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2020年08月18日

【高機能】食品の加工に用いる分離技術

さまざまな分離方法


 ろ過は、液体中に懸濁している固体をろ紙などによって捕捉し、固液を分離する技術で、分離した液体や固体の品質の変化をほとんど伴いません。昨今は高性能な膜の開発が実現し、より微細な固体がろ過の対象となっています。食品や環境分野に留まらず、多岐にわたる産業でろ過技術が使用されています。





 ろ過は、特に水処理をはじめとした環境分野において、欠かすことのできない技術です。浄水処理では、主な分離技術として厚い砂層によるろ過が用いられています。最近では、より高精度な分離のため、膜を使用した浄水処理や排水処理が行われています。



811657_s.jpg



 食品分野では、めんつゆなどの原材料に用いるかつお節や昆布などは、ろ過により取り除いています。豚骨スープや鶏ガラスープなどもろ過や遠心力を用いてスープを分離します。ビールは酵母によるアルコール発酵で製造されますが、酵母はろ過と遠心力で除去します。





 ろ過はさまざまな方法があります。懸濁液の自重によるろ過やコンプレッサで圧縮空気を送る加圧ろ過、ろ液側を真空にして液体を引き込む真空減圧ろ過、ろ過器の自転によって生じる遠心力を活用する遠心ろ過などです。





 ろ過操作は機構の違いで、表面ろ過と内部ろ過に大別されます。表面ろ過は懸濁液をろ紙やろ布のような薄いろ材でろ過する場合で、ろ過が進むにつれろ材の表面上に堆積層が形成され、新たなろ材としての役割を担います。内部ろ過は懸濁液を砂層のような厚いろ材でろ過する場合で、固体は広大な表面積を持つろ材の内部で捕捉されます。薄いろ材でも、懸濁液中の溶質がわずかであれば、ろ材の細孔内部で捕捉されます。





 食品分野でよく用いられる表面ろ過装置は、加圧型のフィルタープレスです。ろ過の進行とともに堆積層が形成され、ろ過終了後、堆積層の排出が行われます。適切な堆積層の形成及びろ過効率を高めるため、珪藻土を懸濁液に添加することもあります。真空型のドラムフィルターは連続式となり、ろ過を継続しながら、装置内で堆積層を削り取る操作が行われます。





 ろ材は、ろ過に用いる液体と固体の分離用の多孔性の材料です。ろ材の種類には、ろ紙、ろ布、膜などがあります。



811659_s.jpg



・ろ紙





 家庭では、コーヒーなどの固液分離に使用されます。一般的には食物繊維の主成分となるセルロース製です。





・ろ布





 不織布が一般的です。不織布は、繊維を不規則に絡み合わせて接着させ、シート状に成形したろ材です。





・膜





 ろ紙やろ布では分離できない1μm以下の物質を分離できる高性能なろ材です。膜は分離精度の違いから、精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜に分類されます。膜の多くは高分子製です。



膜を用いた分離技術

 

 使用する膜の種類は、「精密ろ過(Micro-Filtration: MF)」、「限外ろ過(Ultra-Filtration: UF)」、「逆浸透(Reverse-Osmosis: RO)」などがあります。



精密ろ過(MF)


 精密ろ過は、約0.05μm〜0.1μm程度までの液体中に含まれる物質を効率的に分離します。





  捕捉:酵母、大腸菌などの微生物や微粒子





  透過:たんぱく質やウィルス





  用途:微粒子除去捕捉や滅菌



限外ろ過(UF)


 限外ろ過は、1 nm〜0.05 μm程度までの液体中に含まれる物質を分子レベルで分離、濃縮、精製することができます。





  捕捉:たんぱく質やウィルス





  透過:糖やアミノ酸、塩





  用途:たんぱく質などの濃縮や核酸の精製



逆浸透(RO)


 半透膜でしきられた容器に濃厚溶液と希薄溶液を入れると、浸透圧の差によって希薄溶液側の水などの溶媒が濃厚溶液側に半透膜をとおって移行し、両溶液の濃度が一定になろうとする現象が浸透です。逆浸透膜は、1 nm以下の孔径の膜です。濃厚溶液と希薄溶液を膜で仕切り、濃厚溶液側に浸透圧より大きな圧力を加えることで、膜を通して水分子のみを濃厚溶液側から希薄溶液側に移行させ、イオンや低分子の分離を行います。逆浸透は、極めて低分子量の成分を分離することができ、水の精製や濃縮に用いられます。逆浸透膜の市場は、水資源が限られた地域での海水淡水化事業の増加により、さらなる拡大が予想されています。





  捕捉:糖やアミノ酸、塩





  透過:水





  用途:水の精製、アミノ酸や牛乳、果汁などの濃縮、塩の除去



まとめ


 ろ過は、液体中に懸濁している固体をろ紙などによって捕捉し、溶媒から分離する技術で、分離した液体や固体の品質の変化をほとんど伴いません。食品や環境分野に留まらず、多岐にわたる産業でろ過技術が使用されています。





 ろ過は、特に水処理をはじめとした環境分野において、欠かすことのできない技術です。浄水処理では、主な分離技術として厚い砂層によるろ過が用いられています。最近では、よ り高精度な分離のため、膜を使用した浄水処理や排水処理が行われています。





 食品分野では、めんつゆなどの原材料に用いるかつお節や昆布などは、ろ過により取り除いています。豚骨スープや鶏ガラスープなどもろ過や遠心力を用いてスープを分離します。ビールは酵母による発酵後、酵母をろ過と遠心力で除去します。また、精密ろ過(MF)で大腸菌などの滅菌、限外ろ過(UF)でたんぱく質などの濃縮と核酸の精製、逆浸透(RO)で水分の除去によるアミノ酸や牛乳、果汁などの濃縮を行っています。



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