たとえば 2 個のサイコロを投げて両方とも 1 が出る確率は
1/6 × 1/6 = 1/36
と計算できます。一方のサイコロが他方に何も影響を及ぼさないので、それぞれのサイコロが 1 の目を出す確率を単純に掛け合わせればよいのです(乗法定理)。このように事象 A の結果にかかわらず、事象 B の確率が変わらないという状態を「統計的に独立である」といいます。しかし、もう少し複雑な状況になると、互いに影響を及ぼすのかどうかということを判断するのが難しい場合もあります。
問題81 ハートの絵札とジョーカー [高3★★☆☆☆]
1 組のトランプから 1 枚のカードを取り出す状況を考えます。引いたカードが「ハートである」という事象と「絵札である」という事象が互いに統計的に独立であるかどうか、次の 2 つのケースで考察してください。(1) ジョーカーを除いた 52 枚のカードから 1 枚を引きます。
(2) ジョーカーを含めた 53 枚のカードから 1 枚を引きます。
[ヒント] 何はともあれ確率を計算してみましょう。
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問題 81 の解答
トランプにはスペード、ハート、クラブ、ダイヤの模様のカードが 13 枚ずつ入っていて、各模様ごとにジャック、クイーン、キングの 3 枚の絵札があります(合計で 12 枚)。(1) 事象 A, B を次のように定義しておきます。
[事象 A] 引いたカードがハートである。
[事象 B] 引いたカードが絵札である。
引いたカードがハートである確率は
P(A) = 13/52 = 1/4
であり、引いたカードが絵札である確率は
P(B) = 12/52 = 3/13
です。引いたカードがハートの絵札( 1 組のトランプに 3 枚あります)である確率は
P(A∩B) = 3/52
となります。A が起こったときに B が起こるという条件付き確率を P(B|A) で表すと、乗法定理(積の法則)により
P(A∩B) = P(A)P(B|A)
となります。つまり
P(B|A) = P(A∩B)/P(A) = (3/52)/(1/4) = 3/13
となって、これは P(B) に等しくなっています。つまり事象 A とは無関係に事象 B が起こっているといえるので、事象 A と事象 B は統計的に独立であると結論できます。
(2) 事象 A, B を次のように定義しておきます。
[事象 A] 引いたカードがハートである。
[事象 B] 引いたカードが絵札である。
引いたカードがハートである確率は
P(A) = 13/53
であり、引いたカードが絵札である確率は
P(B) = 12/53
です。引いたカードがハートの絵札である確率は
P(A∩B) = 3/53
となります。乗法定理(積の法則)によって
P(B|A) = P(A∩B)/P(A) = (3/53)/(13/53) = 3/13
となって、これは P(B) と僅かに値が異なっています。よって事象 A と事象 B は統計的に独立ではありません。「絵札を引く」という行為が、「ハートである」という事象に影響を与えてしまっているのです。なんだか不思議ですね。このように確率の分野では、実際に計算してみると直感に反した結果になることがたまにあるのです。