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2020年01月29日

特撮もののシナリオ集

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 私が買い集めた、日本の子供向け特撮番組のシナリオ集の数々。商用本として正式に市販されたものとしては、おそらくは、これで全て。(復刻や、内容が完全重複しているものは除く)
 ただし、雑誌やムック本などに、おまけとして掲載されたシナリオに関しては、ここに加えてはいない。


posted by anu at 09:59| Comment(1) | TrackBack(0) | テレビ番組

2020年01月22日

「如月未代の奇妙な体験」(5)

      ○記者会見会場  (映像)
   沢山の記者たちに囲まれ、
   テーブルについた文部省の幹部らしき老紳士が宣言する。
老紳士「(低い声で)文部省では、学校のいじめの原因は、
 いっさい、いじめっ子自身にあると言う見解を結論にいたす次第です」
   会場内の記者たちが、いっせいにどよめく。

      ○本  (映像)
   何冊もの本が、次々に映し出されてゆく。
   そのタイトルを見ると・・
   「いじめっ子問題を考える」
   「恥ずかしいいじめっ子」
   「いじめっ子は世界をダメにする」
   「くたばれ!いじめっ子」
   「いじめっ子の飼いならし方」
etc

      ○テレビ放送  (映像)
   先に、未代が見ていた教育評論家が、
   またテレビの席上で、懸命に力説している。
教育評論家「(ためらいも見せずに)今の学校はストレスが溜まりやすいとか、
 いじめっ子には不幸な境遇の子供が多いとか、様々な事が言われてはいますが、
 大人になれば、子供なんかよりも、
 遥かにストレスが溜まる、厳しい社会生活が待っているものなのです。
 それなのに、些細なストレスや苦労にも耐えられずに、
 安易にいじめなんてストレス発散法に走ってしまう子供たちが、
 果たして、どんな大人に成長してしまうのでしょうか。
 我々は、今まで、少し子供たちを甘やかし過ぎていました。
 もっと厳しく、強い忍耐力を持った子供たちを育てる為にも、
 いじめなんてものに手を出すような子供には、情けはかけるべきではないのです!」

      ○街頭  (映像)
   選挙の宣伝カーが車道をゆっくりと走っている。
   その車の上に立っている立候補者とは、吉川である。
吉川「(マイクを通して)皆さん、どうぞ、私にお力を貸してください。
 学校内のいじめ撲滅の為にも、
 私は文部大臣にとなり、頂点から学校の全てを改革します。
 弱い者いじめをしない善良な子供たちの為にも、快適な教育環境を作ってあげましょう。
 七年間の教師生活の経験を生かして、吉川は頑張ります。皆さん、お願いします!」
   吉川は、かなり人気があるらしく、歩行者たちが拍手する。

      ○テレビ画面  (映像)
   アニメーション番組が写っている。
   かっこいい学生服姿のヒーローが、
   不良スタイルの学生たちを過激すぎる暴力アクションで、とことんやっつけている。
   (勇ましいBGMがバックに流れている)
ヒーロー「(かっこをつけて)意地悪で、残酷ないじめっ子たちよ!
 ウジ虫みたいなお前たちに、生きてる権利はなーい!」

      ○面接室  (映像)
   スーツ姿の会社の面接官がカメラ目線で話しかけてくる。
面接官「(冷ややかに)悪いけど、君、学生時代はいじめっ子だったみたいだね。
 すまないが、うちの会社では、
 いじめっ子は、新人としては、絶対採用しない事にしてるんだ。
 何しろ、会社の中でも、また同僚いじめなんかをして、
 トラブルなんかを起こされたりしては困るんでね」

      ○町中  (映像)
   主婦を中心とした一団が、通りをデモ行進している。
   持っているプラカードの文字は・・
   「いじめっ子追放!」
   「学校に安全を!」
   「子供たちに平和を!」

   デモのリーダーらしき主婦が声を張り上げている。
デモのリーダー「(大声で)いじめのある学校は学校じゃなーい!
 子供たちに自由と安心を!いじめをする子供は、学校に入れるなー!」

      ○中学校・校庭  (映像)
   おびえるミチル、さちえ、麻衣子らが、無数の生徒たちに追いかけ回されている。
   追っている生徒たちは、皆、きつい表情で、殺気だっている。
生徒の一人「いじめっ子め!この野郎!お前たちのせいだ!」
別の生徒「お前たちが問題なんかを起こすから、
 うちの学校はよけい校則が厳しくなっちゃったんだぞ!どうしてくれるんだ!」
さらに別の生徒「お前たちなんか死んじゃえ!」
   ミチルたちは怯んで、ついに団子になって、地面に倒れてしまう。
   そのまわりにドッと生徒たちが群がり、
   まるで無抵抗のミチルたちを袋だたきにし始める。物凄い惨状。
   映像の最後に、未代の悲鳴が重なる。
未代の声「(叫ぶ)止めてえ!もう止めてえ!」

      ○再び、白い空間
   映像は縮小し、光の穴の状態でとどまっている。
   その前に、かむろは超然と立ち、未代はうろたえて、耳を押さえている。
未代「(怯えて)ひどい。ひどいわ!
 なぜ、これほどまでも責められなくちゃいけないの?可哀相よ。可哀相だわ!」
かむろ「(冷たく)なに、おかしな事を言っているのよ。
 あなたは、なぎささんの事が可哀相だとは思わなかったんでしょう。
 それと同じよ。皆が、いじめっ子はいじめられても仕方がない、
 いじめっ子側にいじめられる原因があると考えるようになったから、
 あのような事が平気で行なわれるようになったのよ」
未代「(半泣きで)でも・・」
かむろ「(激しく)まだ分からないの!
 あなたはね、なぎささんや周りの人たちの優しさに甘えていただけだったのよ。
 なぎささんが抵抗しなかったから、いじめれたんじゃない。
 なぎささんが、優しく、あなたの意地悪行為を許してくれていたから、
 何のお咎めもなく、いじめを続ける事ができたのよ。
 あなたは、何も知らなかったのよ。赤ん坊と同じだわ。
 自分の事だけしか考えないで、他人から愛情や恵みを受け取ってばかりいる。
 そして、自分は誰にも何も与えようとしないのよ。
 全く、なんで、あなたみたいな人がこの世に生まれてしまったのかしら」
   未代は、完全に気が動転する。
未代「(叫ぶ)うわーっ」
かむろ「あなたみたいな人たちの為に、
 さんざん迷惑をこうむってきた人たちがいっせいに抵抗しだしたのが、
 今、あなたに見せたあの世界よ。さあ、あそこへ行きなさい!
 あなたがあの世界を望んだのよ!」
   かむろがバッと光の穴の方を指さす。
未代「(泣きながら、必死に)いやっ!いやっ!」
かむろ「反省したと言うの?遅いわよ!反省しただけで済む問題じゃないのよ!
 今頃になって謝ったって手遅れだわ。
 なぜ、いじめなんかする前に、よく考えなかったの?
 自分が何をすればいいのか、選択するぐらいの意志の自由は、
 あなたにだって十分あったはずよ」
未代「(泣き続け)いやだ。いやっ・・」
かむろ「(厳しく)あの世界へさっさと行ってしまいなさい!
 それが嫌なら、これから自分はどう言う形で償えれるのかをよく考えてみるべきね」
   かむろの姿がパッと消え、
   代わりに、泣き顔の未代の目前に、小刀がポツンと現われる。
   震える未代は、おそるおそる、その小刀を手に取る。
   ジッと小刀を見つめた末に、
   未代がそろそろと小刀の先を自分の喉の方へと近付けてゆく。
   しかし、土壇場になって、未代は小刀をバッと投げ捨ててしまう。
未代「(悲痛に)いやーっ!」

      ○別の白い空間
   前のシーンの最後の、未代の叫んだ顔写真が宙の一角に浮いている。
   同じように、さまざまな人たちの絶望した顔写真が、
   あちこちに沢山浮かんでいて、その中央に、かむろがすまして立っている。
かむろ「(冷ややかに)人間って、なぜ、何も学ばないのかしら。
 何百年たっても、何千年たっても同じよ。いつだって、まず自分の事しか考えていない。
 もし、自分の利害と他人の幸せが衝突するような事があれば、
 自分の主張の方は絶対引っ込めようとはせず、
 何だかんだと自己正当の理屈をこねて、相手の要望を押しのけようとする。
 誰もがそんな態度ばかりを取り続けているから、いつだってケンカやもめ事が絶えず、
 あげくは国同士や民族同士の戦争までもが起きてしまうのよ。しかし・・」
   ここで、かむろは、静かに未代の顔写真を手に取る。
かむろ「(未代の写真を見ながら)こんな人たちでも、
 もし一からやり直せれる機会があるのならば、もしかすると、
 自分たちが本来歩まなければいけない生き方にも気付いてくれるかもしれないわ。
 ねえ、そうじゃないかしら」
   かむろは、カメラ目線で、視聴者の方へ微笑みかける。 (FO)

      ○川沿いの一本道  (朝・登校時)
   冒頭のシーンと同じ場所。
   なぎさが一人で立ち、静かに皆が来るのを待っている。
   そこへ、未代、ミチル、さちえ、麻衣子たちがやって来る。
   未代はおとなしくしているが、他の子たちはペチャクチャ喋っている。
ミチル「(はしゃいで)なぎさー、おはよー!」
なぎさ「(小さく微笑み)お早う」
   ミチルは、いきなり、なぎさへと自分のカバンを投げ渡す。
ミチル「(明るく)じゃあ、なぎさ、今日も頼んだね!」
さちえ「(慌てて)あー、あたしのもォ!」
   その時、未代が突然さちえを押さえ、
   なぎさから奪ったミチルのカバンをミチルの方へと突き出す。
未代「(きつく)あんたたち、たまには自分のカバンぐらい自分で持ちなさいよ」
   未代の態度に、ミチルたちはもちろん、なぎさも呆気に取られている。
未代「それからさ、あたし、なぎさと二人っきりで話をしたいから、
 あんたたち、悪いけど、先に学校に行っててくれない」
   未代の強きの命令に、戸惑いながらも、
   ミチルたちは、すごすごと先に歩き去ってしまう。
   あとには、未代となぎさだけが残される。
   なぎさは、未代の前で、ひどくオロオロしている。
   未代は、自分のカバンの中からソッと学校の文集を取り出すと、
   なぎさの方を見て、優しく微笑む。
未代「(明るく)なぎさって、小説を書いていたのね。
 読ませてもらったけど、とっても面白かったわ」
   未代の言葉を聞き、なぎさの表情がパッと明るくなる。
   今まで見せた事のないような、嬉しそうな笑顔である。
未代「(無邪気っぽく)他にも、まだ沢山書いているんでしょう。
 あたし、もっと色々読んでみたいんだけどな」
   未代となぎさは、楽しげに、並んで歩き出す。
   その去ってゆく後ろ姿は、まさに、仲の良い親友たちのそれのようである。
   二人は、どんどん、画面の奥へと去ってゆく。

テロップ「この世には、存在しない時間帯と言うものがある。
 例えば、もし第二次大戦でナチスが勝っていたら?
 などと言うifの世界などがそうである。
 また、予定していながらも、
 結局、実行には至らなかった未来スケジュールなども、これに当たる。
 オカルティストの中には、このような時間帯の事を総称して、
 <かむろの時間>と呼ぶ人たちもいる。
 あるいは、少女・未代は、
 そんな不可思議な負の時間帯の中にと迷い込んでいたのかもしれない」

   END


posted by anu at 14:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年01月21日

「如月未代の奇妙な体験」(4)

      ○川沿いの一本道
   いつもの場所。
   ミチル、さちえ、麻衣子の三人が寄り添って、立っているところへ、
   未代が速足で近づいてゆく。(他に人の姿は無い)
未代「(三人へ)もう、どうしたって言うのよ!」
ミチル「(パッと)未代、待ってたわ」
   ミチルたち三人は、ひどくオロオロしている。
未代「(強気に)びくびくしないで、もっとしっかりしなさいよ!
 あたし達、やましい事は何も無いんだからさ」
ミチル「(あたりをキョロキョロ見回してから)でもさ、やっぱり心配でさ、なぎさの事。
 これから、本当にどうしたらいいの?」
未代「(強く)あたし達には関係ないわ。なぎさは、自分で勝手に死んだのよ。
 あたし達が悪いんじゃないわ。気にするんじゃない」
ミチル「(オロオロと)でも・・もしさ」
未代「(乾いた調子で)いい?なぎさの遺書は無かったのよ。
 学校だって、自殺の原因がいじめだとは認めてないわ。
 だったら、あたし達には、全然責任は無いじゃない」
麻衣子「(口を挟む)だけど、マスコミが・・」
未代「だから、学校はいじめは無かったと言う事にしたがってるのよ。
 それなら、あたし達も協力しなくちゃ。ねっ、そうでしょう。
 もし、クラスメイトの誰かがいじめの事をマスコミに話したにしても、
 あたし達の名前が実名で出る事は絶対ないわ。
 と言う事は、あたし達が責められる事もない。心配は無いのよ。
 卒業だって、きちんと出来るから、安心して」
   三人の友人は、なおも不安げな様子。
未代「(悪魔的な表情になる)もう、皆、怖がりなんだから!
 それなら、いい事をおしえてあげるわ。
 なぎさの遺書は見つからなかったかもしれないけど、
 あの子の作文とかにあたし達の名前が出ていた可能性もあるの。
 そこで、あたし、昔の文集とか調べてみたんだけどさ、
 怪しい事は何一つ書かれていなかったわ。
 あなた達も、うちに帰って、ちょっと調べてごらんなさい。
 もし不審な事が何も書かれていなければ、あたし達は安全だって事なんだから」
さちえ「(少しホッとして)そう言えば・・。なるほど」
ミチル「うん、帰って、すぐ調べてみるわ。さすが、未代!頭、いい!」
未代「(笑みを浮かべ)もし、気になる事が書かれているようなら、また集まりましょう。
 気をもむのは、それからでも十分だわ」
ミチル「(笑顔で)うん、そうする。未代、ありがとう」
   未代の視線が、ふと河原の方へ向く。
   そこには、時間が止まったかのように、かむろの姿がある。
   未代は、ギョッとして、顔をしかめる。
   未代の方を見つめるかむろが、優しく微笑んでいる。
   未代とかむろは、しばらく相手を直視し続ける。
   ついに未代が耐えられなくなり、厳しく叫びだす。
未代「(かむろの方へ)ちょっと、あなた!一体、何なのよ!
 なぜ、そんなに、あたしの事を見つめるの!あたしがどうしたと言うのよ!」
   いきなり怒鳴りだした未代の態度に、ミチルたちはすっかりうろたえる。
   未代がどやしつけている方向へ、ミチルが目をやる。
   しかし、そこには誰も居ない。ただの河原である。
ミチル「(戸惑いながら)未代、誰もいないよ。何を怒ってるの?」
未代「(興奮して)ミチル、目が悪いんじゃないの?あそこにいるじゃない。
 変な女が!見えないの?」
   未代の視線で見ると、相変わらず、河原でかむろが笑っている。
   未代の異常に、三人の友人は弱り果てる。
未代「(かむろへ)こっちに来なさいよ!来ないなら、こっちから行くわ!
 どうせ、今のあたし達の話だって、こっそり立ち聞きしてたんでしょう!
 あたし達に何か言いたいんだったら、堂々と言ったらどうなのよ!」
   未代が、河原の方へと向かいだす。
ミチル「(慌てて)み、未代!待ってったら!」
   ミチルに構わず、河原へと降りた未代が、一直線にかむろの方へと向かってゆく。
   未代が迫ってきた時、
   かむろも微笑みながら、クルリと未代に背を向け、軽やかに駆け出す。
   未代がその後を追う!追っ掛けっことなる。
   二人の背景が消え、真っ白になってゆく。

      ○白い空間
   駈けていたかむろが立ち止まり、未代の方に振り向く。
   未代もまた走るのを止め、かむろの事をきつく睨みつける。
   かむろは、相変わらず、微笑み続けている。
かむろ「(声高らかに)最後の願いとは、それは・・
 いえ、それを書くのは止めておく事にしましょう。
 しかし、あなたも、その願いの正体を、やがて、必ず目にする事が出来るはずでしょう」
未代「(少し動揺し)なぜ、なぎさの小説の最後のくだりを、あなたが知ってるの?
 あなたが、その最後の願いの正体だったの?」
かむろ「(明るく)あら、おかしい。それは、小説の中の話じゃない。
 ・・でも、そうかもしれないわね。私も虚空の存在かもしれない。
 あなたも、誰かに作り出された幻想なのかもしれない」
未代「(ムキになり)あたしはあたしよ!ここにきちんと生きているわ」
かむろ「(優しく)そうかしら。
 小説家は、自分は実在しているんだと信じきっている人物を、
 作品の中に登場させる事だって出来るわよ」
   未代はためらい、黙り込む。
かむろ「(明るく)私はあなたに聞きたかったの。
 あなたは、なぎささんの事をさんざんこき使ったり、意地悪したりしていたわよね。
 やはり、それは、いじめる事が楽しかったからなの?
 自分が楽しむ為には、何をしてもいい、と言う風に考えていたの?」
未代「(口ごもり)それは・・」

      ○校舎の裏  (回想)
   未代が、複数の年配の女生徒たちの輪の中で、いたぶられている。
   未代一人では勝ち目がなく、いいように叩かれている。
女生徒の一人「(笑って)この野郎!生意気に口紅なんか付けやがってェ!
 ヤキだ、ヤキだ!」
   未代は、歯を食いしばり、暴力に必死に堪えている。

      ○再び、白い空間
   未代と対峙するかむろが、突然、大笑いする。
かむろ「(可笑しげに)まあ、そう!
 自分もいじめられたから、自分だっていじめたっていいじゃないかと言うのね。
 なるほど。もっともらしい理屈ね」
未代「(慌てて)あ、あたし、そんな事は言ってないわ」
   かむろが、笑顔のまま、キッと未代を睨みつける。
かむろ「(冷ややかに)面白い話をおしえてあげましょう。
 あなたも、風紀の清水先生の事は御存知でしょう。
 あの先生はね、実は、シナリオを書いて、
 テレビのいろんなコンテストに送ってみるのが、唯一の趣味なの。
 でもね、可哀相に、なかなか入選した事がないのよ。
 そして、落選通知が届くたびに不機嫌になって、
 そんな時は、やたらと生徒たちに当たり散らしたりするの」
未代「(ムッとして)何よ、それ!ただの八つ当たりじゃない。
 そんな事で叱られるんじゃ、あたし達がいい迷惑だわ」
かむろ「(すまして)あら。それなら、いじめられたから、自分もいじめていい、
 と考えるのは、八つ当たりにならないと言うの?」
   未代は、再び返す言葉をなくしてしまう。
未代の心の声「まるで、心の中を読まれているみたい。
 死んだら、えんま大王の前ではウソがばれてしまうと言うけれど、
 それは、こんな感じなのかしら」
未代「(うろたえつつ)で、でも、なぎさは・・なぎさは何をしたって逆らわなかったわ。
 もし意地悪されるのが嫌だと言うのなら、はっきりとそう言ってくれれば良かったのよ。
 そしたら、あたしだって・・何もしなかったわ」
かむろ「(ニコリと笑い)おや、本当かしら。でも、そう言うのならば、それでもいいわ。
 抵抗しなかったなぎささんにも、いじめられる原因があると言いたいのね。
 そう考えたいのならば、それでもいいわ。
 では、私は、あなたに未来を見せてあげましょう。
 さあ、いらっしゃい。これが、あなたの歩むこれからの未来よ!」
   かむろがバッと指さした方向が、まばやく光り出し、
   そこに以下の映像が次々に映し出されてゆく事になる。

(つづく)

posted by anu at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年01月20日

「如月未代の奇妙な体験」(3)

      ○何部もの新聞の文面
   その中より、関連の記事の見出しを拾ってゆくと−−
   「ラッシュアワーの惨事!列車脱線転覆」
   「列車の転覆原因は少女の飛び込み自殺」
   「自殺の動機はイジメか?」

   そして、文面の隅にある自殺した少女の写真をアップにする。
   明らかに、なぎさである。

      ○なぎさ宅・玄関前
   入り口の手前で泣き崩れているなぎさの母親のまわりに、
   記者たちが沢山群がっている。
   その輪の中で、なぎさの母は、泣きながら、訴えている。
なぎさの母「(泣き声で)うちの子が自殺したのは、いじめが原因だからに決まってます!
 うちでは本当にいい子だったんです。それしか、考えられません。
 あの子の遺書は見つかってませんが、それしか、ありえないじゃないですか!」

      ○記者会見会場
   手前の長いテーブルには、なぎさたちの中学校の校長、教頭ら、
   そして、吉川が着席している。
   それを会場一杯に記者たちが取り囲んでいる。
校長「(感情を殺し)うちの学校で本当にいじめがあったかどうかは、
 まだ確認はできてはおりません」
   この校長の一言で、記者たちがいっせいにどよめく。
記者A「(校長へ)待って下さい!
 生徒が自殺に走ってしまうほど、ひどいいじめを受けていたのかもしれないんですよ。
 それほどのいじめの実態が、なぜ、まだ確認できてないと言うんですか!」
記者B「(続けて)知ってても隠しているだけなんじゃありませんか!」
記者C「その生徒の飛び込み自殺が列車の転覆を引き起こしてしまったんですよ。
 もし、その生徒の自殺の動機がいじめなら、
 この列車事故を招いた本当の犯人はあなた方だと言う事になるんじゃないんですか!」
   記者たちに責め立てられて、
   校長らはすっかりうろたえて、返答がしどろもどろになる。
   すぐに、記者たちの矛先は、
   テーブルの隅の方でおとなしくうつむいていた吉川の方へと向けられ出す。
記者D「自殺した生徒の担任教師は、一体、何をしてたんですか!
 いじめの事実を知らなかったんですか!」
記者E「知ってても、やり過ごしてたんじゃないんですか!」
記者F「(陰口っぽく)だから、女の先生はダメなんだよ」
   顔を真っ赤にしていた吉川が、突如、顔をテーブルに伏せ、激しく泣き出す。
吉川「(泣き叫ぶ)私だって、できる限りの事はやったんです。
 一体、これ以上、どうすれば良かったと言うんですか!」
   吉川のヒステリックな反応に、記者たちもうろたえ、どよめく。
   困惑する教頭が、泣き崩れる吉川を会場の外へと連れてゆく。
校長「(うろたえつつ、記者たちへ)今回の非常時の為、彼女は少し動揺しています。
 質問は勘弁していただけないでしょうか」
   記者たちは、相変わらず、騒ぎ立て続けている。

      ○中学校・未代のクラスの教室  (放課後)
   すでに清掃時間も終り、残っている生徒はまばら。
   隅の方にあるなぎさの席には、花瓶に入れた花が飾られている。

      ○同・校門  (放課後)
   他の生徒たちに混ざって、
   むっつりした表情の未代、ミチル、さちえ、麻衣子たちも出てくる。
   校門の周辺で生徒たちを待ち伏せしていた若い記者が走り寄り、
   何気なく、未代の方へマイクを向ける。
若い記者「(うっとおしく)あのう、この学校の生徒ですね!
 今回の女生徒の自殺事件について取材をしているのですが。
 やはり、いじめが原因だったと思いますか。
 あなたは、いじめの現場を見た事がありますか。
 亡くなられた後藤さんとは面識はありませんでしたか」
   未代たちは、うるさそうに顔をしかめ、
   記者の事を相手にしないで、さっさと歩き去ってゆく。

      ○未代の家・居間
   テレビのスクリーンをアップ。
   消えていたのがパチリとつくと、ちょうど教育評論家(御台門)が話をしている。
教育評論家(スクリーン内)「(はきはきと)現在の学校のシステムは、
 子供たちにとっては非常にストレスが溜まりやすいように出来ています。
 その抑圧された気持ちのはけ口として、いじめや非行などに走ると言うのは、
 それら子供たちにとっては、自身をダメにしない為の自己防衛的な行為なのであり、
 仕方がないものなのです。
 我々は、まず子供たちのいじめや不良行為などの事をどうのこうのと言う前に、
 その事について、もう一度、よく見つめ直すべきなのではないのでしょうか」
   そのテレビ放送を、ソファに座って、見ている未代が頷いている。
未代「(つぶやく)そうよ。そうなのよ」
   未代は、リモコンでテレビをパチンと消す。

      ○同・未代の部屋
   未代が、本棚をガサゴソと漁っている。
   未代が手を滑らすと、いっぺんに何冊もの本が床の上にと落ちてしまう。
   その中に、教科書類に混ざって、手作りの学校の文集がある。
   未代は、その文集を手に取ると、ペラペラとめくりだす。
   時々、めくるのを止め、文面を読んでいる。
未代「(つぶやき)あら」
   未代が目にしているページには、
   「不思議なボールペン 作・後藤なぎさ」と言うタイトルが冒頭に出ている。
未代「(つぶやき)なぎさの書いた小説が載っているわ。
 そう言えば、あの子、文芸部に入っていたわね。
 (読み出す)・・不思議なボールペン。私は、一本のボールペンを持っています。・・」

      ○白い空間  (空想)
   白いバックに、なぎさが一人で立っている。
   なぎさは、片手で一本のボールペンを掲げ、ツンとすましている。
なぎさ「(生き生きと)私は、一本のボールペンを持っています。
 いつ、どこで、これを手に入れたのかは覚えてはいません。
 しかし、これには不思議な力が備わっているのです。
 このボールペンで書いた話は、全て、現実のものとなってしまうのです。
 昨年、中近東の方で起こった戦争も・・」
   ここで、バックは戦場のドキュメンタリー映像。
なぎさ「・・ついこの間、九州を襲った大地震も・・」
   ここで、バックは地震の映像。
なぎさ「・・全て、私がこのボールペンの秘密の力を知らずに、
 うっかり小説のつもりで書いた文章が現実のものとなってしまったものなのです。
 他にも、私が、何気なく書いてしまった為に、
 現実の世界で引き起こしてしまった災厄や事件の数々は限りがありません」
   なぎさの顔を、どんどんアップにしてゆく。
なぎさ「しかし、このボールペンの中身も、あと僅かとなりました。
 このボールペンの力を知った今、
 私は最後のお願いをこのボールペンで文章にしようと考えています」

      ○再び・未代の部屋
   未代が座り込み、熱心に文章を読んでいる。
未代「(読みつぶやく)・・最後の願いとは、それは・・」
   そんな時、居間の方から電話の呼び鈴が聞こえてくる。
   もう少し、文章を目で読み続けた未代は、
   やがて、不満げな表情で文集を閉じ、下において、立ち上がると、
   スタスタと部屋から出てゆく。

      ○同・居間
   やって来た未代が、すぐ電話を手に取る。
未代「(電話へ)はい、如月です。・・なに、ミチルなの?どうしたのよォ、一体。
 今すぐ、皆で集まるってェ?いいけど・・。なに、オドオドしてるのよ。
 いつもの場所ね。分かったわ!」
   未代が電話を切る。

(つづく)

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2020年01月19日

「如月未代の奇妙な体験」(2)

      ○川沿いの一本道  (夕・下校時)
   冒頭のシーンと、ほぼ同じ場所。
   半分シルエット状の未代、ミチル、さちえ、麻衣子らが、
   口々に「バイバイ」とか「じゃあね」とか言って、散り散りに去ってゆく。
   なぎさの姿は、ここに無い。

      ○未代の家・玄関  (夕)
   無表情の未代がドアを開け、外から帰ってくる。
   すぐに、奥の方から、未代の父と母のものと思われる、
   夫婦ゲンカをしているらしき、男女の怒鳴り声が聞こえてくる。
   その為、未代はここで立ち止まり、顔をしかめる。
未代の母の声「(奥の方から)未代なの?帰って来たの?」
   しかし、未代は返事をせず、そのままクルリと向きを変え、
   すぐまた外へと出て行ってしまう。

      ○塾の教室  (夕)
   黒板に難しい英文を書き連ねた若い講師が、大声を張り上げて、説明している。
   生徒は、ほぼ席を埋め尽くしていて、その中には未代の姿もあり、
   理解にてこずっているのか、気難しい表情をしている。

      ○未代の家・玄関  (夜)
   再び、未代がドアを開き、帰ってくる。勉強疲れなのか、やや、やつれて見える。
   家族はもう寝てしまったのか、玄関も奥の方も電気は付けられていない。
   未代は外靴を脱ぎ、中へと入ってゆく。

      ○同・居間  (夜)
   暗い中、未代が通り抜けようとすると、
   食卓のところで、椅子に座り、おとなしくうつむいていた未代の母が、
   ひょっこり顔を上げる。母も疲れきった感じである。
未代の母「未代ちゃん。塾へ行ってたのね」
未代「(立ち止まり)ママ」
未代の母「夕食はどうしたの?」
未代「(あっけらかんと)それよりも、ママ、またお酒を飲んでるのね」
未代の母「(自嘲的に)飲まなきゃ、やってられないじゃない。
 あなたのパパはね、あんなにろくでなしなんだもん」
未代「でも、毎日飲んでたら、体に毒だわ」
未代の母「構わないわよ。
 それよりも、未代ちゃんはね、いっぱい勉強して、絶対偉い人になるのよ。
 これからは、女だって自立してやっていかなくちゃいけない時代なんだから。
 男の人なんかはアテにならないわ。
 ママみたいに変な亭主を掴んでしまったりしてはダメよ」
未代「(ムスッと)分かってるわよ!」
   母親のグチを聞きたくなくて、
   未代はさっさと自分の部屋の方へと歩き去ってしまう。

      ○同・未代の部屋  (夜)
   未代が、ベッドの上にパーッとうつぶせに寝っ転がる。
   ホッと息のつける瞬間である。
   しかし、シーツの上に顔を押し付けた未代の瞳からは涙がこぼれている。 (FO)

      ○川沿いの一本道  (朝・登校時)
   冒頭のシーンと同じ場所。
   早く来すぎたのか、未代が友人たちの登校を、一人立ちんぼして待っている。
   退屈している未代の目が、何気なく、河原の方へ向く。
   そこには、静寂の中、かむろが立っている。先日と全く同じままの姿、様子で。
   未代と視線の合ったかむろは、優しく微笑む。
   他方、未代の方は、
   この違和感に満ちた人物への不快からか、あからさまに顔をしかめる。
   そんな時、未代の三人の友人、ミチル、さちえ、麻衣子らがようやくやって来て、
   未代の傍へと駆け寄る。
ミチル「(笑って)ゴメーン。待ったあ?」
未代「(ツンと)いや。あれ、なぎさは?」
ミチル「一緒じゃないよ」
未代「(つぶやき)なにさ、あたしたちと学校に行くのが嫌で、逃げたのかしら」
   ふと未代が目をやると、
   彼女の三人の友人は、何やら、うろたえた様子でひそひそ話し合っている。
未代「(あっけらかんと)どうしたの?」
麻衣子「(慌てて)いや、何でもない。早く学校行かなくちゃ」
未代「うん」
   四人は、仲良く歩き出す。
   未代は、何となく、もう一度河原の方へと振り返ってみる。
   しかし、そこには、かむろの姿なぞ、影も形も無い。
   未代は、合点が行かず、眉をひそめる。

      ○中学校・未代のクラスの教室  (朝)
   チャイムが鳴っている。
   あちこちにてんで散らばっていた生徒たちが、
   ざわめきながらも、いっせいに席に向かいだす。
   一つだけ、角の方に座り手の現われない机がある。そこが、なぎさの席である。
   未代とその友人たちも、隣接した机にと着席している。
未代「(なぎさの席の方を見ながら)なぎさったら、とうとう来なかったわね。
 珍しいわね。熱を出したって、学校を休んだ事が無かったのに」
   ミチルたちは、また弱ったような表情になる。
   そして、戸が開き、先生が入ってくる。吉川ではなく、若い男の教師である。
   その為、生徒たちが少しざわめく。
男の教師「(落ち着いて)えー、吉川先生なんだが、
 急に用事が出来てしまった為、今日は朝は出てこられない。
 皆には悪いが、一時間目はおとなしく自習をしていてもらいたい」
   それだけ言うと、男の教師はさっさと出て行ってしまう。
   教室の中のあちこちで、生徒たちがざわめきだす。
   はじめは、やや、あっけにとられていた未代だが、
   目を向けると、ミチルたちが、また不安げにヒソヒソ話をしている事に、
   あざとく気が付く。
未代「(ミチルたちへ、きつく)あんたたち、何か隠してるんじゃないの?」
ミチル「(弱りながら)実はさ、未代・・
 昨日の帰りさ、未代と別れたあと、あたしたちで、なぎさの事、呼び出したんだよね
 ・・それで・・」
未代「それで、どうしたと言うのよ」
   喋りずらそうなミチルが、未代の耳元へとコソコソ囁く。
   話を聞いているうち、サッと未代の表情が変わってしまう。がく然としている。
   慌てて大声を出しかけた未代だが、すぐ声をひそめて、ミチルたちに言い返す。
未代「(うろたえながら)あんたたち、何て事をしちゃったのよ!
 それは、ちょっとまずいわ。それで、もし、なぎさが・・なぎさが・・」
   ミチルたちは、申し訳なさそうにうつむいている。
   次の瞬間、校内放送が流れてくる。
放送室からの声「(少し早口で)全校生徒の皆さん。
 臨時の職員会議の為、本日は以後の授業を中止、全生徒は集団下校となります。
 すぐ帰りのホームルームを行ないますので、教室で待機していて下さい。
 繰り返します。・・」
   この放送で、教室内の生徒たちはいっきょにどよめく。
   その中で、未代は、凍り付いたように、ぼう然としている。

(つづく)

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2020年01月18日

「如月未代の奇妙な体験」(1)

私が過去に書いたシナリオの一つですが、本ブログ上にて再録させていただきます。
なにぶん、1990年代に書いた作品なもんで、現在にそぐわない設定もある事をご了承ください。

      ○川沿いの一本道  (朝・登校時)
   地に降り立った妖異なる美女・かむろ。
   黒い帽子、黒い衣服で身を包み、黒い日傘をさして、河原の一角にツンと立ち、
   すました笑顔であたりを眺めている。
   やがて、ひとけの無い一本道の一方から、数人の女子中学生たちが歩いて、
   かむろのいる方向へと近づいてくる。
   美少女の如月未代を中心とする、さちえ、ミチル、麻衣子、
   そして、後藤なぎさのグループである。
   なぎさを除く四人は、騒がしく、楽しげにペチャクチャとお喋りをしている。
   かむろも、彼女たちの存在に関心をしめし、目を向ける。
   (ただし、未代たちの方では、かむろに気付いた素振りは無い)
   そして、女生徒たちは、かむろのすぐ傍にまでやって来る。
未代「(ふと、わざとらしく)あーあ。ちょっと手が疲れてきちゃったなァ」
   皆の後ろからすごすごとついてきていたなぎさの方へと、
   未代は意地悪い表情で視線を送る。
   おとなしそうな少女・なぎさは、戸惑いの態度を見せる。
なぎさ「(小さく微笑み)あの・・未代ちゃん・・カバン、持ってあげようか」
未代「(パッと笑顔で)えー、ほんとォ!いつも悪いわね!」
   と、未代は自分のカバンをすぐなぎさへと渡してしまう。
さちえ「あー、ずるい!あたしのも持って!」
ミチル「あたしのもォ!」
   と、たちまち、なぎさは皆のカバンを一人で持たされてしまう。
未代「(明るく)ごめんねェ、なぎさ。助かるわァ」
なぎさ「(少し悲しげな笑みで)いいの・・いいのよ」
   一行は再び歩き出す。
   重たい荷物を一人で持たされたなぎさが、一歩遅れてついてゆく形をとって。
   彼女たちは、かむろの前を通り過ぎ、やがて、視界から消えてゆく。
   彼女たちが見えなくなるまで目を向け続けていたかむろは、
   相変わらず、妖しい笑みを浮かべている。 (FO)

      ○中学校・体育館内
   全校朝会の最中である。
   ズラリと整列した六百人近い全校生徒の前で、
   ステージに立った初老の校長先生が話をしている。
校長「(マイクを通し)皆さんも、
 テレビや新聞などのニュースでご存知なのではないかと思うのだが、
 最近、あちこちの学校では生徒たちによるいじめが問題となっている。
 ついこの間も、愛知の方で、同級生のいじめを苦に、
 一人の少年が自殺をすると言う、痛ましい事件が起こっている。
 我が校では、もちろん、このような悲しい出来事は起こしてはいけないし、
 生徒の皆さん一人一人が、いじめなんてものは決して許してはいけない
 と言う強い自覚を持つようにしてもらいたい。・・」
   整列した生徒の中には、未代も居て、気だるそうにあくびをしている。

      ○同・校庭
   晴れた空の下、沢山の生徒たちが、あちこちにたむろしている。
   木陰のところには、
   未代と三人の友達(さちえ、ミチル、麻衣子)がたたずんでいる。
   未代は、本を読みながら、皆の話を聞いている。
ミチル「あの校長ったら、全く、話が長くて、やんなっちゃうわよネ」
麻衣子「ほんと!普段はだらしないくせしてさ、
 話する時だけはカッコつけちゃうんだから」
   友の話を聞き、未代も微笑む。
未代「(ふと)なぎさ、遅いわね」
さちえ「どうせ、いつもの事よ。またグズグズ手間取ってるんだわ」
   そんな時、若い男性教師・清水が、彼女たちの傍を通り掛かり、
   清水は未代に目を止める。
   彼は未代を睨みつけながら、ぐんぐん近づいてくる。
清水「(未代へ)おい!そこの、お前!口紅つけてるんじゃないのか?校則違反だぞ!」
未代「(少しうろたえ)あの・・これ、違います」
清水「ウソつけ!オレの目はだませんからな!」
未代「本当です。あたし、もともと唇の色が濃いんです」
清水「言い訳するな!ちょっと位ならばれないなんて、思ったりするなよ!
 ほら、洗面所に行って、早く拭き取ってくるんだ!」
未代「(ムキになって)だから、本当なんですってば!」
   未代と清水のやりとりを、未代の友人たちは、ただオドオドと傍から眺めている。
   そこへ、なぎさがやって来る。
   ハッとしたなぎさは、そそくさと未代と清水の間に入る。
なぎさ「(清水へ)先生、本当です!未代ちゃんは、昔から特に唇が赤いんです」
   なぎさの仲介で、一瞬、清水は喋るのを止める。
清水「(少ししてから)ウソじゃないんだな、後藤」
吉川「皆、本当の事を言ってますわ、清水先生」
   と言いつつ、女性教師・吉川が皆の傍へと歩み、やって来る。
   吉川は、未代、なぎさらの担任である。
清水「(ためらいつつ)そうか・・吉川先生が言うのなら間違いはないな
 ・・ウン、それならいいんだ、それなら・・」
   清水はスゴスゴと去ってゆく。
   未代の友人たち、ミチルらはザマミロと言った表情で、彼の後ろ姿を見送る。
吉川「(未代の方へ歩み寄り)如月さん、気にしないでね。
 清水先生、風紀の担当だから、ついきつくなってしまうのよ」
   しかし、未代は吉川の事を相手にせず、なぎさの方へ目を向ける。
未代「(きつく)なぎさ。あの先生とは仲良しなの?」
なぎさ「(おろつきながら)あの・・清水先生、文芸部の顧問なの・・」

      ○同・女子トイレの洗面所
   未代と友人たちが、鏡を見ながら、
   顔にクリームをつけたり、髪を整えたりしている。
   何もしていないが、なぎさも未代の横に立って、皆が終わるのを待っている。
   未代は、気にしているらしく、しきりに自分の唇をいじくっている。
   はたと鏡ごしに未代となぎさの視線が合う。
   未代は、いきなり、バッとなぎさのバストを服ごしに手で掴む。
未代「(意地悪く笑い)わァー、なぎさ、胸大きくなったんじゃないの?」
なぎさ「(戸惑いながら)そんな・・大きくなんか・・」
未代「(楽しげに)いや、絶対、前より大きくなったってば!ねえ、ちょっと見せてよ」
なぎさ「(ためらい)え・・でも・・」
未代「だから、ちょっとだけだってば!ねェ、いいでしょう!」
さちえ「(はしゃいで)わあー、見せて、見せてェ!」
なぎさ「(うろたえ)いや・・でも・・だめ・・」
   未代と友人たちは面白がって、なぎさを取り囲み、
   困っているなぎさの制服を脱がし出す。

      ○同・廊下
   生徒たちに混ざって、吉川も歩いている。
   前の方で、女子トイレの付近に人だかりが出来ていて、ざわついているのに、
   彼女も気が付く。
   吉川はハッっとして走り出し、人だかりの輪の中へと押し入ってゆく。
   輪の中の人物を見て、吉川は動揺する。
   そこでは、下着姿(あるいは、全裸)にされたなぎさがしゃがみこみ、
   縮こまって、グスグスと泣いている。
吉川「(慌てて)ど、どうしたの!後藤さん」
   と、吉川は、なぎさに自分の上衣をかぶせてやる。
   先生の出現で、人だかりは見る間に解消されてゆく。
   あたりをグルリと見回した吉川の目に、未代たちの姿が映る。
吉川「(きつく、未代たちへ)如月さん!あなた達ね!」
未代「(すまして)先生、ちょっと遊んでいただけです」
吉川「冗談だとしても程があるわ。何て事をするの!
 早く後藤さんに服を返してあげなさい」
未代「(ムキになり)ちょっと、ふざけてただけだと言ってるじゃないですか」
ミチル「そうよ!先生、分かんないんだから」
未代「いつも、あたしたちの事を目のカタキにして」
吉川「(強く)あなた達が言う事を聞かないからいけないんでしょう!
 四人とも、あとで職員室の方へいらっしゃい!」
   その時、なぎさが吉川へと声を掛ける。
なぎさ「(泣きながら)先生、いいんです。ただ、遊んでただけなんです」
吉川「(きょとんとする)でも・・」
さちえ「(笑って)ほら、なぎさだって、そう言ってるでしょう」
吉川「だけど・・」
なぎさ「(泣きながら)本当です。何でもないんです」
   ミチルたちが、笑いながら、なぎさの衣服をなぎさの方へと放り投げ返す。
ミチル「なぎさだって、遊びだったって言ってるんだから、
 職員室には行かないからネ!」
未代「(ツンと)なぎさ。さあ、行こう!」
   先に立って、歩き去ってゆく未代たちのあとを、
   簡単に衣類を身に付けたなぎさが、まだ泣きベソのまま、オロオロとついてゆく。
   あとに残されて、吉川は困惑した表情で立っている。

(つづく)


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2020年01月16日

「上原正三シナリオ選集」

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 今月2日、脚本家の上原正三氏が亡くなられたと聞くと、急に氏の作品が読みたくなって、我が家の本棚に置き場所のスペースを作り、速攻で購入してしまいました。

 「上原正三シナリオ選集」(現代書館)。700ページを超える大著のうえ、DVDまで付いています。注目すべきは、ヒーローもの以外の作品未制作のシナリオまで収録されている点。

 当分は、この本を読みながら、亡き巨匠の偉業を偲びたいと思います。

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2020年01月08日

映画用「時の塔」解説

 本作は、レイ・カミングズのSF小説「時の塔(the shadow girl)」を、早川書房の「時の塔」と、岩崎書店の「時間ちょう特急」の、二つの邦訳を使って、映画用のシノプシスに直してみたものです。

 ベースにはジュブナイルの「時間ちょう特急」の方を使用して、登場人物名は完訳の「時の塔」のものを採用しています。と言いますのも、設定は「時間ちょう特急」の方がよく練られていましたが、「時の塔」だけに出てくるキャラクターもきちんと登場させたからです。

 原作は1929年に書かれた古典である為、内容に粗い部分も目立ち、そのへんは、私の方で解釈を色々と追加させていただきました。時間旅行のルールなんて、ほぼ全て、私が考案して、新たに付け足したものです。それが無いと、もっと別の効率いい時間旅行の仕方が思い浮かんでしまい、原作通りの話の流れにしにくかったからです。さらには、せっかくなので、タイムトラベルものらしい伏線も、随所に盛り込ませていただきました。そんな訳で、原作にない小ネタが本作にはかなり多く、あとで原作を読んだ方は、あまりの違いに驚いてしまうかもしれません。

 原作では、ほとんど見せ場のなかったキャラたちにも、本作ではより味付けをさせていただきました。無意味すぎるキャラがいると、逆に、観る人に物足りなさを感じさせると思ったからです。

 チャーリーを子供キャラにしたのは「時間ちょう特急」のアイディアですが、完全に主要キャラの一人に加えたのは、私の発案です。映画の場合、メインキャラに子供が一人いた方が、子供の観客は感情移入しやすいだろうと判断したからです。「時間ちょう特急」では省かれたキャラのジョーゼファは、その存在意義を考えているうち、本作では、かなり大事なキャラに化けました。ティラノサウルスは、せっかくのタイムトラベルものなので、サプライズ的に、強引に登場させたものです。

 原作のタイトルは「the shadow girl」であり、このタイトルも活かせるように、原作のエンディングの一コマも採用しただけではなく、事件の冒頭でも、彼女が目立つカットをあえて追加しています。

「ルシーの明日とその他の物語」
posted by anu at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年01月07日

映画用「黒の放射線」解説

 本作は、中尾明のSFジュブナイル小説「黒の放射線」を、いろいろと細部を直しながら、劇場映画用のシノプシスにと書き起こしてみたものです。私自身がこの小説をはじめて読んだのは小学生高学年の頃でして、当時、私が抱いた本作への印象(イメージ)をより優先して、話を組み立てさせていただきました。よって、最初に黒あざ病にかかるのは少女タレントの浅井恵子となり、クライマックスは東京のど真ん中での黒あざの大行進にと変わったのでした。

 原作は、他の読者からも指摘されているように、せっかく面白い内容なのに、あちこちにアラが目立ち、私もそのへんをテコ入れしながら、各エピソードを再構築してみました。特に、描き切れてないと感じられるキャラが多かったので、そこらへんの掘り下げには力を入れています。

 信一には「再会」という劇的シチュエーションを与え(会えなかった期間を6年にしたのは、あだち充の漫画「みゆき」を意識したからです)、ヤンチャな長田修二にも少し見せ場を作ってあげました。中でも、原作の小山治は、悪者にも徹し切れていない歯がゆい存在だったのですが、私のシノプシスでは、最後にちょっとナオミを助けるようなシーンを盛り込んでみました。アーベル博士は、原作では兄弟で登場しますが、わざわざ二人にする必要性がなかったので、私は一人のキャラにまとめてしまい、かなり大事なキャラに昇格させています。キンダー少年は、原作では黒人の細菌学者だったのですが、私の方では、学校内にいる黒人生徒役として使わせていただきました。原作では、他にも、世界各地での混乱の様子が多数、書き込まれていたのですが、私のシノプシスでは、それらは全部、省略しています。

 キーキャラとなるSL教団と団長(教祖)は、原作では、そこまで悪質さは感じられず、一番重要なシーンも、たまたまケガをした団長を研究所に連れ込み、騙して、自白剤を飲ませてしまう、という、ご都合主義で、主人公側の行動の方が悪どく見える展開でしたので、私のシノプシスでは、かなり流れを作り変えさせていただきました。なお、SL教団の設定や悪辣さについては、実在したオウム真理教とも意図的に似せています。

 途中で、ナオミと母の入浴シーンがありますが、これは原作通りです。どうせなら、本当に二人のヌードを撮影して、その健康的なエロスに観客をときめかせたかったのですが、現在の日本では、コンプライアンス的に絶対に無理なシーンかもしれません。それ以前に、メインの黒あざ病自体が差別的と判断されて、本作そのものが映画化不可能なのかもしれませんが。

「ルシーの明日とその他の物語」
posted by anu at 13:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年01月05日

新ネタは「二次創作」

 昨年末、フェイントをかけて、タイトルページの部分だけ「ルシーの明日とその他の物語」に追加しておきましたので、すでに気付いていた人もいたかもしれませんが、エロ小説から離れて、久々に普通の内容の作品を「ルシーの明日とその他の物語」の方で公開させていただきました。先月は、ずっと表面的な活動をしていませんでしたが、実はこれを書いていたのです。

 今度のジャンルは「二次創作」です。もっと正確に言えば、原作ありの映画用シノプシスです。私の過去の小説「影の少女 rewrite」映画化用シノプシスは、早い段階で、「小説家になろう」の方で公開していましたが、続けて、「時の塔」「黒の放射線」などの、他の小説家の作品を映画向けに書き直したシノプシスも展示させていただきました。まあ、私自身、堂々と「二次創作」と称していますので、著作権的にも問題はないはずでしょう。

 むしろ、私のシノプシスを読んで、原作の方も読んでみたいと思う人が現われてくれたら、幸いだと思っている次第なのです。

「ルシーの明日とその他の物語」
posted by anu at 15:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説