2016年04月16日
熊本地震で発動した先人の技術とは
平成28年4月14日
「平成28年熊本地震」発生。
大きな被害が出る中、
「熊本城の瓦が崩落した」
ということで画像も出回りました。
(画像引用 NHK)
熊本城といえば、
加藤清正が築いた名城中の名城。
築城から200年以上経過した西南戦争において
近代兵器で武装した西郷軍すら撃退した堅城です。
その瓦が土煙を上げて落ちるとは。
さすがの先人たちも地震は計算に入れていなかったのか・・・・。
逆のようです。
明治時代〜昭和初期まで、
「瓦は落ちる」ようにふかれていました。
「土葺き」(「つちぶき」、「どぶき」)
という言葉があります。
大量の土を利用して瓦を固定する工法です。
(画像引用 www.meijyou.co.jp)
利点を挙げます
1.土を挟むことで断熱効果が高くなる
2.大量の土を乗せるため、屋根が強風に飛ばされにくい
3.地震対策
地震対策とはどういうことでしょうか。
まず、土+瓦という重量加算によって、
「建物を上から押さえつけて揺れを防ぐ」
という効果が生まれます。
ではなぜ、瓦を固定しなかったのか?
それは、
「より大きな地震に対する備え」
からです。
ある程度までの地震であれば、
屋根に重量があることで免震になります。
しかし、それが建物の強度を超える揺れになると、
「建物の倒壊」
という最悪の事態になります。
この場合、逆に「屋根を軽く」する必要があります。
揺れによって瓦が落ちれば屋根は軽くなる。
「小さな揺れでは瓦の重量で免震」
「大きな揺れでは瓦を落として免震」
土葺きの屋根は、
瓦による自動免震システム
だったのです。
そんな瓦も、現代では
「引掛け桟瓦葺き工法」が主流。
下地の木材へ、瓦の突起を引っかけ釘などで固定。
土葺きの瓦よりも1枚当たりの面積が大きい(必要な枚数が減る)上、
大量の土を使用しないことで屋根が軽量化。
(画像引用 ishikaku.com)
そもそも建物自体の強度が向上した現代では、
「瓦の重量で免震」という発想そのものがなくなりました。
高層化も進み、瓦の落下による被害も大きくなって、
土葺き瓦は失われつつあります。
しかし、土葺き瓦は何百年も地震国・日本で
減災の役割を担ってくれました。
「瓦の落下で倒壊を防ぐ」
なんというしなやかな建築学!!
先人の知恵には敬服するばかりです。
最後に、今回の地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに
被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。