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2023年06月22日
私だけの特捜最前線→87「望郷、望郷U〜二つの事件と船村父娘のドラマを同時進行させた話」
※このコラムはネタバレがあります。
今回は、特捜最前線の放送5周年記念作品として前後編で放送された「望郷 凶悪のブルーハワイ!」と「望郷U 帰らざるワイキキビーチ!」を紹介します。
「望郷」前後編は、30年前の事件と現在進行形の事件に加え、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)と娘の香子(木村理恵)のドラマという「二本立てのストーリー」になっています。
ハワイを舞台に事件が展開
30年前に殺された若い女性の白骨死体と少年少女が写った古い写真が発見されます。当時女性の夫だった男は無期懲役の服役犯で、妻殺しの容疑がかけられますが、脱獄を図ってハワイへと逃亡してしまうのです。
男はハワイ移民の日系人二世で、幼なじみだった同じ日系人二世の女性(楠田薫)に会うために逃亡したことが分かりました。女性は夫を戦争で亡くした後、孤児を引き取って育てる慈善活動をしていたのです。
男は警察官から拳銃を奪い、スタジアムに立てこもりましたが、現地警察の一斉発砲によって負傷して逮捕されます。しかし、入院していた病院から再び逃走し、今度は何者かに殺された姿で発見されたのです。
神代課長(二谷英明)はじめ、特命課全員がハワイに集結し、男を殺した犯人を追うとともに、30年前の事件の真相究明に乗り出します。そして、女性が30年前の殺人を犯した疑いがあることを突き止めました。
男を殺した犯人(西田健)は女性に育てられた孤児で、女性の犯行が表ざたにならないように男を殺したのでした。特命課によって追い詰められた犯人は、バスジャックをした挙句、人質を取って立てこもったのです。
その人質が船村の娘・香子でした。飛び出そうとする船村を橘刑事(本郷功次郎)が必死で止め、女性は人質を離して出てくるよう呼びかけます。しかし、隙を突いた現地警察によって犯人は射殺されてしまったのでした。
日本を捨てられなかった女性
ドラマで一方のテーマになっているのが「ハワイの日本人移民」の歴史です。ドラマの中で、男や女性らが口ずさむ「ホレホレ節」のもの悲しい歌詞とメロディーが効果的に演出されています。
「ホレホレ節」は、移民一世の人たちが砂糖耕地での厳しい労働環境を歌った労働歌です。そんな重労働に耐えてきたハワイ移民ですが、太平洋戦争に巻き込まれ、人生を大きく狂わせた人も少なくありません。
男と女性は婚約者でしたが、戦争によって男は送還され、女性はハワイに取り残されます。終戦後間もなく、女性が男を頼って来日した時、男は別の女と結婚していました。女性は嫉妬から殺人を犯してしまったのです。
女性は国外逃亡したとして公訴時効(当時15年)停止の対象となっていました。ハワイでの永住権があったため、ハワイ(アメリカ)で裁判を受けることもできましたが、女性は日本への帰国を選択しました。
船村は「日本を捨てきれなかったんだろうなあ」と、女性の心情を図ります。そして、時効制度に対する皮肉を込めながら、神代課長に「罪を悔い、やり直そうとした・・・30年間ですよ」と語るのです。
航空機内で日本の領空に入った時、船村は逮捕状を読み上げながら女性に手錠をかけます。カンコ(関谷ますみ)がそっとハンカチで手錠を覆い隠し、船村は複雑な表情を浮かべるのでした。
船村から娘婿へのメッセージ
もう一つのテーマが「船村父娘のドラマ」です。香子は妻子ある男性と結婚する意志を船村に告げます。大反対する船村に「一生に一度だけ父さんの言うことを聞かない子供になる」と言い放ち、家を出てしまいます。
妻子と別れ、ハワイで香子と新生活をしようとした男性でしたが、起業するための全財産を詐欺で失ってしまいます。子供を宿していた香子にも中絶を促しますが、香子は産む決意をするのです。
捜査でハワイ入りしていた船村ですが、香子にも男性にも接触しません。しかし、香子が捨てた(あるいは落とした)「お守り」を拾い、ハワイにいる間、ずっと持ち歩いていたのです。
人質から解放されたものの、意識を失っていた香子を救急車内で男性とともに見守る船村。船村を父親と知らない男性は「俺のために父親と別れたことが、どんなにこいつを苦しめたのか・・・」と懺悔します。
船村は「しっかり頑張って、この地に根を張るんだよ」と励まします。ハワイ移民の苦難の歴史を知ったからこそ、出てきた言葉であり、同時に義理の父親としての厳しくも温かい励ましでもありました。
その時、香子が無意識につぶやいた言葉を聞き、思わず「お守り」を握らせた船村を見て、男性は香子の父親だと悟ったに違いありません。「お父さんと言ってるんですよ」と告げたのでした。
見どころの多かった「望郷」前後編
さて今回は前後編ということで、さまざまな見どころがありました。ストーリーには直接関係ありませんが、ちょっと紹介しておきます。
ハワイに逃亡した男を追うため、神代課長は船村とカンコを派遣します。船村は目をシロクロさせ、「自分が行きます」と真っ先に手を挙げた吉野刑事(誠直也)は、「なぜカンコが?」と不満をぶちまけます。
即座に神代課長は「高杉君は英語ができる」と答え、船村の通訳の任にあたるためだと示唆します。しかし本当は、船村を娘に会わせるための「特命」を受けての派遣でもあったのです。
部下たちの前ではあくまでも業務命令に徹しつつ、船村への温情あふれる配慮を忘れない神代課長。プライベートに関する調査を任されることが多いカンコへの信頼もかなり高いのでしょう。
そのカンコですが、ハワイでは背中のほとんどが見えるセクシーな服を着ていました。唯一の女性レギュラーである関谷ますみさんのサービスカットといったところでしょうか(笑)
もう一つ、昭和の時代を思わせるシーンがありました。男がスタジアムに立てこもった際、射殺も持さない姿勢を見せた現地警察の指揮官に対し、船村が「撃たないでください」と必死に懇願した場面です。
指揮官は承諾したものの、部下たちに対して「先に撃つな。だが、相手は日本人だ。真珠湾を忘れるな(リメンバー・パールハーバー)」と叫んだのです。その指揮官も日系人だったのにもかかわらず・・・
塙五郎氏の脚本通りだったのか、天野利彦監督の演出だったのか、定かではありませんが、終戦から40年に満たないという昭和の時代だったからこそ、あえて指揮官のセリフに加えられたのではないかと思います。
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