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2015年05月26日

蕺草・どくだみ

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事務局の軒下一面にどくだみの花盛りです、と写真が届きました。触ると一種独特の臭いのするどくだみも白い十字形の花が際立って見え、仲々美しいものです。

蕺草は、どくだみ、どくだめ、十薬、しぶき、とべら草などの別名でも呼ばれます。ドクダミ科、ドクダミ属の多年生草本です。地下茎を延ばして繁殖し群生しています。初夏、丁度いま(五月下旬頃)茎頂、枝端に花をつけます。花弁はなく四枚の白い萼片(がくへん・苞)が花弁状に開きます。その上に黄色い花穂を円筒状につけています。葉は、古くから駆虫剤、利尿剤、腫れ物の薬として利用されています。

語源としては諸説ありますが、「毒」「矯める(ためる=収める)」、即ち、毒を止める効能があるところからの命名とされています。(参考:『植物語源辞典』『植物短歌辞典』)
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では、短歌を三首あげておきます。

北原 白秋(『桐の花』)
どくだみの花のにほひを思ふとき青みて迫る君がまなざし

宮  柊二(『晩夏』)
青白きどくだみの花群がりてこの朝咲けり梅雨深くして

碇 登志雄(『神幸』)
どくだみの花の白きが群れ咲きて杉の木許は土しめりたり


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2015年05月01日

小手毬・こでまり 

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事務局の前畑の垣根に近く、小手毬の白い花が咲いています、
と写真が届きました。

小手毬は、バラ科、シモツケ属の落葉小灌木です。

ちょうどこの時期、春に傾垂した枝梢に白い五弁の小花が毬状にかたまって咲きます。
花のついた状態が小さい毬のように見えるので小手毬とよばれたのですね。
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原産は中国で古くから渡来し、鑑賞用庭木として親しまれています。
(参考:『植物短歌辞典』『広辞苑』『花鳥小辞典』)

では、短歌を三首あげておきます。
木下 利玄(『銀』)
水ぐるま近きひゞきに少しゆれ少しゆれゐる小手毬の花

岡  麓(『涌井』)
夕庭にこでまりの花咲きそめてそよゆれつつも暗みゆくなり

谷  鼎(『青あらし』)
高だかとくれなゐつつじ咲く前にゆらぎやすきはこでまりの花

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2015年04月25日

躑躅・つつじ

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庭の躑躅の花が、陽光に映えて鮮やかな彩りを見せていて綺麗ですよ、と事務局から写真が届きました。

さらに、毎年、つつじが咲き誇るこの季節に、隣の市・久留米市の百年公園で「久留米つつじまつり」が開催されます(4月5日〜5月5日)。熊本市、栃木県鹿沼市の植木市と並び、日本三大植木市のひとつとも言われているそうで、今年も、150品種30万本のつつじが出品されていると伝えています。訪ねてみたいですね。

躑躅は、ツツジ科、ツツジ属の常緑または落葉灌木の通称です。
ただし満天星(どうだんつつじ)のようにツツジ属に属さないツツジ科の植物にもツツジと呼ばれるものがあります。主にアジアに広く分布し、ネパールでは国花となっています。日本ではツツジ属の中に含まれるツツジやサツキ、シャクナゲを分けて呼ぶのが一般的です。種類も山躑躅、霧島躑躅、蓮華躑躅、皐月等々沢山ありますし、花色についても、紅、紫、白、黄など多彩です。
(参考:『万葉集』『植物短歌辞典』『マイペディア百科事典』『広辞苑』『久留米市HP』『Wikipedia』)

 では、短歌を三首あげておきます。植物『語源辞典』
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(『万葉集』九1694)
細領巾(たくひれ)の鷺坂山の白躑躅われににほはね妹に示さむ
○美しい白領巾のような鷺坂山の白躑躅よ、わたしに匂っておくれ、そうしたらわたしは帰って家の妻に示そうと思う。
  
佐藤佐太郎(『しろたへ』)
生くる物生きの相(すがた)の美しさここに示せる躑躅の花かも

碇 登志雄(『神幸』)既出:楓の項
吹きそよぐ楓の若葉の下べにてつつじは咲けりそのま白さを


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2015年04月22日

海老根・えびね

事務局の庭に海老根が咲いたとの報せです。蕾を十数個付けた花茎が伸び、数日すると下側から次々と咲き昇ってきました、と写真が届きました。
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海老根は、ラン科、エビネ属の多年草で、日本原産、各地の山地や竹藪などに自生しますが、鑑賞用にも栽培されます。

海老根という名前は、地下部(偽鱗茎〈ぎりんけい〉と根)をエビにみたてて付けられたもので、掘り起こして観察してはじめて付けられる名前です。昔の人は、根までよく見てゐたのですね。

その「エビネ」の名が最初に記録されたのは十五世紀末(1491年)五月十日にエビネを活けたという記録が大沢守久の日記『山科家礼記』にあるそうです。活け花の花材だったのですね。今は、鑑賞用に栽培されています。

学名は、属名がCalanthe(カランサ)でギリシャ語「美しい花」の意、種名がdiscolor(ディスカラー)で「二色の」、緑を帯びた褐色の花に唇弁が白ないし淡紅色をよく表しているようです。
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海老根に近縁の花が黄色の黄海老根(キエビネ)は、Calanthes sieboldii で、あのドイツの医学者・博物学者であるシーボルトさんの名にちなんだ種名になっています。興味は尽きないですね。
(参考:『広辞苑』『花の履歴書』『季節の花300』『植物語源辞典』)

では、短歌を二首あげておきます。

  碇 千奈美(『姫由理』2012)
庭隅に対馬エビネの咲く風情おくりくれたる人のしのばる

  碇  弘毅(『姫由理』2014)
ひめゆりの花芽伸び立つ傍らを黄えびね幾つ群れなして咲く


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2015年04月21日

(続)歌人碇登志雄(いかりとしお)の歌碑

『佐賀新聞』(四月二日版)には「四阿屋の登志雄歌碑」「金文字50年前の耀き」という見出しで、次の様に書かれています。そのまま転載させていただきます。
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「鳥栖市牛原町の四阿屋遊泳場近くにある歌碑が、50年前の耀きを取り戻した。長年の風雨で表面に刻まれた短歌が読みづらくなっていることに気付いた地元のまちづくりグループ・四阿屋会(志藤会長)と歌碑設置者の短歌文学会(碇弘毅代表)が協力。周辺の雑木を払い、歌碑を磨き上げて金色の文字を施している。

文学会によると、歌碑は1964年に建立され、「からからと 桐の実鳴らむ日も近く 涼しきいろに 満てる大空」と刻まれている。会の創立者で県内歌壇をリードし、94に86歳で亡くなった碇登志雄氏の作品で、夏から秋に向かう自然美を詠んでいるという。

今回の整備は、遊泳場の清掃を担っている四阿屋会から呼び掛けた。昨年12月に周囲の雑木を払った際、かずらに覆われた歌碑を見つけ、文学会に連絡した。

登志雄氏は1933年に歌誌「姫由理」を創刊。会は戦時中を除き、月1回の発行を続けており、長男の弘毅代表(81)は、「みなさんの協力で歌碑は見違えるほどきれいになった。父も喜んでいることでしょう」と語る。

遊泳場近くには戦国時代の城下町跡で国史跡に指定されている勝尾城筑紫氏遺跡などがあり、四阿屋会の志藤会長(68)は「史跡めぐりと合わせ、新たな市の観光スポットになれば」と期待していた。(杉原孝幸)」


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2015年04月20日

歌人碇登志雄(いかりとしお)の歌碑

『佐賀新聞』(4月2日版)に登志雄の歌碑についての記事が出たと事務局から写真とともにその新聞が届きました。

背振山頂の登志雄歌碑については、昨年5月にこのブログに取り上げましたが、今回は、その前に建立された鳥栖市、四阿屋(あづまや)神社にある歌碑についてです。その碑歌は、

からからと桐の実鳴らむ日も近く涼しきいろに満てる大空
登志雄


除幕は、昭和39年(1964年)4月に行われています。
この作品について作者自身は、次の様に述べています。
 
四阿屋歌碑の歌について:
からからと桐の実鳴らむ日も近く涼しきいろに満てる大空

この歌は、昭和三十四年九月二十七日の作であります。日曜日、彼岸明けの日、書斎にあって、太田水穂全集や茶道太平記、日本茶道などを読み、求心的な日々の間においてこの歌が生まれています。
この一首の意味は、ささやかな花、しかし、気高い思いを彩りにした花、桐の花は、目にもつかないつつましい音を立てて、その終末を結ぼうとしています。けだし、この姿は真実を愛する人間の姿として、慕われるのでございます。そこにはにごりない大自然が、涼しい色の大空が、あたたかく人間を、私を、私の思いを、いただいてくれるというような思念のもとに、この一首が形成されたのです。仏典を読み、儒書に親しみ、求道の人生五十の齢にあって、ささやかなその諦念を、具象化したものが、この一首であります。
(登志雄師の謝辞から抄出、『姫由理』六月号1964)

歌碑の写真を掲げておきます。

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2015年04月16日

月桂樹・ローレル

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庭の月桂樹に花がついてるよと、事務局から写真が届きました。

月桂樹は、クスノキ科、ゲッケイジュ属常緑喬木。科名、属名の学名も緑色を意味するLaurus(ローラス)というケルト語の「laur(緑色)」に由来するラテン語。南ヨーロッパの原産。日本には明治三十八年頃い渡来しています。

クスノキ科には、月桂樹のほか、クスノキ、ニッケイ、アボカド、クロモジなどがあり、精油成分を含んでいて芳香を持つものが多いです。月桂樹は肉の臭みなどを消すハーブとしてカレーやシチュー等に使われます。

古代ギリシャでは、太陽神アポロンの木とされ、この木の枝葉で編んだ冠は月桂冠と呼ばれ勝利のシンボルとして用いられました。今もそうですね。イギリスでは16世紀頃から、優れた詩人に対して、月桂樹にちなんだ特別な称号が与えられていました。

中国では、私たちが「餅つきをしているウサギ」が「大きな桂(けい = 銀木犀)の樹を切る男の姿」と見ることから、この木が日本に渡来した際に、「月」の「桂」の樹から「月・桂・樹」の名がつけられたそうです。
 (参考:『広辞苑』『季節の花300』『植物短歌辞典』)
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では、短歌を一首あげておきます。

植松 寿樹(『枯山水』)
さわやかに伸びては揺るる月桂樹ひるの一とき縁を蔭にす


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2015年04月03日

桜・さくら

桜の季節。
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事務局に隣接する公園の桜、お濠をとりかこむ染井吉野が爛漫の姿を見せています。
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夜も照明の下で賑わっています。

長らくご無沙汰いたしました。……と事務局から便りが届きました。

桜は、バラ科、サクラ属の落葉喬木で、日本の国花です。
彼岸桜から染井吉野、山桜、八重桜など多くの種類があります。
桜の花が咲いて新しい年度・新入生・新入社員を迎え、心を新たにします。
また桜の花の下で山からご臨降の神々と美禄を共にして、
その年の豊饒と平穏を祈念する習わしがあります。
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春を待つ花の代表として、日本人の心の象徴とされます。
本居宣長も〈敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花〉と詠んでいます。

そして、桜の花を待ち、花を思う歌を万葉集から三首掲げておきます。

  (万葉集五829)
梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや

  (万葉集十1872)
見渡せば春日の野辺に霞立ち咲きにほへるは桜花かも

  (万葉集三328) 小野 老
あをによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり


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2015年02月17日

猫柳・ねこやなぎ

ユキヤナギ

事務局の庭の柳。お正月からこのかた固く閉じていた冬芽が、赤褐色のとんがり帽子のような皮(芽鱗)を脱ぎ捨て、銀白色のきれいな毛の花穂を輝かせています。いよいよ春の到来を思わせます……と便りと共に写真が届きました。

猫柳は、ヤナギ科、ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生しているヤナギの一種ですね。銀白色の毛で目立つ花穂が特徴的で、ネコヤナギという名前は、綿毛の形がネコの尾に似ているところから来ています。また、別名の狗尾柳(えのころやなぎ)は小犬の尾にたとえたものです。この他、川柳、谷川柳などの別名を持っています。

あの綿毛は花ではなく、花が咲く前の花芽です。猫柳は、雌雄異株で、花は小さい花が集まった穂をなし、外見的には雄花の花序も、雌花の花序も、さほど変わりませんね。雄花は雄しべが数本、雌花は雌しべがあるだけで、花弁は有りません。雄しべ、雌しべは、これから出てきますね。じっくり見たいですね。楽しみです。
(参考:『植物語源辞典』『植物短歌辞典』『万葉集』)
ユキヤナギ


ユキヤナギ

では、短歌を二首あげておきます。

坂上郎女(『万葉集』巻第十1848)
山の際(ま)に雪は降りつつしかすがにこの川楊(かはやぎ)は萌えにけるかも
(訳)山のあたりに雪は降りつづけ、しかしそうではあっても、この川柳は萌えだしたことよ。(中西進)

北原白秋(『桐の花』)
猫やなぎ薄紫に光りつつ暮れゆく人はしづかにあゆむ


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2015年02月12日

蕗の薹・ふきのとう(ふきのたう)

フキノトウ

事務局の前畑に蕗の薹がお目見えしています。

天ぷらにしたり、蕗の薹味噌や蕗の薹麹を作ったりして早春の味と香りを愉しんでいます。そうこうしてる間に薹が伸びはじめ花が開きそうになってきました。……という便りと共に写真が届きました。

蕗は、キク科、フキ属の多年生草本です。早春に葉に先だって地下茎から鱗状の大きな苞に包まれた花穗(かほ)を出します。これが蕗の薹ですね。薹には多くの細かい花をもっています。葉が出てくるのはもう少し後になりますね。

料理では、事務局からの便りに上げられたものの他、刻んで味噌汁の実に、あるいは和え物、いため煮、つくだ煮にもしています。ほろ苦さと独特の香りが身上です。お酒の肴にもいいですね。また、鎮咳や健胃の効果もあげられていますから早春の食べ物としても珍重に値しますね。
(参考:『野菜と果物図鑑』『季節の花300』『植物短歌辞典』)
フキノトウ
では、短歌を三首あげておきます。

岡  麓(『庭苔』)
蕗薹小さきを択りて摘みとりぬ爪にはさまる土のつめたさ

判田良平(『幸木』)
庭の上に一つ萌えたる蕗の薹わが知らぬ間に妻が摘みける

土屋文明(『自流泉』)
山水に萌えいづる青は早くして蕗の花いくつか立ちあがり咲く


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