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2021年02月13日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,50


「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,50



ふだんはほんとうに仲のいい二人、彼女が笑えば私も笑って、嘗て一度もいさかいをしたことが無く、こんな睦まじい男女は無いと思われる二人、それが英語の時間になると決まってお互いに重苦しい、息のつまるような気持にさせられる。



日に一度ずつ私が怒らない日は無く、彼女が膨れないことは無く、ついさっきまであんなに機嫌のよかったものが、急に双方ともシャチコ張って、ほとんど敵意をさえ含んだ眼つきで睨めッくらをする。



実際私はその時になると、彼女を偉くするためという最初の動機は忘れてしまって、あまりの腑がいなさにジリジリして、心から彼女が憎らしくなってくるのでした。



相手が男の児だったら、わたしはきっと腹立ちまぎれにポカリと一つ喰わせたかもしれません。

それでなくとも夢中になって「馬鹿ッ」と怒鳴りつける事は始終でした、一度は彼女の額の辺りをこつんと拳骨で小突いたことさえありました。



が、そうされるとナオミの方も妙にひねくれて、たとい知っている事でも決してこたえようとはせず、頬を流れる涙を呑みながらいつまでも石のような沈黙を押し通します。



ナオミは一旦そういう風に曲がり出したら驚くほど強情で、始末に負えないたちでしたから、最後は私が根負けをして、うやむやになってしまうのでした。



或る時こんな事がありました。

"doing"とか"going"とかいう現在分詞には必ずその前に「ある」という動詞、”to  be"を附けなければいけないのに、それが彼女には何度教えても理解出来ない。



 そして未だに”i going"  "He making"と言う様な誤りをするので、私は散々腹を立てて例の「馬鹿」を連発しながら口が酸っぱくなるほど細かく説明してやった揚句、過去、未来、未来完了、過去完了といろいろなテンスに亙って"going"の変化をやらせて見ると、呆れたことにはそれがやっぱりわかっていない。

依然として"He  will  going"とやったり"I  had  going"と書いたりする。
私は覚えずかッとなって、

「馬鹿!お前は何という馬鹿なんだ!"will  going"だの"have  going"だのってことは決して言えないッて人があれほど言ったのがまだお前には分らないか。
分らなけりゃ分るまでやってみろ。今夜一と晩中かっつても出来るまでは許さないから」

引用書籍
谷崎潤一郎「痴人の愛」
角川文庫刊

次回に続く。
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