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2022年11月03日

私だけの特捜最前線→59「母・・・・・・・・・〜紅林刑事が語る母への思い、子への思い」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介する第257回「母・・・・・・・・・」は、幼い時に生き別れになった母親を探している紅林刑事(横光克彦)の話が軸になっています。紅林は、母親との再会を果たせたのでしょうか?

殺人を自首した女性は紅林の母親か?

母親の消息を知っていると匂わせる男が、紅林刑事を喫茶店に呼び出しましたが、姿を現しません。男を探していた紅林は、男が殺されているのを発見し、現場から立ち去る60歳くらいの女性(楠田薫)を目撃します。

女性は、群馬県の小さな診療所の医師(久米明)の妻であることが判明します。医師は、免許を持っていない偽医者であることを紅林に告白し、妻が生き別れになった子供を見守るため、東京に行ったと話します。

やがて、ある大学教授の助手が重要参考人として連行されます。その直後、紅林の自宅に女性が現れ、「私はあなたの母です。男は私が殺しました」と自首したのです。その言葉に紅林は動揺します。

しかし、女性の突然の自首に不審を抱いた紅林は、女性が過去に務めていた病院を探します。生き別れになった子供がいたことは事実でしたが、それは紅林ではなかったことが判明するのです。

女性と紅林の母親は、ある病院で同僚でした。女性は、生き別れの子供の代わりに、幼い紅林を可愛がっていたそうです。ただ、母親のその後の消息については分かりませんでした。

紅林が「母の思い」を語る

助手を取り調べる特命課ですが、助手は容疑を否認し「犯人が自首したそうじゃないか」と詰め寄ります。そこに、手錠をかけられた女性が現れますが、女性は頑として「私がやった」と言い張るのです。

紅林は女性の心情を語ります。「人は嘘をついてもいい時がある。母が子供をかばうために嘘をつくのならば」。女性は犯行現場を目撃し、助手が連行されるのを見て、自首してきたのでした。

助手こそが、女性が生き別れた子供だったのです。すべてを悟った助手は、観念して犯行を自供します。「助教授になったら会いに行くつもりだった」と涙し、女性にすがりつこうとしますが・・・

紅林は二人の間に割って入り、「甘ったれるな。お前に俺の気持ち、お母さんの気持ちが分かるか。お前の汚れた手で、この人を触らせるわけにはいかん」と厳しく言い切ったのでした。

「医師」とは何かにも一石を投じる

親子の絆をテーマにした作品が多い特捜最前線のなかで、紅林刑事には「生き別れの母親を探す」というモチーフが用いられ、今回の作品は約1年後の完結編に向けたプロローグという位置づけになっています。

しかし、母親探しという面ばかりを追わず、事件の背景となった太平洋戦争中の731部隊の闇をえぐり、女性が夫とともに小さな村で献身的な医療活動をしてきたことをエッセンスに加え、ドラマに厚みを持たせています。

731部隊で秘密研究をさせられてきた大学教授の一人は「戦争の責任は個人が負うべきものではない」と持論を口にし、「研究のおかげで日本の医学が進歩した」とまで言い切っています。

面会していた船村刑事(大滝秀治)が、思わず「先生、正気ですか?」と驚いたほどでした。まだ、戦争の深い傷跡を抱える人が多かった昭和の時代らしい、強烈なメッセージ性あるシーンだったと思います。

一方で、医師免許がないにもかかわらず、村のために献身的に尽くしてきた男性。取調室のラストシーンで神代課長が「村人からたくさんの減刑嘆願が出ている」と話し、助手に罪を償って後を継ぐよう諭しています。

男性役を名優の久米明さんが演じたのも、見事なキャスティングと言えます。温かみのある人柄とともに、偽医者を隠し通さざるをえなかった苦悩など、見事に演じ切っていました。

最後に予告になりますが、次回の「私だけの特捜最前線」では、紅林刑事の母親探し完結編となるドラマを紹介する予定です。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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