問題06 カテナリー(懸垂線) [高3★★☆☆☆]
曲線 y = f(x) の 区間 [a, b] における曲線の長さ L はによって与えられます。これをふまえて以下の問いに答えてください。
(1) カテナリー(懸垂線)は次のように定義される関数です。
1 + y′2 = y2, y" = y が成り立つことを示してください。
(2) カテナリー(懸垂線)から k (≧ 1) を引いた関数
が x 軸と交わる 2 点を α, β (α ≧ β) とします。この 2 点間の弧の長さ L(k) を求めて、y = L(k) のグラフを描いてください。
(3) 以下の値を k に代入して L(k)/2 を具体的に計算してください。
ただし、sqrt は √ を表します。
sqrt(5) = 2.236, sqrt(17) = 4.123, sqrt(26) = 5.099
この計算結果と、(2) で描いたグラフから、十分に大きな k において
k と L(k)/2 の間に成り立つ関係を示してください。
解答06
カテナリーを g(x), また g(x) から k を引いた関数を f(x) とします:図をよく見て f(x) と g(x) の位置関係を把握してください。
(1) カテナリーが満たす方程式を確認する問題です。
2y = ex + e−x を 2 乗すると
4y2 = e2x + e−2x + 2 [1]
また 2y′= ex − e−x を 2 乗すると
4y′2 = e2x − e−x − 2
両辺に 4 を加えて
4y′2 + 4 = e2x − e−2x + 2 [2]
[1] と [2] から
1 + y′2 = y2
が成り立ちます。カテナリーは 2 回微分すると元の形に戻ります。
2y′= ex − e−x をもう1度微分すると
2y′= ex + e−x
となって y" = y が示されました。
(2) まず α, β を求めておきます。
f(x) = 0 とおいて、 ex = t の変換を行うと、
t2 − 2 kt + 1 = 0
t = k ± sqrt(k2 − 1)
変数を元に戻して、
ex = k ± sqrt(k2 − 1)
対数を取れば α, β を得られますが、以下の積分計算を考えて、このままの形にしておきます。つまり、
eα = k + sqrt(k2 − 1)
eβ = k − sqrt(k2 − 1)
計算に備えて次の形も用意しておきます:
eα − eβ = 2 sqrt(k2 − 1)
eα eβ = 1
次は積分を計算して弧の長さ L(k) を求めます。
f′を微分すれば定数 k は消えてしまいます(f′= g′)。
したがって積分は g(x) を使って計算すればよいのです。この関係は上の図を見ても明らかですね。区間 [β, α] によって切り取られる弧の長さは f(x) でも g(x) でも同じなのです。 (1) で得られた関係を使うと
となりますから積分は簡単になって
を計算すればよいことになります。実際に計算すると
となります。こうして得られた L(k) は L(1) = 0, L(+∞) = ∞ なのですが、図に描くときはどのような形で発散してゆくのかを示す必要があります。L(k) のルートの中から k をひっぱり出して、
となりますから、k → ∞ で L(k) ≒ 2k ですね。これが漸近線となりますから、y = 2k に近づいてゆくように弧を描けばグラフが完成します:
これが描ければ (3) の問題はおまけのようなものです。
(3) 与えられた数値を入れて計算します:
k = sqrt(5) = 2.236 L(k)/2 = 2
k = sqrt(17) = 4.123 L(k)/2 = 4
k = sqrt(26) = 5.099 L(k)/2 = 5
ですね。何となく k が L(k)/2 に近づいている気がしますね。先ほどのグラフから L(k) ≒ 2k ですから、
L(k)/2 ≒ k
がわかります。これは十分に大きい( k ≧ 5 あたりの) k においては、下図のように緑色の線分と赤い実線部分の長さが等しくなることを示しています。
補足 カテナリー(懸垂線)
より一般的なカテナリーの定義はで与えられます。カテナリーが満たす方程式は
1 + y′2 = y2/a2, y" = y/a2
です。カテナリーは均質な紐の両端を天井で固定して自然な状態で垂らした形ですから、すぐに観察することができますよ。ぜひ実験して確かめてみてください。