2016年05月12日
認知症でも尿意や便意を忘れない理由と、あえて忘れなければならないものとは
私たちは、毎日数回はトイレに行きます。
なぜトイレに行くのか、それは、尿意や便意を感じて「トイレに行きたい」と思うからです。
それが人間の生理現象で、普通の感覚だということは説明も不要だと思います。
しかし、介護士さんの中には、寝たきりや認知症になるとその尿意や便意を感じなくなり、「認知症の方は尿意や便意さえも忘れてしまう」と思っている方が意外と多いということをご存知でしょうか?
今回は、なぜ多くの介護士さんが、「認知症になると尿意や便意を忘れてしまう」と勘違いしてしまうのか、その理由についてお伝えしていきます。
施設や病院などには、たくさんの寝たきりの方や認知症の方がいらっしゃいます。
ではそのような現場での介護士さんが、認知症になると尿意や便意を忘れてしまうと勘違いしてしまうのはどうしてなのでしょうか。
よく耳にするのが、「あの人は尿意がない」「あの人は便意がない」と言っている介護士さんです。
「尿意・便意がない」=「尿意・便意の感覚を忘れてしまっている」
と思っている介護士さんが非常に多いのです。
しかしその勘違いが、実は大きな間違いなのです。
というのも、寝たきりになっても、認知症になっても、人間の排泄機能は最後まで残っている場合が多く、尿意や便意を感じなくなる、忘れてしまうということはほとんどありません。
トイレに行けない寝たきりの高齢者や、認知症でトイレの場所が分からなくなってしまった方でも、排泄のメカニズムは健康な私たちと同じです。尿意を感じて排尿をし、便意を感じて排便をします。
「ほとんどありません」とお伝えしたのは、確かに尿意や便意を感じなくなるケースはあるためです。しかしそれは、四肢マヒや下半身マヒのように、ある程度ケースが限定されています。
このことからわかるように、全ての寝たきりの方や認知症の方が尿意・便意を感じなくなるわけではないということを、まずは覚えておくようにしましょう。
これらのことを知らない介護士さんが多いため、尿意や便意に関しての勘違いが起こるのです。
寝たきりや認知症になると、一人でトイレに行くことが困難になります。
トイレの場所が分からなくなり、我慢できずに失禁してしまうというケースも少なくありません。
高齢者は、尿意や便意を感じて「トイレに行きたい」と思っていても、間に合わずに失禁してしまう場合も多いのです。
しかし、前項でお伝えしたようなことを介護士さんが知らない場合は、ここで勘違いが起こります。
「間に合わないのは、認知症で尿意や便意を忘れてしまっているからだ」と。
「尿意・便意の排泄機能は最後まで失われない」ということを知っていれば、このような勘違いが起こることはありません。
そしてそのまま排泄パッドの使用やオムツ着用になることも多く、そうなるとさらに悪循環に陥っていきます。
排泄パッドやオムツを着用していることで、介護士さんは安心してしまうのです。
間に合わずに失禁しているだけということに気づきにくくなるばかりか、「失禁したらかわいそうだから」と、一見聞こえの良い理由を盾に、介護士さんが安心してケアができる環境がどんどん出来上がっていきます。
高齢者にとっては、トイレ誘導やオムツ交換の時間も定時となり、ますます自分のトイレに行きたいタイミングには気づいてもらえない環境となっていることに、どれだけの介護士さんが気づいているでしょうか?
高齢者が望むケアは、不快感なく、安心してトイレで排泄ができるケアです。
排泄表などで個別に対応しているつもりでも、ご本人の排泄に行きたいタイミングではなく、排泄パッドに排尿や排便が出ている時間で排泄ケアをしているだけでは、個別の排泄ケアとは呼べません。
そのような環境が続くと、たとえ排泄の見直しをすることになっても「この人は排泄パッドに出ていることが多いから、やっぱりこの人には便意・尿意はない。つまりオムツや排泄パッドは必要だ」と、勘違いされたままの状態が続いてしまい、個別の排泄ケアとは程遠いケアを行ってしまうという悪循環に陥るのです。
介護士さんが、どのような場面で勘違いをしてしまいがちなのかということは、意外と知られていませんので、これも合わせて覚えておきましょう。
ここで一度、認知症高齢者の立場になって考えてみましょう。
このような悪循環な環境の中で、寝たきりや認知症の方が、失禁による不快感や羞恥心を味わうことなく、そして自身のプライドを守るためには、どうすればよかったのでしょうか?
認知症の方が尿意や便意を忘れるためにやったこと、それは、「皮膚の感覚を失わせる」ということでした。
皮膚感覚の喪失は、以下の理由から必要なものであったと考えられます。
寝たきりになってしまうと自分ではトイレに行けませんし、認知症になるとトイレの場所がわからなくなることもあります。
寝たきりの方は、認知症も加わることで意思の疎通が困難になってしまう場合も多く、排泄をしたくてもそれを上手く伝えることが出来なくなります。
便意や尿意を感じていても、どうしていいかわからず、最終的には我慢できずにそのまま出してしまいます。
そして出したあとに、不快に感じていてもどうすることもできないのです。
着替えることも、清潔にすることも、自分ひとりではできません。誰かが手伝ってくれるまで、不快感が続くということになります。
たまに失禁して衣類を脱いだり、便を手に持ったまま廊下に出てくる方もいますが、そのような行為も、自分なりに不快感をなんとか取り除こうとした結果です。
このように、失禁などで不快な思いをしている寝たきりや認知症の高齢者が、不快な思いをしなくて済むようにするためには、自身の皮膚の感覚を鈍らせ、濡れたままの冷たさなどを感じにくくする必要があったのではないでしょうか。
人間の体は、ある程度の環境に順応できるように出来ています。持続する不快感を取り除くために皮膚の感覚を鈍くすることも可能となるのです。
失禁して衣類が汚れないようにするために、排泄パッドやオムツが使用されるケースは多いです。
そして介護士さんの高齢者への声かけで、ありがちな声かけがあります。
「オムツをしていますから、そのまま出していいですよ」
というような声かけです。
さらに信じられないことに、排泄パッドを使用しているトイレ誘導対応の高齢者にも、同じような声かけをしている介護士さんがいます。
オムツや排泄パッドを使用しているからといって、なんの躊躇もなくそのまま出せる方はいません。
仮に、自分だったら出せるのかと聞かれると、答えはノーでしょう。羞恥心やプライドなどが心のブレーキをかけてしまうため、オムツをしているとはいえ簡単に出せるという人はいないのです。
しかし、このような心無い声かけをしている施設や病院はいまだに多いのが現状です。
想像してみてください。そんな中で、オムツ対応となった方は生活されているのです。
そしてそのような環境の中で、始めは尿意や便意を感じていてもなかなか出せなかったものが、我慢できずに何度も出しているうちに、段々とある変化が起こってきます。
不快感を忘れるのと同様に、出したことが分からないレベルまで、皮膚の感覚(温感・冷感)を鈍くするのです。自身の羞恥心やプライドを守るための自己防衛機能とでも言いましょうか、自身の心を傷つけずに済むように、皮膚感覚をマヒさせるのです。
オムツの中に排尿や排便をしなければならないのは、大変な屈辱だと思います。そのような屈辱が長期間に渡って与えられるということは、大変なストレスになりますので、そのストレスを軽くするためにも、尿意や便意が分からなくなる必要があるのです。
介護士さんは、寝たきりでも認知症の方でも尿意や便意がなくなるわけではないということを理解し、そのことを理解した上で排泄ケアや排泄の見直しなどを行っていかなければなりません。
高齢者が尿意・便意を忘れてしまう原因は、長期間のオムツの着用による皮膚感覚の喪失にあります。その原因を作っているのが、私たち介護士かもしれないと考えてみることで、排泄ケアの質を上げるための工夫や気づきが生まれます。
高齢者が完全に皮膚の感覚を忘れてしまう前に、もう一度排泄に関して考えてみる機会を作ることをおすすめします。
排泄に関してより深く理解したいという方は、こちらの記事も合わせて読むと理解が深まります。
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なぜトイレに行くのか、それは、尿意や便意を感じて「トイレに行きたい」と思うからです。
それが人間の生理現象で、普通の感覚だということは説明も不要だと思います。
しかし、介護士さんの中には、寝たきりや認知症になるとその尿意や便意を感じなくなり、「認知症の方は尿意や便意さえも忘れてしまう」と思っている方が意外と多いということをご存知でしょうか?
今回は、なぜ多くの介護士さんが、「認知症になると尿意や便意を忘れてしまう」と勘違いしてしまうのか、その理由についてお伝えしていきます。
多くの介護士が勘違いしていることとは何か
施設や病院などには、たくさんの寝たきりの方や認知症の方がいらっしゃいます。
ではそのような現場での介護士さんが、認知症になると尿意や便意を忘れてしまうと勘違いしてしまうのはどうしてなのでしょうか。
よく耳にするのが、「あの人は尿意がない」「あの人は便意がない」と言っている介護士さんです。
「尿意・便意がない」=「尿意・便意の感覚を忘れてしまっている」
と思っている介護士さんが非常に多いのです。
しかしその勘違いが、実は大きな間違いなのです。
というのも、寝たきりになっても、認知症になっても、人間の排泄機能は最後まで残っている場合が多く、尿意や便意を感じなくなる、忘れてしまうということはほとんどありません。
トイレに行けない寝たきりの高齢者や、認知症でトイレの場所が分からなくなってしまった方でも、排泄のメカニズムは健康な私たちと同じです。尿意を感じて排尿をし、便意を感じて排便をします。
「ほとんどありません」とお伝えしたのは、確かに尿意や便意を感じなくなるケースはあるためです。しかしそれは、四肢マヒや下半身マヒのように、ある程度ケースが限定されています。
このことからわかるように、全ての寝たきりの方や認知症の方が尿意・便意を感じなくなるわけではないということを、まずは覚えておくようにしましょう。
これらのことを知らない介護士さんが多いため、尿意や便意に関しての勘違いが起こるのです。
介護士が尿意・便意がないと勘違いをしてしまう場面とは
寝たきりや認知症になると、一人でトイレに行くことが困難になります。
トイレの場所が分からなくなり、我慢できずに失禁してしまうというケースも少なくありません。
高齢者は、尿意や便意を感じて「トイレに行きたい」と思っていても、間に合わずに失禁してしまう場合も多いのです。
しかし、前項でお伝えしたようなことを介護士さんが知らない場合は、ここで勘違いが起こります。
「間に合わないのは、認知症で尿意や便意を忘れてしまっているからだ」と。
「尿意・便意の排泄機能は最後まで失われない」ということを知っていれば、このような勘違いが起こることはありません。
そしてそのまま排泄パッドの使用やオムツ着用になることも多く、そうなるとさらに悪循環に陥っていきます。
排泄パッドやオムツを着用していることで、介護士さんは安心してしまうのです。
間に合わずに失禁しているだけということに気づきにくくなるばかりか、「失禁したらかわいそうだから」と、一見聞こえの良い理由を盾に、介護士さんが安心してケアができる環境がどんどん出来上がっていきます。
高齢者にとっては、トイレ誘導やオムツ交換の時間も定時となり、ますます自分のトイレに行きたいタイミングには気づいてもらえない環境となっていることに、どれだけの介護士さんが気づいているでしょうか?
高齢者が望むケアは、不快感なく、安心してトイレで排泄ができるケアです。
排泄表などで個別に対応しているつもりでも、ご本人の排泄に行きたいタイミングではなく、排泄パッドに排尿や排便が出ている時間で排泄ケアをしているだけでは、個別の排泄ケアとは呼べません。
そのような環境が続くと、たとえ排泄の見直しをすることになっても「この人は排泄パッドに出ていることが多いから、やっぱりこの人には便意・尿意はない。つまりオムツや排泄パッドは必要だ」と、勘違いされたままの状態が続いてしまい、個別の排泄ケアとは程遠いケアを行ってしまうという悪循環に陥るのです。
介護士さんが、どのような場面で勘違いをしてしまいがちなのかということは、意外と知られていませんので、これも合わせて覚えておきましょう。
認知症の方があえて尿意や便意を忘れるためにやったこととは
ここで一度、認知症高齢者の立場になって考えてみましょう。
このような悪循環な環境の中で、寝たきりや認知症の方が、失禁による不快感や羞恥心を味わうことなく、そして自身のプライドを守るためには、どうすればよかったのでしょうか?
認知症の方が尿意や便意を忘れるためにやったこと、それは、「皮膚の感覚を失わせる」ということでした。
皮膚感覚の喪失は、以下の理由から必要なものであったと考えられます。
理由@不快感を忘れる必要があった
寝たきりになってしまうと自分ではトイレに行けませんし、認知症になるとトイレの場所がわからなくなることもあります。
寝たきりの方は、認知症も加わることで意思の疎通が困難になってしまう場合も多く、排泄をしたくてもそれを上手く伝えることが出来なくなります。
便意や尿意を感じていても、どうしていいかわからず、最終的には我慢できずにそのまま出してしまいます。
そして出したあとに、不快に感じていてもどうすることもできないのです。
着替えることも、清潔にすることも、自分ひとりではできません。誰かが手伝ってくれるまで、不快感が続くということになります。
たまに失禁して衣類を脱いだり、便を手に持ったまま廊下に出てくる方もいますが、そのような行為も、自分なりに不快感をなんとか取り除こうとした結果です。
このように、失禁などで不快な思いをしている寝たきりや認知症の高齢者が、不快な思いをしなくて済むようにするためには、自身の皮膚の感覚を鈍らせ、濡れたままの冷たさなどを感じにくくする必要があったのではないでしょうか。
人間の体は、ある程度の環境に順応できるように出来ています。持続する不快感を取り除くために皮膚の感覚を鈍くすることも可能となるのです。
理由A自身の羞恥心やプライドを守るため
失禁して衣類が汚れないようにするために、排泄パッドやオムツが使用されるケースは多いです。
そして介護士さんの高齢者への声かけで、ありがちな声かけがあります。
「オムツをしていますから、そのまま出していいですよ」
というような声かけです。
さらに信じられないことに、排泄パッドを使用しているトイレ誘導対応の高齢者にも、同じような声かけをしている介護士さんがいます。
オムツや排泄パッドを使用しているからといって、なんの躊躇もなくそのまま出せる方はいません。
仮に、自分だったら出せるのかと聞かれると、答えはノーでしょう。羞恥心やプライドなどが心のブレーキをかけてしまうため、オムツをしているとはいえ簡単に出せるという人はいないのです。
しかし、このような心無い声かけをしている施設や病院はいまだに多いのが現状です。
想像してみてください。そんな中で、オムツ対応となった方は生活されているのです。
そしてそのような環境の中で、始めは尿意や便意を感じていてもなかなか出せなかったものが、我慢できずに何度も出しているうちに、段々とある変化が起こってきます。
不快感を忘れるのと同様に、出したことが分からないレベルまで、皮膚の感覚(温感・冷感)を鈍くするのです。自身の羞恥心やプライドを守るための自己防衛機能とでも言いましょうか、自身の心を傷つけずに済むように、皮膚感覚をマヒさせるのです。
オムツの中に排尿や排便をしなければならないのは、大変な屈辱だと思います。そのような屈辱が長期間に渡って与えられるということは、大変なストレスになりますので、そのストレスを軽くするためにも、尿意や便意が分からなくなる必要があるのです。
まとめ
介護士さんは、寝たきりでも認知症の方でも尿意や便意がなくなるわけではないということを理解し、そのことを理解した上で排泄ケアや排泄の見直しなどを行っていかなければなりません。
高齢者が尿意・便意を忘れてしまう原因は、長期間のオムツの着用による皮膚感覚の喪失にあります。その原因を作っているのが、私たち介護士かもしれないと考えてみることで、排泄ケアの質を上げるための工夫や気づきが生まれます。
高齢者が完全に皮膚の感覚を忘れてしまう前に、もう一度排泄に関して考えてみる機会を作ることをおすすめします。
排泄に関してより深く理解したいという方は、こちらの記事も合わせて読むと理解が深まります。
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