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2021年07月25日
何が面白いのかはっきり言えないけれど妙に面白い。
今回はご紹介したいのは『波よ聞いてくれ』(沙村広明:著)という漫画である。
あらすじとしては、いわく言い難い、何の漫画と言いづらいのであるが、
表面的に言えば、
『カレー屋の店員であった女性がひょんなことからラジオのパーソナリティーを務めることになる漫画』
ということにもなろうか。
これだけでは何のこっちゃとなるだろう。
だが、これがやたらと面白いのである。
何が面白いのか分からないが何かめっちゃ面白いのだ。
小説家になろうとか読んでると、ああいうのは何が面白いのか非常に分かりやすいものである。
つまり読者に与える快楽が明確である。
読みたいシチュエーションとか展開をある程度読む前から選べるみたいなところがある。
でもこの作品はそうではない。
はっきりとしたこれという快楽ポイントがないけれども面白いんである。
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せりふ回しなのかユーモアなのか、面白さの質で、強いて似ているものを探すとすれば、話が面白いエッセイストのそれに近い気がする。
分かりやすい快楽原則がないのに面白いのは、逆に言えば創作者としての作者の腕前が非常に高いといえるのではないだろうか。
だからとってもオススメの一冊である。
なお、私が読んだのは3巻までなので、面白さとか作品の道徳性とかに責任を持てるのは3巻目までであるのでそこらへんはご留意いただきたい。
2015年05月09日
女の子たちの関係
今日ご紹介したいのは、
『終点のあの子』柚木麻子(著)である。
プロテスタント系の女子校を舞台にした、スクールカーストというか派閥というか、そんなあれこれを描いた小説である。
この小説の特筆すべきところは、文庫版の解説にも書かれてあるが、人物の書き分けが上手いところだ。
文庫の解説によれば、女の子たちの類型は、以下のように分類されている。
@ボスキャラタイプ
Aボスキャラにくっつくタイプ
Bそうした上下関係から距離を置くタイプ
そしてこの作者は、これらの類型のすべてのタイプを外から見て描写するだけでなく、その内面にまで踏み込んで、つまりそれぞれの類型の登場人物視点で描いているのである。
そうして、これらの登場人物ごとの、優れている点や欠落している点についてもしっかりと描かれている。
昨今のスクールカーストものでは、以上の3類型に加えて、C底辺タイプ、とでも言うものが設定されて、そこから見上げるような構造の作品が多いのではないかとも思う。
つまり、@やAのようなタイプの人物は、外部から単に観察されるだけであって、その内部から、彼ら自身の価値観や考え方というものが十分に描写されていないような気がするのである。
@やAのようなタイプの人間とても、そのへんのお兄ちゃんお姉ちゃんであることにはかわりがなく、こういうと少し語弊があるが『下からの目線で』それをただひたすら傲慢なモンスターのように描くのはやはり小説としてはある種の欠落があるとも思うんである。
だから、そこらへんを、@やAのような人物の内面にまで踏み込んでちゃんと描いたこの作品の価値は高いと思う。
この本の中に『ふたりでいるのに無言で読書』という作品があるが、内容は、ちょっと人間関係で失敗したボスキャラタイプの子が、オタ系の(というか本好き系の)子と少し仲良くなるが、やっぱあんまり合わないなとなって離れていく系の話である。
なんだか妙に納得させられるというか、身につまされるというか、ぜひ一度読んでいただきたいようなお話で、とてもオススメである。
『終点のあの子』柚木麻子(著)である。
プロテスタント系の女子校を舞台にした、スクールカーストというか派閥というか、そんなあれこれを描いた小説である。
この小説の特筆すべきところは、文庫版の解説にも書かれてあるが、人物の書き分けが上手いところだ。
文庫の解説によれば、女の子たちの類型は、以下のように分類されている。
@ボスキャラタイプ
Aボスキャラにくっつくタイプ
Bそうした上下関係から距離を置くタイプ
そしてこの作者は、これらの類型のすべてのタイプを外から見て描写するだけでなく、その内面にまで踏み込んで、つまりそれぞれの類型の登場人物視点で描いているのである。
そうして、これらの登場人物ごとの、優れている点や欠落している点についてもしっかりと描かれている。
昨今のスクールカーストものでは、以上の3類型に加えて、C底辺タイプ、とでも言うものが設定されて、そこから見上げるような構造の作品が多いのではないかとも思う。
つまり、@やAのようなタイプの人物は、外部から単に観察されるだけであって、その内部から、彼ら自身の価値観や考え方というものが十分に描写されていないような気がするのである。
@やAのようなタイプの人間とても、そのへんのお兄ちゃんお姉ちゃんであることにはかわりがなく、こういうと少し語弊があるが『下からの目線で』それをただひたすら傲慢なモンスターのように描くのはやはり小説としてはある種の欠落があるとも思うんである。
だから、そこらへんを、@やAのような人物の内面にまで踏み込んでちゃんと描いたこの作品の価値は高いと思う。
この本の中に『ふたりでいるのに無言で読書』という作品があるが、内容は、ちょっと人間関係で失敗したボスキャラタイプの子が、オタ系の(というか本好き系の)子と少し仲良くなるが、やっぱあんまり合わないなとなって離れていく系の話である。
なんだか妙に納得させられるというか、身につまされるというか、ぜひ一度読んでいただきたいようなお話で、とてもオススメである。
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2015年04月11日
(古き良き)日常系マンガ
今日紹介したいのは、
『女子のてにをは 1』るなツー (著) である。
表紙を見ると、いわゆる百合系かなと警戒する方もおられるかもしれないが、読んだ感じでは百合ではない。
百合ではないが女の子たちがいっぱい出てくる日常系の漫画だ。
作者は女性で、いわゆる男性向けな、いやらしさは全くない。
否、むしろ、いやらしさどころか、その真逆をいく。
作中の年代はたぶん昭和で、作中に登場する電話が黒電話だったりする。
そして登場人物の女の子たちのスカートだって長いんである。
双子の女の子がいて、ソファーに座って一緒に映画を見ているコマが出てくるのだけれど、彼女たちのスカートは、膝丈下なのである。
座った状態で膝が見えない。
それに登場人物の言葉づかいもなんだかきれいである。
だから、読んでいると心がゆったりしてきて、なんだか安心したような気分になれる。
今の社会が失ってしまった慎み深さとか、そういうものにもちゃんと意味はあって、それは貴重なものであったんだなあと、教えてくれる作品なのである。
女の子たちの日常系漫画ではあるが、最近のよくあるそれとは、すこし趣が違う。
だからとってもオススメである。
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