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2019年02月19日

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「山椒大夫」2

2 「山椒大夫」は誘発

@ 安寿と厨子王は、人買いに買われて由良の山椒大夫の所で奴婢になり潮汲みと柴刈りを強いられる。健気な中にも父母への思いは募るばかり。ある日、初めて二人一緒に柴刈りに出かけた。姉は予め弟に二人では駄目だから、一人で筑紫の父の所へ行って、佐渡へ母を迎えに行くようにと話した。結局、厨子王は一人で都を目指すことになる。そして、安寿は入水する。 
A 僧形になった厨子王は都に上り、東山の清水寺に泊まる。開運の時がきた。関白師実に事の経緯を話したところ、筑紫に左遷した平正氏の嫡子という身元が判明し、厨子王は師実に客として迎えられる。師実が還俗した厨子王に冠を加えると、欲求を満たしてくれるものに接近する情動が厨子王に生まれる。
B 厨子王は元服後正道と名のった。父の安否を筑紫に尋ねたところ、死亡していることがわかり、正道は身がやつれるほど嘆いた。体の生理状態と心の状態は、密接な関係にある。悲しい時には、涙があふれて全身が緊張し、子供のようにしゃくりあげて泣く。正道もその類である。ここでは身内との惜別による悔しい気持から、哀れな情動が生まれている。
C その後、正道は丹後の国守になる。都へ上る際に手を貸してくれた曇猛律師は総都にし、安寿を懇ろに弔い、入水した岬に尼寺を建てた。そして、任国のために仕事をしてから、佐渡へ母を探しに行く。母と姉への献身である。これは、正道個人の尊敬の念である。
D 佐渡に着いて大きな百姓家の生垣を覗くと、刈り取った粟の穂が干してあり、雀が啄むのを女が逐っている。正道は心が引かれると同時に身が震えた。女は盲である。耳を立てると、安寿と厨子王のことが恋しいと歌っている。探していた母がそこにいる。正道は臓腑が煮えくり返るも雄たけびを堪えた。縛られた縄が解かれたように垣根の中に駆け込んで、守本尊を額に押し当て母の前にうつ伏した。雀ではないとわかると、母の両方の眼は涙で潤い、その時目が開いた。そして、二人はぴたりと抱き合った。

 ここでも自分の欲求を満たしてくれるものに接近行動を示す情動が母と正道に現れる。情動にはこのように人を行動に駆り立てる性質がある。つまり、情動を単なる心的状態ではなく、脳の機能として捉えることにより、「鴎外は感情」というシナジーのメタファーが作られる。
 情動ついては、大脳の内側にある大脳辺縁系が密接な関係にある。特にその中でも扁桃体が重要である。扁桃体と線維連絡のある視床下部や視床下部と線維連絡のある中脳中心灰白質も、情動の表出に関与している。例えば、情動に伴う自律神経系の反応(心拍数、呼吸、血圧の変化)や行動面での反応(恐怖に対するすくみや怒りによる攻撃)の生起である。つまり、扁桃体─視床下部─中脳中心灰白質という1つの系が情動に関与する脳の部位になる。(花村 2017)

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外『山椒大夫』」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「山椒大夫」1

1 論文の方向性−Lのストーリー

 シナジーのメタファーのために一作家一作品でできることを現状のレベルでまとめている。今後、統計処理など研究の技葉がさらに増えていくように日々精進していきたい。この小論では森鴎外(1862−1922)の「山椒大夫」を題材にする。
 私のテキストの分析は、シナジーのメタファーを考察することである。最初に受容と共生からなるLのストーリーを作成し、次にそれを反映するリレーショナルDBについて分析していく。
 基本的に、「山椒大夫」(1914)と同じ方法で、「佐橋甚五郎」(1913)について見ていくことにする。すでに見たように、鴎外の執筆時の脳の活動を感情として、「鴎外と感情」というシナジーのメタファーを作成している。「山椒大夫」と「佐橋甚五郎」の違いは、前者が誘発の強い情動(外から内)で、後者が創発の強い情動(内から外)というところにある。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外『山椒大夫』」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分10

6 まとめ 
 
 データベースの数字を用いてクラスタ解析から得られた特徴を場面ごとに平均、標準偏差、中央値、四分位と考察し、それぞれ何が主成分なのか説明できている。そのため、この小論の分析方法は、既存の研究とも照合ができ、統計による文学分析がさらに研究を濃いものにしている。

【参考文献】
片野善夫 ほすぴ162号 知っているようで知らない五感のしくみ−視覚 日本成人病予防協会 2018
加藤剛 多変量解析超入門 技術評論社 2013
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風舎 2005
花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分解論文集 華東理工大学出版社 2018 
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分解論文集 華東理工大学出版社 2019 
森鴎外 山椒大夫・高瀬舟・安部一族 角川文庫 1995

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分9

【カラム】
A平均1.6 標準偏差0.55 中央値2.0 四分位範囲1.0
B平均1.3 標準偏差0.48 中央値2.0 四分位範囲1.24
C平均1.9 標準偏差0.42 中央値2.0 四分位範囲2.0
D平均1.7 標準偏差0.48 中央値2.0 四分位範囲1.25
【クラスタABとクラスタCD】
AB 平均1.45普通、標準偏差0.51普通、中央値2.0高い、四分位範1.1低い
CD 平均1.8高い、標準偏差0.45普通、中央値2.0高い、四分位範1.6高い
【クラスタからの特徴を手掛かりにし、どういう情報が主成分なのか全体的に掴む】
CDの数字がそれぞれ高いため、正道が佐渡に流された母と再会する様子が鴎外の一番の関心事になっている。
【ライン】合計は、言語の認知と情報の認知の和を表す指標であり、文理の各系列をスライドする認知の柱が出す数字となる。
@ 7、視覚、比喩、新情報、未解決 → 場面の始まりは未解決が多い。
A 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 正道は臓腑が煮え返る。 
B 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 正道が駆け込む。
C 7、視覚、比喩、新情報、未解決 → 正道が俯伏す。
D 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 正道が守本尊を額に押し当てる。
E 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 女は大きいものを察知した。
F 6、視覚以外、直示、新情報、解決 → 歌をやめて見えぬ目でじっと見る。
G 6、視覚以外、直示、新情報、解決 → 両方の目に潤いが出た。
H 6、視覚以外、直示、新情報、解決 → 女は厨子王と叫ぶ。
I 6、視覚、比喩、新情報、解決 → ぴたりと抱き合う。
【場面の全体】
 視覚情報が全体で半分ほどしかなく、脳に届く通常の五感の入力信号の割合よりも低い。しかし、ここでは心の目が問題解決に効いている。

花村嘉英(2019)「森鴎外の『山椒大夫』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分8

◆場面3 甘利を撃つ

正道はうっとりとなって、この詞に聞き惚れた。A2B1C2D2

そのうち臓腑(ぞうふ)が煮え返るようになって、獣めいた叫びが口から出ようとするのを、歯を食いしばってこらえた。A2B2C2D2

たちまち正道は縛られた縄が解けたように垣のうちへ駆け込んだ。A2B1C2D2

そして足には粟の穂を踏み散らしつつ、女の前に俯伏した。A1B1C2D2

右の手には守本尊を捧げ持って、俯伏したときに、それを額に押し当てていた。A2B1C2D2

女は雀でない、大きいものが粟をあらしに来たのを知った。A2B2C2D2

そしていつもの詞を唱えやめて、見えぬ目でじっと前を見た。A1B2C1D2

そのとき干した貝が水にほとびるように、両方の目に潤いが出た。A1B1C2D1

女は目があいた。「厨子王」という叫びが女の口から出た。A1B1C2D1

二人はぴったり抱き合った。A1B1C2D1

花村嘉英(2019)「森鴎外の『山椒大夫』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分7

【カラム】
A平均1.0 標準偏差0 中央値1.0 四分位範囲1.0
B平均1.0 標準偏差0 中央値1.0 四分位範囲1.0
C平均1.6 標準偏差0.55 中央値2.0 四分位範囲1.0
D平均1.7 標準偏差0.48 中央値2.0 四分位範囲1.0
【クラスタABとクラスタCD】
AB 平均1.0低い、標準偏差0低い、中央値1.0低い、四分位範囲1.0低い
CD 平均1.65高い、標準偏差0.51普通、中央値2.0普通、四分位範1.0低い
【クラスタからの特徴を手掛かりにし、どういう情報が主成分なのか全体的に掴む】
標準偏差を除いて、ABの数字が1であることから、登場人物の直示を詳述しようと思った。
【ライン】合計は、言語の認知と情報の認知の和を表す指標であり、文理の各系列をスライドする認知の柱が出す数字となる。
@ 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 厨子王が律師と別れる。
A 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 律師が帰路に着く。
B 5、視覚、直示、旧情報、未解決 → 律師が安寿と同じことをいう。
C 5、視覚、直示、新情報、解決 → 厨子王が東山の清水寺に泊る。
D 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 枕もとに老人が立っている。
E 5、視覚、直示、旧情報、未解決 → 関白師実が守本尊を見せろという。
F 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 厨子王が陸奥掾正氏の子と名乗る。
G 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 師実が仏像に礼をする。
H 4、視覚、直示、旧情報、解決 → 師実が丁寧に見ていう。
I 4、視覚、直示、旧情報、解決 → 師実は厨子王の身分が分かり客として迎える。
【場面の全体】
 全てのラインが視覚情報であり、脳に届く通常の五感の入力信号の割合よりも高いため、視覚情報が問題解決に効いている。

花村嘉英(2019)「森鴎外の『山椒大夫』の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分6

◆場面2 師実との出会い

山城の朱雀野に来て、律師は権現堂に休んで、厨子王に別れた。A1B1C2D2

「守本尊を大切にして往け。父母の消息はきっと知れる」と言い聞かせて、律師は踵(くびす)を旋した。
A1B1C2D2

亡くなった姉と同じことを言う坊様だと、厨子王は思った。A1B1C1D2

都に上った厨子王は、僧形になっているので、東山の清水寺に泊った。A1B1C2D1

籠堂(こもりどう)に寝て、あくる朝目がさめると、直衣(のうし)に烏帽子を着て指貫(さしぬき)をはいた老人が、枕もとに立っていて言った。A1B1C2D2

「お前は誰の子じゃ。何か大切な物を持っているなら、どうぞおれに見せてくれい。おれは娘の病気の平癒を祈るために、ゆうべここに参籠(さんろう)した。すると夢にお告げがあった。左の格子に寝ている童がよい守本尊を持っている。それを借りて拝ませいということじゃ。けさ左の格子に来てみれば、お前がいる。どうぞおれに身の上を明かして、守本尊を貸してくれい。おれは関白師実じゃ」A1B1C1D2

厨子王は言った。「わたくしは陸奥掾正氏(むつのじょうまさうじ)というものの子でございます。父は十二年前に筑紫の安楽寺へ往ったきり、帰らぬそうでございます。母はその年に生まれたわたくしと、三つになる姉とを連れて、岩代の信夫郡(しのぶごおり)に住むことになりました。そのうちわたくしが大ぶ大きくなったので、姉とわたくしとを連れて、父を尋ねに旅立ちました。越後まで出ますと、恐ろしい人買いに取られて、母は佐渡へ、姉とわたくしとは丹後の由良へ売られました。姉は由良で亡くなりました。わたくしの持っている守本尊はこの地蔵様でございます」こう言って守本尊を出して見せた。A1B1C2D2

師実は仏像を手に取って、まず額に当てるようにして礼をした。A1B1C2D2

それから面背(めんぱい)を打ち返し打ち返し、丁寧に見て言った。A1B1C1D1

「これはかねて聞きおよんだ、尊い放光王地蔵菩薩(ほうこうおうじぞうぼさつ)の金像じゃ。百済国から渡ったのを、高見王が持仏にしておいでなされた。これを持ち伝えておるからは、お前の家柄に紛(まぎ)れはない。仙洞(せんとう)がまだ御位(みくらい)におらせられた永保の初めに、国守の違格(いきゃく)に連座して、筑紫へ左遷せられた平正氏が嫡子に相違あるまい。もし還俗(げんぞく)の望みがあるなら、追っては受領の御沙汰もあろう。まず当分はおれの家の客にする。おれと一緒に館へ来い。」A1B1C1D1

花村嘉英(2019)「森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分5

【カラム】
A平均1.4 標準偏差0.55 中央値1.0 四分位範囲1.0
B平均1.0 標準偏差0 中央値1.0 四分位範囲1.0
C平均1.8 標準偏差0.45 中央値2.0 四分位範囲1.0
D平均1.8 標準偏差0.45 中央値2.0 四分位範囲1.0
【クラスタABとクラスタCD】
AB 平均1.2普通、標準偏差0.22低い、中央値1.0低い、四分位1.0低い
CD 平均1.8高い、標準偏差0.45普通、中央値2.0高い、四分位範囲1.0低い
【クラスタからの特徴を手掛かりにし、どういう情報が主成分なのか全体的に掴む】
Bのバラツキが大きくて、直示のジェスチャーが多いことから、登場人物の厨子王と樵はよく動いているといえる。
【ライン】合計は、言語の認知と情報の認知の和を表す指標であり、文理の各系列をスライドする認知の柱が出す数字となる。
@ 7、視覚以外、直示、旧情報、未解決 → 場面の始まりは未解決が多い。
A 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 芝刈り場の様子。
B 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 雑木林を見廻す。
C 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 手を付けず落ち葉に座る。
D 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 芝刈りで指を痛める。
E 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 寒さで姉を思う。
F 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 樵が通りかかる。
G 6、視覚、直示、旧情報、未解決 → 厨子王は芝を刈らずにいる。
H 5、視覚、直示、新情報、解決 → 樵が刈り方を伝授する。
I 5、視覚以外、直示、新情報、解決 → 厨子王も芝を刈る。
【場面の全体】
 全体で視覚情報は7割余りであり、脳に届く通常の五感の入力信号の割合よりも低いため、視覚意外の情報が問題解決に効いている。

花村嘉英(2019)「森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分4

◆場面1 厨子王が芝を刈る

厨子王が登る山は由良が嶽の裾で、石浦からは少し南へ行って登るのである。A2B1C1D2

柴を苅る所は、麓から遠くはない。ところどころ紫色の岩の露(あら)われている所を通って、やや広い平地に出る。A1B1C2D2

そこに雑木が茂っているのである。厨子王は雑木林の中に立ってあたりを見廻した。A1B1C2D2

しかし、柴はどうして苅るものかと、しばらくは手を着けかねて、朝日に霜の融けかかる、茵(しとね)のような落ち葉の上に、ぼんやりすわって時を過した。A1B1C2D2

ようよう気を取り直して、一枝二枝苅るうちに、厨子王は指を傷めた。A2B1C2D2

そこでまた落ち葉の上にすわって、山でさえこんなに寒い、浜辺に行った姉さまは、さぞ潮風が寒かろうと、ひとり涙をこぼしていた。A2B1C2D2

日がよほど昇ってから、柴を背負って麓へ降りる、ほかの樵が通りかかって、「お前も大夫のところの奴か、柴は日に何荷苅るのか」と問うた。A1B1C2D2

「日に三荷苅るはずの柴を、まだ少しも苅りませぬ」と厨子王は正直に言った。A1B1C1D2

「日に三荷の柴ならば、午までに二荷苅るがいい。柴はこうして苅るものじゃ。」樵は我が荷をおろして置いて、すぐに一荷苅ってくれた。A1B1C2D1

厨子王は気を取り直して、ようよう午までに一荷苅り、午からまた一荷苅った。A2B1C2D1

花村嘉英(2019)「森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分3

3 多変量の分析

多変量を解析するには、クラスタと主成分が有効な分析になる。これらの分析がデータベースの統計処理に繋がるからである。
多変数のデータでも、最初は1変数ごとの観察から始まる。また、クラスタ分析は、多変数のデータを丸ごと扱う最初の作業ともいえる。似た者同士を集めたクラスタを樹形図からイメージする。それぞれのクラスタの特徴を掴み、それを手掛かりに多変量データの全体像を考えていく。樹形図については、単純な二個二個のクラスタリングの方法を想定し、変数の数や組み合わせを考える。
作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、グループ分けをする。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2比喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
まず、ABCDそれぞれの変数の特徴について考える。次に、似た者同士のデータをひとかたまりにし、ここでは言語の認知ABと情報の認知CDにグループ分けをする。得られた変数の特徴からグループそれぞれの特徴を見つける。
最後に、各場面のラインの合計を考える。それぞれの要素からどのようなことがいえるのであろうか。「山椒大夫」のバラツキが縦のカラムの特徴を表しているのに対し、ここでのクラスタは、一場面のカラムとラインの特徴を表している。
 なお、外界情報の獲得に関する五感の割合は、視覚82%、聴覚11%、嗅覚4%、触覚2%、味覚1%とする。(片野2018)

花村嘉英(2019)「森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より
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花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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