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2020年06月07日
初恋の相手
俺には10歳上の従妹がいた。
綺麗な人でとても優しい。
名前は由紀(仮名)といった。
由紀は俺の明仁(仮名)という名を崩して、『あっくん』と呼んでくれていた。
近所に住んでいて、年の離れた俺とよく遊んでくれた。
いつも一緒で大好きだった。
由紀が社会人になり遊ぶ機会は減ったが、幼少の頃と変わらず懐いていた。
俺が中学に入学した頃、由紀は結婚した。
初恋のようなものを感じていた俺は、正直ショックだった。
結婚と共に遠くへ引越した彼女とは会わなくなってしまった。
それからしばらくして、久しぶりに家へ遊びに来た。
長い再会までの期間と、幸せそうな由紀の顔に胸が詰まった。
両親と楽しそうに会話を交わすリビングを抜け出し、自分の部屋へ戻ろうとしたが、由紀は追いかけて来た。
「待って、あっくん、久しぶり」
「…うん」
俺は階段を昇りながら答えた。
複雑な感情を割り切れないまま、何故か少しの苛立ちと少しの悲しみが混ざり、由紀の顔を見れない。
「ねぇあっくんってば」
そんな俺の気持ちを知る筈なく、俺の後ろをついて昇ってくる由紀。
呼ばれ手首を掴まれた。
軽い力だったのに、心臓が痛いくらい跳ねて、それを振りほどいてしまった。
一瞬。
階段でバランスを崩した由紀は、呆気なく落ちていった。
派手な音が耳に入って動けなかった。続きを読む...
posted by kowaidouga at 09:05| 超怖い話(人間編)