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2020年08月21日

【彩りあざやか】食品に使用される着色料

着色料の使用目的


 着色料は、食品の製造工程や保存時の色調の変色や退色を補って、色調を整える効果があります。





 ナフサ由来のタール系色素は、鮮明な色を出し、退色しにくいという優れた特徴を持った着色料でしたが、1960年代にそれまでに食品添加物として指定されていたタール色素に発がん性などが指摘され、相次いで指定が取り消され、タール色素のイメージが非常に悪化しました。





 日本では、伝統的な食習慣から色の派手なものよりも、より自然に近い色を好む傾向があり、ベニバナの赤色やクチナシの実の黄色、ヨモギの葉の緑色などを食品の着色に使用してきた経験もあり、天然由来の着色料が広く使用されています。





 ただし、食肉や魚介類、野菜といった生鮮食品に着色料を使用することは法律で禁じられています。これら生鮮食品に着色料を使用することは、その品質と鮮度に関して消費者の判断を誤らせるおそれがあるからです。



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色素各論

アナトー色素(アナトー、カロチノイド)

 

 ベニノキ科ベニノキの種子の被覆物から、油脂又は有機溶媒で抽出するか、あるいは加水分解して得られます。主成分はカロチノイド系の黄橙色の色素です。ハムやソーセージ、水産加工品、チーズ、マーガリン、卵加工品、タレ類、コーンカップなどに使用されています。



ウコン色素(クルクミン、ターメリック)


 ショウガ科ウコンの根茎よりエタノール、、油脂又は有機溶媒で抽出して得られます。主成分は、クルクミンという鮮やかな黄色の色素です。カレーの色はこの色素によるものです。カレーやたくあんなどの漬物、グミ、キャンディーなどの菓子に使用されています。



カラメル色素(カラメルI、II、III、IV類)


 ぶどう糖や砂糖、でんぷん加水分解物、糖蜜などを加熱処理することで得られます。製法の違いで4種類に分けられますが、同じような褐色を示します。カラメル水溶液は、淡褐色から黒褐色を示し、熱や光に対して安定です。清涼飲料水や乳飲料、即席めんのスープ、菓子類、漬物、つくだ煮、しょう油、ソースに使用されています。カラメルには、着色のほかに苦みやコク付け、ロースト感などの風味付け、ウィスキーの品質調整にも用いられます。





 カラメルは着色料の中で、用途が最も広く、使用量が最も多いです。天然系色素および合成色素を含めた日本の食品用着色料市場において、カラメルは数量ベースで80%以上を占め、需要量は約1万9千トンといわれています。





 カラメル Iは、でんぷん加水分解物、糖蜜または食用の糖質を熱処理して得られたもの、または酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を使用していないものです





 カラメル IIは、でんぷん加水分解物、糖蜜または食用の糖質に亜硫酸化合物を加えて、またはこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、アンモニウム化合物を使用していないものです。





 カラメル IIIは、でんぷん加水分解物、糖蜜または食用の糖質にアンモニウム化合物を加えて、またはこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物を使用していないものです。





 カラメル IVは、でんぷん加水分解物、糖蜜または食用の糖質に亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を加えて、またはこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたものです。





 カラメルを食品に使用した場合の表示については、食品衛生法とJAS法の規制があります。食品添加物であるカラメルの表示は食品衛生法施行規則に従って行なわれます。カラメルを着色料目的で使用した場合は用途名併記となり、「着色料(カラメル)」または「カラメル色素」と表示します。





 カラメルは、使用量の制限は規定されていませんが、着色料の使用基準が適用されます。この使用基準は、カラメル製品に「本品は、こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品を除く)、鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、のり類の食品に使用できません。」と表示しなければなりません。





 カラメルは、変異原性試験、反復投与毒性試験、発がん性試験等多くの試験が行なわれ、安全性に問題がないことが報告されており、安全性が確認されています。



クチナシ色素(クチナシ青色素、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素)


 アカネ科クシナシの果実を水やアルコールで抽出、あるいは加水分解して得られるものが、カロチノイド系の物質を主成分とするクチナシ黄色素です。果実の抽出液に酵素を作用させて得られる色素が、クチナシ青色素とクチナシ赤色素です。菓子や冷菓、めん類、水産練り製品、わさび、卵加工品、漬物、栗きんとんなどの着色に使用されています。



コチニール色素(カルミン酸、コチニール)


 スペイン南部や中南米のサボテンに寄生するカイガラムシ科の昆虫の乾燥体から水やアルコールで抽出して得られます。主成分はカルミン酸という物質で、色調は橙〜赤紫色を示します。清涼飲料水や冷菓、菓子、食肉加工品、かまぼこなどに使用されています。イタリアのカンパリというリキュールの着色にも用いられています。



タール系色素


 食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号及び食用青色2号の12種類が指定されています。菓子や漬物、魚介類加工品、畜産加工品などに使用される一方、カステラやきなこ、魚肉漬物、鯨肉漬物、こんぶ類、しょう油、食肉、食肉漬物、スポンジケーキ、鮮魚介類、茶、のり、マーマレード、豆類、みそ、めん類、野菜、わかめ類に使用することはできません。



銅クロロフィル


 クロロフィルは植物体内にある葉緑素のことです。クロロフィル中に含まれるマグネシウムを銅に置き換えて作られたものが銅クロロフィルです。青〜緑色を呈します。使用基準があり、昆布、野菜類や果実類の貯蔵品、チューインガム、魚肉ねり製品、生菓子、みつ豆缶詰中の寒天に使用されます。



ベニコウジ色素(紅麹、モナスカス)


 カビの1種となるベニコウジ菌の培養液を乾燥、粉砕した後、アルコールや有機溶媒で抽出することで、主成分がモナスコルブリンやアンカワラビンとなる赤色の色素が得られます。抽出時に酸性に調整されたアルコールを用いると黄色の色素が得られます。紅麹は、酒造りにも用いられ、中国の老酒や沖縄の泡盛の色は、この色素によるものです。カニ風味蒲鉾などの魚肉ねり製品や味付たこ、畜産加工品などに使用されます。



ベニバナ色素(ベニバナ赤色素、ベニバナ黄色素)


 キク科ベニバナの花から水で抽出すると、サフロミンというフラボノイド系の物質を主成分とする黄色の色素が得られます。黄色の色素を抽出した後、弱アルカリで再度抽出すると、同じくフラボノイド系のカルタミンという物質を主成分とする赤色色素が得られます。飲料や冷菓、菓子、中華めんなどに使用されています。なお、ベニバナは日本では昔から高級和菓子に使われてきました。



ラック色素(ラッカイン酸)


 ラッカイン酸を主成分としたアントラキノン系の赤色色素です。ラックカイガラムシの雌が分泌する樹脂状物質から抽出した色素です。やや青みのある赤色を呈し、耐熱性や耐光性に優れています。水産練り製品や畜肉加工品、冷菓、菓子類などに使用されます。



植物炭末色素


 竹を炭化させた竹炭が原材料となります。健康イメージなどにより、黒色食品市場で注目されています。竹炭は、他の色素に少量混合することで、濃深みのある色調を表現できます。微粉であるため、舌のざらつきも少なく、菓子類やパン、めん類に使用されています。



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まとめ


 着色料は、食品の製造工程や保存時の色調の変色や退色を補って、色調を整える効果があります。





 日本では、伝統的な食習慣から、より自然に近い色を好む傾向があり、ベニバナの赤色やクチナシの実の黄色など天然由来の着色料が広く使用されています。





 用途が最も広く、使用量が最も多い着色料はカラメルです。天然系色素および合成色素を含めた日本の食品用着色料市場において、カラメルは数量ベースで80%以上を占めています。





 ただし、食肉や魚介類、野菜といった生鮮食品に着色料を使用することは法律で禁じられています。これら生鮮食品に着色料を使用することは、その品質と鮮度に関して消費者の判断を誤らせるおそれがあるからです。




posted by Kaoru at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分
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