2020年08月20日
【多種多様な酸味】有機酸の性質と用途
有機酸とは、酸性を示す有機化合物の総称で、食品の中では酸味を呈す物質となります。酸化の防止や抗菌性が期待され、機能性も注目されています。自然界では果実などに多く含まれ、 代表的なものでは、柑橘類や梅干しなどに多く含まれるクエン酸や、食酢の主成分となる酢酸、リンゴやワインに酸味を付与するリンゴ酸などがあります。食品には、酸味を呈す酸味料などとして、清涼飲料水やゼリー、麺類、菓子パン、ソース、漬物、畜産加工品、菓子類などに幅広く使用されています。
酸味料となる有機酸の呈味の特性とクエン酸を基準とした場合の比較酸味度は、以下の通りです。
有機酸は、それぞれ特有の呈味特性を持つことから、用途に合わせて選択され、さまざまな食品に使われることになります。
溶液中にある酸自体の濃度を示す酸度の調整には、有機酸だけでなく有機酸のナトリウム塩などが使用されます。一例として、乳酸と乳酸ナトリウムなどは、組み合わせることで酸度調整に用いられます。酸の効果により酸度を調整することになり、酸味料の使い方のひとつです。酸度の調整に使われる有機酸とそのナトリウム塩などは、溶液中の水素イオン濃度を表すpHの調整目的にも使用されます。
一般的に食品は、pHを低くすることで保存性が高くなります。そのため食品のpHを酸性に保つ目的で、有機酸が使われ、保存性を向上させることもあります。
酸味料として以外にも調味料として使用される有機酸と有機酸のナトリウム塩のうち、調味料(有機酸)の一括表示が許可されているものは、クエン酸カルシウムやクエン酸3ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸1ナトリウム、コハク酸2ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸2ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムの16種類あります。この中で独特の酸味とうま味のあるコハク酸は、しょう油やみそ、インスタントラーメン、ハムなどに用いられます。
・クエン酸
クエン酸は、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類や梅干しなどに含まれる爽快な酸味を呈す成分です。酸味を付ける目的で清涼飲料水などに幅広く使用されています。人の細胞内にあるミトコンドリアでは、クエン酸回路(TCA回路)と呼ばれる反応が行われ、クエン酸はエネルギーの生産に関与しています。また、クエン酸の酸味には、食欲を増進させる効果があります。
・リンゴ酸
リンゴやワインなどに含まれ、爽快感のある酸味を持つため、清涼飲料水やフルーツゼリーなどの酸味料として用いられます。また、ソーセージなどの畜産加工品のpH調整剤をはじめ、さまざまな用途に使用されます。リンゴ酸もクエン酸と同様に細胞内ミトコンドリアで、エネルギー生産に関与しています。
・コハク酸
清酒やあさりなどの貝類に多く含まれ、わずかなうま味とエグ味のある酸味を呈します。特にコハク酸2ナトリウムは貝類のうま味成分であり、調味料としてグルタミン酸ナトリウムなどとともに使用されます。コハク酸もクエン酸と同様に細胞内ミトコンドリアで、エネルギー生産に関与しています。
・フマル酸
フマル酸は酸味が強く、サイダーなどの清涼飲料水、あめやチューインガム、クッキー、スナックなどの菓子類、シュウマイや餃子、ハンバーグなどの惣菜、ハムやソーセージ、チーズなどの畜産加工品などに使用される果実酸です。フマル酸もクエン酸と同様に細胞内ミトコンドリアで、エネルギー生産に関与しています。
・乳酸
乳酸は、乳製品や漬物などの発酵食品に多く含まれます。乳酸は、クセのないおだやかな酸味を呈します。 酸臭が少ないため、pH調整などにも幅広く使用されています。乳酸は、解糖系という体内の反応経路で生成します。この反応経路は主にぶどう糖をピルビン酸という有機酸に分解する代謝経路です。ほとんど全ての生物が解糖系を持っており、もっとも原始的な代謝系とされています。解糖系では、筋肉を収縮させるエネルギーを得るために、筋肉に蓄えられた糖質のグリコーゲンはピルビン酸を経て、乳酸まで分解されます。
また、長い間乳酸は疲労の原因物質と考えられていましたが、最近では乳酸が多く生成する過程で発生する水素イオンの影響により、体が若干酸性に傾くこととエネルギー源となるグリコーゲンの蓄えが少なくなることが疲労の原因と言われています。疲労は個人差もあり、さまざまな原因が重なり合って起こります。
・酢酸
酢酸は、特有のにおいが避けられることもあり、使用量は限られるものの食酢やソースの原材料として使用されます。また、酢酸は、菌の増殖を阻止する静菌効果が認められることから、日持ち向上の効果により、日持向上剤として用いられます。
・酒石酸
酒石酸は、レモンやぶどうなどの酸味のある果実に含まれています。ワインの醸造過程で、樽に付着する結晶化したものを酒石と呼ぶことから、酒石酸と命名されました。渋味とやや収れん味のある酸味を呈します。酸味料として、清涼飲料水やゼリー、菓子類、パンなどに使用されまるほか、pH 調整剤としても用いられます。酒石酸は摂取しても、そのまま排泄、あるいは腸内細菌によって分解されます。
有機酸は、酸性を示す有機化合物の総称で、食品の中では酸味を呈す物質となります。酸化の防止や静菌性が期待され、これらの機能性も注目されています。自然界では果実などに多く含まれ、 代表的なものでは、柑橘類や梅干しなどに多く含まれるクエン酸や、食酢の主成分となる酢酸、リンゴやワインに酸味を付与するリンゴ酸などがあります。
有機酸は、クエン酸やリンゴ酸、コハク酸、乳酸などそれぞれ特有の呈味特性を持つことから、用途に合わせて選択されます。食品には、酸味を呈す酸味料などとして、清涼飲料水やゼリー、めん類、菓子パン、食酢、ソース、漬物、畜産加工品、菓子類などに幅広く使用されています。
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