2020年08月19日
【産地のこだわり】銘柄豚
銘柄豚を名乗る上で規制は特になく、正式な定義も存在しません。小売の段階で銘柄名を記載したシールなどにより、一般の豚と区別されているものが銘柄豚に該当します。正確な数を把握できるような統計はなく、最新の調査では250以上の事例が報告されていますが、これも銘柄豚全体の1部にすぎません。
豚肉の銘柄化は、1950年代後半から始まり、1990年代初頭にかけて急増しています。その後も毎年増え続け、豚肉における銘柄化は、一般的なものとなっています。銘柄化の実施主体は、農協、個人農場、生産者グループ、株式会社、行政などさまざまです。地域名あるいは地域を連想させる名称が多く、銘柄が必ずしも高品質であることを意味しないことから、銘柄豚は産地表示の意味合いが強いといえます。とはいえ多くの銘柄では、単なる産地名表示とは異なり、差別化を図ることで一般豚とは異なることを主張しています。差別化のポイントとしては、品種や血統、飼料、飼養環境などです。
具体的には、特に品種を吟味し、無秩序な交雑を避け、肉質の優れた品質が一定化し、バラツキのないこと、脂肪の付着が適度で肉質はきめがこまかく、肉色は淡く鮮明で光沢がよく、食べて軟らかく美味い肉であること、飼料は栄養バランスの適正な配合飼料とし、飼料管理が適切に施されていること、衛生予防対策が適切に確立されていること、生産や販売、消費に一貫性があること、食肉市場において継続して高い評価を得ていることなどです。
銘柄豚の取扱いでは最大級の規模を誇る東京食肉市場において、東京食肉市場銘柄豚協会の厳しい規格のもと生産された豚肉を、長年の経験を有する仲卸人が確認し、厳選された豚肉を銘柄豚としています。生産者となる銘柄豚協会の会員が、協会の規格に則して生産した豚は、東京食肉市場で1頭ごとに審査し、適った豚のみが銘柄豚として認定され、販売を担う会員を通して消費者まで届くことになります。
東京食肉市場銘柄豚協会では、特に食品の基本である安全性を担保するため、すべての工程において厳しい管理システムを設定しています。飼育環境は、豊かな自然に恵まれ、空気のきれいな山あいなどとなり、理想的なロケーションです。豚舎の清掃や消毒などは、厳しく管理しています。肉質の均一化を図るために空調設備を導入し、豚舎内の温度や湿度をつねに一定に保っています。大麦を主体とした飼料は、肉質や脂質を改善する穀物として知られ、脂肪の色の白色化や甘味やコクのある食感を付与します。 通常豚は150日程度の飼育で出荷されますが、銘柄豚は、おおよそ190日かけてじっくり育てています。
銘柄豚として飼育された豚は、東京食肉市場に入荷した後、厳正な審査を受け、これに合格したものだけが、銘柄豚としてセリにかけられます。さまざまな基準にもとづいて、5段階の等級にランク付けされ、同時に長年の経験をもつ仲卸人によって、本当においしい肉だけが厳選されます。 銘柄豚として店頭に並ぶ割合は、入荷頭数の10%未満です。
・鹿児島県のかごしま黒豚
かごしま黒豚のルーツは、今から約400年前に、18代藩主島津家久により琉球から鹿児島に移入されたといわれ、長年に渡り鹿児島県内で飼育されてきました。明治時代には黒豚の品種改良が本格的に取り組まれ、在来の黒豚にイギリスから導入したバークシャーと交配することで、おいしさに一層磨きがかかりました。昭和20年代には鹿児島から東京へ出荷され、味と品質で評判となり、昭和30年代には、東京で黒豚ブームが巻き起こり、高品質な豚肉の代名詞として広く知られるようになりました。
高品質で地位を確立した黒豚ですが、昭和30年代半ばには県内に生産効率の高い白豚が導入され、事態は一変し、一時期は絶滅の危機に瀕します。そのような状況下、昭和49年に鹿児島県では黒豚の振興を決め、黒豚のさらなる品種改良などにより、頭数や生産者数も徐々に回復しました。平成2年には生産者を中心とした鹿児島県黒豚生産者協議会が設立され、今日かごしま黒豚は高い評価を得ています。
鹿児島県黒豚生産者協議会では、かごしま黒豚を生産するための基準を設けています。ひとつは、豚の品種です。かごしま黒豚は全てバークシャーとなり、ほかの品種と混飼しないことを条件としています。バークシャーの体毛は黒色となり、ほかの豚と比べて産子数は少なく、発育が遅い一方、肉質が細かく、うま味を多く含んでいるなどの特徴があります。
かごしま黒豚を生産するためのもうひとつの基準は、肥育後期にさつまいもを添加した飼料を60日以上与えることです。さつまいもを飼料に与えることで、黒豚の脂肪の質が向上し、さっぱりとした食味やしまりのある肉質が生まれます。
かごしま黒豚は、一般的な豚が150日ほどの肥育期間を経て出荷されるのに対し、230〜270日程度肥育されます。じっくりと育てられることで、より引き締まった肉質が生まれます。
・沖縄県のアグー
アグーは、沖縄固有の在来豚です。歴史は古く、今から約600年前に中国から導入され、沖縄で飼い続けられていた島豚が、アグーの起源と言われています。アグーは、古くから沖縄の食文化を支えてきました。しかし、戦後にアメリカから大型で発育のはやい品種が導入され、豚の改良が行われました。そのため、小型で発育の遅いアグーの頭数は激減し、発育のはやい品種との交配による雑種化も進みました。
絶滅を危惧されていたアグーは、1981年に名護博物館がアグーの全県調査を実施したところ、約30頭が確認されました。約10年かけて雑種化を取り除くための戻し交配が行われ、戦前に近い形質のアグーが復活しました。
アグーの肉質は、一般的な豚と比較してやわらかく霜降りの肉で、脂肪の融点が38.1℃と低く、口に入れると脂が溶け、さらに脂に甘みとうま味があります。
現在流通しているアグーを冠した豚肉は、アグー同士を交配したものとアグーの雄と大型で発育のはやい豚の雌を交配したものがあります。肉質の優れているアグーですが、体型が小さく肉量が少ないことから、生産者は大型で発育のはやい豚との交配によって、アグーの優れた肉質を活かしつつ肉量の多い豚の生産を行っています。
沖縄県アグーブランド豚推進協議会では、毎年度アグーブランド豚指定生産農場の認定を行い、認定された農場には、認定書の交付を行っています。
・東京都のTOKYO X
平成9年に日本種豚登録協会において新系統豚トウキョウ Xとして認定された新しい豚です。一般的な豚肉と差別化するため、東京の地域特産豚肉を目指し、北京黒豚とバークシャー、デュロックの3品種をルーツとし、これらの長所を取り込みました。旧東京都畜産試験場で7年間試行錯誤を重ね、トウキョウ Xが誕生しました。
美味しい肉質の豚をかけあわせた交雑種のX(クロス)と未知の可能性X(エックス)を秘めた東京生まれの豚という意味から、豚の系統名「トウキョウ X」、豚肉のブランド名を「TOKYO X」と名付けられました。
TOKYO Xは、上質な香りとほのかな甘み、さっぱりとした脂肪が特徴の豚肉です。その味づくりは、飼料からはじまります。トウキョウXの基準では、出荷前の約3ヶ月間は収穫後に農薬を使用しないポストハーベストフリーかつ非遺伝子組み換え(Non-GMO)のとうもろこしや大豆を使用した指定飼料を与えます。豚舎は、動物福祉先進国のドイツの基準をクリアし、ゆったりとした開放型のスペースで、十分な採光と換気を維持した環境で育てています。
銘柄豚を名乗る上で規制は特になく、正式な定義も存在しません。正確な数を把握できるような統計はなく、最新の調査では250以上の事例が報告されていますが、これも銘柄豚全体の1部にすぎません。
豚肉の銘柄化は、1990年代初頭にかけて急増しています。その後も毎年増え続け、豚肉における銘柄化は、一般的なものとなっています。銘柄化の実施主体は、農協、個人農場、生産者グループ、株式会社、行政などさまざまです。地域名あるいは地域を連想させる名称が多く、銘柄豚は産地表示の意味合いが強いといえます。
銘柄豚と一般的な豚との差別化のポイントとしては、品種や血統、飼料、飼養環境などです。具体的には、特に品種を吟味し、無秩序な交雑を避け、肉質の優れた品質が一定化し、バラツキのないこと、脂肪の付着が適度で肉質はきめがこまかく、肉色は淡く鮮明で光沢がよく、食べて軟らかく美味い肉であること、飼料は栄養バランスの適正な配合飼料とし、飼料管理が適切に施されていること、衛生予防対策が適切に確立されていること、生産や販売、消費に一貫性があること、市場において継続して高い評価を得ていることなどです。
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