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2018年03月02日

シナジーのメタファーを外国語教育に応用する2

2 シナジーのメタファーのメリット

 作家の執筆脳を探るシナジーメタファーの研究は、@LのストーリーやAデータベースの作成、さらにB論理計算やC統計によるデータ処理が必要になる。例えば、「トーマス・マンとファジィ」でいうと、エクセルのカラムAに原文を入力していき、文理共生のリレーショナル・データベースを作成していく。その際、カラムの前半は文法や意味、後半はメディカル情報の読解と人工知能からなるカラムを置いていく。そして、カラムごとの要素について数字を入力していく。こうしてできたLのストーリーとデータベースからトーマス・マンのイロニーとファジィ理論の整合性の良さが論理計算や統計により説明できれば、シナジーのメタファーの研究成果として実績になっていく。
 「魯迅とカオス」もデータベースを作成しながら、Lの実験を試みる。「阿Q正伝」の場合、解析イメージは、「記憶と馬虎」という組み合わせになり、これを「記憶とカオス」という生成イメージに近づけるため、一つの場面を作業単位にしてL字の解析と生成を繰り返していく。
銃殺される前に街中を引き回される阿Qが刑場へ向かう途中で車から喝采している人々を見て、ある瞬間に4年前山麓で出会った飢えた狼のことを思い出す。ここで喝采している人々は、「馬々虎々」という無秩序状態にあり、予測不可能な振舞い(非線形性)を示す。そして、刑場へ向けて荷車を引く仕事人と阿Qの視神経がとらえる入力情報は、引き回しの開始の時点ではほぼ同じである。ところが、しばらくすると阿Qは飢えた狼のことを思い出す。つまり、両者の出力は、その時点で全くかけ離れたものになる(非決定論)。
 こうしたカオスの特徴は記憶とも結びつく。近づきも離れもせずに阿Qを罪人として追いかけてくる狼の目。例えば、これがエピソード記憶であり、阿Q並びに彼の周りにいる人々に託された「馬々虎々」という無意識の思想を連続した物体の存在認識に見るカオスの世界とする理由である。
 「森鴎外と感情」についても同じようにデータベースを作成していく。やはりエクセルのカラムAに原文を入力していき、文理共生のリレーショナル・データベースを作成する。その際、カラムの前半は文法や意味、後半はメディカル情報の読解と人工知能からなるカラムにする。但し、作家ごとに知的財産が異なるため、人工知能のカラムは変える必要がある。カラムが整ったら数字を入力していく。
 「山椒大夫」の購読脳を瞬時の思い(誘発+創発)と継続の思い(尊敬の念)からなる感情という組にすると、主人公が子供のため瞬時の思いの中で誘発が強いことがわかる。それが共生の読みの入力となり、何れかの感情と行動が組となって出力される。

花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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