3 副専攻で資格を取る
学歴を土台にして職歴を作る、こうしたキャリアの形成は、社会人にとって当たりまえのことである。サラリーマンの育成にも実務を踏まえて、資格を取るというルールがある。私の場合、主の専門は、人文、特に、ドイツ語学文学、言語学で、社会、情報、バイオ、メディカルは、副専攻である。
二十代から三十代にかけて、立教大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻博士前期及び後期課程で主の専門の基礎を作り、続けてドイツ・チュービンゲン大学大学院新文献学部博士課程でドイツ語学、言語学(意味論)を専攻しながら、トーマス・マンのイロニーとファジィ理論の整合性について研究を進めた。その後、技術翻訳の仕事をしながらシナジー学会で研究発表をし、「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」という著作を四十代前半に出版した。
計算文学という用語は、誤解されやすい。情報科学の専門家が数理や技術の知識を用いて小説を分析すると理解されがちだからである。人文科学で行う計算文学は、Tの逆さの認知科学の定規を縦横に言語の認知と情報の認知からなるLのフォーマットに置き換えて、小説のリレーショナル・データベースを作成する。データベースの分析は、統計処理と論理計算のどちらか一つを条件にする。そして、作家の執筆脳の組(例えば、トーマス・マンとファジィ、魯迅とカオス、森鴎外と感情、ナディン・ゴーディマと意欲)を作ることができれば、シナジーのメタファーに到達するため、人文科学からの計算文学も成立する。(花村2005、2015、2017)
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
2018年03月02日
シナジーのメタファーを外国語教育に応用する3
しかし、最初のうちは、一つの小説について全てを揃えることが難しいため、4つのうちとりあえず3つ(@、A、Bまたは@、A、C)を条件にして、作家の執筆脳の研究をまとめるとよい。以下に、シナジーのメタファーのメリットをまとめておく。
【メリット】
作家の執筆脳を分析して組み合わせを作る際、定番の読みを再考する機会が得られる。
定番の読みは、外国語の場合、読めているかどうか客観的に確認することができるため、意味がある。
データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
また、形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。
ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。
例えば、重読についてみよう。シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これが受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーは、重読の一つに数えることができる。
基本的に学歴を土台にして、実務や研究を積めばよいのであれば、文理セパレートで人文や文化の資料をめくっていればよい。副専攻を増やしながら横の調節を心がけ、テキスト共生によるシナジーの調節などする必要がない。しかし、地球規模とフォーマットのシフトからなるマクロのレベルに届けば、研究は、自ずと発見発明につながる。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
【メリット】
作家の執筆脳を分析して組み合わせを作る際、定番の読みを再考する機会が得られる。
定番の読みは、外国語の場合、読めているかどうか客観的に確認することができるため、意味がある。
データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
また、形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。
ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。
例えば、重読についてみよう。シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これが受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーは、重読の一つに数えることができる。
基本的に学歴を土台にして、実務や研究を積めばよいのであれば、文理セパレートで人文や文化の資料をめくっていればよい。副専攻を増やしながら横の調節を心がけ、テキスト共生によるシナジーの調節などする必要がない。しかし、地球規模とフォーマットのシフトからなるマクロのレベルに届けば、研究は、自ずと発見発明につながる。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
シナジーのメタファーを外国語教育に応用する2
2 シナジーのメタファーのメリット
作家の執筆脳を探るシナジーメタファーの研究は、@LのストーリーやAデータベースの作成、さらにB論理計算やC統計によるデータ処理が必要になる。例えば、「トーマス・マンとファジィ」でいうと、エクセルのカラムAに原文を入力していき、文理共生のリレーショナル・データベースを作成していく。その際、カラムの前半は文法や意味、後半はメディカル情報の読解と人工知能からなるカラムを置いていく。そして、カラムごとの要素について数字を入力していく。こうしてできたLのストーリーとデータベースからトーマス・マンのイロニーとファジィ理論の整合性の良さが論理計算や統計により説明できれば、シナジーのメタファーの研究成果として実績になっていく。
「魯迅とカオス」もデータベースを作成しながら、Lの実験を試みる。「阿Q正伝」の場合、解析イメージは、「記憶と馬虎」という組み合わせになり、これを「記憶とカオス」という生成イメージに近づけるため、一つの場面を作業単位にしてL字の解析と生成を繰り返していく。
銃殺される前に街中を引き回される阿Qが刑場へ向かう途中で車から喝采している人々を見て、ある瞬間に4年前山麓で出会った飢えた狼のことを思い出す。ここで喝采している人々は、「馬々虎々」という無秩序状態にあり、予測不可能な振舞い(非線形性)を示す。そして、刑場へ向けて荷車を引く仕事人と阿Qの視神経がとらえる入力情報は、引き回しの開始の時点ではほぼ同じである。ところが、しばらくすると阿Qは飢えた狼のことを思い出す。つまり、両者の出力は、その時点で全くかけ離れたものになる(非決定論)。
こうしたカオスの特徴は記憶とも結びつく。近づきも離れもせずに阿Qを罪人として追いかけてくる狼の目。例えば、これがエピソード記憶であり、阿Q並びに彼の周りにいる人々に託された「馬々虎々」という無意識の思想を連続した物体の存在認識に見るカオスの世界とする理由である。
「森鴎外と感情」についても同じようにデータベースを作成していく。やはりエクセルのカラムAに原文を入力していき、文理共生のリレーショナル・データベースを作成する。その際、カラムの前半は文法や意味、後半はメディカル情報の読解と人工知能からなるカラムにする。但し、作家ごとに知的財産が異なるため、人工知能のカラムは変える必要がある。カラムが整ったら数字を入力していく。
「山椒大夫」の購読脳を瞬時の思い(誘発+創発)と継続の思い(尊敬の念)からなる感情という組にすると、主人公が子供のため瞬時の思いの中で誘発が強いことがわかる。それが共生の読みの入力となり、何れかの感情と行動が組となって出力される。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
作家の執筆脳を探るシナジーメタファーの研究は、@LのストーリーやAデータベースの作成、さらにB論理計算やC統計によるデータ処理が必要になる。例えば、「トーマス・マンとファジィ」でいうと、エクセルのカラムAに原文を入力していき、文理共生のリレーショナル・データベースを作成していく。その際、カラムの前半は文法や意味、後半はメディカル情報の読解と人工知能からなるカラムを置いていく。そして、カラムごとの要素について数字を入力していく。こうしてできたLのストーリーとデータベースからトーマス・マンのイロニーとファジィ理論の整合性の良さが論理計算や統計により説明できれば、シナジーのメタファーの研究成果として実績になっていく。
「魯迅とカオス」もデータベースを作成しながら、Lの実験を試みる。「阿Q正伝」の場合、解析イメージは、「記憶と馬虎」という組み合わせになり、これを「記憶とカオス」という生成イメージに近づけるため、一つの場面を作業単位にしてL字の解析と生成を繰り返していく。
銃殺される前に街中を引き回される阿Qが刑場へ向かう途中で車から喝采している人々を見て、ある瞬間に4年前山麓で出会った飢えた狼のことを思い出す。ここで喝采している人々は、「馬々虎々」という無秩序状態にあり、予測不可能な振舞い(非線形性)を示す。そして、刑場へ向けて荷車を引く仕事人と阿Qの視神経がとらえる入力情報は、引き回しの開始の時点ではほぼ同じである。ところが、しばらくすると阿Qは飢えた狼のことを思い出す。つまり、両者の出力は、その時点で全くかけ離れたものになる(非決定論)。
こうしたカオスの特徴は記憶とも結びつく。近づきも離れもせずに阿Qを罪人として追いかけてくる狼の目。例えば、これがエピソード記憶であり、阿Q並びに彼の周りにいる人々に託された「馬々虎々」という無意識の思想を連続した物体の存在認識に見るカオスの世界とする理由である。
「森鴎外と感情」についても同じようにデータベースを作成していく。やはりエクセルのカラムAに原文を入力していき、文理共生のリレーショナル・データベースを作成する。その際、カラムの前半は文法や意味、後半はメディカル情報の読解と人工知能からなるカラムにする。但し、作家ごとに知的財産が異なるため、人工知能のカラムは変える必要がある。カラムが整ったら数字を入力していく。
「山椒大夫」の購読脳を瞬時の思い(誘発+創発)と継続の思い(尊敬の念)からなる感情という組にすると、主人公が子供のため瞬時の思いの中で誘発が強いことがわかる。それが共生の読みの入力となり、何れかの感情と行動が組となって出力される。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
シナジーのメタファーを外国語教育に応用する1
1 シナジーのメタファー
文学分析では、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロの分析方法である。基本のパターンは、縦が購読脳で横が執筆脳となるLのイメージを作り、各場面をLに読みながらデータベースを作成して、全体を組の集合体にし、双方の脳の活動をマージするために、中間にロジックを立てて脳内の信号のパスを探していく。
執筆脳の定義は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読みとする。こう考えると、私の著作3冊、トーマス・マン、魯迅、鴎外、ナディン・ゴーディマを先行研究にすることができる。また、編者は、文字データに関する校正を担当するため、原稿の調査についても小説の最終原稿の段階を前提にする。
これまでに考案しているシナジーのメタファーは、「トーマス・マンとファジィ」、「魯迅とカオス」、「森鴎外と感情」そして「ナディン・ゴーディマと意欲」である。それぞれの作家が執筆している時の脳の活動として文体を取り上げ、とりわけ、問題解決の場面を分析の対象にしている。
シナジーのメタファーは、世界中の小説が対象になるため、どの言語で書かれていても研究の選択肢になる。自分の専門の対照言語以外のことばでも比較を意識して、東西南北になるように調節するとよい。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
文学分析では、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロの分析方法である。基本のパターンは、縦が購読脳で横が執筆脳となるLのイメージを作り、各場面をLに読みながらデータベースを作成して、全体を組の集合体にし、双方の脳の活動をマージするために、中間にロジックを立てて脳内の信号のパスを探していく。
執筆脳の定義は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読みとする。こう考えると、私の著作3冊、トーマス・マン、魯迅、鴎外、ナディン・ゴーディマを先行研究にすることができる。また、編者は、文字データに関する校正を担当するため、原稿の調査についても小説の最終原稿の段階を前提にする。
これまでに考案しているシナジーのメタファーは、「トーマス・マンとファジィ」、「魯迅とカオス」、「森鴎外と感情」そして「ナディン・ゴーディマと意欲」である。それぞれの作家が執筆している時の脳の活動として文体を取り上げ、とりわけ、問題解決の場面を分析の対象にしている。
シナジーのメタファーは、世界中の小説が対象になるため、どの言語で書かれていても研究の選択肢になる。自分の専門の対照言語以外のことばでも比較を意識して、東西南北になるように調節するとよい。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より