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2021年01月19日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,12


「痴人の愛」本文  角川文庫刊 vol,12



何の躊躇するところもなく、言下に答えたキッパリとした彼女の返事に、私は多少の驚きを感じないではいられませんでした。

「じゃ、奉公を止(や)めるというのかい?」



「ええ、止(や)めるわ」

「だけどナオミちゃん、おまえはそれでいいにしたって、おっ母さんや兄さんが何と言うか、家の都合を聞いて見なけりゃならないだろうが」



「家の都合なんか、聞いて見ないでも大丈夫だわ。誰も何とも言う者はありゃしないの」

と、口ではそう言っていたものの、その実彼女がそれを案外気にしていたことは確かでした。



つまり彼女のいつもの癖で、自分の家庭の内幕を私に知られるのが嫌さに、わざと何でもないような素振りを見せていたのです。

私もそんなに嫌がるものを無理に知りたくはないのでしたが、しかし彼女の希望を実現させるためには、やはりどうしても家庭を訪れて彼女の母なり兄なりに篤と相談をしなければならない。



で、二人の間にその後だんだん話が進行するに従い、

「一遍、お前の身内の人に会わしてくれろ」

と、何度もそう言ったのですけれど、



「いいのよ、会ってくれないでも。あたし自分で話をするわ」

と、そういうのが決まり文句でした。



私はここで、今では私の妻となっている彼女のために、「河合夫人」の名誉のために、強いて彼女の不機嫌を買ってまで、当時のナオミの身許や素性を洗い立てる必要はありませんから、なるべくそれには触れないようにして置きましょう。



後で自然と分かって来る時もありましょうし、そうでないまでも彼女の家が千束町(せんぞくまち)にあったこと、十五の歳にカフェエの女給に出されていたこと、そして決して自分の住居(すまい)を人に知らせようとしなかったこと謎を考えれば、大凡(おおよ)そどんな家庭であったかは誰にも想像がつくはずですから。



いや、そればかりではありません、私は結局彼女を説き落として母だの兄だのに会ったのですが、彼等はほとんど自分の娘や妹の貞操ということに就いては、問題にしていないのでした。



                   次回に続く。





































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