国境をはじめとする、分断のラインは地図にはない。 あるのは君の頭の中だ――。堀江貴文氏の新著『それでも君はどこにでも行ける』から一部を抜粋・再構成し、堀江氏のメッセージをお届けします。
日本を世界のほかの国と比較すると、やはり際立つのが「安さ」である。円の価値、物価も人件費も相対的に、先進国のなかでは、もう上位にはない。安上がりで、上質なサービスを海外に提供できる、コスパのいい国に分類されつつある。
堀江貴文「テレビの役割は終わりつつある」
コスパの良さゆえ、海外からの旅行者の人気を集めるのは、悪いことではない。しかしそのニーズ一辺倒になってしまうのは、あまり歓迎できないだろう。
安売りを避けつつ、アジア最先端の成熟都市としてのブランディングを、グローバル市場でアピールしていく姿勢が大切だ。
実際のところ、東京を筆頭とする日本の都市部は、世界でも稀なポテンシャルを持っていると言えるだろう。
世界最強のインフラと食文化
テロなど、危険な事件が起きる可能性も、諸外国と比べれば圧倒的に低い。商業施設などで手荷物検査といったセキュリティ対策をほとんど行っていないにもかかわらず、ここまで治安が保たれているのは、奇跡のような話だ。
交通インフラも世界に誇れるものだ。列車の安全性とダイヤグラムの精緻さについては世界でも間違いなくナンバーワンだし、人口比で考えれば、道路の渋滞だってひどくない。
江戸時代から拡大を続けながら、大震災や戦禍にまみえても再生し、綿密に都市機能を練り上げてきたのが東京という都市なのだ。
また、飲食店の美味しさやヘルシーさ、サービスの質は、やはり突き抜けている。
食が強い都市は世界中にいくつもあるが、寿司や洋食や中華のハイエンドはもちろんのこと、居酒屋やラーメン屋、ファストフード、さらにはコンビニ弁当まで、まず大きく外さないレベルで提供してくる都市を、僕はほかに知らない。
だから、アジアの金持ちたちが、こぞって日本の高級店に押し寄せるのは当然なのだ。僕が手がける都内の「WAGYUMAFIA」の店も、コロナパニックの前は、海外からの客で大盛況だった。
整ったインフラと治安の良さ、コスパのいいグルメと、観光都市の最強のカードがコンボで揃っている。アジアの他国を圧倒できる価値と言っていい。
魅力あふれるのは、東京だけではない。北京・ソウルなど海外へのアクセスが良く、アジアの新たなハブ都市になりつつある福岡、カジノ構想で海外からの莫大な投資を狙う大阪、このあと詳しく触れるが、人気急上昇中の北海道・ニセコなど、東京以外の地方都市も、新しい発展を遂げつつある。
リモートワークの浸透で、地方の重要性とパワーが、さらに増している。東京に一極集中していた価値は、テクノロジーの力で急速に、地方へ分散しているのだ。
コロナ禍以降の成熟国家の成功モデルに
確かに日本は、バブル崩壊以降「失われた時代」を強いられたかもしれない。だが、国全体の本質的な価値は決して失われておらず、むしろグローバリズムの潮流のなかで、増しているのではないか。
コロナパニックでは、しばらく混乱が続く。不安が去るまでには、何年もかかるだろう。けれど新型コロナウイルスによって、多くの価値が奪われたわけではない。
ウイルス禍で世界は「閉じた」。しかし、日本は歴史的には鎖国などの「閉じた」政治の先駆者の国とも言える。ガラパゴス的に発展してきた島国の文化は、コロナ時代への順応に対し、先んじた強みとなるはずだ。
閉じてきた利点を生かすという発想が、もしかしたら日本オリジナルの発展モデルかもしれない。規制を厳しくするということではなく、むしろ逆に行政レベルで規制緩和を断行するといい。
あえて攻めに転じて、「開く」ことにより、活路は開けるのではないか。コロナ禍以降の、成熟国家の成功モデルとして、日本が世界の手本になる可能性は十分に残っている。