2017年11月16日
文章が美しい『銀の匙』中勘助
角川文庫の風情あるカバーとタイトルと作者名に惹かれて、手にとった一冊。
明治時代、東京の下町神田に生まれ育った作者が、少年時代を綴った自叙伝である。
少年は、生まれつき体が弱く人見知りで、産後の肥立が悪かった母に代わって伯母が世話をしてくれた。というより伯母の背中で育ったのだ。書斎の小箱に大事にしまってある「銀の匙」は、懐かしい思い出が詰まったものである。それは幼子の小さい口に薬を運ぶのにちょうどよく、伯母が探してくれたものであった。
文章から、作者は観察力に優れていたことがわかる。少年の日々がたんたんと綴られているが、文章を追っていると映像がはっきり浮かんでくるのが不思議である。
こんな風に文章が書けたらいいなと思ってしまう。
この作品は読み込むというより、ただ文章を追っているだけで穏やかになる作品である。
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