新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2018年12月25日
豪州実態指標「小売売上高」発表前後のAUDJPY反応分析(4.1訂版)
本稿は、過去の本指標結果と反応方向の関係を分析することによって、本指標発表前後のAUDJPY取引に役立つ特徴を見出すことがテーマです。
豪州小売売上高(Retail turnover)は、オーストラリア統計局(ABS:Australian Bureau of Statistics)が、小売・サービス業の月間売上高をサンプル調査で算出した金額と、その季節調整済金額と、それらの前月比を発表する指標(発表事例)です。
主要FX会社の指標カレンダーでは、季節調整額の前月比のみを目にすることができます(プレスリリース版のヘッドラインが季節調整額の前月比のみだから?)。そのため、分析には即応性が見込まれる季節調整済前月比のみを用います(以下、単に「前月比」と記述)。
豪州と言えば資源関連企業に注目が集まります。ところが、資源関連企業の収益は、資源価格が頭打ちとなるにつれて伸び悩んでいます。もともと豪州GDPに占める鉱工業生産高は1割程度しかないのです。その一方、非資源関連企業の収益は、小売業を中心に長期的に拡大傾向と見なされています。個人消費はGDPの約60%を占め、小売売上高はその1/3の約20%を占めています。
豪州は毎年約20万人の移民を受け入れており、2050年までに自然増も含めて約40%の人口増加が見込まれています。この人口増加が長期的に今後も小売売上高を拡大していくと見込まれています。
対象には、一般的にイメージされる小売店販売だけでなく外食や旅行等のサービスも含まれています。
南東部主要都市での一般的なレストランで昼食が1500円・夕食が3000円という物価に象徴される状況では、なかなか消費が増えないでしょう。レストランのランクを落として、もっと安く食事ができるところを探す方が大勢となるでしょう。
本分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
本指標は3か月に1回、四半期小売売上高前期比が同時発表されます。また、貿易収支との同時発表もかなりの頻度で行われます。けれども、これらだけでなく、本指標での取引に同時発表指標のことを気にする必要はありません。本指標前月比は、反応方向への影響力がかなり強い、という実績があります。
指標結果の市場予想に対する良し悪しの影響は、10分以上持続しがちです。けれども、発表から1分後とその10分後とでは、後者が前者より反応を伸ばしていたことが49%しかありません。初期反応方向への追撃は、ほとほどに留めるべきでしょう。
本指標は、前月結果が良すぎたり悪すぎたりしても、翌月に反動を期待したポジションを持つべきではありません。反動が起きても市場予想を超える反動が起きることと、市場予想に及ばない程度の反動しか起きないことは半々で、取引の根拠にはなりません。
そんなことより、本指標での取引前には、先に発表されたWestpac消費者信頼感指数を確認しておきましょう。条件を満たせば、同指標は本指標と連動・追従しています。
具体的には次の取引方針を提案します。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
分析対象は、2015年1月集計分〜2018年10月集計分(同年12月発表分)の46回分です。完璧ではないにせよ、傾向を見出すには十分な調査数に達しています。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
過去の市場予想と発表結果の推移を下図に示します。
下図の市場予想は発表直前の値を用い、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままを用います。これは本指標の推移そのものより、指標発表直前直後の反応程度や反応方向との関係を重視しているためです。
※ 2018年12月集計分(2019年2月発表分)反映済
前月比が発表される多くの他の指標と同様に、市場予想の上下動は発表結果の上下動に比べて安定しています。こういう指標での発表結果の反動は、市場予想をオーバーシュートやアンダーシュートすることが多いものです。がしかし、上図を見る限り、翌月の発表結果が市場予想をオーバーシュートやアンダーシュートするような閾値(しきいち)があるように見えません。
きちんと数えておきましょう。
発表結果が+0.6%以上だったことは過去7回あります。この7回の翌月の発表結果が市場予想を下回っていたことは4回です(期待的中率57%)。一方、発表結果が0以下だったことは過去11回あります。この11回の翌月の発表結果が市場予想を上回っていたことは6回です(期待的中率55%)。
市場予想の安定度に比べ、発表結果の上下動が大きすぎ、反動が起きても市場予想に届かないことが多いのです。
ならば逆に、発表結果が市場予想を上回ったら続けて上回りがち、下回ったら続けて下回りがち、ということをアテにできるでしょうか。
結論は「アテにできない」です。
発表結果が市場予想を上回り続けたり下回り続けた回数は19回です。一方、発表結果が市場予想を下回った翌月に発表結果が市場予想を上回ったり、その逆だったりしたことは24回あります。発表結果と市場予想が一致したときは、このブログの集計ルールでカウントしません。
発表結果が市場予想の上か下かが、19回維持:18回逆転の事象での逆転(反動)の的中率は49%しかありません。
以上のことから、本指標で反動をアテにした取引をやってはいけません。本指標発表前に前月の反動云々という解説記事を見ても、見なかったことにしましょう。
先述の通り、本指標の分析には前月比しか用いません。
よって、本指標の各判別式は、
です。
事前差異判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線に対応)と直前10-1分足の方向一致率は46%しかありません。市場予想なんか関係ないのです。
事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率は85%です。指標発表直後は、市場予想との大小関係にかなり素直に反応します。
実態差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率は66%です。けれども、「事後」差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率は73%です。前回結果なんか反応方向に関係ないのです。
参考までに、各差異判別式の解の期間毎の平均値と全平均値を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
下図は分析対象期間全ての事例での平均値となります。
事前差異が全平均を超えたこと(0.4以上)は12回(頻度26%)しかありません。この12回で事前差異と事後差異の符号が一致したことは4回、不一致が6回、事後差異が0だったことが2回ありました。
このことは、市場予想と前回結果の差が大きいとき、プロフェッショナルの市場予想だけに何か相応の根拠がありそうな気がするものです。けれども、その差ほど発表結果が大きく動くことは、その差ほど大きく動かないことと同じぐらいしか起きない、ということが過去の実績です。
過去46回の本指標発表が、本指標単独で行われたことは15回(頻度33%)しかなく、3回に2回の発表では別の指標と同時発表となっています。その内訳を下表に整理します。
下表は、同時発表が行なわれたとき、同時発表指標の事後差異(市場予想がない指標では実態差異)と直後1分足の方向の一致/不一致と、本指標の事後差異と直後1分足の方向の一致/不一致を一覧しています。
1行目をご覧ください。
本指標が四半期小売売上高と同時発表されたことは、過去15回あります。この15回のうち、四半期小売売上高の事後差異(プラスのとき陽線、マイナスのとき陰線に対応)と直後1分足の方向が一致したことは8回、不一致だったことは6回です。残る1回は事後差異が0でした。
同様に、四半期小売売上高と本指標と同時発表されたとき、本指標事後差異と直後1分足は方向一致が12回、不一致が2回です。
このことから、本指標と四半期小売売上高が同時発表したときの反応方向への影響力は、本指標>四半期小売売上高、ということになります。
本指標が貿易収支・住宅許可件数と同時発表したときも同様です。本指標>貿易収支、本指標>住宅許可件数、という関係が成り立ちます。
ただ、四半期民間設備投資や四半期PPIと同時発表されたときの影響力の強さは、まだ同時発表事例が少ないため、結論は時期尚早と考えています。
ともあれ、これらのことから、本指標の反応方向への影響力は非常に強い、ということがわかります。
疑問があるとすれば、直後1分足でなく、直後11分足や直後1時間足への影響を集計していないことでしょう。けれども、指標結果の良し悪しの反応方向への影響力は、指標発表時点から前後に時間が離れるほど弱まります。実際のチャートを見ていると、指標発表直後の初期反応方向と、数10秒〜数分後に別の指標の影響力が強まったと解釈できる事例もあるものの、そういった解釈は定量化にそぐわないノイズの影響も大きいため無視します。ノイズとは、対比する指標同士だけでなく、もっと大きなトレンドだったり、発表時刻の迫った次の中国指標の影響のことです。そのため、色々な疑問はさておき、指標結果の良し悪しの反応方向への影響力、発表時点から1分後に現れている、と仮定したときの関係を先の結論としています。
分析対象の指標の反応方向への影響力の分析は短時間に限らない限り、膨大なデータで高度過ぎる統計解析手法を使わないと、却って精度が悪くなってしまいます。
本件は『豪州景気指標「Westpack消費者信頼感指数」発表結果の豪州小売売上高への影響』に詳述しています。その結論は次の通りです。
小売売上高前月比の前月発表結果に対する改善/悪化は、Westpack消費者信頼感指数の改善/悪化と同月集計分が連動、もしくは小売売上高の改善/悪化がWestpack消費者信頼感指数より3か月遅行追従している可能性があります。
この連動・追従の関係は、同月集計分が先に発表されるWestpack消費者信頼感指数の値が大きいほど、小売売上高前月比の前月結果に対する増減との方向一致率が高まります。
下表をご覧ください。
一行目は、Westpack消費者信頼感指数の発表値の大きさです。プラスかマイナスかは関係ありません。
二行目の右端「4以上」という欄は「Westpack消費者信頼感指数が+4以上なら同月集計分の本指標結果は前月結果より改善し、△4以下なら同月集計分の本指標結果は前月結果より悪化することが、過去71%起きている」と読みます。
すなわち、Westpack消費者信頼感指数の値が3以上(プラスでもマイナスでも)だったことは、過去37%の頻度で発生しており、そうした場合に小売売上高実態差異(=発表結果ー前回結果)の符号と一致しがち、という訳です。そして、後記2.3項の指標一致性分析から、本指標実態差異は直後1分足との方向一致率が73%に達しています。
よって、Westpack消費者信頼感指数は、本指標結果だけでなく、本指標発表直後の反応方向を同期示唆もしくは3か月先行示唆している、と言えます。
分析対象は、2015年1月集計分〜2018年10月集計分(同年12月発表分)の46回分です。完璧ではないにせよ、傾向を見出すには十分な調査数に達しています。
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
過去の4本足チャートの各ローソク足の平均値と分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は過去平均で16pipsです。
指標発表直後の跳ねを狙うなら、10pips強ぐらいにしておいたら良いでしょう。跳ね10pipsで指値利確設定の場合、過去事例では80%が引っかかっています。平均値16pipsでは、その数字が44%に下がります。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表での4本のローソク足順跳幅で平均48pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(10〜20pips)。その期間の動き全体の2〜4割しか狙わなければ、無理のない取引で勝率を稼ぎやすく、長期に亘る本指標取引での収益を最大化しやすい、との個人的感触があります。
ご参考まで。
次に、期間毎に区切った直前10-1分足と直後1分足と直後11分足の反応程度の推移を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
直後1分足値幅から直後11分足値幅があまり伸びていません。発表から1分後とその10分後は、その間の直後11分足跳幅を狙うことになります。
個別反応分析は、勝率よりも期待値を重視して取引するための分析です。合理的とは言えるものの、例え連敗が続いてもずっと同じやり方で取引を続ける不屈さが必須です。
多くの指標では、事後差異と直後1分足の方向一致率が高くなりがちなことがわかっています。けれども、方向こそ一致しがちでも、事後差異の大きさと直後1分足値幅が比例的になる指標は少ないことがわかっています。
事後差異判別式の解(横軸)と直後1分足終値(縦軸)の関係と、直後1分足終値(横軸)と直後11分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。前者が初期反応、後者がその後の伸びを示します。
ともに、回帰式(青線)の上下近くにドット分布が集中しています。
本指標は、事後差異(プラスが陽線、マイナスが陰線、に対応)と直後1分足の相関が高いことがわかります。また、回帰式(赤線)の傾きは対角線(黒線)の傾きより右上がりです。平均的には、本指標は初期反応方向に伸ばしがちです。
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
方向率は、直前1分足の過去陰線率が84%と偏りがあります。方向一致率は、事後差異と直後1分足・直後11分足が各85%・83%です。
これらの数値を、2016年以前と2017年以降に分けて下表に整理してみると、以前から一貫してこれら数値が高かったことがわかります。
よって、直前1分足は陰線になりがち、事後差異と直後1分足・直後11分足は方向一致しがち、という本指標の傾向は信頼できます。
次に、反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。その84%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは71%です。
指標発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが49%です。早期追撃開始で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示し、それぞれの期間の取引指針を纏めておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均順跳幅は6pips、同値幅は3pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは6回あります(頻度13%)。
過去陽線率は64%、事前差異との方向一致率は46%です。
上下にヒゲも多く、どちらに伸びるかがわからない以上、この期間の取引は避けた方が良いでしょう。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足は過去平均順跳幅が5pips、過去平均値幅が3pipsです。以前は3〜5pipsの陽線側への逆ヒゲを形成することが多かったものの、2016年頃からはあまり大きな逆ヒゲは形成されなくなっています。そのころから、反応程度も小さくなっています。
直前1分足の過去陰線率は84%に達しています。事前差異との方向一致率は37%(不一致率63%)となっており、この数字からこの期間にロングをオーダーすることはあり得ません。ショートか取引きしないかが選択肢です。
事前差異がプラスのとき、ショートをオーダーすると良いでしょう。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均順跳幅は16pips、過去平均値幅は12pipsです。
上図で着目すべき点は逆跳幅(いわゆる「逆ヒゲ」「騙し」)の存在有無です。豪州指標発表の直前直後には、何だかわからない動きが散見される指標があるので、この点は注意が必要です。
幸い、本指標直後1分足では、逆跳幅が順跳幅平均値の16pipsに達したことはありません。逆跳幅が順跳幅よりも長かったことは5回(頻度11%)あるものの、そうしたことは2016年5月集計分を最後に起きていません。
騙しに遭いにくい指標です。
騙しに遭いにくいことがわかったら、指標発表直後の方向を当てることに専念できます。
本指標は、先に発表されるWestpack消費者信頼感指数が+3以上/△3以下ならば、それと同月集計分と3か月後集計分の本指標前月比が前月結果を上回り/下回りがちです。そして、本指標前月比が前月結果を上回れば/下回れば、直後1分足が陽線/陰線となったことが73%です。
本指標発表前には、本指標の集計月を確認し、それと同月集計分と3か月前のWestpack消費者信頼感指数の値を確認しておきましょう。条件を満たすときは、指標発表直前にその方向にオーダーします。
指標発表後は、初期反応方向を確認したら早期追撃開始します。高値掴みを避けるためには、12pipsを超えて反応を伸ばしていたら、もう拙速な追撃ポジション取得は避けた方が良いでしょう。その場合、直後1分足終値で追撃開始し、数分以内に利確/損切です。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
上図で、順跳幅より逆跳幅の方が長かったことは6回(頻度13%)起きています。その6回のうち4回で、直後11分足が直後1分足と反転しています。けれども、復讐に燃えてはいけません。その反転した4回は、反転してから追撃しても大して伸びていません。この4回の順ヒゲ平均値=直後1分足から見た逆ヒゲ平均値は5.3pipsしかありません。だから、3pipsも反転したら潔く損切です。
直後1分足値幅が20pips以上だったことは過去7回(頻度15%)あります。この7回のうち6回は、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が伸びています。
そこで、直後1分足終値が20pips以上なら追撃ポジションを取ることにします。もし直後11分足順跳幅の先端で利確できたなら平均11pipsの利確でした。もし直後11分足跳幅の先端で利確し損ねて直後11分足終値で利確していたら平均7pipsの利確でした。
よって、直後1分足終値が20pips以上なら、その時点で追撃を開始します。そして、含益が11pipsに達するか、直後11分足終値で利確します。損切の目安も11pipsで良いでしょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
取引成績は、この分析に記載方針に沿って実際に取引を行った結果だけを纏めています。実際に取引した結果以外は、例え事前方針が妥当だったとしてもここには含みません。また、事前方針に挙げていない取引(方針外取引)の成績は含めません。
実際の取引は、例え結果的に陽線だったとしても終値1秒前まで長い陰線側へのヒゲをずっと形成していたりします。そういった場合、事前のその期間の取引方針がロングが正解かショートが正解かわかりません。実際の取引で利確できたか損切せざるを得なかったかだけが公平な判定基準だと言えます。そして、方針外取引をここに含めると、事前分析の有効性が後日検証できなくなってしまいます。
取引方針の記述を、勝ちやすく・分析結果を誤解しにくく・自己裁量部分がわかるように、進歩・改善していくしかありません。記述はがんじがらめ過ぎても取引がうまくいきません。その兼ね合いが難しいので、試行錯誤しています。
※ 2019年2月6日最新版に差替
2019年個別記録先
※ 4訂:書式統一、最新データ反映、取引方針改訂:2018年12月25日
※ 4.1訂:指標推移グラフ更新、成績表更新:2019年2月6日
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
ーーー$€¥£A$ーーー
豪州小売売上高(Retail turnover)は、オーストラリア統計局(ABS:Australian Bureau of Statistics)が、小売・サービス業の月間売上高をサンプル調査で算出した金額と、その季節調整済金額と、それらの前月比を発表する指標(発表事例)です。
主要FX会社の指標カレンダーでは、季節調整額の前月比のみを目にすることができます(プレスリリース版のヘッドラインが季節調整額の前月比のみだから?)。そのため、分析には即応性が見込まれる季節調整済前月比のみを用います(以下、単に「前月比」と記述)。
豪州と言えば資源関連企業に注目が集まります。ところが、資源関連企業の収益は、資源価格が頭打ちとなるにつれて伸び悩んでいます。もともと豪州GDPに占める鉱工業生産高は1割程度しかないのです。その一方、非資源関連企業の収益は、小売業を中心に長期的に拡大傾向と見なされています。個人消費はGDPの約60%を占め、小売売上高はその1/3の約20%を占めています。
豪州は毎年約20万人の移民を受け入れており、2050年までに自然増も含めて約40%の人口増加が見込まれています。この人口増加が長期的に今後も小売売上高を拡大していくと見込まれています。
対象には、一般的にイメージされる小売店販売だけでなく外食や旅行等のサービスも含まれています。
南東部主要都市での一般的なレストランで昼食が1500円・夕食が3000円という物価に象徴される状況では、なかなか消費が増えないでしょう。レストランのランクを落として、もっと安く食事ができるところを探す方が大勢となるでしょう。
ーーー$€¥£A$ーーー
本分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
本指標は3か月に1回、四半期小売売上高前期比が同時発表されます。また、貿易収支との同時発表もかなりの頻度で行われます。けれども、これらだけでなく、本指標での取引に同時発表指標のことを気にする必要はありません。本指標前月比は、反応方向への影響力がかなり強い、という実績があります。
指標結果の市場予想に対する良し悪しの影響は、10分以上持続しがちです。けれども、発表から1分後とその10分後とでは、後者が前者より反応を伸ばしていたことが49%しかありません。初期反応方向への追撃は、ほとほどに留めるべきでしょう。
本指標は、前月結果が良すぎたり悪すぎたりしても、翌月に反動を期待したポジションを持つべきではありません。反動が起きても市場予想を超える反動が起きることと、市場予想に及ばない程度の反動しか起きないことは半々で、取引の根拠にはなりません。
そんなことより、本指標での取引前には、先に発表されたWestpac消費者信頼感指数を確認しておきましょう。条件を満たせば、同指標は本指標と連動・追従しています。
具体的には次の取引方針を提案します。
- 直前1分足は、事前差異がプラスのときショートをオーダーです。
- 予め、本指標同月集計分と3か月前集計分のWestpack消費者信頼感指数の値を確認しておきましょう。Westpack消費者信頼感指数が+3以上/△3以下ならば、指標発表直前にその符号と同じ方向にポジションをオーダーし、10pipsで利確/損切です。発表から1分以内に決済します。
同月集計分と3か月前集計分の+3以上と△3以下のように矛盾する場合は、3ヶ月前集計分の結果を優先します。 - 指標発表後は、初期反応方向を確認したら早期追撃開始します。高値掴みを避けるためには、12pipsを超えて反応を伸ばしていたら、もう拙速な追撃ポジション取得は避けた方が良いでしょう。その場合、直後1分足終値で追撃開始し、数分以内に利確/損切です。
- 直後1分足終値が20pips以上なら、その時点で追撃を開始します。そして、含益が11pipsに達するか、直後11分足終値で利確します。損切の目安も11pipsで良いでしょう。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
T.指標分析
分析対象は、2015年1月集計分〜2018年10月集計分(同年12月発表分)の46回分です。完璧ではないにせよ、傾向を見出すには十分な調査数に達しています。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【1.1 指標推移】
過去の市場予想と発表結果の推移を下図に示します。
下図の市場予想は発表直前の値を用い、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままを用います。これは本指標の推移そのものより、指標発表直前直後の反応程度や反応方向との関係を重視しているためです。
※ 2018年12月集計分(2019年2月発表分)反映済
前月比が発表される多くの他の指標と同様に、市場予想の上下動は発表結果の上下動に比べて安定しています。こういう指標での発表結果の反動は、市場予想をオーバーシュートやアンダーシュートすることが多いものです。がしかし、上図を見る限り、翌月の発表結果が市場予想をオーバーシュートやアンダーシュートするような閾値(しきいち)があるように見えません。
きちんと数えておきましょう。
発表結果が+0.6%以上だったことは過去7回あります。この7回の翌月の発表結果が市場予想を下回っていたことは4回です(期待的中率57%)。一方、発表結果が0以下だったことは過去11回あります。この11回の翌月の発表結果が市場予想を上回っていたことは6回です(期待的中率55%)。
市場予想の安定度に比べ、発表結果の上下動が大きすぎ、反動が起きても市場予想に届かないことが多いのです。
ならば逆に、発表結果が市場予想を上回ったら続けて上回りがち、下回ったら続けて下回りがち、ということをアテにできるでしょうか。
結論は「アテにできない」です。
発表結果が市場予想を上回り続けたり下回り続けた回数は19回です。一方、発表結果が市場予想を下回った翌月に発表結果が市場予想を上回ったり、その逆だったりしたことは24回あります。発表結果と市場予想が一致したときは、このブログの集計ルールでカウントしません。
発表結果が市場予想の上か下かが、19回維持:18回逆転の事象での逆転(反動)の的中率は49%しかありません。
以上のことから、本指標で反動をアテにした取引をやってはいけません。本指標発表前に前月の反動云々という解説記事を見ても、見なかったことにしましょう。
【1.2 指標結果良否判定】
先述の通り、本指標の分析には前月比しか用いません。
よって、本指標の各判別式は、
- 事前差異判別式=前月比の(市場予想ー前回結果)
- 事後差異判別式=前月比の(発表結果ー市場予想)
- 実態差異判別式=前月比の(発表結果ー前回結果)
です。
事前差異判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線に対応)と直前10-1分足の方向一致率は46%しかありません。市場予想なんか関係ないのです。
事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率は85%です。指標発表直後は、市場予想との大小関係にかなり素直に反応します。
実態差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率は66%です。けれども、「事後」差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率は73%です。前回結果なんか反応方向に関係ないのです。
ーーー$€¥£A$ーーー
参考までに、各差異判別式の解の期間毎の平均値と全平均値を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
下図は分析対象期間全ての事例での平均値となります。
事前差異が全平均を超えたこと(0.4以上)は12回(頻度26%)しかありません。この12回で事前差異と事後差異の符号が一致したことは4回、不一致が6回、事後差異が0だったことが2回ありました。
このことは、市場予想と前回結果の差が大きいとき、プロフェッショナルの市場予想だけに何か相応の根拠がありそうな気がするものです。けれども、その差ほど発表結果が大きく動くことは、その差ほど大きく動かないことと同じぐらいしか起きない、ということが過去の実績です。
【1.3 指標間一致性分析】
(1.3.1 過去同時発表指標との反応方向への影響力強弱)
過去46回の本指標発表が、本指標単独で行われたことは15回(頻度33%)しかなく、3回に2回の発表では別の指標と同時発表となっています。その内訳を下表に整理します。
下表は、同時発表が行なわれたとき、同時発表指標の事後差異(市場予想がない指標では実態差異)と直後1分足の方向の一致/不一致と、本指標の事後差異と直後1分足の方向の一致/不一致を一覧しています。
1行目をご覧ください。
本指標が四半期小売売上高と同時発表されたことは、過去15回あります。この15回のうち、四半期小売売上高の事後差異(プラスのとき陽線、マイナスのとき陰線に対応)と直後1分足の方向が一致したことは8回、不一致だったことは6回です。残る1回は事後差異が0でした。
同様に、四半期小売売上高と本指標と同時発表されたとき、本指標事後差異と直後1分足は方向一致が12回、不一致が2回です。
このことから、本指標と四半期小売売上高が同時発表したときの反応方向への影響力は、本指標>四半期小売売上高、ということになります。
本指標が貿易収支・住宅許可件数と同時発表したときも同様です。本指標>貿易収支、本指標>住宅許可件数、という関係が成り立ちます。
ただ、四半期民間設備投資や四半期PPIと同時発表されたときの影響力の強さは、まだ同時発表事例が少ないため、結論は時期尚早と考えています。
ともあれ、これらのことから、本指標の反応方向への影響力は非常に強い、ということがわかります。
疑問があるとすれば、直後1分足でなく、直後11分足や直後1時間足への影響を集計していないことでしょう。けれども、指標結果の良し悪しの反応方向への影響力は、指標発表時点から前後に時間が離れるほど弱まります。実際のチャートを見ていると、指標発表直後の初期反応方向と、数10秒〜数分後に別の指標の影響力が強まったと解釈できる事例もあるものの、そういった解釈は定量化にそぐわないノイズの影響も大きいため無視します。ノイズとは、対比する指標同士だけでなく、もっと大きなトレンドだったり、発表時刻の迫った次の中国指標の影響のことです。そのため、色々な疑問はさておき、指標結果の良し悪しの反応方向への影響力、発表時点から1分後に現れている、と仮定したときの関係を先の結論としています。
分析対象の指標の反応方向への影響力の分析は短時間に限らない限り、膨大なデータで高度過ぎる統計解析手法を使わないと、却って精度が悪くなってしまいます。
(1.3.2 本指標とWestpack消費者信頼感指数の対比 )
本件は『豪州景気指標「Westpack消費者信頼感指数」発表結果の豪州小売売上高への影響』に詳述しています。その結論は次の通りです。
小売売上高前月比の前月発表結果に対する改善/悪化は、Westpack消費者信頼感指数の改善/悪化と同月集計分が連動、もしくは小売売上高の改善/悪化がWestpack消費者信頼感指数より3か月遅行追従している可能性があります。
この連動・追従の関係は、同月集計分が先に発表されるWestpack消費者信頼感指数の値が大きいほど、小売売上高前月比の前月結果に対する増減との方向一致率が高まります。
下表をご覧ください。
一行目は、Westpack消費者信頼感指数の発表値の大きさです。プラスかマイナスかは関係ありません。
二行目の右端「4以上」という欄は「Westpack消費者信頼感指数が+4以上なら同月集計分の本指標結果は前月結果より改善し、△4以下なら同月集計分の本指標結果は前月結果より悪化することが、過去71%起きている」と読みます。
すなわち、Westpack消費者信頼感指数の値が3以上(プラスでもマイナスでも)だったことは、過去37%の頻度で発生しており、そうした場合に小売売上高実態差異(=発表結果ー前回結果)の符号と一致しがち、という訳です。そして、後記2.3項の指標一致性分析から、本指標実態差異は直後1分足との方向一致率が73%に達しています。
よって、Westpack消費者信頼感指数は、本指標結果だけでなく、本指標発表直後の反応方向を同期示唆もしくは3か月先行示唆している、と言えます。
【1.4 指標分析結論】
- 毎月前々月の前月比が発表され、3か月に1回は四半期小売売上高前期比が同時発表されます。また、貿易収支との同時発表もかなりの頻度で行われます。
けれども、同時発表指標のことを気にする必要はありません。本指標前月比は、反応方向への影響力がかなり強い指標です。 - 本指標は、前月結果が良すぎたり悪すぎたりしても、翌月に反動を期待したポジションを持つべきではありません。反動が起きても市場予想を超える反動が起きることと、市場予想に及ばない程度の反動しか起きないことは半々で、取引の根拠にはなりません。
- 先に発表されるWestpack消費者信頼感指数が+3以上だったときは、同月集計分と3か月後集計分の小売売上高前月比が前回結果を上回りがちです。△3以下だったときは、前回結果を下回ります。
この小売売上高前月比の実態差異と直後1分足は方向一致率が73%です。
U.反応分析
分析対象は、2015年1月集計分〜2018年10月集計分(同年12月発表分)の46回分です。完璧ではないにせよ、傾向を見出すには十分な調査数に達しています。
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
【2.1 反応程度】
過去の4本足チャートの各ローソク足の平均値と分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は過去平均で16pipsです。
指標発表直後の跳ねを狙うなら、10pips強ぐらいにしておいたら良いでしょう。跳ね10pipsで指値利確設定の場合、過去事例では80%が引っかかっています。平均値16pipsでは、その数字が44%に下がります。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表での4本のローソク足順跳幅で平均48pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(10〜20pips)。その期間の動き全体の2〜4割しか狙わなければ、無理のない取引で勝率を稼ぎやすく、長期に亘る本指標取引での収益を最大化しやすい、との個人的感触があります。
ご参考まで。
ーーー$€¥£A$ーーー
次に、期間毎に区切った直前10-1分足と直後1分足と直後11分足の反応程度の推移を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
直後1分足値幅から直後11分足値幅があまり伸びていません。発表から1分後とその10分後は、その間の直後11分足跳幅を狙うことになります。
【2.2 個別反応分析】
個別反応分析は、勝率よりも期待値を重視して取引するための分析です。合理的とは言えるものの、例え連敗が続いてもずっと同じやり方で取引を続ける不屈さが必須です。
多くの指標では、事後差異と直後1分足の方向一致率が高くなりがちなことがわかっています。けれども、方向こそ一致しがちでも、事後差異の大きさと直後1分足値幅が比例的になる指標は少ないことがわかっています。
事後差異判別式の解(横軸)と直後1分足終値(縦軸)の関係と、直後1分足終値(横軸)と直後11分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。前者が初期反応、後者がその後の伸びを示します。
ともに、回帰式(青線)の上下近くにドット分布が集中しています。
本指標は、事後差異(プラスが陽線、マイナスが陰線、に対応)と直後1分足の相関が高いことがわかります。また、回帰式(赤線)の傾きは対角線(黒線)の傾きより右上がりです。平均的には、本指標は初期反応方向に伸ばしがちです。
【2.3 回数反応分析】
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
方向率は、直前1分足の過去陰線率が84%と偏りがあります。方向一致率は、事後差異と直後1分足・直後11分足が各85%・83%です。
これらの数値を、2016年以前と2017年以降に分けて下表に整理してみると、以前から一貫してこれら数値が高かったことがわかります。
よって、直前1分足は陰線になりがち、事後差異と直後1分足・直後11分足は方向一致しがち、という本指標の傾向は信頼できます。
次に、反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。その84%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは71%です。
指標発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが49%です。早期追撃開始で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。
【2.4 反応分析結論】
- 反応程度の割に反応方向への影響力が強い指標です。指標結果の市場予想に対する良し悪しの影響は、10分以上持続しがちです。けれども、発表から1分後とその10分後とでは、後者が前者より反応を伸ばしていたことが49%しかありません。初期反応方向への追撃は、ほとほどに留めるべきです。
- 指標発表時点から見て、直後1分足と直後11分足の方向が一致していたことは84%、前者跳幅を超えて後者跳幅が反応を伸ばしていたことは71%です。初期反応方向への早期追撃開始や、直後1分足がヒゲを残して戻したら直後1分足終値で追撃を開始し、数分以内に直後11分足跳幅を狙って決済すると良いでしょう。
V.取引方針
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示し、それぞれの期間の取引指針を纏めておきます。
【3.1 直前10-1分足】
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均順跳幅は6pips、同値幅は3pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは6回あります(頻度13%)。
過去陽線率は64%、事前差異との方向一致率は46%です。
上下にヒゲも多く、どちらに伸びるかがわからない以上、この期間の取引は避けた方が良いでしょう。
【3.2 直前1分足】
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足は過去平均順跳幅が5pips、過去平均値幅が3pipsです。以前は3〜5pipsの陽線側への逆ヒゲを形成することが多かったものの、2016年頃からはあまり大きな逆ヒゲは形成されなくなっています。そのころから、反応程度も小さくなっています。
直前1分足の過去陰線率は84%に達しています。事前差異との方向一致率は37%(不一致率63%)となっており、この数字からこの期間にロングをオーダーすることはあり得ません。ショートか取引きしないかが選択肢です。
事前差異がプラスのとき、ショートをオーダーすると良いでしょう。
【3.3 直後1分足】
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均順跳幅は16pips、過去平均値幅は12pipsです。
上図で着目すべき点は逆跳幅(いわゆる「逆ヒゲ」「騙し」)の存在有無です。豪州指標発表の直前直後には、何だかわからない動きが散見される指標があるので、この点は注意が必要です。
幸い、本指標直後1分足では、逆跳幅が順跳幅平均値の16pipsに達したことはありません。逆跳幅が順跳幅よりも長かったことは5回(頻度11%)あるものの、そうしたことは2016年5月集計分を最後に起きていません。
騙しに遭いにくい指標です。
騙しに遭いにくいことがわかったら、指標発表直後の方向を当てることに専念できます。
本指標は、先に発表されるWestpack消費者信頼感指数が+3以上/△3以下ならば、それと同月集計分と3か月後集計分の本指標前月比が前月結果を上回り/下回りがちです。そして、本指標前月比が前月結果を上回れば/下回れば、直後1分足が陽線/陰線となったことが73%です。
本指標発表前には、本指標の集計月を確認し、それと同月集計分と3か月前のWestpack消費者信頼感指数の値を確認しておきましょう。条件を満たすときは、指標発表直前にその方向にオーダーします。
指標発表後は、初期反応方向を確認したら早期追撃開始します。高値掴みを避けるためには、12pipsを超えて反応を伸ばしていたら、もう拙速な追撃ポジション取得は避けた方が良いでしょう。その場合、直後1分足終値で追撃開始し、数分以内に利確/損切です。
【3.4 直後11分足】
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
上図で、順跳幅より逆跳幅の方が長かったことは6回(頻度13%)起きています。その6回のうち4回で、直後11分足が直後1分足と反転しています。けれども、復讐に燃えてはいけません。その反転した4回は、反転してから追撃しても大して伸びていません。この4回の順ヒゲ平均値=直後1分足から見た逆ヒゲ平均値は5.3pipsしかありません。だから、3pipsも反転したら潔く損切です。
直後1分足値幅が20pips以上だったことは過去7回(頻度15%)あります。この7回のうち6回は、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が伸びています。
そこで、直後1分足終値が20pips以上なら追撃ポジションを取ることにします。もし直後11分足順跳幅の先端で利確できたなら平均11pipsの利確でした。もし直後11分足跳幅の先端で利確し損ねて直後11分足終値で利確していたら平均7pipsの利確でした。
よって、直後1分足終値が20pips以上なら、その時点で追撃を開始します。そして、含益が11pipsに達するか、直後11分足終値で利確します。損切の目安も11pipsで良いでしょう。
【3.5 方針結論】
- 直前1分足は、事前差異がプラスのときショートをオーダーです。
- 予め、本指標同月集計分と3か月前集計分のWestpack消費者信頼感指数の値を確認しておきましょう。Westpack消費者信頼感指数が+3以上/△3以下ならば、指標発表直前にその符号と同じ方向にポジションをオーダーし、10pipsで利確/損切です。発表から1分以内に決済します。
同月集計分と3か月前集計分の+3以上と△3以下のように矛盾する場合は、3ヶ月前集計分の結果を優先します。 - 指標発表後は、初期反応方向を確認したら早期追撃開始します。高値掴みを避けるためには、12pipsを超えて反応を伸ばしていたら、もう拙速な追撃ポジション取得は避けた方が良いでしょう。その場合、直後1分足終値で追撃開始し、数分以内に利確/損切です。
- 直後1分足終値が20pips以上なら、その時点で追撃を開始します。そして、含益が11pipsに達するか、直後11分足終値で利確します。損切の目安も11pipsで良いでしょう。
W.分析結論
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
- 毎月前々月の前月比が発表され、3か月に1回は四半期小売売上高前期比が同時発表されます。また、貿易収支との同時発表もかなりの頻度で行われます。
けれども、同時発表指標のことを気にする必要はありません。本指標前月比は、反応方向への影響力がかなり強い指標です。 - 本指標は、前月結果が良すぎたり悪すぎたりしても、翌月に反動を期待したポジションを持つべきではありません。反動が起きても市場予想を超える反動が起きることと、市場予想に及ばない程度の反動しか起きないことは半々で、取引の根拠にはなりません。
また、先に発表されるWestpack消費者信頼感指数が+3以上だったときは、同月集計分と3か月後集計分の小売売上高前月比が前回結果を上回りがちです。△3以下だったときは、前回結果を下回ります。この小売売上高前月比の実態差異と直後1分足は方向一致率が73%です。 - 反応程度の割に反応方向への影響力が強い指標です。指標結果の市場予想に対する良し悪しの影響は、10分以上持続しがちです。けれども、発表から1分後とその10分後とでは、後者が前者より反応を伸ばしていたことが49%しかありません。初期反応方向への追撃は、ほとほどに留めるべきです。
指標発表時点から見て、直後1分足と直後11分足の方向が一致していたことは84%、前者跳幅を超えて後者跳幅が反応を伸ばしていたことは71%です。初期反応方向への早期追撃開始や、直後1分足がヒゲを残して戻したら直後1分足終値で追撃を開始し、数分以内に直後11分足跳幅を狙って決済すると良いでしょう。
X.過去成績
取引成績は、この分析に記載方針に沿って実際に取引を行った結果だけを纏めています。実際に取引した結果以外は、例え事前方針が妥当だったとしてもここには含みません。また、事前方針に挙げていない取引(方針外取引)の成績は含めません。
実際の取引は、例え結果的に陽線だったとしても終値1秒前まで長い陰線側へのヒゲをずっと形成していたりします。そういった場合、事前のその期間の取引方針がロングが正解かショートが正解かわかりません。実際の取引で利確できたか損切せざるを得なかったかだけが公平な判定基準だと言えます。そして、方針外取引をここに含めると、事前分析の有効性が後日検証できなくなってしまいます。
取引方針の記述を、勝ちやすく・分析結果を誤解しにくく・自己裁量部分がわかるように、進歩・改善していくしかありません。記述はがんじがらめ過ぎても取引がうまくいきません。その兼ね合いが難しいので、試行錯誤しています。
※ 2019年2月6日最新版に差替
2019年個別記録先
※ 4訂:書式統一、最新データ反映、取引方針改訂:2018年12月25日
※ 4.1訂:指標推移グラフ更新、成績表更新:2019年2月6日
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
注記以上
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
広告以上
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
2018年12月23日
前週備忘、及び、12月24日〜12月28日経済指標
【前週備忘】
前週の成績は次の通りです。
・事前分析成績は6勝1敗(分析採用回数7回、的中率86%)
・事前分析の取引方針を採用できなかったことは、前提を満たさずに取引できなかったことが2回、判定不可及び取引不可だったことが1回で、計3回です(10回の取引を事前準備し、うち7回で取引可能=方針採用率70%)。
・過去分析に基づく事前方針に沿った取引は、2回行って1勝1敗でした(勝率50%、事前準備した取引方針10回に対する方針実施率20%)。
・それとは別に、過去分析に基づかない、もしくはポジション保有時間延長による取引は2勝でした(全取引に対する方針順守率50%)。
・この週の取引時間は14分52秒、損益は+17.22pipsでした。1分足1本当たりの損益は+1.2pipsということになります。
例年年末は、指標発表前後にあまり取引できません。プロフェッショナルのポジション清算が大きな指標発表後に増えるため、過去の傾向通りになるか心配だからです。
ーーー$€¥£A$ーーー
前週の大きな動きは次の通りでした。
ダウは前週1600ドル超の下落幅で、これはリーマンショック直後2008年10月以来だったそうです。
年末ポジション清算や利上げや閣僚辞任や政府機関の一部閉鎖などの悪いことが重なったことも原因ですが、やはり来年以降の景気減速見通しが大勢を占めていることも、皆の頭にあるからでしょう。
そう考えると、今週一旦戻しが起きても、あまり便乗し難い気がします。
欧州は、USD売に押されてEURが上昇していたものの、週末にはそのほとんどの伸び分を失いました。その結果、金曜の対JPYは一気に売りが加速しました。
メルケル後の独国リーダーが見えないことや、仏国混乱や英国離脱によって、EU内の利害調整に強い指導力を発揮できる人物が居なくなった感がします。また、中東への米国の影響力が減じれば、相対的に欧州の負担が増えかねません。米欧日英豪の主要国で内外の解決困難な課題が最も大きいのは、欧州だという気もします。
狙いは、英国拠点企業の欧州移転規模でしょうか。もし英国の金融・保険業の取り扱い額の半分が欧州に移れば、小さな東欧諸国のひとつやふたつの国の財政なんてすぐに立て直せるぐらいの規模になります。
英国が合意なき離脱になった場合、最悪のシナリオでは、英経済がリーマンショック直後以来の景気減速となり、GBPは25%程度下落する、と予想されています。そんな急激な負担に耐えられる国民が多数派を占める国なんてありません。
来年の離脱案採決前までGBP売、採決後から3月末の離脱直前まで事態急変に備えることになります。GBP取引は、ますます短期勝負しかできません。
豪州経済は世界経済の先行指標のようなものです。その結果、他の先進主要国通貨とよりも対JPYでAUDは極端に走ります。リーマンショック直後には、AUDJPYはほぼ半値まで下げました。大きな変化が急激に生じるとき、AUDJPYはべらぼうに動く通貨ペアとなります。
そんなこともあって、年末の勉強優先順位は、AUD>GBP>EUR、の順に急落・急騰の場面についてです。USDやJPYは、専門家が分析してもどうせいつも当たりゃしないのです。
【今週指標】
年内はもう指標での取引を行いません。個人投資家が使う自動取引プログラムに便乗した方が良いでしょう(自動取引プログラムを使うのでなく、そのクセに便乗する)。
特徴は次の通りです。但し、再現性を定量的なデータで示すことができない経験則です。
・トレンドがあまりアテにできずに、ローソク足5本以上で到達したレジスタンスやサポートでは、次の1本が戻しになるパターンが通常時より増えます。
・特に、短期チャートでのレンジ相場で、レンジ上下到達時の戻しの確率は異常に高まります。これがチャートのほとんどの時間帯での動きを小さくするように働くようです。
・これらの話は、時間足や日足でなく、1分足・5分足のチャートで有効です。
また、自動取引プログラムとは関係ない話ですが、連休中(欧米は既に連休です)は、日足や週足の数か月に亘るレジスタンスやサポートを抜けることがあります。
・こうしたことが起きるとストップロスを巻き込むので、事態発生から目安1時間が追撃、その後は戻しのタイミングを狙うことになります。
チャートが動かないからと言って、ポジション保有中にチャートから目を離すべきじゃありません。連休中は特にそうです。
以上
2018年12月22日
豪州物価指標「四半期住宅価格指数」発表前後のAUDJPY反応分析(改訂版)
本稿は、過去の本指標結果と反応方向の関係を分析することによって、本指標発表前後のAUDJPY取引に役立つ特徴を見出すことがテーマです。
豪州四半期住宅価格指数(RPPs:Residential Property Price Indices)は、 オーストラリア統計局 (Australian Bureau of Statistics)が、豪州8州首都の住宅価格の変化(前期比/前年比)の加重平均値と、在庫総額/平均価格/件数を発表する指標(発表事例:Sep Qtr 2018)です。
分析には8州首都の住宅価格の加重平均値の @ 前期比とA 前年比を用います。
在庫に関する発表も同時に行われますが、これは分析に用いません。少なくも過去数年に亘って、価格変化の発表値よりも在庫の発表値が指標発表直前直後の反応に影響した兆しは見出せません。そのため、在庫に関しては主要FX会社の指標カレンダーでも紹介されていないようです。
本分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
本指標は反応が小さい指標です。そして、指標発表前後の反応方向には次の傾向があります。
すなわち、直前10-1分足は、事前差異との方向一致率が70%あります。そして直後11分足は、直前10-1分足との方向一致率が90%に達しています。
反応が小さく方向が当てやすい指標での取引には、どう臨むべきでしょう。欲張り禁物、と呟いてから臨むのです。
本指標発表前後の取引参加者はこうした傾向を知っています。だから方向一致率が高いのです。それを知らずに取引するのは惜しい気がします。
但し、本指標は単独で発表されることが少ない指標です。小売売上高やRBA議事要旨と発表されるときは、前述の過去傾向は通用しません。
具体的には次の方法での取引を提案します。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
指標分析の対象範囲は、2013年7-9月期集計分〜2018年7-9月期集計分(同年12月発表分)の21回です。まだ調査事例数が少ないため、本稿記載の期待的中率(各種の確率)は誤差が大きいことを予めご承知おき願います。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
発表結果は定時発表値を用い、後日修正されても以下に反映していません。住宅価格の推移そのものに関心がある訳でなく、発表時点の反応に関心があるので、これは当然です。
まずは前期比の推移です。
2016年以前はマイナスになったことが2度しかなく、価格上昇が続いていました。ところが、2017年に入ると上昇幅を減じ始め、2018年になるとマイナスに転じました。
次に前年比(前年同期比)の推移です。
前年比のピーク2014年1-3月期・2015年7-9月期・2017年1-3月期は、6四半期周期となっていたことが読み取れます。しかしながら、次のピークとなるべきだった2018年7-9月期は落ち込み、この周期性が崩れてしまいました。
これら推移の背景は次のように解釈できます。
かつて前年比に6四半期毎の周期性があったのに、2018年にそれが無くなったことは前年同期が高い水準だったことが原因です。
2017年3月末には「サメが道路に打ち上げられた」ほどの大型サイクロン襲来で、住宅被害がかなりありました。これが、周期ピークの同年1-3月期を過ぎても、4-6月期や7-9月期の住宅価格を高止まりさせました。その結果、反動で2018年の価格下落を招いたと解釈できます。
一方、前期比の直近ピークは2016年10-12月期で、以降は上昇速度を減じて2018年に入ると価格が下がり始めました。
それ以前(2016年以前)は、主に中国資金による投資用住宅購入が盛んで、それが価格高騰を招いていました。このことは、当時のRBA議事要旨でしばしば指摘されています。
それが問題視されて2017年以降、豪政府は公営住宅の供給を増やし、海外からの住宅投資を減らすような新たな規制や制約も新たに設けました。更に2018年8月末〜9月上旬にかけて、豪州の市中銀行は相次いで投資目的の住宅ローン金利を引上げました。
こうして見ると、豪州では住宅価格高騰への対策に政府の施策に効果があった、と言っても良いでしょう。サイクロン被害さえなければ、もっと早く効果が顕在化したかも知れません。
前期比と前年比の各差異の符号がプラスのとき直後1分足が陽線、マイナスのとき陰線で反応したら「方向一致」「素直な反応」と見なすことにします。このとき、前期比・前年比の各差異と各ローソク足の方向一致率を下表に纏めておきます。
下表は、本指標が小売売上高やRBA議事要旨発表と同時に行われたときを含めていません。この理由は1.3.1項に詳述しています。
前期比の事後差異と前年比の事後差異は、ともに直後1分足の方向一致率が70%となっています。けれども、このままでは前期比の事後差異がプラスで前年比の事後差異がマイナスのように、結果に食い違いが起きたときに対応できません。そこで、前期比の事後差異と前年比の事後差異に重み付けを行い、総合的に直後1分足との方向一致率が最も高くなるように式を求めます。この式を事後差異判別式と呼び、
とします。このとき、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率は80%まで高まります。
本指標は市場予想に対する発表結果の良し悪しに非常に素直に反応します。
同様に、事前差異判別式を
とすると、この式の解の符号が直前10-1分足との方向一致率は70%となります。
本指標は、指標発表前の反応方向が前回結果と市場予想の大小関係から予想しやすいと言えます。
実態差異判別式は、
とすると、この式の解の符号が直後11分足との方向一致率は73%です。
この数字は、「事後」差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率64%に勝ります。よって、本指標発表から暫く経つと、反応方向は市場予想に対してよりも前回結果に対する発表結果の大小関係の影響を受けることが多くなる、と言えます。
参考までに、各差異判別式の解の期間毎の平均値と全平均値を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
下図は分析対象期間全ての事例での平均値となります。
2018年発表分の平均は、実態差異>事前差異>事後差異、となっています。これは指標結果の変化が大きくなっているにも関わらず、最近の市場予想の精度が高いことを示しています。市場予想の精度が高い状況が今後も続くかどうかには興味があります。
本指標は単独で発表されたことが、分析対象期間の21回の発表のうち3回しかありません。RBA議事要旨と同時発表されたことが9回、NAB企業信頼感指数とが7回、住宅ローン件数とが2回、小売売上高とが1回です(一部重複あり)。
小売売上高は明らかに本指標より反応への影響力が強い指標です。また、RBA議事要旨は市場の関心次第で、本指標より反応への影響が大きくなります。よって、これらと同時発表されたときの本指標の反応程度や方向は、本指標への反応の特徴を抽出する作業においてノイズとなります。
よって、本指標が小売売上高やRBA議事要旨と同時発表された10回は、反応分析対象から除きます。
一方、本指標がNAB企業信頼感指数と同時発表されたことは過去7回あります。この7回のうち1回は、NAB企業景況感指数が前回同値となっていました(NAB企業信頼感指数には市場予想がない、もしくは、あっても注目されていない)。
その1回を除いて本指標と同時発表された6回は、NAB企業信頼感指数の実態差異の符号と直後1分足の反応方向は、4回一致して2回不一致となっています。全7回の同時発表時、本指標の事後差異と直後1分足の反応方向は7回全てが一致しています。
よって、両指標の反応方向への影響力は、本指標>NAB企業信頼感指数、です。
同様に、本指標が住宅ローン件数前月比と同時発表されたことは過去2回あります。この2回の住宅ローン件数前月比事後差異と直後1分足の反応方向は、1回一致で1回不一致です。本指標事後差異と直後1分足の反応方向は2回とも一致しています。
よって、両指標の反応方向への影響力は、本指標>住宅ローン件数前月比、です。
以上の実績に基づき、以下の反応方向に関わる分析は、2013年7-9月期集計分〜2018年7-9月期集計分のうち、小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されなかった11回について行うことにします。
住宅指標は景気先行指標との指標解説が多々見受けられます。けれども、先に『住宅指標は景気先行指標なのか』に記した通り、景気(GDP)に先立って住宅指標が変化している兆しは、少なくとも直近数年に関しては見受けられません。
では、住宅価格指標は物価指標に先行するのか、はどうでしょう。以下に検証します。
本指標と四半期消費者物価指数(以下、CPIと略記)の前期比同士を比べます。
下図は、両指標推移を同じ図にプロットしたものです。縦軸の単位は[%]です。
CPI前期比の変化と住宅価格指数前期比の変化に差が大きいため、両指標の増減を見比べにくい図です。
一般論としてモノの価格は、売りやすいほど大きく値上げされ、売りにくいほど大きく値下げされます。特に住宅のような不動産は、建設に要した資金への金利負担が生じるため、売りやすさに売価が敏感に反応します(不動産では個別物件の価格変更が諸事情で難しいものの、次に売り出す物件価格に売りやすさが敏感に反映されがちです)。
このように、売りやすさ/売りにくさの程度が問題です。そこで、前期比の前期との差(実態差異:値上げや値下げの程度の変化)の方向を両指標で見比べます。
下図は、このブログの計数ルールでCPI前期比か住宅価格指数前期比の実態差異が0だった期(今期結果と前期結果の%が同じだった期)は方向一致判定を行いません(集計に含めません)。そうした期は、CPI前期比で6回、住宅価格指数前期比で1回あります。
また、下図横軸は「CPI前期比が住宅価格指数前期比より〇か月先行/遅行」と読みます。縦軸は両指標実態差異(=発表結果ー前期結果)の方向一致率です。
上図から、四半期CPI前期比実態差異と四半期住宅価格指数前期比実態差異は、時差1四半期で前者が後者を先行示唆している可能性があります(期待的中率69%)。
ここで「可能性」としているのは、2四半期遅行の一致率33%(=不一致率67%)が無視できないためです。でも、住宅価格指数が上昇した半年後にCPIが下降する合理的理由はありません(CPIも上昇、なら説明もつきますが)。
ならば「時差1四半期でCPIが住宅価格指数に先行していた」というのは、「時差2四半期でCPIに住宅価格指数が遅行していた」偶然の一致とほとんど差がないことになります。
この先行性は、世間で物価を上げてもモノが売れ始めるぐらい景気が良くなったら、住宅購入を考える人が増えてくる、と考えれば納得しやすい話です。がしかし、上記理由によって、この解釈をポジションの根拠にするには、まだ事例数が少なく偶然の一致という可能性も高くて信頼できない、というのが結論になります。
反応分析の対象範囲は、2013年7-9月期集計分〜2018年7-9月期集計分(同年12月発表分)の21回のうち、小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されたときを除いた11回です。
まだ調査事例数が少ないため、本稿記載の期待的中率(各種の確率)は誤差が大きいことを予めご承知おき願います。
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
過去の4本足チャートの各ローソク足の平均値と分布を下表に纏めておきます。
平均的な反応程度は小さい指標です。
また、直後1分足は直前10-1分足と同程度、直後11分足は直後1分足の2倍程度、反応しています。目安にするのに覚えやすくて良いですね。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表での4本のローソク足順跳幅で平均25pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(5〜10pips)。その期間の動き全体の2〜4割しか狙わなければ、無理のない取引で勝率を稼ぎやすく、長期に亘る本指標取引での収益を最大化しやすい、との個人的感触があります。
ご参考まで。
次に、期間毎に区切った直前10-1分足と直後1分足と直後11分足の反応程度の推移を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
この図からまず、各ローソク足の値幅を狙って取引していたら絶望的に稼げないことがわかります。但し、2016年〜2017年は、RBA議事要旨との同時発表が多かったので、それぞれ各1回しかこの図には集計反映されていません。
それにしても小さい。本指標は跳幅を狙わないと、取引する意味がありません。
個別反応分析は、勝率よりも期待値を重視して取引するための分析です。合理的とは言えるものの、例え連敗が続いてもずっと同じやり方で取引を続ける不屈さが必須です。
多くの指標では、事後差異と直後1分足の方向一致率が高くなりがちなことがわかっています。けれども、方向こそ一致しがちでも、事後差異の大きさと直後1分足値幅が比例的になる指標は少ないことがわかっています。
事後差異判別式の解(横軸)と直後1分足終値(縦軸)の関係と、直後1分足終値(横軸)と直後11分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。前者が初期反応、後者がその後の伸びを示します。
初期反応方向は概ね素直で、指標発表から1分後と11分後では陽線側に反応が伸びがちです。
但し、1.1項に記載した通り、住宅価格高騰は2016年以前のことで、2017年になるとそれが上げ幅を縮小し始め、2018年は前期比マイナスが続いています。よって「陽線側に反応が伸びがち」という点は、今後変化する可能性があります。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細はこちらを参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細はこちらを参照願います。
いずれも反応程度を問題にせず、反応方向の一致回数だけを問題にしています。
方向率にいくつか偏りが見られますが、そんなことより方向一致率が高い点に注目しましょう。そして、指標方向一致率と反応方向一致率に高い数値が重複する場合、反応方向一致率を優先します。反応方向一致率が、条件に関わらず最も取引参加者の動きを顕著に示す、と考えているためです。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が10%(不一致率90%)です。また、直後11分足は、直後1分足との方向一致率が80%で、直前10-1分足との方向一致率が90%です。
どちらかを優先しないと、直前10-1分足と直前1分足が逆方向のときしかオーダーできません。
直前10-1分足の方向を優先します。
次に、反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で追撃が有効か否かが判断できます。詳細はこちらを参照願います。
直後1分足と直後11分足の方向が一致したことは過去90%あります。その90%のうち、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が反応を伸ばしていたことは78%です。
指標発表後の方向一致率が高く、その後に反応を伸ばしがちなのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
けれども、指標発表から1分経過時点から10分後には、直後1分足終値よりも直後11分足終値が同じ方向に反応を伸ばしていたことが50%しかありません。早期追撃開始したポジションは、発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきでしょう。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示し、それぞれの期間の取引方針を纏めておきます。
図の歯抜け箇所は反応分析対象外です
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均順跳幅は6pips、同値幅は4pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは1回しかありません(頻度9%)
過去陰線率は80%と偏りが目立ち、事前差異との方向一致率は70%あります。
この期間は、事前差異と同じ方向にオーダーします。
下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均順跳幅は2pips、同値幅は1pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは1回しかありません(頻度9%)
過去陽線率は55%で、事前差異との方向一致率は27%、直前10-1分足との方向一致率は40%です。
AUDJPYのスプレッドが一般に大きいことを踏まえると、この期間は取引を諦めましょう。
下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均順跳幅は6pips、同値幅は4pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは過去1度もありません(頻度0%)
過去陽線率は70%で、事前差異との方向一致率は30%、事後差異との方向一致率は80%、直前10-1分足との方向一致率は10%(不一致率90%)、直前1分足との方向一致率は80%です。
指標発表直前に直前10-1分足と同方向にポジションをオーダーし、発表直後の跳ねで利確/損切します。
。
また、直後1分足と直後11分足は方向一致率が90%あります。その90%の方向一致時に、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が同じ方向い反応を伸ばしたことは78%です。けれども、それらの方向一致時にすら、直後1分足値幅を超えて直後11分足値幅が同じ方向に反応を伸ばしたことは50%です。
指標発表直後は初期反応方向への追撃を早期開始し、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。
下図は直後11分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均順跳幅は11pips、同値幅は7pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは過去1度もありません(頻度0%)
過去陽線率は73%で、直前10-1分足との方向一致率は90%です。
再追撃は、直前10-1分足と同じ方向に直後1分足終値から5pips程度を狙います。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率を下げてしまいがちです。
取引成績は、この分析に記載方針に沿って実際に取引を行った結果だけを纏めています。実際に取引した結果以外は、例え事前方針が妥当だったとしてもここには含みません。また、事前方針に挙げていない取引(方針外取引)の成績は含めません。
実際の取引は、例え結果的に陽線だったとしても終値1秒前まで長い陰線側へのヒゲをずっと形成していたりします。そういった場合、事前のその期間の取引方針がロングが正解かショートが正解かわかりません。実際の取引で利確できたか損切せざるを得なかったかだけが公平な判定基準だと言えます。そして、方針外取引をここに含めると、事前分析の有効性が後日検証できなくなってしまいます。
取引方針の記述を、勝ちやすく・分析結果を誤解しにくく・自己裁量部分がわかるように、進歩・改善していくしかありません。記述はがんじがらめ過ぎても取引がうまくいきません。その兼ね合いが難しいので、試行錯誤しています。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
ーーー$€¥£A$ーーー
豪州四半期住宅価格指数(RPPs:Residential Property Price Indices)は、 オーストラリア統計局 (Australian Bureau of Statistics)が、豪州8州首都の住宅価格の変化(前期比/前年比)の加重平均値と、在庫総額/平均価格/件数を発表する指標(発表事例:Sep Qtr 2018)です。
分析には8州首都の住宅価格の加重平均値の @ 前期比とA 前年比を用います。
在庫に関する発表も同時に行われますが、これは分析に用いません。少なくも過去数年に亘って、価格変化の発表値よりも在庫の発表値が指標発表直前直後の反応に影響した兆しは見出せません。そのため、在庫に関しては主要FX会社の指標カレンダーでも紹介されていないようです。
ーーー$€¥£A$ーーー
本分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
本指標は反応が小さい指標です。そして、指標発表前後の反応方向には次の傾向があります。
すなわち、直前10-1分足は、事前差異との方向一致率が70%あります。そして直後11分足は、直前10-1分足との方向一致率が90%に達しています。
反応が小さく方向が当てやすい指標での取引には、どう臨むべきでしょう。欲張り禁物、と呟いてから臨むのです。
本指標発表前後の取引参加者はこうした傾向を知っています。だから方向一致率が高いのです。それを知らずに取引するのは惜しい気がします。
但し、本指標は単独で発表されることが少ない指標です。小売売上高やRBA議事要旨と発表されるときは、前述の過去傾向は通用しません。
具体的には次の方法での取引を提案します。
- 直前10-1分足は、事前差異と同じ方向にオーダーします。
- 指標発表直前に直前10-1分足と同方向にポジションをオーダーし、発表直後の跳ねで利確/損切します。
- 指標発表直後は初期反応方向への追撃を早期開始し、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺います。
- 再追撃は、直前10-1分足と同じ方向に直後1分足終値から5pips程度を狙います。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
T.指標分析
指標分析の対象範囲は、2013年7-9月期集計分〜2018年7-9月期集計分(同年12月発表分)の21回です。まだ調査事例数が少ないため、本稿記載の期待的中率(各種の確率)は誤差が大きいことを予めご承知おき願います。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【1.1 指標推移】
発表結果は定時発表値を用い、後日修正されても以下に反映していません。住宅価格の推移そのものに関心がある訳でなく、発表時点の反応に関心があるので、これは当然です。
ーーー$€¥£A$ーーー
まずは前期比の推移です。
2016年以前はマイナスになったことが2度しかなく、価格上昇が続いていました。ところが、2017年に入ると上昇幅を減じ始め、2018年になるとマイナスに転じました。
次に前年比(前年同期比)の推移です。
前年比のピーク2014年1-3月期・2015年7-9月期・2017年1-3月期は、6四半期周期となっていたことが読み取れます。しかしながら、次のピークとなるべきだった2018年7-9月期は落ち込み、この周期性が崩れてしまいました。
これら推移の背景は次のように解釈できます。
かつて前年比に6四半期毎の周期性があったのに、2018年にそれが無くなったことは前年同期が高い水準だったことが原因です。
2017年3月末には「サメが道路に打ち上げられた」ほどの大型サイクロン襲来で、住宅被害がかなりありました。これが、周期ピークの同年1-3月期を過ぎても、4-6月期や7-9月期の住宅価格を高止まりさせました。その結果、反動で2018年の価格下落を招いたと解釈できます。
一方、前期比の直近ピークは2016年10-12月期で、以降は上昇速度を減じて2018年に入ると価格が下がり始めました。
それ以前(2016年以前)は、主に中国資金による投資用住宅購入が盛んで、それが価格高騰を招いていました。このことは、当時のRBA議事要旨でしばしば指摘されています。
それが問題視されて2017年以降、豪政府は公営住宅の供給を増やし、海外からの住宅投資を減らすような新たな規制や制約も新たに設けました。更に2018年8月末〜9月上旬にかけて、豪州の市中銀行は相次いで投資目的の住宅ローン金利を引上げました。
こうして見ると、豪州では住宅価格高騰への対策に政府の施策に効果があった、と言っても良いでしょう。サイクロン被害さえなければ、もっと早く効果が顕在化したかも知れません。
【1.2 指標結果良否判定】
前期比と前年比の各差異の符号がプラスのとき直後1分足が陽線、マイナスのとき陰線で反応したら「方向一致」「素直な反応」と見なすことにします。このとき、前期比・前年比の各差異と各ローソク足の方向一致率を下表に纏めておきます。
下表は、本指標が小売売上高やRBA議事要旨発表と同時に行われたときを含めていません。この理由は1.3.1項に詳述しています。
前期比の事後差異と前年比の事後差異は、ともに直後1分足の方向一致率が70%となっています。けれども、このままでは前期比の事後差異がプラスで前年比の事後差異がマイナスのように、結果に食い違いが起きたときに対応できません。そこで、前期比の事後差異と前年比の事後差異に重み付けを行い、総合的に直後1分足との方向一致率が最も高くなるように式を求めます。この式を事後差異判別式と呼び、
- 2✕前期比の事後差異+2✕前年比の事後差異
とします。このとき、事後差異判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率は80%まで高まります。
本指標は市場予想に対する発表結果の良し悪しに非常に素直に反応します。
同様に、事前差異判別式を
- ー2✕前期比の事前差異+2✕前年比の事前差異
とすると、この式の解の符号が直前10-1分足との方向一致率は70%となります。
本指標は、指標発表前の反応方向が前回結果と市場予想の大小関係から予想しやすいと言えます。
実態差異判別式は、
- 1✕前期比の実態差異+3✕前年比の実態差異
とすると、この式の解の符号が直後11分足との方向一致率は73%です。
この数字は、「事後」差異判別式の解の符号と直後11分足の方向一致率64%に勝ります。よって、本指標発表から暫く経つと、反応方向は市場予想に対してよりも前回結果に対する発表結果の大小関係の影響を受けることが多くなる、と言えます。
ーーー$€¥£A$ーーー
参考までに、各差異判別式の解の期間毎の平均値と全平均値を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
下図は分析対象期間全ての事例での平均値となります。
2018年発表分の平均は、実態差異>事前差異>事後差異、となっています。これは指標結果の変化が大きくなっているにも関わらず、最近の市場予想の精度が高いことを示しています。市場予想の精度が高い状況が今後も続くかどうかには興味があります。
【1.3 指標間一致性分析】
(1.3.1 過去同時発表指標との反応方向への影響力強弱)
本指標は単独で発表されたことが、分析対象期間の21回の発表のうち3回しかありません。RBA議事要旨と同時発表されたことが9回、NAB企業信頼感指数とが7回、住宅ローン件数とが2回、小売売上高とが1回です(一部重複あり)。
小売売上高は明らかに本指標より反応への影響力が強い指標です。また、RBA議事要旨は市場の関心次第で、本指標より反応への影響が大きくなります。よって、これらと同時発表されたときの本指標の反応程度や方向は、本指標への反応の特徴を抽出する作業においてノイズとなります。
よって、本指標が小売売上高やRBA議事要旨と同時発表された10回は、反応分析対象から除きます。
一方、本指標がNAB企業信頼感指数と同時発表されたことは過去7回あります。この7回のうち1回は、NAB企業景況感指数が前回同値となっていました(NAB企業信頼感指数には市場予想がない、もしくは、あっても注目されていない)。
その1回を除いて本指標と同時発表された6回は、NAB企業信頼感指数の実態差異の符号と直後1分足の反応方向は、4回一致して2回不一致となっています。全7回の同時発表時、本指標の事後差異と直後1分足の反応方向は7回全てが一致しています。
よって、両指標の反応方向への影響力は、本指標>NAB企業信頼感指数、です。
同様に、本指標が住宅ローン件数前月比と同時発表されたことは過去2回あります。この2回の住宅ローン件数前月比事後差異と直後1分足の反応方向は、1回一致で1回不一致です。本指標事後差異と直後1分足の反応方向は2回とも一致しています。
よって、両指標の反応方向への影響力は、本指標>住宅ローン件数前月比、です。
以上の実績に基づき、以下の反応方向に関わる分析は、2013年7-9月期集計分〜2018年7-9月期集計分のうち、小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されなかった11回について行うことにします。
(1.3.2 本指標前期比と四半期消費者物価指数前期比の対比)
住宅指標は景気先行指標との指標解説が多々見受けられます。けれども、先に『住宅指標は景気先行指標なのか』に記した通り、景気(GDP)に先立って住宅指標が変化している兆しは、少なくとも直近数年に関しては見受けられません。
では、住宅価格指標は物価指標に先行するのか、はどうでしょう。以下に検証します。
本指標と四半期消費者物価指数(以下、CPIと略記)の前期比同士を比べます。
下図は、両指標推移を同じ図にプロットしたものです。縦軸の単位は[%]です。
CPI前期比の変化と住宅価格指数前期比の変化に差が大きいため、両指標の増減を見比べにくい図です。
一般論としてモノの価格は、売りやすいほど大きく値上げされ、売りにくいほど大きく値下げされます。特に住宅のような不動産は、建設に要した資金への金利負担が生じるため、売りやすさに売価が敏感に反応します(不動産では個別物件の価格変更が諸事情で難しいものの、次に売り出す物件価格に売りやすさが敏感に反映されがちです)。
このように、売りやすさ/売りにくさの程度が問題です。そこで、前期比の前期との差(実態差異:値上げや値下げの程度の変化)の方向を両指標で見比べます。
下図は、このブログの計数ルールでCPI前期比か住宅価格指数前期比の実態差異が0だった期(今期結果と前期結果の%が同じだった期)は方向一致判定を行いません(集計に含めません)。そうした期は、CPI前期比で6回、住宅価格指数前期比で1回あります。
また、下図横軸は「CPI前期比が住宅価格指数前期比より〇か月先行/遅行」と読みます。縦軸は両指標実態差異(=発表結果ー前期結果)の方向一致率です。
上図から、四半期CPI前期比実態差異と四半期住宅価格指数前期比実態差異は、時差1四半期で前者が後者を先行示唆している可能性があります(期待的中率69%)。
ここで「可能性」としているのは、2四半期遅行の一致率33%(=不一致率67%)が無視できないためです。でも、住宅価格指数が上昇した半年後にCPIが下降する合理的理由はありません(CPIも上昇、なら説明もつきますが)。
ならば「時差1四半期でCPIが住宅価格指数に先行していた」というのは、「時差2四半期でCPIに住宅価格指数が遅行していた」偶然の一致とほとんど差がないことになります。
この先行性は、世間で物価を上げてもモノが売れ始めるぐらい景気が良くなったら、住宅購入を考える人が増えてくる、と考えれば納得しやすい話です。がしかし、上記理由によって、この解釈をポジションの根拠にするには、まだ事例数が少なく偶然の一致という可能性も高くて信頼できない、というのが結論になります。
【1.4 指標分析結論】
- 過去数年に亘り、豪州主要都市の住宅価格は中国からの投資によって高騰していました。対して、豪政府やRBAは2017年以降に公営住宅の供給増や投資目的の住宅融資に限った利上げを行いました。その結果、政策金利は過去最低であるにも関わらず、住宅価格は低下し始めています。
最近は、豪政府と中国政府との政治的対立が顕在化し始めたことも、中国資本による豪州への投資が減った原因のひとつと推察されます。 - 本指標発表前後の反応方向は、事前差異・事後差異・実態差異に素直です。これら3つの差異それぞれに指標発表前後の反応方向が全て素直だと言える指標は少ないので、これは本指標の特徴と言えます。
- 本指標は、過去に単独で発表されたことが3回しかありません。他の指標と同時発表されたときの反応方向への影響力実績は次の通りです。
すなわち、本指標が小売売上高やRBA議事要旨と発表されたとき、反応方向は本指標の影響がなくなるか薄まるようです。そして、本指標が住宅ローン件数やNAB企業信頼感指数と同時発表されたとき、反応方向は本指標の影響を強く受けます。
よって、本指標での取引は、小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されるときには避けるべきです。
U.反応分析
反応分析の対象範囲は、2013年7-9月期集計分〜2018年7-9月期集計分(同年12月発表分)の21回のうち、小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されたときを除いた11回です。
まだ調査事例数が少ないため、本稿記載の期待的中率(各種の確率)は誤差が大きいことを予めご承知おき願います。
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
【2.1 反応程度】
過去の4本足チャートの各ローソク足の平均値と分布を下表に纏めておきます。
平均的な反応程度は小さい指標です。
また、直後1分足は直前10-1分足と同程度、直後11分足は直後1分足の2倍程度、反応しています。目安にするのに覚えやすくて良いですね。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表での4本のローソク足順跳幅で平均25pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(5〜10pips)。その期間の動き全体の2〜4割しか狙わなければ、無理のない取引で勝率を稼ぎやすく、長期に亘る本指標取引での収益を最大化しやすい、との個人的感触があります。
ご参考まで。
ーーー$€¥£A$ーーー
次に、期間毎に区切った直前10-1分足と直後1分足と直後11分足の反応程度の推移を下図に示します。この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
この図からまず、各ローソク足の値幅を狙って取引していたら絶望的に稼げないことがわかります。但し、2016年〜2017年は、RBA議事要旨との同時発表が多かったので、それぞれ各1回しかこの図には集計反映されていません。
それにしても小さい。本指標は跳幅を狙わないと、取引する意味がありません。
【2.2 個別反応分析】
個別反応分析は、勝率よりも期待値を重視して取引するための分析です。合理的とは言えるものの、例え連敗が続いてもずっと同じやり方で取引を続ける不屈さが必須です。
多くの指標では、事後差異と直後1分足の方向一致率が高くなりがちなことがわかっています。けれども、方向こそ一致しがちでも、事後差異の大きさと直後1分足値幅が比例的になる指標は少ないことがわかっています。
事後差異判別式の解(横軸)と直後1分足終値(縦軸)の関係と、直後1分足終値(横軸)と直後11分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。前者が初期反応、後者がその後の伸びを示します。
初期反応方向は概ね素直で、指標発表から1分後と11分後では陽線側に反応が伸びがちです。
但し、1.1項に記載した通り、住宅価格高騰は2016年以前のことで、2017年になるとそれが上げ幅を縮小し始め、2018年は前期比マイナスが続いています。よって「陽線側に反応が伸びがち」という点は、今後変化する可能性があります。
【2.3 回数反応分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細はこちらを参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細はこちらを参照願います。
いずれも反応程度を問題にせず、反応方向の一致回数だけを問題にしています。
方向率にいくつか偏りが見られますが、そんなことより方向一致率が高い点に注目しましょう。そして、指標方向一致率と反応方向一致率に高い数値が重複する場合、反応方向一致率を優先します。反応方向一致率が、条件に関わらず最も取引参加者の動きを顕著に示す、と考えているためです。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が10%(不一致率90%)です。また、直後11分足は、直後1分足との方向一致率が80%で、直前10-1分足との方向一致率が90%です。
どちらかを優先しないと、直前10-1分足と直前1分足が逆方向のときしかオーダーできません。
直前10-1分足の方向を優先します。
次に、反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で追撃が有効か否かが判断できます。詳細はこちらを参照願います。
直後1分足と直後11分足の方向が一致したことは過去90%あります。その90%のうち、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が反応を伸ばしていたことは78%です。
指標発表後の方向一致率が高く、その後に反応を伸ばしがちなのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
けれども、指標発表から1分経過時点から10分後には、直後1分足終値よりも直後11分足終値が同じ方向に反応を伸ばしていたことが50%しかありません。早期追撃開始したポジションは、発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきでしょう。
【2.4 反応分析結論】
- 平均的な反応程度は小さい指標です。毎回の取引の目安としては、直後1分足は直前10-1分足と同程度、直後11分足は直後1分足の2倍程度、平均的に反応しています。
- 初期反応方向は概ね素直で、指標発表から1分後と11分後では陽線側に反応が伸びがちです。但し、2018年以降は前期比マイナスが続いており、「陽線側に反応が伸びがち」という点は、今後変化する可能性があります。
- 本指標は反応こそ小さいものの、指標発表前のローソク足方向が指標発表後のローソク足方向を示唆しています。そして、指標発表後は一方向に反応を伸ばしがちで追撃に適しています。けれども、こうした影響持続時間はせいぜい1〜数分で、10分後には反応を伸ばすかそれまでの値幅を削るかがわかりません。発表後の追撃は数分以内に留めた方が良さそうです。
V.取引方針
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示し、それぞれの期間の取引方針を纏めておきます。
図の歯抜け箇所は反応分析対象外です
【3.1 直前10-1分足】
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均順跳幅は6pips、同値幅は4pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは1回しかありません(頻度9%)
過去陰線率は80%と偏りが目立ち、事前差異との方向一致率は70%あります。
この期間は、事前差異と同じ方向にオーダーします。
【3.2 直前1分足】
下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均順跳幅は2pips、同値幅は1pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは1回しかありません(頻度9%)
過去陽線率は55%で、事前差異との方向一致率は27%、直前10-1分足との方向一致率は40%です。
AUDJPYのスプレッドが一般に大きいことを踏まえると、この期間は取引を諦めましょう。
【3.3 直後1分足】
下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均順跳幅は6pips、同値幅は4pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは過去1度もありません(頻度0%)
過去陽線率は70%で、事前差異との方向一致率は30%、事後差異との方向一致率は80%、直前10-1分足との方向一致率は10%(不一致率90%)、直前1分足との方向一致率は80%です。
指標発表直前に直前10-1分足と同方向にポジションをオーダーし、発表直後の跳ねで利確/損切します。
。
また、直後1分足と直後11分足は方向一致率が90%あります。その90%の方向一致時に、直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が同じ方向い反応を伸ばしたことは78%です。けれども、それらの方向一致時にすら、直後1分足値幅を超えて直後11分足値幅が同じ方向に反応を伸ばしたことは50%です。
指標発表直後は初期反応方向への追撃を早期開始し、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺うべきです。
【3.4 直後11分足】
下図は直後11分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均順跳幅は11pips、同値幅は7pipsです。順跳幅と長跳幅の方向が違ったことは過去1度もありません(頻度0%)
過去陽線率は73%で、直前10-1分足との方向一致率は90%です。
再追撃は、直前10-1分足と同じ方向に直後1分足終値から5pips程度を狙います。
【3.5 方針結論】
- 直前10-1分足は、事前差異と同じ方向にオーダーします。
- 指標発表直前に直前10-1分足と逆方向、直前1分足と同方向にポジションをオーダーし、発表直後の跳ねで利確/損切します。もし、直前10-1分足と直前1分足が同方向になりそうなら、このポジションは諦めます。
- 指標発表直後は初期反応方向への追撃を早期開始し、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺います。
- 再追撃は、直前10-1分足と同じ方向に直後1分足終値から5pips程度を狙います。
W.分析結論
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率を下げてしまいがちです。
- 豪政府やRBAの施策により、2018年以降の住宅価格は低下に転じました。今後はその影響によって、指標発表前後の反応の特徴が変化する可能性があります。
また、本指標前期比は四半期消費者物価指数前期比に対し、1四半期遅行しているか2四半期先行している可能性があります。但し、まだ調査事例数が少ないため、この先行性/遅行性の関係を取引に用いてはいません。 - 本指標は単独で発表されたことが少なく、小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されるときは取引を避けましょう。
小売売上高やRBA議事要旨と同時発表されないときの取引では、反応程度こそ小さいものの、反応方向は素直で予兆とも言える事象が多々見受けられます。取引上のポイントは決済のタイミングにかかっており、欲張らないことです。 - 過去の実績から言えば、指標発表前には事前差異と同じ方向に反応し、発表後は初期反応方向に暫く伸び続けます。
X.過去成績
取引成績は、この分析に記載方針に沿って実際に取引を行った結果だけを纏めています。実際に取引した結果以外は、例え事前方針が妥当だったとしてもここには含みません。また、事前方針に挙げていない取引(方針外取引)の成績は含めません。
実際の取引は、例え結果的に陽線だったとしても終値1秒前まで長い陰線側へのヒゲをずっと形成していたりします。そういった場合、事前のその期間の取引方針がロングが正解かショートが正解かわかりません。実際の取引で利確できたか損切せざるを得なかったかだけが公平な判定基準だと言えます。そして、方針外取引をここに含めると、事前分析の有効性が後日検証できなくなってしまいます。
取引方針の記述を、勝ちやすく・分析結果を誤解しにくく・自己裁量部分がわかるように、進歩・改善していくしかありません。記述はがんじがらめ過ぎても取引がうまくいきません。その兼ね合いが難しいので、試行錯誤しています。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
注記以上
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
広告以上
2018年12月21日
12月21日経済指標
昨日、日銀金融政策決定会合の結論は「市場予想通り現状維持」でした。要点は次の通りです。
また、MPC(BOE金融政策)の結論も「市場予想通り現状維持」でした。要点は次の通りです。
ちなみに、市場予想はEU離脱後に利上げ、です。
米大統領は連邦予算のつなぎ予算に「国境の壁」の予算が含まれていないため署名しない旨、発言しました。本日は単に週末取引というより、実質的に今年最終日と言っても良いでしょう。最後の最後まで、という感じです。
18:30 7-9月期英国GDP改定値
22:30 11月集計分米国耐久財受注・7-9月期米国GDP確定値
24:00 11月集計分米国PCEコアデフレータ・PCE・個人所得
今年の指標取引は昨日で終わりです。後は来年のことでも考えて年明けを待ちます。
米耐久財受注統計
航空機を除く非国防資本財受注(コア資本財受注)は、設備投資の先行指標と言われています。これが前月比△0.6%でした。
また、コア資本財出荷はGDP算出に使用されます。これが△0.1%減少でした。
PCEコアデフレータ
FRBは物価指標の動きを把握するため、PCEコアデフレータを指針としています。前月比は+0.1%、前年比は+1.9%でした。
また、FRBのインフレ目標+2%は、PCEデフレータ前年比を基準にしています。これは+1.8%でした。
GDPの7割を占めるというPCE前月比は+0.4%で、悪くありません。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
Webサーバー処理速度が国内最速(2018年9月調査)で、ストレスのない高速サーバー環境が手に入ります。初めて自分のサイトを持つならベーシックコース¥1200/月。容量が不足したら上位プランに変更できます。最低利用期間なし・転送量課金なし・サイト数無制限・ドメイン無制限・データベース数60個・バックアップ1日1回14日分復旧可。事前にチャージ(入金)した金額分のみサービスのご利用が可能なプリペイド形式の支払い方法です。サービスのご利用金額は、利用日翌日にチャージ残高から引き落とされます。
- 政策金利は、短期金利を△0.1%とし、長期金利は0%程度で上下にある程度の変動を許容。長期金利は、国債保有残高を年間約80兆円増加して調整。この件は7:2で承認。
- 資産購入(ETF及びJ-REIT)は、保有残高を各6兆円及び900億円相当を年間購入。この件は全員一致承認。
- 政策の先行き見通し(フォワードガイダンス)は、2019年10月予定の消費税率引き上げの影響等の不確実性を踏まえて、当分は現状金利水準の維持を想定。
また、MPC(BOE金融政策)の結論も「市場予想通り現状維持」でした。要点は次の通りです。
- 政策金利は0.75%、国債買入枠は4350億ポンド、社債買入枠は100億ポンドに、それぞれ維持。この決定は全員一致。
- 10-12月期成長率前期比を+0.2%と下方修正(11月時点での予想は+0.3%)し、物価上昇圧力がGBP安などで強まるものの、最近の原油価格の下落がそれを相殺し、CPI前年比はむしろ下がるという見通し。
- 次の金利変更は、EU離脱後の状況次第で上下どちらにも可能性があるとの見解。
ちなみに、市場予想はEU離脱後に利上げ、です。
米大統領は連邦予算のつなぎ予算に「国境の壁」の予算が含まれていないため署名しない旨、発言しました。本日は単に週末取引というより、実質的に今年最終日と言っても良いでしょう。最後の最後まで、という感じです。
18:30 7-9月期英国GDP改定値
22:30 11月集計分米国耐久財受注・7-9月期米国GDP確定値
24:00 11月集計分米国PCEコアデフレータ・PCE・個人所得
今年の指標取引は昨日で終わりです。後は来年のことでも考えて年明けを待ちます。
以上
米耐久財受注統計
航空機を除く非国防資本財受注(コア資本財受注)は、設備投資の先行指標と言われています。これが前月比△0.6%でした。
また、コア資本財出荷はGDP算出に使用されます。これが△0.1%減少でした。
PCEコアデフレータ
FRBは物価指標の動きを把握するため、PCEコアデフレータを指針としています。前月比は+0.1%、前年比は+1.9%でした。
また、FRBのインフレ目標+2%は、PCEデフレータ前年比を基準にしています。これは+1.8%でした。
GDPの7割を占めるというPCE前月比は+0.4%で、悪くありません。
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
注記以上
Webサーバー処理速度が国内最速(2018年9月調査)で、ストレスのない高速サーバー環境が手に入ります。初めて自分のサイトを持つならベーシックコース¥1200/月。容量が不足したら上位プランに変更できます。最低利用期間なし・転送量課金なし・サイト数無制限・ドメイン無制限・データベース数60個・バックアップ1日1回14日分復旧可。事前にチャージ(入金)した金額分のみサービスのご利用が可能なプリペイド形式の支払い方法です。サービスのご利用金額は、利用日翌日にチャージ残高から引き落とされます。
広告以上