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2023年02月09日

私だけの特捜最前線→72「刑事を愛した女〜桜井刑事の葛藤を描いた激辛なドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線のスタート時から出演している桜井刑事(藤岡弘、)は、初期の段階では若くして警部になった超エリート刑事として描かれています。「刑事を愛した女」は、その頃の桜井が主役のドラマです。

検察側の証人に立ったのは?

大手企業を乗っ取ろうとした総会屋が殺され、実行犯を追っていた桜井と同僚刑事は犯人を逮捕しますが、その際に同僚刑事は階段から転落し、植物人間になってしまいました。

事件の背後にいる大物が実行犯の自供で起訴され、裁判にかけられます。検事(岸田森)が実行犯を証人として出廷させようとしましたが、実行犯は特命課が護送中、スキをついて逃げてしまったのです。

検事はその代わりに桜井刑事を証人に立てましたが、大物と実行犯を仲介した人物についてはあいまいな証言をします。桜井はその人物が、同僚刑事だったことを薄々感じていたのです。

同僚刑事の妻(山口いずみ)は、かつての桜井の恋人だった女性でした。桜井は自分が証言することで、同僚刑事の妻や母親が不幸な目に遭うと思っていました。ところが、検察側は妻を証人に立てることを決めたのです。

妻を出廷させてはいけないと考えた桜井は、逃亡した実行犯を探し、ついに身柄を確保します。しかし、出廷時間には間に合いませんでした。妻は法廷で、自分の夫(同僚刑事)が共犯であることを証言したのです。

桜井の苦悩と激辛な展開

このドラマには、若き桜井刑事のエピソードが盛り込まれています。結婚まで考えていた女性が同僚刑事の妻になる・・・そのうえ、同僚刑事は出世競争で桜井をライバル視していました。

同僚刑事は暴力団と密着するうちに、大物の手下となってしまいます。逮捕時に実行犯を射殺しようとまで考えていたのですが、逆に自分が事故に遭ってしまいました。妻はそのことを証言台で語ったのです。

妻の心は、すでに夫(同僚刑事)から離れてしまい、以前の恋人だった桜井に移っていました。その思いにはこたえられない桜井、同僚刑事の家庭を壊したくない桜井、そして一人やけ酒をあおる桜井。

そんな桜井に、神代課長は「刑事は犯罪を捜査する。それだけだ」と叱責します。それでも迷いが立ち切れない桜井。エリートではあっても、刑事としてまだ未熟な桜井刑事の姿が描かれているのです。

ドラマには、さらなる衝撃のシーンが待ち受けていました。同僚刑事の母親が、植物人間になってしまった息子の姿を悲観し、生命維持装置を外してしまうという「殺人」を犯してしまったのです。

妻が赤裸々な証言を行った直後だっただけに、非常に激辛な展開だと言わざるを得ません。そして、母親による息子殺しの代償として、妻は自由の身になれたのですが、どこか重苦しいラストとなったドラマでした。

超エリートに対抗するおやっさん

桜井刑事から離れますが、ドラマの中盤でちょっとした見どころがありました。それは、岸田森さん演じる検事が特命課にやって来て、さまざまな不手際を叱責するという場面です。

検事は不手際を理由に「君たちは刑事失格だ」と糾弾します。その言葉に血の気の多い吉野刑事(誠直也)が激高しそうになりますが、割って入ったのがおやっさんこと船村刑事(大滝秀治)。

「失敗することが失格と言うなら、いつでも刑事失格だ」と、さりげなく検事の言葉を批判します。神代課長や桜井をもしのぐような超エリートである検事は「君は何という名だ」と高飛車な物言いを続けます。

おやっさんは名前を名乗りながら「あなたがオシメを当てている時から刑事をやっている者だ」と静かに啖呵を切ります。そして検事が立ち去った後、「どうなることかと冷や冷やした」と笑い飛ばすのです。

超エリートのキャリア対たたき上げのベテラン・・・岸田森さんと大滝秀治さんという名優同士の火花が散った名場面であるとともに、それを見守った高杉、吉野、津上という特命課のチームワークも垣間見れた気がします。



この作品は初期の特捜らしい見どころの多いドラマといえます。脚本を書いた塙五郎さんは、特捜で数々の印象的な作品を手掛けたメインライターの一人です。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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