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2019年02月19日

森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分6

◆場面2 師実との出会い

山城の朱雀野に来て、律師は権現堂に休んで、厨子王に別れた。A1B1C2D2

「守本尊を大切にして往け。父母の消息はきっと知れる」と言い聞かせて、律師は踵(くびす)を旋した。
A1B1C2D2

亡くなった姉と同じことを言う坊様だと、厨子王は思った。A1B1C1D2

都に上った厨子王は、僧形になっているので、東山の清水寺に泊った。A1B1C2D1

籠堂(こもりどう)に寝て、あくる朝目がさめると、直衣(のうし)に烏帽子を着て指貫(さしぬき)をはいた老人が、枕もとに立っていて言った。A1B1C2D2

「お前は誰の子じゃ。何か大切な物を持っているなら、どうぞおれに見せてくれい。おれは娘の病気の平癒を祈るために、ゆうべここに参籠(さんろう)した。すると夢にお告げがあった。左の格子に寝ている童がよい守本尊を持っている。それを借りて拝ませいということじゃ。けさ左の格子に来てみれば、お前がいる。どうぞおれに身の上を明かして、守本尊を貸してくれい。おれは関白師実じゃ」A1B1C1D2

厨子王は言った。「わたくしは陸奥掾正氏(むつのじょうまさうじ)というものの子でございます。父は十二年前に筑紫の安楽寺へ往ったきり、帰らぬそうでございます。母はその年に生まれたわたくしと、三つになる姉とを連れて、岩代の信夫郡(しのぶごおり)に住むことになりました。そのうちわたくしが大ぶ大きくなったので、姉とわたくしとを連れて、父を尋ねに旅立ちました。越後まで出ますと、恐ろしい人買いに取られて、母は佐渡へ、姉とわたくしとは丹後の由良へ売られました。姉は由良で亡くなりました。わたくしの持っている守本尊はこの地蔵様でございます」こう言って守本尊を出して見せた。A1B1C2D2

師実は仏像を手に取って、まず額に当てるようにして礼をした。A1B1C2D2

それから面背(めんぱい)を打ち返し打ち返し、丁寧に見て言った。A1B1C1D1

「これはかねて聞きおよんだ、尊い放光王地蔵菩薩(ほうこうおうじぞうぼさつ)の金像じゃ。百済国から渡ったのを、高見王が持仏にしておいでなされた。これを持ち伝えておるからは、お前の家柄に紛(まぎ)れはない。仙洞(せんとう)がまだ御位(みくらい)におらせられた永保の初めに、国守の違格(いきゃく)に連座して、筑紫へ左遷せられた平正氏が嫡子に相違あるまい。もし還俗(げんぞく)の望みがあるなら、追っては受領の御沙汰もあろう。まず当分はおれの家の客にする。おれと一緒に館へ来い。」A1B1C1D1

花村嘉英(2019)「森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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