2018年12月15日
豪州景気指標「Westpac消費者信頼感指数」発表結果の豪州小売売上高への影響(1.1訂版)
本稿は、過去の本指標結果と豪州小売売上高の関係を分析することによって、本指標での取引でなく、後日発表される豪州小売売上高発表前後のAUDJPY取引に役立つ特徴を見出すことがテーマです。
本指標での取引を狙った分析ではないので、反応分析は行いません。
ウェストパック消費者信頼感指数(Westpac-Melbourne Institute consumer sentiment index)は、豪州4大市中銀行のひとつであるウェストパック銀行と、シンクタンクのメルボルン研究所が、消費者の家計見通しや購買意欲の変化を調査したものです。
調査は、18歳以上の世代毎/地域毎/性別毎に選ばれた1200人(世帯)に対して月始めの週に行われています。内容は、@ 昨年/現在/来年の家計、A 来年/今後5年間の経済状況、B 家庭用品の購入計画、C 車輌や住宅の購入計画、D 貯蓄状況/計画、の5項目とされています。
指標結果は100が中立基準です。
さて、本指標発表前後は、反応が小さく取引に向いていません。けれども、豪州個人消費はGDPの約60%を占めており、小売売上高はその1/3の約20%を占めています。そして、豪州小売売上高発表直後1分足は過去平均16pipsです。本指標が後日発表される小売売上高の結果を先行示唆するなら、本指標の存在意義は大きいと言えます。
結論は次の通りです。
以下に、上記論拠となる分析過程を開示します。
指標分析範囲は、2015年1月集計分〜2018年10月集計分の46回分です。この期間の本指標推移を、同期間の四半期GDPや小売売上高前月比の推移と比較します。比較によって一貫した傾向の有無がわかれば、本稿目的の達成です。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
下図は、本指標前月比の推移です。
2016年夏頃までは激しい上下動があり、その後は上下動の振幅が半減したように見受けられます。
2016年夏頃と言えば、2016年5月に29年ぶりの両院解散が行われ、7月に総選挙で与野党ともに過半数が取れない大接戦がありました(その後、保守党が自由党と連立し過半数確保)。そして、豪中銀(RBA)の直近最後の利下げが2016年8月に行われています。また、最大都市シドニーを含む地域の電力公社は、同地域の送電・通信サービスを担っており、同公社の中国企業への売却が安全保障上の理由で却下されました。
行政・金融・安全保障のいずれも大きな出来事があったものの、そうしたことが個人消費のブレを小さくする理由とは思えません。理由をこじつけるなら、安全保障上の問題で中国資本による豪州向け投資が行いにくくなり始めた時期、というのが関係しているかも知れません。
国外に目を向けると、2016年は5月にフィリピンが中国を提訴した南沙諸島領有権問題で、中国が国際仲裁裁判所の仲裁案を「(同裁判所がこの件で)管轄権を持たず、仲裁案は最初から違法で、どんな結果であろうと中国は受け入れないし、認めない」との声明を出しました。さすが中国、という声明に「おお」っと思った人は多かったはずです。
6月には英国のEU離脱国民投票が行われ、11月に行儀と言動の悪さに驚いた米大統領選挙が行われました。多くの国でナショナリズムやポピュリズムの政治派閥が台頭し、資源輸出が経済を支えている自覚の強い豪州では不安が高まりました。但し、実のところ、貿易収支を見るならこの時期から改善に向かっています。
タイミングで見る限り、これらが総合的に個人の景況感に影響し、本指標結果の上下動が小さくなった可能性があるものの、なぜそうしたことが起きると本指標結果の上下動が小さくなるのかはわかりません。
下図は小売売上高前月比の推移です。
発表結果の上下動の大きさに比べ、市場予想がほぼ一定となっています。つまり、市場予想は本指標結果の影響をあまり強く受けていません。
上図を先に挙げた本指標推移の図と見比べても、両指標の連動や追従を見抜くことはできません。
そこで、本指標の良し悪しと、小売売上高前月比実態差異の良し悪しを、同月集計分から6か月までずらしてみます。本指標発表値と、小売売上高前月比の(前回結果ー発表結果)を月ズレさせて見比べる訳です。
また、本指標が僅かしか改善/悪化しなかったときは、消費者の購買意欲が高まっても弱まっても、小売売上高に大きな影響を与えるとも思えません。そこで下図は、本指標前月比の0以上、1以上・・・4以上まで段階的にプロットしています。
下図横軸は「本指標が小売売上高より〇か月先行」と読みます。縦軸は、両指標前月比の改善/悪化の方向一致率です。
見ずらいので、連動と3か月追従の方向一致率、を下表に纏めておきます。
下表Westpacとは、同指標結果の大きさ(%)を示しています。また、頻度とは調査期間の両指標発表(46回)のうち何度(%)そういうことが起きたか、です。
方向一致率を見る限り、本指標が3%以上のときしかアテにできないことがわかります。
ともあれ、上図上表から、本指標は小売売上高前月比実態差異と連動、もしくは3か月先行連動している可能性があります。
巻頭に挙げた通り、本指標での反応分析は行いません。
本指標での取引は行いません。
本指標での取引は行いません。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
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2019年1月22日1.1訂:1.1項掲載図に2019年1月集計分(1月16日発表分)を反映。
本指標での取引を狙った分析ではないので、反応分析は行いません。
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ウェストパック消費者信頼感指数(Westpac-Melbourne Institute consumer sentiment index)は、豪州4大市中銀行のひとつであるウェストパック銀行と、シンクタンクのメルボルン研究所が、消費者の家計見通しや購買意欲の変化を調査したものです。
調査は、18歳以上の世代毎/地域毎/性別毎に選ばれた1200人(世帯)に対して月始めの週に行われています。内容は、@ 昨年/現在/来年の家計、A 来年/今後5年間の経済状況、B 家庭用品の購入計画、C 車輌や住宅の購入計画、D 貯蓄状況/計画、の5項目とされています。
指標結果は100が中立基準です。
さて、本指標発表前後は、反応が小さく取引に向いていません。けれども、豪州個人消費はGDPの約60%を占めており、小売売上高はその1/3の約20%を占めています。そして、豪州小売売上高発表直後1分足は過去平均16pipsです。本指標が後日発表される小売売上高の結果を先行示唆するなら、本指標の存在意義は大きいと言えます。
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結論は次の通りです。
- 本指標は小売売上高前月比実態差異と連動、もしくは3か月先行している可能性が高く、本指標結果が0から離れるほどそれらの方向一致率が高まります。
以下に、上記論拠となる分析過程を開示します。
T.指標分析
指標分析範囲は、2015年1月集計分〜2018年10月集計分の46回分です。この期間の本指標推移を、同期間の四半期GDPや小売売上高前月比の推移と比較します。比較によって一貫した傾向の有無がわかれば、本稿目的の達成です。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【1.1 指標推移】
下図は、本指標前月比の推移です。
※ 2019年1月集計分反映済
2016年夏頃までは激しい上下動があり、その後は上下動の振幅が半減したように見受けられます。
2016年夏頃と言えば、2016年5月に29年ぶりの両院解散が行われ、7月に総選挙で与野党ともに過半数が取れない大接戦がありました(その後、保守党が自由党と連立し過半数確保)。そして、豪中銀(RBA)の直近最後の利下げが2016年8月に行われています。また、最大都市シドニーを含む地域の電力公社は、同地域の送電・通信サービスを担っており、同公社の中国企業への売却が安全保障上の理由で却下されました。
行政・金融・安全保障のいずれも大きな出来事があったものの、そうしたことが個人消費のブレを小さくする理由とは思えません。理由をこじつけるなら、安全保障上の問題で中国資本による豪州向け投資が行いにくくなり始めた時期、というのが関係しているかも知れません。
国外に目を向けると、2016年は5月にフィリピンが中国を提訴した南沙諸島領有権問題で、中国が国際仲裁裁判所の仲裁案を「(同裁判所がこの件で)管轄権を持たず、仲裁案は最初から違法で、どんな結果であろうと中国は受け入れないし、認めない」との声明を出しました。さすが中国、という声明に「おお」っと思った人は多かったはずです。
6月には英国のEU離脱国民投票が行われ、11月に行儀と言動の悪さに驚いた米大統領選挙が行われました。多くの国でナショナリズムやポピュリズムの政治派閥が台頭し、資源輸出が経済を支えている自覚の強い豪州では不安が高まりました。但し、実のところ、貿易収支を見るならこの時期から改善に向かっています。
タイミングで見る限り、これらが総合的に個人の景況感に影響し、本指標結果の上下動が小さくなった可能性があるものの、なぜそうしたことが起きると本指標結果の上下動が小さくなるのかはわかりません。
【1.2 指標間一致性分析】
(1.2.1 小売売上高前月比との対比)
下図は小売売上高前月比の推移です。
発表結果の上下動の大きさに比べ、市場予想がほぼ一定となっています。つまり、市場予想は本指標結果の影響をあまり強く受けていません。
上図を先に挙げた本指標推移の図と見比べても、両指標の連動や追従を見抜くことはできません。
そこで、本指標の良し悪しと、小売売上高前月比実態差異の良し悪しを、同月集計分から6か月までずらしてみます。本指標発表値と、小売売上高前月比の(前回結果ー発表結果)を月ズレさせて見比べる訳です。
また、本指標が僅かしか改善/悪化しなかったときは、消費者の購買意欲が高まっても弱まっても、小売売上高に大きな影響を与えるとも思えません。そこで下図は、本指標前月比の0以上、1以上・・・4以上まで段階的にプロットしています。
下図横軸は「本指標が小売売上高より〇か月先行」と読みます。縦軸は、両指標前月比の改善/悪化の方向一致率です。
見ずらいので、連動と3か月追従の方向一致率、を下表に纏めておきます。
下表Westpacとは、同指標結果の大きさ(%)を示しています。また、頻度とは調査期間の両指標発表(46回)のうち何度(%)そういうことが起きたか、です。
方向一致率を見る限り、本指標が3%以上のときしかアテにできないことがわかります。
ともあれ、上図上表から、本指標は小売売上高前月比実態差異と連動、もしくは3か月先行連動している可能性があります。
U.反応分析
巻頭に挙げた通り、本指標での反応分析は行いません。
V.取引方針
本指標での取引は行いません。
W.分析結論
- 本指標は小売売上高前月比実態差異と連動、もしくは3か月先行している可能性が高く、本指標結果が0から離れるほどそれらの方向一致率が高まります。
X.過去成績
本指標での取引は行いません。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
注記以上
FX口座数『国内第1位』(※2017年1月末時点。ファイナンス・マグネイト社調べ2017年1月口座数調査報告書)で、TVCMでも有名です。特徴は、『時事通信社』ニュース配信、取引通信簿(年初来の取引結果の一目瞭然図示)、24時間電話サポート、です。キャッシュバックは口座申込日から3か月以内の500枚売買(1日平均8〜9枚の売買)です。口座開設日からではない点は要注意です。
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2019年1月22日1.1訂:1.1項掲載図に2019年1月集計分(1月16日発表分)を反映。
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