2019年02月04日
豪州金融政策発表前後のAUDJPY反応分析(2.1訂版)
どの国の中銀の金融政策発表前後の反応であれ、「市場予想通り現状維持」の場合とその他の場合では、反応が全く異なります。RBA(豪中銀)政策発表時も同様です。本稿は、「市場予想通り現状維持」だった場合の反応の傾向を分析することによって、本発表前後のAUDJPY取引に役立つ特徴を見出すことがテーマです。
RBAとはオーストラリア準備銀行(Reserve Bank Of Australia)のことで、日本の日銀に相当します。RBAの金融政策は、金融政策決定理事会で決定されます。金融政策決定理事会は近年1月を除き毎月第1火曜日に実施されます。
リンク先の発表事例は声明メディアリリース版で、巻頭に結論(利率)から述べられます。
声明の文章構成はほぼ形式化しており、巻頭結論に続いて、世界経済、豪州経済、貿易・雇用・インフレ率・為替、に関する現状認識と見通しを示し、その見通しをRBAの金融政策がどう誘導するかの意思が最後に示されています。
貿易・雇用・インフレ率の見通しは、それら経済指標での取引の参考になります。
RBAは、2016年8月に現在の政策金利1.50%に引き下げた後、政策金利変更を行っていません。そして、RBAは過去に市場予想を裏切った前科が豊富な中銀です。
RBAが「市場予想通り現状維持」ではない決定を行ったことは、2015年以降5回あります。
注目すべき点は、市場予想通りの利下げを行ったことと、市場予想に反して利下げを行ったことが、ともに2回ずつあります。RBAが市場との対話を疎かにしているのか、エコノミストらが予想を当てにくい理由があるのかはわかりません。
本稿分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
分析範囲は、2014年12月発表分〜2018年12月発表分のうち、結論が「市場予想通り現状維持」だった40回分です。既に各種確率が安定して一貫した傾向が見出せる標本数に達しています。
2014年12月以降のRBA政策金利の推移を下図に示します。
ここ最近の政策結論は、「政策スタンスを変更しないことが経済の持続可能な成長と、インフレ目標を達成することに一致すると判断」し、政策金利の「現状維持」が継続しています。
では、以下にひとつずつRBA声明に沿った思考に頭を慣らしていきましょう
まず同じ期間の成長率(四半期GDP前年比)です。
先の政策金利の推移と見比べると、成長率が+2.0%付近・以下まで急減する(急減を予想する)と、RBAは利下げを行って対応したことがわかります。上図四半期GDP前年比推移は、2017年1-3月期をボトム(+1.7%)に上昇基調に転じ、2018年4-6月期は+3.4%の直近ピークを形成しました。
過去には+3.0%以上が3期続いても、RBAは利上げを行いませんでした。
次にインフレ率です。
2010年以降の政策金利と四半期消費者物価指数前年比の関係は、『豪州物価指標「四半期消費者物価指数」発表前後のAUDJPY反応分析』の1.3.1項「RBA政策金利との対比」に詳述しています。
その結論は次の通りです。
RBAのインフレ目標は2〜3%です。RBAは、インフレ目標を逸脱したら直ぐに金利を変更するようなことはせず、金利を変更したら物価推移の変化を様子見します。そして、概ねインフレ目標に沿った金融政策をきちんと遂行しており、その結果、RBAはインフレ目標付近での物価安定に成功しています。
直近の四半期消費者物価指数前年比の推移は下図の通りです。
2016年4-6月期がボトム(+1.0%)、2017年1-3月期と2018年4-6月期がピーク(+2.1%)となっています。2017年以降はインフレ目標2%をやや下回る水準を中心に上下しています。
ボトムの時期に利下げを立て続けに行い、インフレ率が+1.5%付近で政策金利を2%に下げ、インフレ率が+1.0%で政策金利を1.5%に下げています。けれども、インフレ率が継続して+2.0%を超えておらず、次の政策方向が利上げと囁かれても利上げを実施していません。
最後に、利上げを論じるためには、雇用状況に無関心ではいられません。
失業率は5%付近まで改善しています。
このところ失業率は改善し続けており、直近の利下げ時期との特徴一致は見られません。
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
分析範囲は、2014年12月発表分〜2018年12月発表分のうち、結論が「市場予想通り現状維持」だった40回分です。既に各種確率が安定して一貫した傾向が見出せる標本数に達しています。
過去の4本足チャートの各ローソク足の平均値と分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅の平均は16pipsです。けれども下図をご覧ください。下図は直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の値幅ですが、2018年以降はそれ以前に比べてかなり小さくなっています。
なぜか?
T節「指標分析」記載の利上げ要件を満たしていないことが徐々に明らかになり、RBAが繰り返し表明していた「当面の利上げなし」が信憑性を得たためでしょう。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表での4本のローソク足順跳幅で平均55pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(11〜22pips)。2018年の反応は、その半分程度だったと見なせば、狙いは6〜11pipsしかありません。
その期間の動き全体の2〜4割しか狙わなければ、無理のない取引で勝率を稼ぎやすく、長期に亘る本指標取引での収益を最大化しやすい、との個人的感触があります。当面の取引であまり魅力的なイベントではありません。
ご参考まで。
直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布を下図に示します。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが0.91です。平均的には反応を伸ばさない指標です。
対角線(黒線)上下のドット分布もばらつきが大きく、直後1分足がどちら向きに反応しても、追撃・逆張りのどちらにすべきか方針を定めることができません。
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
発表後は発表前と逆方向に反応することの方が多いようです。直後11分足は、直前10-1分足との方向一致率が31%(不一致率69%)です。
その直後11分足は、過去陽線率が72%と偏りがあります。
次に、反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は77%です。その77%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは80%です。発表直後には反応が伸びると信じるしかありません。指標発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは56%です。早期追撃開始で得たポジションは、直後1分足終値を超えて伸びたら、早めに利確した方が良さそうです。反応が伸びるかどうかは、声明文の文言をプロがどう捉えるかで決まります。これは予想が付きません。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しながら、各期間の取引指針を示します。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。この図は、2014年12月以降の「市場予想通り現状維持」だった月も、そうでなかった月も全て記載しています。
この期間の取引は勧めません。
さて、このブログでの方法論に反して、1回のポジションで損小利大を狙う話をしておきます。
いま何も考えずに、前月が陽線ならロング、前月が陰線ならショート、と決めていたら、2015年2月〜2018年12月の間で、上図直前10-1分足では24勝18敗2回同値の成績だったはずです(=4勝3敗ペース)。
そして、直前10-1分足の過去平均値幅は3pipsです。4勝3敗ペースは4回✕3pipsー3回✕3pips=3pipsです。7か月でたった3pipsしか稼げないというのはひどすぎます。でも、4勝3敗ペースでトレンドフォローしている人なんて結構います。
こんな場面ではどうすれば良いでしょう。取引場面と期間を選ぶ意義はこういうときに生じます。
2.1項の表で、直後10-1分足の過去平均順跳幅(5pips)を超えていたこと(6pips以上)は頻度40%起こります。
もし、含益が6pipsに達したら利確しましょう。そんなことが起きるのは、オーダー方向が合っていたときのうち40%です。でも、含損が6pipsを超えても損切せずに、直前10-1分足終値まで待ちましょう。含損が6pipsに達することはオーダー方向が間違っていたときのうち40%です。この間違った40%でも、直前10-1分足終値まで待って損切すれば、損切は平均3pipsで済みます。
平均値幅3pipsしかない期間の勝敗ペースが4勝3敗(その差1勝分+3pipsの損益)しかなくても、こうして損小利大の取引を行えば、4勝のうち40%1.6勝分が6pips利確でき、3敗のうち40%が6pipsの損切にならず3pipsの損切で済みます。7回の勝負で3pipsしか稼げなかったハズが10pipsの収益ペースとなる訳です。損小利大の方法を定量的に求めれば、チャンスを伸ばす方法なので、収益ペースは3倍強にもなります。
では次に、チャンスを伸ばしてピンチに我慢するこのやり方の弱点はどこでしょう。
直前10-1分足の過去平均値幅3pipsの2倍超(7pips以上)となったことは、2.1項の分布表で頻度13%です。この13%の事例のうち、オーダー方向が間違っていたときに被害甚大となる訳です。場面と期間を選んでも、損小利大の取引を目指す以上、こうしたことは色々と姿を変えて起こるものです。
それが嫌なら、利確/損切を同値で行い、勝率だけに拘る方法に徹するべきです。
もし、個々のポジションの勝率でなく、一定期間・複数回のポジションで勝率が高く保てるようになったら、損小利大の取引を目指しても良いでしょう。但し、まずは場面と期間を選んでです。場面と期間さえ選べば損小利大の取引で、収益ペースをかつてより高く保てるようになったら、いつも損小利大の取引を目指せばよいのです。
実力かデータの裏付けのない初心者やアマチュアは、私のような人間のカモになるだけです。順序立てて上達を目指しましょう。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。下図は「市場予想通り現状維持」だったときだけです。
2015年4月と2015年11月の反応を見て下さい。直前1分足の過去平均跳幅は10pips、過去平均値幅は5pipsに対し、明らかに異常な動きをしています。
こんなことが起きたことがある発表では、この期間に取引しない方が無難です。
参考までに「市場予想に反した」場合も含めた直前1分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
政策変更が予想される時期(その月だけでない)の直前1分足は、桁外れの博奕打ちか、かなり分析に自信がある参加者が居ます(だって、発表1分前です)。そんな連中のせいで分速50pips以上でチャートが動くと、FX会社のスプレッドは一気に拡大してしまいます。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
同じ縦軸尺度で、「市場予想に反した」月も載せてみましょう。
万が一にも、発表時刻を跨いだポジションで外したら大変です。RBAが政策変更したときの市場予想は、政策変更が行われることを過去50%しか当てていません。
指標発表時刻を跨ぐポジションを持つのは止めましょう。
追撃は、直後1分足と直後11分足との方向一致率が77%で、その77%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは80%あることを覚えておきましょう。がしかし、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは56%です。さっと追撃して、さっと取引を終えるのが、当面推奨できる取引方法です。
そうやってチャンスを待っていれば、いずれ大きく反応を伸ばす日も来るでしょう。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。歯抜けしている月は「市場予想に反した」月です。
現在、あまり推奨できる取引方法はありません。
最近は、RBA総裁会見を待つ傾向が強いので、定時発表声明への反応への追撃はほどほどにしておいた方が良いでしょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
本発表時の成績は悪くありません。
※ 2019年3月4日最新版に差替
2019年の分析改定後は、発表後の追撃に絞った取引方針で臨むように変更し、定時発表前・発表時刻を跨ぐ取引は止めました。これは、今年を中国の経済情勢や豪中関係に懸念が高まっている時期と見込み、そのような時期に冒険的なポジションは危ないと判断してのことです。
臆病かも知れませんが、ぼろ儲けとぼろ負けは表裏一体です。ぼろ負けリスクがあるときにぼろ負けすることだけは避けることを優先し、その結果、儲けが少なくなっても良いのです。
過去傾向に基づく取引方針(分析成績)は〇15✕2で的中率がかなり高く、実際の取引成績も15勝3敗とかなり高くなっています。それにも関わらず、過去10回の本発表時取引で100pipsも稼げていないのは、ぼろ負けリスクを回避したいからです。
RBAに限らず、中銀金融政策発表時というのは、サプライズが起きたときに極端に大きくチャートが動くので、気を付けましょう。
2019年個別記録先
※ 改訂:書式統一、最新データ反映、取引方針改訂:2019年2月4日
※ 2.1訂:X節改訂:2019年3月4日
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
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RBAとはオーストラリア準備銀行(Reserve Bank Of Australia)のことで、日本の日銀に相当します。RBAの金融政策は、金融政策決定理事会で決定されます。金融政策決定理事会は近年1月を除き毎月第1火曜日に実施されます。
リンク先の発表事例は声明メディアリリース版で、巻頭に結論(利率)から述べられます。
声明の文章構成はほぼ形式化しており、巻頭結論に続いて、世界経済、豪州経済、貿易・雇用・インフレ率・為替、に関する現状認識と見通しを示し、その見通しをRBAの金融政策がどう誘導するかの意思が最後に示されています。
貿易・雇用・インフレ率の見通しは、それら経済指標での取引の参考になります。
RBAは、2016年8月に現在の政策金利1.50%に引き下げた後、政策金利変更を行っていません。そして、RBAは過去に市場予想を裏切った前科が豊富な中銀です。
RBAが「市場予想通り現状維持」ではない決定を行ったことは、2015年以降5回あります。
- 2015年2月は市場予想に反して利下げ
- 2015年3月は市場予想に反して現状維持
- 2015年5月は市場予想通り利下げ
- 2016年5月は市場予想に反して利下げ
- 2016年8月は市場予想通り利下げ
注目すべき点は、市場予想通りの利下げを行ったことと、市場予想に反して利下げを行ったことが、ともに2回ずつあります。RBAが市場との対話を疎かにしているのか、エコノミストらが予想を当てにくい理由があるのかはわかりません。
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本稿分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
- 発表後にさっと追撃開始し、数pips取れたらすぐに利確、です。
現在、この発表に注目するのは、もし声明で利上げや利下げ時期を示唆する文言があったとき大きく反応するので、そのときの追撃で稼ぐために待機、という他ありません。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
T.指標分析
分析範囲は、2014年12月発表分〜2018年12月発表分のうち、結論が「市場予想通り現状維持」だった40回分です。既に各種確率が安定して一貫した傾向が見出せる標本数に達しています。
【1.1 指標推移】
2014年12月以降のRBA政策金利の推移を下図に示します。
ここ最近の政策結論は、「政策スタンスを変更しないことが経済の持続可能な成長と、インフレ目標を達成することに一致すると判断」し、政策金利の「現状維持」が継続しています。
では、以下にひとつずつRBA声明に沿った思考に頭を慣らしていきましょう
ーーー$€¥£A$ーーー
まず同じ期間の成長率(四半期GDP前年比)です。
先の政策金利の推移と見比べると、成長率が+2.0%付近・以下まで急減する(急減を予想する)と、RBAは利下げを行って対応したことがわかります。上図四半期GDP前年比推移は、2017年1-3月期をボトム(+1.7%)に上昇基調に転じ、2018年4-6月期は+3.4%の直近ピークを形成しました。
過去には+3.0%以上が3期続いても、RBAは利上げを行いませんでした。
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次にインフレ率です。
2010年以降の政策金利と四半期消費者物価指数前年比の関係は、『豪州物価指標「四半期消費者物価指数」発表前後のAUDJPY反応分析』の1.3.1項「RBA政策金利との対比」に詳述しています。
その結論は次の通りです。
RBAのインフレ目標は2〜3%です。RBAは、インフレ目標を逸脱したら直ぐに金利を変更するようなことはせず、金利を変更したら物価推移の変化を様子見します。そして、概ねインフレ目標に沿った金融政策をきちんと遂行しており、その結果、RBAはインフレ目標付近での物価安定に成功しています。
直近の四半期消費者物価指数前年比の推移は下図の通りです。
2016年4-6月期がボトム(+1.0%)、2017年1-3月期と2018年4-6月期がピーク(+2.1%)となっています。2017年以降はインフレ目標2%をやや下回る水準を中心に上下しています。
ボトムの時期に利下げを立て続けに行い、インフレ率が+1.5%付近で政策金利を2%に下げ、インフレ率が+1.0%で政策金利を1.5%に下げています。けれども、インフレ率が継続して+2.0%を超えておらず、次の政策方向が利上げと囁かれても利上げを実施していません。
ーーー$€¥£A$ーーー
最後に、利上げを論じるためには、雇用状況に無関心ではいられません。
失業率は5%付近まで改善しています。
このところ失業率は改善し続けており、直近の利下げ時期との特徴一致は見られません。
【1.2 指標分析結論】
- 成長率が+2.0%付近・以下まで急減する(急減を予想する)と、RBAは利下げを行って対応しています。一方、成長率が+3.0%が3期続いてもRBAは利上げを行っていません。
- RBAは、インフレ目標を2〜3%に設定しています。インフレ率が+1.5%付近で政策金利を2%に下げ、インフレ率が+1.0%で政策金利を1.5%に下げています。利上げを行うためには、安定してインフレ率が3%以上となる必要があるでしょう。
- 雇用は改善が続いており、RBA政策金利の方向を示唆する情勢ではありません。
U.反応分析
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
分析範囲は、2014年12月発表分〜2018年12月発表分のうち、結論が「市場予想通り現状維持」だった40回分です。既に各種確率が安定して一貫した傾向が見出せる標本数に達しています。
【2.1 反応程度】
過去の4本足チャートの各ローソク足の平均値と分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅の平均は16pipsです。けれども下図をご覧ください。下図は直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の値幅ですが、2018年以降はそれ以前に比べてかなり小さくなっています。
なぜか?
T節「指標分析」記載の利上げ要件を満たしていないことが徐々に明らかになり、RBAが繰り返し表明していた「当面の利上げなし」が信憑性を得たためでしょう。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表での4本のローソク足順跳幅で平均55pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(11〜22pips)。2018年の反応は、その半分程度だったと見なせば、狙いは6〜11pipsしかありません。
その期間の動き全体の2〜4割しか狙わなければ、無理のない取引で勝率を稼ぎやすく、長期に亘る本指標取引での収益を最大化しやすい、との個人的感触があります。当面の取引であまり魅力的なイベントではありません。
ご参考まで。
【2.2 個別反応分析】
直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布を下図に示します。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが0.91です。平均的には反応を伸ばさない指標です。
対角線(黒線)上下のドット分布もばらつきが大きく、直後1分足がどちら向きに反応しても、追撃・逆張りのどちらにすべきか方針を定めることができません。
【2.3 回数反応分析】
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
発表後は発表前と逆方向に反応することの方が多いようです。直後11分足は、直前10-1分足との方向一致率が31%(不一致率69%)です。
その直後11分足は、過去陽線率が72%と偏りがあります。
次に、反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は77%です。その77%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは80%です。発表直後には反応が伸びると信じるしかありません。指標発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
がしかし、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは56%です。早期追撃開始で得たポジションは、直後1分足終値を超えて伸びたら、早めに利確した方が良さそうです。反応が伸びるかどうかは、声明文の文言をプロがどう捉えるかで決まります。これは予想が付きません。
【2.4 反応分析結論】
- 最近はほとんど反応していません。RBAが声明で利上げ時期を示すか、本発表前の雇用統計で失業率が
5%を下回り始めるまでは、もし大きく動いたときに備えて追撃で数pipsだけ稼ぐつもりでいた方が良いでしょう。 - その追撃は、直後1分足と直後11分足との方向一致率が77%で、その77%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは80%あることを覚えておきましょう。がしかし、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは56%です。さっと追撃して、さっと取引を終えるのが、当面推奨できる取引方法です。
そうやってチャンスを待っていれば、いずれ大きく反応を伸ばす日も来るでしょう。
V.取引方針
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しながら、各期間の取引指針を示します。
【3.1. 直前10-1分足】
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。この図は、2014年12月以降の「市場予想通り現状維持」だった月も、そうでなかった月も全て記載しています。
この期間の取引は勧めません。
さて、このブログでの方法論に反して、1回のポジションで損小利大を狙う話をしておきます。
いま何も考えずに、前月が陽線ならロング、前月が陰線ならショート、と決めていたら、2015年2月〜2018年12月の間で、上図直前10-1分足では24勝18敗2回同値の成績だったはずです(=4勝3敗ペース)。
そして、直前10-1分足の過去平均値幅は3pipsです。4勝3敗ペースは4回✕3pipsー3回✕3pips=3pipsです。7か月でたった3pipsしか稼げないというのはひどすぎます。でも、4勝3敗ペースでトレンドフォローしている人なんて結構います。
こんな場面ではどうすれば良いでしょう。取引場面と期間を選ぶ意義はこういうときに生じます。
2.1項の表で、直後10-1分足の過去平均順跳幅(5pips)を超えていたこと(6pips以上)は頻度40%起こります。
もし、含益が6pipsに達したら利確しましょう。そんなことが起きるのは、オーダー方向が合っていたときのうち40%です。でも、含損が6pipsを超えても損切せずに、直前10-1分足終値まで待ちましょう。含損が6pipsに達することはオーダー方向が間違っていたときのうち40%です。この間違った40%でも、直前10-1分足終値まで待って損切すれば、損切は平均3pipsで済みます。
平均値幅3pipsしかない期間の勝敗ペースが4勝3敗(その差1勝分+3pipsの損益)しかなくても、こうして損小利大の取引を行えば、4勝のうち40%1.6勝分が6pips利確でき、3敗のうち40%が6pipsの損切にならず3pipsの損切で済みます。7回の勝負で3pipsしか稼げなかったハズが10pipsの収益ペースとなる訳です。損小利大の方法を定量的に求めれば、チャンスを伸ばす方法なので、収益ペースは3倍強にもなります。
では次に、チャンスを伸ばしてピンチに我慢するこのやり方の弱点はどこでしょう。
直前10-1分足の過去平均値幅3pipsの2倍超(7pips以上)となったことは、2.1項の分布表で頻度13%です。この13%の事例のうち、オーダー方向が間違っていたときに被害甚大となる訳です。場面と期間を選んでも、損小利大の取引を目指す以上、こうしたことは色々と姿を変えて起こるものです。
それが嫌なら、利確/損切を同値で行い、勝率だけに拘る方法に徹するべきです。
もし、個々のポジションの勝率でなく、一定期間・複数回のポジションで勝率が高く保てるようになったら、損小利大の取引を目指しても良いでしょう。但し、まずは場面と期間を選んでです。場面と期間さえ選べば損小利大の取引で、収益ペースをかつてより高く保てるようになったら、いつも損小利大の取引を目指せばよいのです。
実力かデータの裏付けのない初心者やアマチュアは、私のような人間のカモになるだけです。順序立てて上達を目指しましょう。
【3.2 直前1分足】
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。下図は「市場予想通り現状維持」だったときだけです。
2015年4月と2015年11月の反応を見て下さい。直前1分足の過去平均跳幅は10pips、過去平均値幅は5pipsに対し、明らかに異常な動きをしています。
こんなことが起きたことがある発表では、この期間に取引しない方が無難です。
参考までに「市場予想に反した」場合も含めた直前1分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
政策変更が予想される時期(その月だけでない)の直前1分足は、桁外れの博奕打ちか、かなり分析に自信がある参加者が居ます(だって、発表1分前です)。そんな連中のせいで分速50pips以上でチャートが動くと、FX会社のスプレッドは一気に拡大してしまいます。
【3.3 直後1分足】
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
同じ縦軸尺度で、「市場予想に反した」月も載せてみましょう。
万が一にも、発表時刻を跨いだポジションで外したら大変です。RBAが政策変更したときの市場予想は、政策変更が行われることを過去50%しか当てていません。
指標発表時刻を跨ぐポジションを持つのは止めましょう。
追撃は、直後1分足と直後11分足との方向一致率が77%で、その77%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは80%あることを覚えておきましょう。がしかし、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは56%です。さっと追撃して、さっと取引を終えるのが、当面推奨できる取引方法です。
そうやってチャンスを待っていれば、いずれ大きく反応を伸ばす日も来るでしょう。
【3.4 直後11分足】
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。歯抜けしている月は「市場予想に反した」月です。
現在、あまり推奨できる取引方法はありません。
【3.5 方針結論】
- 発表後にさっと追撃開始し、数pips取れたらすぐに利確、です。
現在、この発表に注目するのは、もし声明で利上げや利下げ時期を示唆する文言があったとき大きく反応するので、そのときの追撃で稼ぐために待機、という他ありません。
最近は、RBA総裁会見を待つ傾向が強いので、定時発表声明への反応への追撃はほどほどにしておいた方が良いでしょう。
W.分析結論
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
- 当面はそんなことがないと考えていますが、忘れてはならないのは、RBAが過去に市場予想に反して政策金利を変更したことが50%ある点です。
もし、市場予想に反して利上げが行われた場合、瞬時にチャートが陽線側に跳ねる、と予想されます。そして、過去には直前1分足が爆発的に跳ねたことも複数回あります。がしかし、直前1分足が大きく跳ねても、それが直後1分足の方向や程度を示唆していたとは言えません。
X.取引成績
本発表時の成績は悪くありません。
※ 2019年3月4日最新版に差替
2019年の分析改定後は、発表後の追撃に絞った取引方針で臨むように変更し、定時発表前・発表時刻を跨ぐ取引は止めました。これは、今年を中国の経済情勢や豪中関係に懸念が高まっている時期と見込み、そのような時期に冒険的なポジションは危ないと判断してのことです。
臆病かも知れませんが、ぼろ儲けとぼろ負けは表裏一体です。ぼろ負けリスクがあるときにぼろ負けすることだけは避けることを優先し、その結果、儲けが少なくなっても良いのです。
過去傾向に基づく取引方針(分析成績)は〇15✕2で的中率がかなり高く、実際の取引成績も15勝3敗とかなり高くなっています。それにも関わらず、過去10回の本発表時取引で100pipsも稼げていないのは、ぼろ負けリスクを回避したいからです。
RBAに限らず、中銀金融政策発表時というのは、サプライズが起きたときに極端に大きくチャートが動くので、気を付けましょう。
以上
2019年個別記録先
※ 改訂:書式統一、最新データ反映、取引方針改訂:2019年2月4日
※ 2.1訂:X節改訂:2019年3月4日
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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