2016年01月01日
やっと問題視 | 震災復興事業のずさん設計(呆)
1.はじめに
私の本業は建設関連の計画・設計です。私も「まるで素人が設計したような図面」を目にすること機会がかなり多いです。「発注者からコレで施工できる?」→「いつも回答はNO」という相談がたまにきます。秘密保持の関係上、どこの会社の設計とは書けませんが、アホ設計の成果が山のように存在することは確かです。いつか「絶対に問題になるな」と思っていましたが、「ようやく記事に出てきたな」というのが私の印象です。
2.河北新報の記事の内容
この記事を読みましたが、ここまでヒドい設計はみたことがありません。以下、河北新報の記事です。「仮設工の検討が足りない」、「座標が合っていない(震災前や日本測地系の地形図、測量成果を使っている)」、「神社等、絶対に避けなければ施工不可能なコントロールポイントを無視した設計」等は結構ありますが・・・。
震災復興事業でずさん設計横行
東日本大震災の復興事業で、異なる工事への同じ図面の流用や安全面での欠陥など、不適切な設計が横行していることが31日、分かった。設計会社などがずさんな設計をしても、発注主体の被災自治体が人手不足でチェックをできず、県、国も見抜けなかった。ことしは震災から5年となるが、巨額の国家予算を投じた復興事業で、作業員の安全が脅かされた上、追加工事で無駄な費用もかかる実態が浮かび上がった。
工事に携わった複数の関係者によると、問題があったのは震災の津波被害を受けた宮城県南三陸町の漁港復旧工事や、仙台市の河川工事、同県沿岸自治体の土木工事。関係者は「氷山の一角で、ほかにもずさんな設計は多くあった」と明かした。「税金の無駄遣い」として会計検査院にも報告されたもようだ。
南三陸町は2011年10月、被災した寄木漁港と韮浜漁港の設計をジャスダック上場の測量会社、川崎地質(東京)に約4800万円で委託し、13年11月、地元の建設会社を中心とするJV(企業共同体)が落札した。
だが設計を精査したJV側が、漁港の海水をせき止める工事で土のうの数が極めて少ないなど安全面の問題を指摘。寄木漁港の図面に、被災状況が異なる韮浜漁港と同じ図面が使われていることも判明した。JV側は設計通りに工事できず、工法変更で予定より約2千万円余分にかかった。
国土交通省の外郭団体、土木研究センターの了戒公利部長は「素人の設計で、作業員にも危険が及ぶ」と問題視した。
川崎地質は「町の委託業務で、コメントできない」としている。工事主体の南三陸町の担当者は取材に対し、図面流用があったことを認め「(設計は)あくまで工事の参考資料としての位置付け」と釈明。「より安全な設計方法はあったと思う」と話した。
宮城県が発注した仙台市の河川工事では、土手の斜面崩壊や増水の可能性など、安全面の検討が設計段階で考慮されていなかった。作業員の安全を守るため、業者側は想定外の工事を余儀なくされた上、数百万円の追加費用がかかった。県沿岸のある自治体の土木工事では、実際の工事範囲が設計上の面積より数倍広いことも判明。工事場所の地質についての事前説明もなく、工事変更で費用は予定より膨れ上がったという。
3.私の個人的な見解
上記の記事をみた結果、私の個人的な見解は以下のとおりです。
- 他の場所の設計図面を参考にして現場にあった図面を作成するのは良いことであるが、図面の丸パクリは全くの論外
- 川崎地質という会社は私も知っていますが、会社規模も小さいので調査モノしかできない会社と思っていた。設計も行うんですね
- 自治体の人手不足はない。他地域からの応援が相当来ている。職員の能力不足、派遣された職員の地域の精通度が低かったのでは?
- 地元建設会社が請け負ったのが失敗。宮城県内では震災前は公共事業は皆無。施工会社はモノを作ることを忘れてしまった。田んぼの畦畔も図面がないとロクに作れない有様。材料の調達もできない。だから足元を見られて資材が高騰。正直、まともに施工できる会社は少ない
- 工事発注の際の入札公告や特記仕様書をきちんと確認したのか。日本語を理解できるのか
- 工法変更については所定の手続きを行い協議すれば設計変更が可能では?
- 工法変更による約2千万円の金額増が自腹?
- 土木研究センターの部長様は国一の役人様ですよね。現場で設計したことがない方では?
- 町の担当の発言が凄い。「(設計は)あくまで工事の参考資料としての位置付け」。参考資料という位置付けの設計は存在しない。工事発注用図面は詳細設計ですよ
- 宮城県は設計段階で仮設工を本体工事の設計を分けて設計を発注したのか?それとも本体工事のみの積算で仮設工事の設計もやらせた?
- 施工会社のコメントで、作業員の安全を守るため、業者側は想定外の工事を余儀なくされた上、数百万円の追加費用がかかったとあるが、想定外という言葉は存在しない。施工計画を立案するときに、施工上のリスクを考えるのではないのか?追加費用は設計変更したのか?変更しないと契約違反になり責任が曖昧になる。共通仕様書にキチンと記載されていますよ
- 実際の工事範囲が設計上の面積より数倍広いことも判明。設計でも良くあるが、これは本当に勘弁してほしい。特にココの場所の設計ではなく、別のところの設計をしてくれよという指示
- 工事場所の地質についての事前説明がないという工事発注が存在するのか。発注者は施工しながら工事を実施させる気だったの?横浜の杭の問題と同じ体質。設計段階で不安材料はきちんと調べておくのが当たり前。県が追加調査を認めなかったのか?それとも設計会社の検討不足?普通は不安要素は報告書の申し送り事項に記載しておく
復興・復興と急いでいたこと、当時の与党は民主だったので仕方ないのですが、設計、施工、発注者の三者いずれも問題があると思います。事業を中止する検討や見直しするべきものも多くあったのではないでしょうか。少なくとも施工が始まる前に十分な調査、想定内の検討を行うべきです。検討の提案ができない設計会社もダメダメです。この問題を知っていて他人のフリをしていた私もダメダメ。また、ロクにチェックもせず、中途半端な状態で工事発注する宮城県内の体質が問題だと思います。
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ヤフーファイナンスの川崎地質の掲示板を拝見したところ、このページの文章を丸パクリしている方がいますね。私が書いた文章をアレンジもせずに、パクるのは止めて頂けますようお願いいたします。
河北の記事のとおり、この問題は氷山の一角です。
ただしこの記事ですが、一部の会社が行っていたことをあたかも業界全体が悪のような印象を受けるような書き方です。紙の記事もみました。なぜ5年も経ってからこのような記事を出したのか不思議で仕方ないです。問題が発覚したのは2013年。かなり前です。なぜその時期に出さなかったのか?何か諸事情でもあったのでしょうか?
行政、設計、施工会社の多くは、復興のために遠方から土地勘がない三陸に出向き、一生懸命働いている方がほとんどです。それなりに志しを持って働いています。そのような方々に対して無礼だと思います。
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1/1新聞等掲載記事について
平成28年1月1日の各地の新聞紙上等において、弊社が担当した設計業務の内容に不備があるかのような記事が掲載されました件について事実関係を調べましたのでお知らせします。
当該設計業務は、技術基準などに基づき設計したものであり、設計図面の流用などはございませんでした。
そのため、このような記事を掲載した報道機関に対しては、今後適正かつ厳格な対応を行う予定です。
出典:http://www.kge.co.jp
特に指名停止にもなってない。
実情は、報道されてる内容とはずいぶん違うようです。
諸事情は893