起きた交通事故の記事を書くことも可能になっています。
 せっかく家族旅行に来たのに、配偶者が子供を連れて遊びに出かけ、あなたが一人でパソコンや携帯電話で仕事しているということもあるかもしれません。

 新聞記者同士が結婚している例が目立つのは、知り合うきっかけが多く、担当が同じであれば長時間共に活動するということに加えて、価値観の共有ができるからだろうと思います。
 記者になると学生時代の友達と会うことが難しくなるでしょうし、私生活については他業種に比べると制約が増えることも覚悟してください。
 また、体力と精神力に自信がないと厳しい局面があると思います。
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2017年12月28日

通信社とは





 今回は新聞業界の中で大きな役割を果たしている通信社について解説します。

 これまでもなんの説明もなく、共同通信について書いたこともありましたが、一般にはなじみが薄いかもしれません。
 通信社とは、単純に言えば、ニュースの卸問屋です。記事を、各新聞社や放送局に配信することが仕事です。配信された記事は新聞に掲載され、テレビやラジオで放送されます。

 世界各国にあり、有名なのは英国のロイター、米国のAP、フランスのAFPで、世界の3大通信社と呼ばれます。経済通信社としては、米国のブルームバーグも有名です。
 中国国営の新華社通信の名前もよく聞くと思います。また、朝鮮半島情勢に関心がある人にとっては、北朝鮮国営の朝鮮中央通信韓国の聯合ニュースもなじみがあるかもしれません。聯合ニュースという名前は少し不自然な感じがするかもしれませんが、韓国の有力通信社です。

 ところで、本題ですが、日本には、共同通信時事通信があります。
 人員の規模は、共同通信が時事通信よりも大きく、記事の配信量、特ダネの数も共同が優位加盟社数も影響力も共同の方がはるかに上です。
 ただ、時事は速報が早く、契約料が圧倒的に安いといわれています。通信社の契約料は、記事配信を受ける会社の規模によって違うらしく、実態は不明ですが。
 それと、最近は安倍晋三首相とよく会食している大物記者が所属していた会社だということで知られていますね。

 さて、「ロイターはよく聞くけど、時事は全く知らなかった」と言う人もいるのではないでしょうか。
 日本では全国紙が非常に強く、通信社の存在感は薄いので仕方がないでしょう。人によっては、「通信会社」との区別が付いていないかもしれません(一文字あるかないかの違いですが、「通信会社」は電話の会社のことです)。

 これには理由があります。
 まず、東京と大阪では、新聞を購読する人はたいてい全国紙を読んでいます。
 全国紙は、ほとんど独自取材の記事を掲載しています。国内ニュースについては独自の記事で埋めることが大前提。国際面と運動面などで一部、通信社の記事を使いますが、主要な記事の間を埋める小さなものが大半です。
 外国では、一般的に政府の発表や事件の概要について事実関係を伝える記事(「本記」と呼ばれます)については通信社の記事が使われます。その代わり、新聞社は、深く掘り下げた解説記事、独自の調査報道、コラムのような読み物記事に力を入れると言われます。

 毎日新聞、東京のブロック紙(複数の県で発行される地方紙)である東京新聞は、通信社の記事を載せていますが、国内ニュースについては通信社の記事だとは明示しないことが多いですね。外国では、記事に記者の名前を掲載する(「署名記事」と呼びます)ことが一般的なので、通信社の記事だということも明示されています。

 一方、地方紙は、地元ネタ以外はほとんどが通信社の記事です。中でも、県内トップのシェアを誇るような地方紙の場合は、共同の記事が大半を占めます。

 外国のニュースについては、全国紙も地方紙も、本文の最初に【ワシントン共同】とか【ロンドン時事】という「クレジット」が付いているので、通信社の記事だと分かります。ただ、「共同通信」「時事通信」と書いているわけではないので、記事を配信した会社名だと気付いていない読者も多いかもしれません。

 結局、全国紙も地方紙も現時点では、海外の記事を中心に通信社に頼っている部分があることは間違いありません。これが以前、私が、通信社は「国際報道が柱の一つ」と書いた理由です。
 経費節減で海外支局を減らすことになれば、通信社の必要性が増えるかもしれません。
 ただ、日本の若者が外国に関心を持たなくなっていると聞くと、国内で海外ニュース全般への需要が下がっていくかもしれません。海外ニュースの扱いについてはこれまでに書いたとおりです(この記事を参照)。そうなると、通信社の先行きは暗いかもしれませんね。
 ただでさえ、全国紙の力が強いわけですし、新聞もネットを通じて速報を重視する傾向が強まっているわけですから。

 記者個人の仕事ぶりは、通信社の記者も新聞社の記者も違いはほとんどありません。東京で取材していれば、記者クラブに所属し、番記者を構成するメンバーになります。
 かつては、新聞社は速報を重視していなかったので、記者会見の途中で抜け出して電話をかけて記事を吹き込むのは通信社の記者でした。
 しかし、最近は新聞社もネット向けに速報することが増えていて、通信社よりも新聞社のネット記事の方が早いことがあります。そもそも会見場を出て電話をかけるというのは、私のような古い世代の作法で、今は会見場からメールで本社やキャップと連絡を取り合っているようです。

 ところで、一番大事なことですが、就活生の皆さんにとって、通信社は目指すべき会社でしょうか
 私なら選択肢に入れません
 まず、知名度が低いことが挙げられます。
 通信社の存在と影響力を理解しているのは、警察官と政治家、官僚、同業者。
 駆け出しでも名刺を持っていけば、たいていの人に「ああ、知ってる」と言ってもらえる全国紙とは比べものになりません。
 一緒に取材に行って、「お宅は電話関係の仕事をする会社の人か」と言われて困っている通信社記者と一緒になったことがあり、気の毒な思いをしたことがあります。

 それから、独自のメディアがないので、読者の反応が感じられません。これは通信社の記者から、「新聞がうらやましい」とよく聞きました。
 新聞なら、「これは結構大きな特ダネです」と売り込めば、一面トップを飾ることもできますが、通信社の配信記事は所詮は「他社」のもの。扱いは小さくなりがちです。
 私個人の経験でも、大したニュースでもなく、自分で書く気が起きないときは、「通信、使っといてください」と言っていました。

 それと、どことは言いませんがかなり経営的に厳しい会社があります。給与や福利厚生について、最低限はチェックしておきましょう。
 どの会社であっても、記者は睡眠時間の少ない職種なのですから、もらえるものは多くもらえた方が良いでしょう。
 ネットの普及で仕事内容に違いが少なくなってきたとはいえ、通信社の仕事量は多い印象があります。給与水準が低い上に取材費も出ないようでは話になりません。
 この辺りは、自分自身で調べるか、今後、このブログでも説明しますので、しっかり判断してください。

 通信社については、古い本ですが、下山進「勝負の分かれ目」が最も参考になると思います。

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2017年12月25日

国際報道について





 今回は、日本の新聞の海外報道態勢について書きます。

 社会部、政治部、経済部はどの全国紙にも存在します。
 しかし、海外ニュース部門の名称については、各社さまざま。
 私が思いつくだけでも、国際報道部、国際部、外報部、外信部と名称は一致していません。
 もし外国の担当をしたいのならば、試験を受ける会社の組織図で名称を確認しておく方が良いでしょう。

 各社で名称が異なるのは、社内の地位が低いことと関係しているかもしれません。
 社会、政治、経済に比べると、どうしても「付け足し」も感が否めません。

 日本の新聞では(外国もほとんど同じ状況ですが)、外国のニュースを読みたいと思う読者は多くありません。
 読む人が少ない面は広告料が下がります。
 新聞で広告料が高いのは読まれる率が高い面。だから、一面は小さな枠でも高額ですし、逆に読まれない面の代表格である国際面は新聞によってはタダ同然となる場合もあるそうです。

 一方で、海外に支局を構えると経費がかかります
 外国語の研修のために事前に赴任候補者を1年程度かけて留学させ、手当を多めに出し、治安の悪いところであれば安全対策に気を遣わないといけません。
 読まれないのに、お金だけはかかる。しかも、お金をかけても国内ニュースのように特ダネを出せるわけでもない。

 必然的に社内で国際報道の地位は下がります。
 だから、国際面というのは新聞の中で探しづらい場所にありますよね。
 逆に、社会面、総合面(政治・経済が主)というのは、新聞をめくれば出てくる場所にあります。

 経費節減を迫られる中、国際報道には力を入れたくても入れられないというのが実情
 仕事の性質上、国際報道が柱の一つとなる通信社を除けば、日本メディアで国際報道を志望する人材の需要は低くなると考えておいた方が良いでしょう。
 安全保障面で極めて重要な中国、朝鮮半島を中心とするアジア地域や米国については、今後も日本メディアは力を入れると思いますが、それ以外の地域の支局は「お荷物」扱いかもしれません。
 つまり、入社に当たって、「将来は欧州に赴任したいです」と言うのは、よほどの技能がない限り、あまり得策ではないということです。


「特派員」という言葉がこんなかっこいいイメージの時代もありましたが、やはり映画の世界です

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2017年12月22日

経済部記者について




 今回は経済部についてです。
 社会部や政治部に比べるとあまりなじみがないかもしれませんが、「人間的な暮らし」はしやすいかもしれません。
 朝や夜の取材がないわけではないのですが、社会部や政治部に比べれば規則性があります。

 経済部記者の取材相手の多くは官僚や企業幹部。
 結局はサラリーマンですから、土日は休む人が多く、世間の一般常識の範囲に収まる人が多いですね。
 それに歳を取るにつれ、経済政策や企業情報が自分自身の生活に密接に関わっていることを実感するようになるので、実益を感じながら仕事をできる部署とも言えます。

 ただし、やはり慣れるまではかなり高度な知識が求められ、とっつきにくいでしょう。
 社会部だって、政治部だって、政策の勉強をしたり、特有の人間関係、歴史の積み重ねを頭に入れないといけないのですが、経済部は分野が広く、担当が違うと全く別の仕事をしているような感じがします。
 それに、全国紙といえども経済については、「一般紙」として扱われ、他の部であれば大手を振っていけるところが少ない印象を受けます。
 つまり、経済部の扱う領域では、日本経済新聞が圧倒的な強さを誇り、他は後回しにされる傾向があります。
 「一強多弱」と言って良いと思います。
 東京で通勤電車の車内を見れば、よく分かると思います。新聞を読む人が減っているとはいえ、それでも日経が目立ちます。
 一定のレベル以上の日本人が購読者ですから、企業は日本経済新聞の一面に自社情報を載せてもらうために情報提供しますし、官僚も日経の影響力の大きさをよく知っています。

 では、日経の記者が恵まれているのかというと、これも一概にそうとも言えません。
 他の会社であれば、一人の記者が担当するところを、2、3人、場合によってはもっと多数でカバーします。
 つまり競争が極めて厳しいわけです。
 「抜いて当たり前」ですから、他紙が企業情報を先に書くと社内では厳しい評価が下ることもあります。



2017年12月21日

政治部の番記者について





 ネットを見ていると、総理番記者について誤解している方がおられるようです。
 ネット上では、安倍晋三首相の「元総理番」として、NHKの岩田明子さん、産経新聞の阿比留瑠比さん、元TBSの山口敬之さんの名前を挙げる人がいます。
 有名になると批判も避けられないので、かなりの悪評を立てる人もいますが、それぞれが安倍さんと密接な関係があり、特ダネをしばしば出していることは事実です。
 ただし、このお三方は、年齢から言って、安倍さんの総理番をしたことはないはずです(人繰りがつかないときにたまたま官邸入り口に立って、総理番の仕事を代行したことはあるかもしれませんが)。
 この方たちは、安倍晋三官房副長官、安倍晋三幹事長、安倍晋三官房長官の番記者でした。
 つまり、岩田さんたちは15年以上の時間をかけて、安倍さんとの密な関係をつくり、維持してきたということです。

 前回お話ししたように、若い総理番記者が時の最高権力者と個人的な関係を築くことは非常に難しいと思います。また、短期間では「側近」と呼ばれるほどの関係にはなかなかなれません。
 官房副長官というのは、重要な職務ですが、首相や官房長官に比べると自由な時間があり、まだ一般には顔もそれほど知られていないので、その頃の安倍さんも記者と一緒に気楽に食事に行くことも多く、個人的な関係を構築しやすかったのだと思います。
 もちろん、他社も番記者を置く中で、このお三方が「安倍側近」として名前が挙がるのは、それぞれに能力と魅力があり、記者としての努力をしたからだと思います。
 記者としての努力とは、単純に言えば、これまでお話ししたように早朝に起き、深夜に帰宅する生活をいとわないということです。

 さて、政治部記者の出世の仕方としては、総理番で下積みをして、与党幹事長や官房長官などの重要政治家の担当記者、外務省や防衛省などの省庁の担当をこなして経験を重ねた上で、サブキャップ、キャップとして管理職の立場になっていきます。
 政治部記者のつらいところは、若手のうちはほとんど記事を書けないということです。
 前回お話ししたように、経験の浅い総理番は首相動静以外はなかなか記事を書かせてもらえません。
 官邸入り口で監視することが使命なので、落ち着いて記事を書く時間がないということもあり、重要な政局や政策に関わる事柄は首相官邸クラブのキャップや別の記者が書きます。
 書かせてもらえる記事といえば、地方の名産をPRするための「◎◎さくらんぼ娘」のような若い女性に首相が面会したといった柔らかい内容。それはそれで読んでもらえる記事なので重要ではあるのですが、「政局の記事を書きたい」「外交を論じたい」と思っている記者にとっては物足りません。

 幹事長番や官房長官番になると、大物政治家やベテラン秘書と気軽に話をでき、視点が広がり、多数のいわゆるオフレコ情報にも接することができるようになるので、一気に政治部の楽しさを感じられるようになります。しかし、記事はなかなか書かせてもらえず、担当する政治家の記者会見やオフレコの発言を「メモ」という形で文字に起こし、メールで同僚に送ることが仕事の中心です。
 政治部記者の仕事の大半は、このメモづくりです
 必然的に他人の書いたメモを読むことも仕事になります。

 首相官邸や自民党のような大きな記者クラブ(それぞれ正式名称は永田クラブ、平河クラブ)のキャップは自分の部下である各番記者が送ってくるメモを熟読し、自分自身の取材や経験を基にして、大きな記事を書きます。
 一つの小さな記事(ベタ記事と呼ばれます)にも、数多くのメモが土台になっていることがあります。

 メモづくりの毎日が続くと、やりがいを感じられなくなる人もいます。






2017年12月20日

総理番記者の一日





 前回、サツ回り(警察担当記者)の生活にほんの少し触れました。
 今回は、サツ回りと並んで激務の政治部記者について説明します。

 政治部記者の代表格として総理番記者を取り上げましょう。
 総理大臣(首相)を担当する記者は総理番と呼ばれます。
 現場を知らない人には意外かもしれませんが、総理番記者は政治部の最若手の仕事です。
 なぜなのかはこれから順を追って説明します。

 本日の朝日新聞によると、19日の首相動静(総理大臣の一日の動き)は午前9時33分に自民党本部から始まり、午後9時43分に帰宅で終わっています。この首相動静は、総理番記者が作成します。
 前日に大まかな日程が発表されますが、突発的に重要事件が起きるかもしれないし、要人が会いに来るかもしれないので、早朝から警戒しておく必要があります。
 ただし、安倍晋三首相は自宅住まいなので、本来は朝出発するところから取材するべきなのですが、交通の問題や警備上も不都合もあるので、通信社の記者だけが早朝から自宅周辺で張り込みます。
 ほかの記者は、早めに首相官邸に出たり、自民党本部に行ったりして、その日の準備をします。
 結局、安倍首相の出勤が9時半といっても、記者はもっと早く活動しなければいけません。

 朝日新聞によると、安倍首相は午前中に自民党役員会、官邸で国家安全保障会議の9閣僚会合、外務省高官、茂木敏充経済再生担当相らとの面会をこなし、正午すぎに都内のホテルで開かれた昼食会で講演。午後は官邸に戻り、自衛隊幹部の新旧交代のあいさつを受けたり、政府与党政策懇談会や韓国外相との会談をこなしたりしています。さらに、夜は都内のレストランで自民党議員の忘年会に出た後、日本経済新聞の会長や社長と会食してから帰宅しています。

 かなり省略しましたが、相当な仕事量です。
 総理番は官邸の入り口で来客を待ち受けることが基本的な仕事です。
 安倍首相も大変だと思いますが、取材する側も体力を使います。
 首相が自民党本部に行ったり、ホテルに行ったり、国会に行ったりするたびに追い掛けないといけないので、監視しているだけでも相当疲れます。
 だから、最も若い記者が担当します。
 ベテランが楽をするというより、肉体的に不可能なのです。

 官邸には「番小屋」と呼ばれる記者用の部屋が一階にあるのですが、そこにいても来客が入ってくることを把握できないので、総理番記者の基本は立って待つことになります。
 官邸の入り口は夏暑く、冬寒いので、いくら若いとはいえ、睡眠不足が続く中で、かなりきつい職場環境です。
 来客が来ると、その都度、関係する担当記者に連絡します。
 例えば、外務省の局長が来たのなら、外務省を担当する先輩記者に「※※局長が総理に会いに来ました。入りで『×××』の件の報告だと話していました」と伝えます。しかし、この連絡が遅れたり、忘れたりすると、叱責を受けてしまいます。
 結局、総理番は忙しいときは電話ばかり。伝える内容は「※※さんが総理に会いに来ました」ばかりです。
 意味のある取材をしているようには思えず、つまらないことで怒られます。

 しかも、担当している安倍首相と言葉を交わす機会はほとんどありません
 これが総理番にとって一番つらいことかもしれません。
 テレビで伝えられる「ぶら下がり」という取材は、ほとんどテレビの記者による代表取材。
 質問しようと思えばできるのですが、限られた時間なので容易ではありません。
 安倍首相の姿を見るのも、官邸を出入りするときだけという日だってあります。
 幹事長番、官房長官番などと呼ばれる記者は担当する政治家と密な関係を築くことが求められますが、総理番の場合は最初からそのようなことは想定されていません。

 さて、安倍首相が官邸での仕事を終えても、夜も総理番のつらい仕事は続きます。
 外のレストランで会食すれば、寒空の下で待ち続けることになります。
 夜の日程がない日でも、昼間はなかなか落ち着いて記事を書くことができないので、夕食抜きで仕事をせざるを得ないこともあります。
 また、総理番記者だから首相だけを取材しているというわけではなく、側近の政治家や秘書官の自宅に取材に行くことも求められます。警察官の場合と同様、深夜に帰宅する取材対象を待つわけです。

 首相番の作業は、毎日一人でこなすことは不可能なので、大手紙の場合は数人の記者が日替わりで担当します。
 こんな生活を一緒にしていると連帯意識も出てくるので、会社が違っても総理番は互いに協力しています。
 これを談合だとか、なれ合いだとか呼ぶ人もいるかもしれませんが、一人でやると死にそうな職場では自然なことでしょう。
 首相の夜の日程が入れば、総理番が交代で食事を取るなどして助け合わないと体が持ちません。
 一緒にいる時間が長いし苦楽を共にするので総理番同士で結婚する人も割と多いですね。

 で、一日中、大変な思いをして、残る成果は首相動静の記事です。
 最高権力者にここまで密着して取材できるのは日本だけと言われるので、やりがいはあると思うのですが、地方支局で特ダネを取ってきた記者の中には、つまらない仕事だと思う人も多くいます。

 さて、この文章を読んだ皆さんの感想はいかがでしょうか?






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