永田町の秋は、あわただしいことになりそうだーー。自民党の石破茂新総裁は10月1日に新内閣を発足、4日に衆参両院で所信表明演説をおこなった後、7日から各党の代表質問をおこない、9日にも衆院を解散する方針を決めた。政治担当記者が解説する。
「当初は、10月29日公示、11月10日投開票という予定が有力でした。しかし、石破さんは“手のひら返し”で10月15日に公示、10月27日投開票という日程を選びました。いちおう表向きの理由としては、11月に投開票となると2024年度補正予算の成立が遅れ、2025年度の予算編成に日数的な影響が出る、という理由です。しかし実際は、参院岩手県選出議員の補選に合わせたようです。公設秘書の給与をだまし取った詐欺容疑で関係先を家宅捜索され辞任した、広瀬めぐみ元参院議員の補選が、同じ10月27日に投開票の予定です。岩手県の補選が、前哨戦的な扱いになっては困るというわけです」
もともと、総裁選の“御祝儀相場”のうちに解散総選挙を打つ、というのが与党の方針だ。その意味では既定路線ともいえるが、今回の“手のひら返し”にはもうひとつの大きな理由があるのだという。
「総裁選で、ポスト石破の最右翼になった高市早苗さんの存在です」
と明かすのは、旧岸田派の中堅議員だ。
「総裁選で一瞬、全員が息を飲んだのが、第1回の投票結果が発表された瞬間です。高市さんが党員党友票で1位となり、石破さんですら顔が一瞬、真っ青になりました。結果的に、岸田文雄首相や菅義偉(よしひで)前首相の支持で勝つことができましたが、麻生太郎副総裁を後ろ盾とする“高市一派”は、今回の結果にブチギレ状態で、石破さんにとって自民党を分裂させかねない危険な存在です。総務会長のポストを拒否したところからも、党内の融和路線とはほど遠いことがわかります」
そのために、“高市一派”が目論んでいた、ある計画をつぶす必要が出てきたのだ。
「じつは10月17日から3日間、靖国神社の秋季例大祭がおこなわれます。終戦記念日の公式参拝を総裁選の“公約”にしていた高市さんですが、この例大祭では、100人規模の超党派議員による参拝を計画していました。いわゆる旧安倍派を中心に、保守派の議員が集結するのは間違いありません。外交上の配慮はもちろんですが、石破さんとしては、これ以上、高市さんに目立ってほしくないところです。そこで、総選挙期間をぶつけたというわけです。さすがに選挙期間中となれば、参拝する議員は少ないはずですからね。いわば、危険なライバルとなった高石さんを『靖国神社に行かせない』という意味合いもあるというわけです」(同前)
5度めのチャンスをつかんだ男は、やはりただ者ではない。