パスカルの蝸牛形(リマソン曲線)
今回は パスカルの蝸牛形 を見ていきます。読んで字のごとく「カタツムリに似た形」ということです。別名の リマソン もラテン語で「カタツムリ」という意味です。正直言うと別にそれほどカタツムリに似ているわけではありません。まあそれはともかくとして極方程式はr = acosθ + l [1]
です。(x, y) の具体的な表式は
x = (acosθ + l ) cosθ [2]
y = (acosθ + l ) sinθ [3]
y = (acosθ + l ) sinθ [3]
となります。まず a = l = 1 のグラフを調べてみます。
心臓のような形をしていますね。 a = l のグラフには、カージオイド(心臓形)という名前がついています。英語で綴ると cardioid ですが、一般に英語で「心臓」を意味する heart とは無縁の響きですね。カージオイドはギリシア語の καρδιά(心臓)と είδος (形)という言葉に由来しています。カージオイドはエピサイクロイドという関数(来年早々に扱う予定です)の特別な形としても現れてきます。それではこのカージオイドからスタートして、パラメータの a, l を変化させてみましょう。まずは l を 1 に固定して a = 2, 3, 4 としてみます:
カージオイドのときに凹んでいた部分を巻き込んで内側に閉曲線を作っています。 a の値が増えるほど内側の曲線は大きくなっていきますね。 a = 100 という極端な設定でグラフを描いてみると・・・・・・
このように、外側の曲線と内側の曲線は今にも重なって1つの円になりそうです。実際、[1] - [3] 式において a が l に対して十分に大きい(a ≫ l )として l を落としてしまえば、
r = acosθ
x = acos2θ
y = acosθsinθ
という形になりますが、これを x と y の式に書き直してみると
x 2 - ax + y 2 = 0
という円の方程式になることがわかります。つまり、[1] において a → ∞ の極限をとれば、それは1つの円となることを意味しています。
次は a = 1 に固定して l = 2, 3, 4 と変化させてみます:
今度はより単純な1つの閉曲線が描かれていますね。 l が大きくなるほど左側の歪みが直されて真円に近づいています。今度は [1] - [3] 式で l ≫ a と考えて a の含まれた項を無視してしまうと、
r = l, x = acosθ, y = asinθ
という誰もが知る円の極方程式となります。 [1] において l → ∞ の極限をとってもやはり円になるということです。
[2] [3] 式に手を加えて
x = (acosθ + l ) cos(pθ) [4]
y = (acosθ + l ) sin(qθ) [5]
y = (acosθ + l ) sin(qθ) [5]
という関数を考えてみます。三角関数の位相を定める p と q が加わって、
(a, l , p, q)
という 4 つのパラメーターでグラフの形を決定することになります。来年扱う予定のハイポサイクロイドやエピサイクロイド(或いはそれらを包括するトロコイド)に形が似ていますが、符号が若干異なっているので混乱しないでください。グラフは全く別物です。試しに (a, l , p, q) = (1, 2, 2, 1) でグラフを描いてみましょう。
ブーメランのような形ですね。或いは柿の種? まあ名前はついていないので好きなように呼んでください。[4][5] はパラメータを変えると目まぐるしくその様相を変えます。私があれこれ試して面白いと思ったグラフを下に並べておきます。
他にも無数のパターンがあるので、エクセルをいじるのが好きな人は色々と試してみてください。何か発見があったらコメントで教えていただけると嬉しいです。