ここで語られている公営住宅は、10年以上も前の時代の話。
今では、生活保護相当世帯の住処は公営住宅+住宅扶助で併せて330万戸(世帯)の支援をしているということであり、その世帯よりも上の階層のみについての対処については優先順位からすれば低いものであり、本来カバーすべき、生活保護相当の低所得者の住宅の確保について応えるものではない建て替えをしないというだけのお粗末な施策であり、とても先進的な施策という訳にはいかないものなのだ。
何も知らない人が取り上げるとこうなってしまうという非常に悪い例だ。
日経BPより、
特集・公営住宅で公民連携
市営住宅の廃止分を家賃補助で代替、ひたちなか市
市・事業者・入居者それぞれにメリット 、空き家対策にも
武田 大輔=ライター【2016.1.4】
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/PPP/120200018/122400004/?ST=ppp-print
記事より、
茨城県ひたちなか市では、市営住宅への入居資格がある市民を対象として、民間賃貸住宅に入居した場合に、家賃の一部を補助する制度を2010年度から開始した。老朽化した市営住宅の用途廃止に伴う住戸不足の補完として、民間賃貸住宅の空き室を活用している・・・
人口約15万人の同市では、24カ所・1849戸(2015年4月時点)の市営住宅を保有する。中には昭和30年代に竣工した築50年が経過するような住棟もある。2010年度以降、86戸を用途廃止とし、15年度は42戸を廃止予定だ。さらに16年度以降、何年か掛けて95戸を廃止し、計240戸を削減する計画・・・
この住戸廃止による公営住宅の居室の不足分を、アパートなどの民間賃貸住宅で補完しようというのが、この家賃補助制度だ。スタートした2010年から毎年20人、2015年度まで計120人が制度を利用している。
対象となる民間賃貸住宅は、家賃が5万円以下であること、礼金が不要であることのほか、新耐震基準を満たすこと、火災報知機などの消火設備が設置されていることが条件・・・
入居基準は、市営住宅の入居基準と同等だ。適用されると5年間、家賃補助を受けることができる。満了後には再び申請することも可能なので、長期間の居住の安定も守られる・・・
2015年11月現在、利用者は85人だ。また、2010年度に申し込んだ20人のうち、6人が継続利用・・・
家賃補助制度の検討は、同様の制度を導入していた岐阜県多治見市を視察したり、建て替えや借り上げとのコスト比較(※)をしたりするなどして進めていった。将来的な人口減少の見通しも含め、家賃補助制度とする方がメリットが大きいと最終的に判断した。家賃補助制度に対しては、2013年度からは国の補助金(社会資本整備総合交付金 地域住宅支援分野効果促進事業)が適用されるようになり、事業費の50%は補助金で賄えるようになった。ちなみに、2014年度の事業費の1613万6000円・・・
家賃補助制度の利用は、若い世代の一般世帯か母子世帯が多く、年金で生活する高齢者世帯は少ない。その理由は、経済的な点が大きいといえそうだ。補助は家賃が5万円以下の民間賃貸住宅を対象としているが、補助額の上限が2万円なので、補助を受けた場合も3万円程度は賃料負担が発生する。一方、市営住宅の賃料は1〜2万円程度の住戸が多く、安価な住戸では1万円を切る・・・
このように、市営住宅のすべてを家賃補助制度で代替できるわけではない。市営住宅は、住宅に困窮する市民に対して住宅を供給する本義から、今後も一定量を保持する必要がある。
では、家賃補助制度の利用者ニーズはどうか。ひたちなか市の市営住宅では、人気がある住戸では3〜4 倍程度の倍率となることもあるという。一方の家賃補助制度は、「毎年定員は埋まるが、募集人数を超える応募が来て抽選になるというほどではない」・・・
とあるがいろいろと疑問があり、ミスリーディングな記事であることは間違いない。
そもそも公営住宅が本当にカバーすべき所得階層というのは5万円の家賃が支払える人が中心とは言えない、ということであり、公営住宅とは生活保護の住宅扶助費をもらうのか、公営住宅に入るのかという層がメインの対象ということが前提であることを忘れてはならない。
そしてよくあることだが、民間は押し良い所だけ持って行って、残った事業は採算が取れないゆえに、市が引き取り、市は赤字事業に苦しむという構図がより鮮明になるというものだ。
この例もまさにその例と言える。
まず、民間賃貸住宅への家賃補助でカバーできる住戸数は極わずかでしかないということだ。
例えば市営住宅、
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/soshiki/9/5/2/3/2311.html
市営住宅一覧 第1ひばりヶ丘住宅
家賃 19,300円から52,300円
間取り 2DK・2LDK・3DK
などとある。
ひたちなか市の市営住宅の情報はとても分かりにくいのだが、公営住宅の家賃は所得の額に応じて家賃が決まるので、例えば、この第1ひばりヶ丘住宅であれば、2DKで、所得が一番低いランクの場合には19,300円と家賃はなるだろう(さらに減免などがあるかもしれません)。
年金生活者で持ち家ではいという場合には、所得が一番低いランクになることが多いので、家賃は2万円を切るということになる。
果たして2万円を切る家賃の民間住宅が存在するだろうか?
民間賃貸住宅への家賃補助は5万円の家賃の民間住宅に2万円の補助で実質負担が3万円(実際にこのようなケースが多いと思われる)というものであり、1万円以上の家賃の差がある。
また、家賃補助は毎月払われる仕組みではなく、入居者が建替える必要があるので、通常の家賃が払えるということが前提となっている。
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/soshiki/9/5/1/5725.html
年に4回補助金が払われる仕組みであり、5万円の家賃を3か月間滞納せずに収められるということが条件なのである。
これができない人は入居できない。
現実問題、公営住宅については入居者が高齢化、不安定労働者が増えており、所得は一番低いランクであることが多く、5万円の家賃を仮にも3か月問題なく払うということが厳しい人が多い。
本当に必要な公営住宅というのはこうした低所得者に対してであることから、ひたちなか市の家賃補助というのは公営住宅のごく一部を民間賃貸に置き換えるものといってよいだろう。
もちろん、こうしたある程度所得がある層のみを切りだせば、公営住宅を建設するよりも安いという数字もはじくことは可能だろう。
しかし、こうして切り出してしまうと、そもそも毎月5万円の家賃さえ払えない人に対しての公営住宅についての収支が悪化するということでもある。
そして、全体の収支からすれば、かえってマイナスになっているということになっているはずだ。
公民連携もいいのだが、このような中途半端な、民間だけいいとこどりという施策が注目されてしまうのはいかがなものかと思う。
きちんとデータ分析をしないと、勘違いした市長などがこれはいいと飛びつくだろう。
ひたちなか市の家賃補助制度はとても公営住宅を代替するというものではないということは明らかだ。
参考)公営住宅と住宅扶助について 国交省HPより、
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/singi/syakaishihon/kotekibukai/1bukai/1bunkasan-2.pdf
生活保護の実態について 厚生労働省HPより
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000164401.pdf
「生活保護」に関する公的統計データ一覧 国立社会保障・人口問題研究所
http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.asp
これにより、H26で1,362,351世帯が住宅扶助を受給しており、この数は年々増えている。
戸数にすれば136万戸。
公営住宅の数は196万戸(H25)となっている。10%が生活保護=生活扶助として、
公営 190万戸 + 住宅扶助 140万戸 =330万戸 の低所得者住宅と考えることが可能。
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