(バイオマーカー、標的探索、作用機序解析)
今回は順列の問題。
確率分野の土台となるところなので、しっかり押さえておきましょう。
問題18 KOBATO を並び替えましょう [高2★☆☆☆☆]
KOBATO という 6 字で構成された単語の文字の並び替えを考えます。(1) 単語の中にあるアルファベットを全部用いて並べると、何通りの並べ方がありますか。
(2) 文字を子音 K, B, T と母音 A, O の 2 つのグループに分けます。子音のあとに必ず母音がくるような規則で文字列を並び替えるとき、全部で何通りの並べ方がありますか。
≫ [Amazon書籍] 量子力学を学ぶための解析力学入門
解答18(区別できないアルファベットに注意!)
(1) 6 個の異なるものを並べる順列は 6! ですが、同じ(区別できない)アルファベットの O が 2 つ含まれているので、重複を避けるために 2 で割っておかなくてはなりません。6!/2 = 360
が答えとなります。
(2) まず K, B, T の3文字を並べる場合の数を求めると、
3! = 6
です。その中から、たとえば次のように T, K, B の順を取り出します。それから子音の横を空白にして母音の並び方を数えてみます。
T □ K □ B □
2 つの O を O1, O2 のように区別して A, O1, O2 を □ に並べる場合の数は 3! です。しかし実際には O は区別できませんから、先程と同じように、やはり重複を避けるために 2 で割って、
3!/2 = 3
がこのケースにおける場合の数となります。これに先の「 K, B, T の3文字を並べる場合の数」を掛けて答えが得られます:
3 × 6 = 18
確率分野の問題は答えが出ても「本当に合ってるのかなー」と疑問に思うこともありますね。 18 通りぐらいであれば書き出して確認してみてもいいかもしれません:
KABOTO, KOBATO, KOBOTA, KATOBO, KOTABO, KOTOBA
BATOKO, BOTAKO, BOTOKA, BAKOTO, BOKATO, BOKOTA
TAKOBO, TOKABO, TOKOBA, TABOKO, TOBAKO, TOBOKA
これで全部です。意味のない単語ばかり並んでいますが、中に KOBATO (こばと)と KOTOBA (ことば)という単語がありますね。実はこばとちゃんは「ことば」をもじって付けた名前なのです。小鳩ではありません。ちなみに「こばとちゃん」はよく「ことばちゃん」と間違われることがあって、そのたびに「違いますよー! こばとですよー」と怒っています。
世の中には子音だけで記された文字もあります
今回の問題に絡めて子音と母音についてのお話。日本語はひらがなやカタカナなどで五十音の最初の「あいうえお」以外は、子音と母音をくっつけた記号を使って表記しますね。たとえば「こばと」の3文字をローマ字で綴ると、KOBATO
となるわけです。さて、ここでもし、この文字列から母音を抜き去ってしまったらどうなるでしょう?
KBT
...... 今は頭の中に「こばと」の発音が残っていますから、まあ何となくは想像できますけど、もしも何も知らない人が見たら「何だこりゃ?」と頭を捻るはずです。そんなわけで文字の表記にはやっぱり母音が欠かせないですよね ...... と思いきや、世界には子音だけで書かれた文字がけっこうあります。
有名なのは古代ヘブライ語です。もちろん話し言葉には母音があるのですけど、書き言葉(主に聖書など)にはありません。「うーむ。特殊な言語体系なんだね。でも子音だけでも母音がわかるような仕組みなんだね、きっと」なんて思うかもしれませんけど、わかるわけありません。やっぱり後の時代の人は「えーと、えーと? どう発音するの?」と頭を捻ったのです。さきほど KBT から KOBATO を想像したように、当時の人は子音の文字列から母音を含めた単語を連想できたのですが、時を経ると単語の形も変化していきますから、やがて「これ何なの?」ということになってしまうのです。ちなみに現代ヘブライ語も基本的には子音のみで記述するのですけど、中世の頃にマソラ学者たちによって考案されたニクダ(ニクード)と呼ばれる母音記号を付記しています。
古代エジプト語のヒエログリフもまた子音のみで記述された文字です。「あーだ、こーだ」と色々議論があるのですけど、考古学では「たぶん、こう読むのかなあ」ということで読み方の規則が定められているようです。たとえば nfr というように子音が 2 つ以上続く場合は「間に e を補っておきなさい」てことで「ネフェル(美しい)」と発音します(しただろうと推測されています)。
他にも古代エチオピア文字(古代南アラビア文字)もまた子音表記だったのですが、こちらは「不便でしょ!」ということにずいぶん早い段階から気づいたようで、 4 世紀にはすでに母音表記が付されるようになったとのこと。うーん。世界には色々な言語があるものですねー。