2020年06月04日
彼岸花畑
俺はその晩、友達の家から自転車に乗って帰路についていた。
時刻は十時ごろ。田舎なので、周りは田んぼと川しかなかった。
満月がめちゃくちゃきれいで、電灯なんかなくても地面を照らしてくれている。
空気はひんやりしていて乾いている。
風も少し吹いていて、これがまた気持ちいい。
とにかく、いつまでも自転車で走っていたい様な夜だった。
で、俺は少し遠回りして帰ろうと思った。
地元の道はほとんど知ってるし、月が明るいので道もよく見えるから、道に迷う心配は無かった。
さっきも書いたように月が綺麗だったから、極力月を見ながら走ってた。
そのせいかいつの間にやら全く知らない道に出ていて、道路も舗装されていないむき出しの地面の上を走っていた。
周りは木々が茂っていて、せっかくの月が見れない。
あれ?こんな道あったけなー?とか考えつつも、少し怖かったので全力で駆け抜けた。すると、急に木が無くなって視界が開けた。
そして眼に入ってきたのは、月に白く照らされている地面。
道は一本道で、はるか彼方まで続いている。道のほかには彼岸花しかなかった。
こちらも見渡す限り続いていて、彼岸花畑の中に一本白い道を引いているような感じ。
いま思うと明らかにおかしいが、そのときの俺はその光景が綺麗過ぎて感動しかしていなかった。
それからはずーっとその一本道を、自転車でゆっくりゆっくり走っていた。
どれくらい走ったのか、いつの間にか空は白み始めていて、
彼岸花畑もなくなっていて、道も知っている道に出ていた。
俺は夢から覚めたように急いで家に帰ると、母が起きてきた。
そして、俺を見た瞬間「どこいってたん!?あんた!!ちょっとお父さん!!おきて!!」と大騒ぎ。
近所の人にも電話をかけている。
そんな、一晩帰らなかったくらいで・・・と思ったが、どうも慌て方が変だ。
いろんなトコに電話をかけている。
すこし落ち着いて、「おまえ一週間もどこいっとたんじゃ!」と親父に怒られた。
会う人みんな「一週間も〜」と言う。
頭の中は???だらけだったが、新聞の日付を見て愕然とした。
なんと、俺が友達の家を出た夜から確かに一週間たっている!!
なんで?一晩しかたってないはずなのに??
その後いろんな人にどこに行ってたのかと聞かれたが、俺が聞きたいくらいだ。
あの彼岸花畑はいったいなんだったのか・・・
<感想>
そのまま帰ってこれない人もいるんでしょうね。
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posted by kowaidouga at 09:05| 超怖い話(山・森・田舎編)