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2017年07月02日

「心の負担」を跳ねのける方法

「心の負担」を跳ねのける方法



★★☆☆☆
本の概要

NASAの宇宙飛行士を選定するときの面接や、彼らの訓練のために使われるというPCM。宇宙飛行士はかなりのストレスを受ける職種である。このため、PCMのような特別なプログラムが必要になる。
そのPCMをベースに著者が簡単かつ即効性があるようにしたという内容が、この本には書かれている。
まず、人間を3つのタイプに分けて、タイプ別に対処法を記載している。そのほとんどが、現場の状況に応じてどのような会話や台詞を発すればよいか、というアプローチである。
感想など

宇宙飛行士の表紙に惹かれて買ってしまった。あと、もともとNASAにおける閉鎖環境とかのストレス実験の存在は知っていたので、その辺と関係あるのかな?とか、あのNASAが発端なら相当凄いんだろうな!という期待感から。

とてもシンプルに書かれていて、書いてある事自体はとても理解しやすかった。文体もとても親しみがもてるような語り口で、それ自体には安心感が持てた。特に、日々強めのプレッシャーを受けている人にとっては、読んでいるだけで救いの手が差し出されているような気持ちになれるかもしれない。

まずは、良かったと思えた部分から書いてみたい。
第1章は全般的に良かった。ここではまだ具体的な対ストレス策は書かれていない。ここではまずストレスやプレッシャーのメカニズムについて書かれている。この辺はとても分かりやすく、納得もいった。納得がいくことで、ストレスやプレッシャーの謎が少しだけ解けた気がして、それだけでもなんか少しスッキリできた。
また、3つのタイプの違いにかかわらない箇所は、そこそこためになると思う。例えば、非を認めて謝ることについての部分とか、「情けは人の為ならず」(正しい意味の方)の有用性だとか。

全体的には、共感性とか、十人十色であることを理解するとか、ハートフルであれ、ってことをベースにしているようで、その考え方には賛同できた。

ただ、ちょっと疑問視せざるをえない箇所もいくつかあった

まず、タイプ分けをあまりにもデフォルメしすぎているところ。このため、どのタイプも漫画やアニメに登場するような誇張されたキャラクターのように見える。

一応これについては、著者自らが最後のほうで、以下のように断りを入れている:
「なにがなんでも1つのタイプに当てはめる必要はありません。時と場合で反応も違うはずです。」(P.249 8行目)

さらに、光の3原色に例え、3つのタイプもそれぞれブレンドされることで人それぞれの色になっていく、とのこと。
ということで、好意的に解釈するならば、その無数のブレンド結果の内容をあくまで分かりやすく説明するための、デフォルメ3タイプだったということになる。

あと、「すっきりと仕事に取り組めるようになることをお約束します」(P.6 3行目)とか「あなたは人間関係とは無縁のライフスタイルを送れるようになるでしょう」(P.247 5行目)というように、ちょっと自信過剰っぽい、もっと悪く言えばやや無責任な、表現も見受けられたこと。
あと、本の帯に書かれている「PCM (= Process Communication Model) を独自に開発した感情調整法」というのが、意味がよく分からない。PCMそのものをこの著者が独自に開発したわけではないのは明白だが、それにしても分かりにくい言い回し。
あと細かいけど、文中では「宇宙飛行士」って書かれているのに表紙とかには「宇宙パイロット」って書かれている、とか。PCMを使うのはまさかパイロット限定というわけではないよね・・?多分。

あと、この本での3つのタイプ分けは、あくまで性善説をベースにしているのではないか?ということ。
つまり、これら3つのタイプは、互いに全然気が合わないだけであって、実はみんなそこそこ良い奴。そのことを互いに理解し合った上で発言していけば、互いにうまく行く、という考えなのではないか?
そうだとすると、悪意をもっている人や、鬱憤ばらしに誰かを攻撃する人とか、誰かにマウンティングしないと気がすまない人とかの、いわゆるクラッシャー上司だとか「未熟型うつ」(「新型うつ病」)の人との関係に対する処方箋には成り得ないのではないか。

多分、この手の本をまだあまり読んだことがないような初心者にとっては、分かりやすくてよいのかも。
ただし、心理学者や医師が書いた本ではないので、科学的な根拠が分かりにくい部分はあった。
とはいえ、世の中から不要なストレスやプレッシャーを無くしたいという著者の熱意は伝わってきた気がした。
この本そのものやその研修によって、気持ちが救われる人も多かっただろう。
また、クラッシャー上司のような人を含め、彼ら「自身」がこの本の内容をちゃんと理解/実践することができたならば、かなり有効なんだろう。

というわけで、以下のように直すことができていたら、良い本になり得たかもしれない、と僭越ながら思った:
・自信過剰&効果を誇張するような文言を取り払う。
・人間関係に万能に効くわけではなく、主に気が合わない同士でもある程度仲良くやる方法についての本である、というのをあらかじめ分かりやすくしておく。
・3つのタイプ分けはあくまで分かりやすく説明するためのものであり、実際はそれら3要素が人それぞれの中で様々な配分でブレンドされているのだ、ということをはじめの方に言っておく。

ストレス対処関係の本

ストレスのはなし - メカニズムと対処法 (中公新書)


タグ:心の負担
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